シュー・ア・ラ・クレーム

chou a la creme 6



居酒屋で夕御飯を食べるつもりがほっとしたのか 本郷はまた飲み過ぎてしまったらしい。 空きっ腹に飲んだのも悪酔いの原因であろう。
その店から出たとたん、本郷は本当に腰が立たなくなった。 大沢が本郷の腰を持ち上げかかえるようにする。
「仕方ないなぁ。自分の酒量を知って飲まないと本当の意味で社会人になれないよ」
本郷にはもう反論する元気も気力もない。 大沢は本郷を押し込むようにタクシーに乗せて自分も入り込んだ。

「住所は?」

「う〜」

「喬の住所だよ。僕のマンションにきてもいいけど」
大沢は返事を待切れずに、自分のマンションの住所を運転手に告げた。
本郷はまずいと思いつつ、そこで記憶を飛ばしてしまったのだ。


暗い部屋にぽっと煙草の火が灯る。
本郷は、重たい頭を持ち上げた。
徐々に記憶が戻ってくる。

「お..大沢さん」

「気がついた?全く、喬は呆れた程 無防備だな。 僕だって北アメリカに住んでいたんだぜ。 何か起こるかも?という想像力が喬にはないわけ?」

「だってカナダに住んでいたのは大沢さんの子供の時の話しじゃないか」
「それから何度もアメリカにも行ってるよ。いちいち喬に説明してないだけさ」

大沢がそっとうなじを撫でた。 不思議と気色悪さを感じない。 何かどうにでもなれという自暴自棄の気持ちと 大沢ならされてもいいかもという気持ち。

そんな自分の気持ちに気がついて本郷は急速に酔いが醒めた。


「帰ります」


眠っている間に自分の身体に暴行されたような変化はないようだった。
大沢はただからかっているだけなのだろうか?
大沢は引き止める言葉を発することなくただじっと 本郷の瞳を見つめた。
そして本郷も。
そして本郷は大沢が近づいて来るのを感じて自分から そっと眼を閉じた。

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