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chou a la creme 5 |
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特別本郷が小さいわけではないのだ。170cmはある。 アメリカ人が大きすぎるのだ。全く肉ばっかり喰いやがって。 本郷の毒舌は相変わらず心の中だけで、あんなに大沢に注意されたのに 上手に話せない焦りからか、ついにこにこして誤魔化してしまう。 2人のテーブルにさっと影ができて薄暗くなった。ふと見上げると そこには大沢が冷たい顔をして微笑んだまま、まさに仁王立ちしている。 『これは偶然ですね。御一緒させてください』 大沢の言葉は最上級に丁寧だが、凍り付く程冷たい物言いだった。その様子は慇懃無礼そのもので誰の返事を待つことなく大沢はほぼ強引に本郷の席の隣に座った。 『君も気が利かないタイプだね』 ミッチは余裕で微笑んでいる。そして大沢に見せつけるように本郷の手を掴みながら親指で何度も撫で上げてみせた。 大沢はその本郷の手を自分の方に引き寄せていう。 『ミスター。気が付いていると思ったのであえて言いませんでしたが、 喬は僕の恋人です。この手を放していただきたい』 (恋人ぉ〜?大沢さんて顔に似合わず凄い事を平然といっちゃうんだな) 本郷はあっけにとられて、ただ大沢の怒った整った顔を見愡れてしまう。 そんな本郷の腕を強引に引っ張りあげるように掴むと、大沢は万札を1枚ぶつけるように置いて強引に店を後にした。 ミッチはそれには動じないどころか、本郷にウィンクしている。そして 『またね』といって人さし指を唇にあててその指で投げキスを送ってきた。 (見なかった事にしよう)大沢に腕を引かれながら本郷は気分が地球の裏側まで沈んでいく気がした。 大沢はそのままどこまでも無言で本郷の腕を引っ張っていく。 まるでどこかに犯人を連行する刑事のようだ。 途中までくると投げるようにその手を振りほどいた。 「全く、あれだけ注意したじゃないか。 ゲイ相手ににやにやするな。 黙って手を握らせるな。 その気もないのについていくな。」 「そんなに怒らなくても」 脳天気な本郷のその一言はあきらかに大沢怒りの炎に油を注ぐ事となった。 なぜなら大沢の顔色がみたこともない程怒りに溢れていたからだ。 「やっぱり、本郷君は眼鏡をかけていた方がいいね。 コンタクトだと誘ってるように見えるから。 君のその視力の足りない潤んだ瞳は、充分に男達を誤解させる力があるよ。」 心のどこかを鷲掴みにされた気がした。なんてことをいいやがるんだこの男は。 「ひどい言い様だ。大沢さんが一緒にいて見苦しいというからコンタクトにしたのに」 そのとたん、なぜか大沢の顔がいつもの柔らかいものに変化していく。もう、いつもの大沢の甘いマスクだった 「ごめん、言い過ぎて悪かったね。せっかく僕を頼ってくれたのにね。 夕御飯食べそびれたんだろう。ちょっと飲みにいこうか?」 断る理由もない、ちょっと単純すぎる自分に少し不安になりながら 本郷は機嫌を直して喜んでついていった。 |
