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雪が踊るように舞い上がってまた降り積もる。 真珠はそっと窓から空から落ちてくる雪を飽きずに見つめていた。 「真珠……寒く無いのか?」 瀧海がそっと後ろから真珠をそっと抱き締めた。 「ん、寒くない……ただ……」 「石榴と沙羅が気になるんだね?」 「ん……」 頬にそっとキスをしながら瀧海が呟く。 「もうすぐ1年で一番日の短い季節になる……その日に願いごとをすると願いがかなうと言われているんだ」 「本当に?」 「あぁ……この国に昔から伝えられている伝説さ、私は勿論真珠と翡翠とずっと幸せになれるように 願うつもりだけどね」 「あ、じゃ……僕も……」 「お前は沙羅の安否を願ってやれ」 「え……でも……」 「いいんだよ、お前はそれで」 「ん……ありがと……瀧海」 厚い瀧海の胸板に真珠はそっともたれて安心したように瞼を閉じた。 「ただ、願の掛け方がちょっと……」 そのあと瀧海から聞いた伝説に真珠はすっかり固まってしまった。 なんとその日中が一番短い日の夜に竜のつがいに乗った恋人達がどんどん天空に向うとそこに 人が乗れる虹色の雲が現れると言う……なんとその雲の中で愛を語らうと(無論語らうだけではないはずだが)願いがかなうというのだ。 「う、嘘だ!」 「嘘じゃ無い!酷いな真珠……信じて無いのか?」 「……なんか怪しい……」 真珠が瀧海を疑うのには訳があった。実は瀧海には似たような事をいって神殿でエッチしようとして危なく人に見られそうになったとんでもない前歴があったのだ。 その時は幸い瀧海がキスをしかけて少しだけ身体を弄られただけだったが、真珠はもう顔から火が出る程恥ずかしかった。 当然真珠は、かんかんに怒ってしばらく瀧海と口も聞かなかった。 なぜなら、瀧海が「神殿の中の真珠があまり綺麗だったから我慢ができなくて」などと獣のような言い訳をしたからだ。 真珠がロマンチストでちょっとロマンチックな事をいうとうっとりしてしまうのを瀧海が利用しないわけはなかったが、ついついやり過ぎてすっかり疑われているらしい。 「ま、待て。あの時はもう、本当に余裕がなかったんだ!それにその場でちょっとしただけだろう?」 「……し、しただなんて言わないでください!全く……瀧海は……僕、ちょっと翡翠の様子をみてきます」 そういって、さっと瀧海から身を捩るとあっという間に部屋を出ていった。 実際、瀧海も自分の性欲を持て余していた。夜だけで無く日中もことあるごとに真珠に欲情してしまう自分はいったいどうなっているのか?
実際のところ、冬至は恋人達の夜と呼ばれていたし、その伝説は本当だったが、残念ながら今までの行動がすっかり瀧海の信用を落としていた。でも瀧海としてはその恋人達の夜に朝まで真珠を抱き潰したい。 いつもは、真珠のまだ幼い身体を思いやって一度しかできないのだから。せめてその恋人達の夜だけは……。 普段は我慢をしているから、きっと日中も欲情してしまうのだろう。一度で良いからもう、時間を忘れて真珠を自分のものにしたい……。瀧海の妄想は果てしなく拡がったが真珠の軽蔑したような怒った瞳を想像して瀧海は大きくため息をついた。 しかし、瀧海にとっては幸運な事にその頃真珠は侍女達から瀧海の言っていた伝説が本当にある事を知った。 「たしかにそういう伝説はあるのですが、番の竜を手懐けて、しかも恋人と一緒に竜に登るなんて……。不可能に近いですわ。 女はだいたいが躊躇してしまいますもの。やはりただの伝説なのかもしれません」 真珠は思った……僕なら……僕なら怖く無い……でも今さらそんな事自分から言えない。思わず真珠は頬を赤らめた。 もしも、もしも本当に願いがかなうなら、やはり沙羅と石榴の安否を願おう。 どこか落ち込んでいた真珠の心に一筋の希望が差し込んできた。それを自分から瀧海に頼むのは死ぬ程恥ずかしいけれど……。 その願いの夜もやはり雪が舞い降りていた。ふわふわと舞い降りる雪の空を見上げると まるで自分が雪の中を突き進み、空に舞い上がっているような錯覚を覚えた。 きゅっと華厳の鳴く声がする。振り返ると華厳と不動だった。不動の後ろから瀧海が現れた。自分から先日の非礼を瀧海に謝って瀧海を誘わなければならないのだろうけど。そんなこと恥ずかし過ぎる。 真っ赤になって俯く真珠に瀧海は全てを悟ったように俯く真珠の顎にそっと人さし指をかけて上を向かせ愛しくてたまらないというように優しく微笑んだ。 「今夜だ……いくな?真珠」 「……」 無言で強く頷いて真珠は華厳の背に乗りこむと手綱をきつくしめた。あっという間にすごいスピードで不動が瀧海を乗せて真上に舞い上がっていく。 慌てて真珠は瀧海の後について舞い上がり追い掛ける。くるくると螺旋上に2匹の竜が真上に切り込むように舞い上がる様はまるで一本の綱のようにも見える。真珠は必死に華厳に掴まった。 意識が遠くなりかけた時、真上に虹色の雲が見えた。 まさか…… 真珠は自分の目が信じられなくて思わず瞬きをする。雲はまるで真珠達を包むようにまわりを取り囲み しかも華厳と不動は動けなくなっていた。 なんとか瀧海はもがくように不動から降りると必死に真珠を掴み上げる。 熱く唇を合わせて「さぁ……」と真珠を即す。 真珠達は永遠に続くかと思う時間愛を語り合った。 熱く息づく真珠に瀧海は優しく髪を弄びながらささやく。 「さぁ、願いごとを……」 「沙羅と石榴の安否を……彼等を助けて……」 真珠がそう祈ったとたん虹色の雲が眩いばかりに輝いた。 沙羅と石榴がどこかで拘束されてる姿が写し出された。壁に独特の幾何学模様が写し出されいる。 一瞬で消えたが真珠と瀧海は思わず顔を見合わせた。 「あの壁にあった模様に見覚えがある。最近、色々な星を侵略している帝国星のものだ。これさえ解れば、きっと私達は沙羅と石榴を助け出しにいけるよ」 優しく瀧海がそういうと真珠は瞳を潤ませながらちから強く頷く。 「安心したら、もう一度真珠を抱きたくなった。いい?」 真珠は少しだけ赤くなったが今度もやはり力強く頷いて瀧海の熱い胸板にそっと赤くなった顔を隠すように埋めていた。
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