思い出を忘れたくて



 木枯らしの吹く放課後。こんなに寒かったらもしかしたらホワイトクリスマスになるかもしれない。 俺はちょっとだけ期待してる。

 恋人とよべるかどうかまだ、わからないけれど実は俺様、古城拓馬は、齢17年にして今年初めてクリスマスの予定があるのだ。

 今日23日はその買い物に付き合う事になっている。つまりなんの事はない イブにお母さんと沢田と俺の3人で沢田が作った(ここが良い面でも悪い面でもポイントだったりする)クリスマスディナーを食べるだけなのだ。

 でも正直言うとこれが食いしん坊な俺にとってはまぁまぁ楽しみだったりする。

 思わず頬を緩めていた時、沢田に『デートに行くか?』と言われて『え〜〜〜!!!』と一応戸惑っていたら『クリスマスの買い物に決まってるだろうよ?』と言われてちょっとがっかりしちゃったのだ。いったいそんな俺ってなにもの?っていうかんじでもある……それはさておき。

 あぁ、もう7時10分……ちくしょう10分もこの寒空に待たせやがって、これ以上待たせたら俺は氷の彫像になっちまうぞ!

 ……くそ……15分……

 沢田の奴め!まさか7時の約束を忘れてるわけじゃ無いよな?

 「おお古城、誰かと待ち合わせか?」

 肩を抱きかかえられて振り向くと悪友の東海林だった。

 「うん、まぁ」

 俺は曖昧に呟く。よりによってなんでこいつが……。

 「まじで〜〜?お、お前彼女ができたのか?紹介しろって!」

 「彼女じゃ無いけど、家族と下宿人と一緒に約束しちゃって……悪いな」

 「悪いなってお前、俺に紹介しないつもりかよ?」

 「そんなんじゃないって……ただの買い物」

 「じゃ、俺も参加させてくれよ。明日は古城んちでクリスマスパーティでもやるか?」

 「え〜だめだよ。だって今年はメニューも決まっていて……」

 「なにいってんだよ家族と下宿人だろ?俺が入ってなんの問題があるっていうんだよ?きまりきまり!」

 あぁ……おれのまわりってどうしてこう、強引な奴ばっかりなんだろう? 東海林は勝手に決めると腰に手を回してくる。こんなところを沢田に見られたら俺……無事でいられね〜。

 「あれ?古城クンと東海林くんじゃない」

 どきっ!

 向こうからやってくるのは隣のクラス1の美少女結菜ちゃんだ。

 「ふたりでどこかに行くの?」

 「こいつ、誰かと待ち合わせしてるらしいんだけど、親友の俺に紹介したがらないんだ」

 それを聞いて結菜ちゃんは大きな瞳をさらに大きく見開いて叫んだ。

 「え〜〜〜っ!古城クン、誰かと付き合ってるの?」

 俺はめっちゃくちゃ焦った。

 「そ、そんなんじゃないよ。本当にただの買い物の待ち合わせだってば」

 「きゃっ!私も興味ある〜〜。東海林君!一緒にいていい?」

 「あぁ、勿論だよ。結菜ちゃんと一緒だなんて光栄至極ってやつさ」

 結菜ちゃん、なんでそこで俺じゃ無くて東海林に同意を求めるかな?しかも東海林は役得とばかりにちゃっかり気障ったらしく結菜ちゃんの肩なんかひきよせやがった。

 ケッという感じだが俺から離れてくれてちょっとだけほっとするのは、東海林との過度のスキンシップを沢田に見られたく無いからだ。

 くぅ〜情けねーな俺

 さっきまで沢田が早くきてくれと願った俺だったが、二人が帰るまで沢田が来ない事を願う現金な俺!

 昔マーフィの法則などというのが流行ったのを覚えているだろうか? まさにそれだ。来ないでくれと願う時に限ってあっというまに沢田の奴が現れやがった。

 「あれ?充……どうしたの?」

 「お前達こそデートか?東海林と付き合ってるなんて知らなかったぞ」

 沢田はたいして興味もなさそうにそういった。

 「違うの、古城クンの彼女が現れるらしいっていうので、私達も拝ませてもらおうと思って! 充も興味ある?」

 あ〜〜ぁ、結菜ちゃん!余計な事を〜〜〜。神様!仏様!キリスト様!これぞまさに絶対絶命である。

 「あるね」

 沢田はぶっきらぼうに言いながらも嬉しそうな顔で俺を横目で見た。

 もう……泣きたい……。

 するといきなり俺の携帯にメールが届いた。

 『今日の買い物はあきらめよう』

 ……っ!勿論沢田からだ。

 お前携帯も出した素振りもないのに何時の間に打ったわけ?

 器用すぎ……

 「今日は来れないみたいだ。残念だったな。さ、みんな解散してくれ」

 俺が早口でそういうと「明日古城の家でパーティするらしいぞ!結菜ちゃんもいかないか?」

 東海林の奴、ちゃっかり俺のクリスマスを結菜ちゃんとのデートのダシにするつもりだ。

 『だめ』と俺の唇が動き出す前に「いいよ」沢田が勝手にOKを出しやがった。

 おい、おい、おい俺の家だぞ!……そんな事をいう勇気も暇もないまま俺の頭は混乱しまくっている。

 このメンバーでクリスマスパーティなんて嫌過ぎる。

 それに、それに俺達が一緒に暮らしてるのが(一応沢田は下宿してることになってるが)ば、ばれちゃうじゃないか?

 沢田は俺の耳許で「新婚お披露目パーティだな」などと腐ったことを言い放ちむしろ上機嫌だ。

 俺は天を仰ぐ。こんな時こそ都合良く気絶しまえたらいいのに……。

 明日のイヴの事等、考えただけで頭がいたくなる俺であった。

 

 

 

 

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