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街は様々なイリュミネーションでデコレーションされ懐かしい『恋人達のクリスマス』が 頭の中にぐるぐる廻って離れなくなる程頻繁に流れている。 もう、クリスマスが近い事を嫌でも意識せざるを得ない。 本当はいくら僕が幼くても高校生だから、クリスマスは恋人達の為の日じゃ無くて イエスキリストが生まれた日だって事くらい知っている。 だけど、日本じゃバレンタインディは恋人達の日と言うより女の子達の人気投票の日みたいな ものだから、やっぱりクリスマスは恋人達にとって一番大切だ。 僕のまわりも、クリスマスは誰と過ごすかが大きな関心事になっていた。 僕だってできれば、従兄弟の由貴(よしき)と過ごしたい。 だって、僕らは一応恋人同志なのだ。 僕らの間であんな事があった後で僕らの間で何が一番変化したかといえば、多分僕がゆきちゃんと呼ばなくなった事だ。 あの後、全てが照れくさくて……まともに彼の顔を見られなくって……気がついたら「よしき」と呼び捨てにしていた。 僕も由貴もお互いに驚いたけれど、最近はすっかり慣れた気がする。 由貴が、後ろからぽんと僕の肩をたたいた。 「みっちゃん、Hホテルのディナーが予約できたよ」 「本当?」 彼の方は相変わらず僕の事をみっちゃんなんて子供っぽい呼び方をする。 できればもう、やめて欲しいな。子供じゃ無いんだから照れくさすぎるよ。 「あぁ、その後部屋をとってのお楽しみもあるよ!」 「よ、よしきのすけべ!」 「何もいってないじゃない。トランプかもしれないし?充の方がエッチを楽しみにしていたりして!」 「してないよ」 全く、何を考えてるんだろ。 由貴はそのまま僕の髪をくちゃくちゃにまるめて遊んでいる。 そこに一番会いたく無い相手……実は直樹といって僕の兄貴なのだが顔をあわせると いつも僕をちびだちびだとからかうので最近は露骨に避けている……が向こうからやってくるのが 見えた。 「お二人さん、何?何の相談?」 「なんでもない!」 こいつなんかに何も知られたく無い。 「クリスマスにちょうど休みがとれたんだけど、充は彼女いないんだろう?どこか連れていってやるよ」 「いい」 「え?」 「だから、もう予定が入ってるの」 僕がぶっきらぼうにいって直樹兄の手を振払う。 「へぇ?本当はゆきちゃんにどこかに連れていってもらうだけじゃないの?」 あまりに図星なので僕は真っ赤になった。直樹兄はにやりと笑って腰に手を当てるとまるで自分の当然の権利のようにこう言い放った。 「じゃ、俺もいく!」 「だめ!」 「どうしてさ」 「直樹はいじわるだから、直にぃが来ると楽しく無い!」 「ひでぇな!どっちがいじわるだよ。ねぇ、由貴兄……俺もいいだろ?」 由貴は困ったように顎を擦っている。 「ん、直樹が休みを取れるって知らなかったから二人分しか予約して無くて……」 「じゃ、俺が自分で予約の電話するからいいだろ?」 「でも男、三人っていうのもな……」 由貴はそのまま顎から口に右手を移すと下を向いて笑いを堪えている。 「いいじゃないか?別にカップルにおじゃまするわけじゃあるまいし。男二人だろうが三人だろうが たいしてかわらないだろ?」 カップルなんだよ!でもそんな事言えるわけないし……あぁ……最低……せっかくのクリスマスが……。 由貴ちゃんは諦めたようにそっと僕の耳許で囁く。 「あとで埋め合わせするからさ、許して……」 そうなると僕は黙って頷くしかない。 ため息しかでない僕と妙に嬉しそうな直樹……期待していただけに僕の落胆は酷かった。 「ね、充はクリスマスに何が欲しいんだ?」 直樹のやつ一応プレゼントはくれる気なのか?そういえばボーナスもでたはずだよな?僕には関係ないけど。 「ダイヤのチョーカー!」 腹が立ったので適当な事をいっておく。メモしてるけど本気で買うわけじゃないよな? 妙に嬉しそうな直樹兄にも腹が立つけど、余裕の笑みの由貴の態度も妙に腹立たしい僕だった。 |