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chou a la creme 2 |
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午後の最初の取り引き。本郷は緊張しまくっていた。 本郷にとってはすべてが初めてだが相手はいつものお得意さまである。普通にやっていてまず失敗はない。 引き継ぎを兼ねた簡単な取り引きは予想どうり順調にすすんだ。 もちろん、会話のすべては英語であったがなんとか本郷の解る程度であったし、必要な会話の殆どは大沢が引き受けてくれた。 しかし本郷はどうしても素直に喜べない。大沢の英語は予想以上に流暢で殆ど外人ってやつだ。 羨ましいを通り越して感動してしまう。 「大沢さんってネィティブ並みの発音ですね。」 仕事が一段落して本郷からそっと声をかける。 「まぁね、訛りのきついネィティブよりよっぽど聞きやすいっていわれるよ」 大沢は悪戯っぽい笑みを返した。 「それより、今日はありがとう。あの書類のおかげですごく助かったよ」 ふ〜〜ん、大沢って思っていたよりずっといい感じかもしれない。 「よかったら、今晩飲みにいかない?最近出来たお気に入りがあるんだけど」 本郷は予定もなかったので軽く頷いた。断る理由もない。 こうやって軽く声がかけられる大沢の軽さが本郷にとってはやっぱり羨ましかった。 大沢に案内されてたどりついたのはは落ち着いた感じの店だった。 古いジャズがかかっている。 1枚板で作ってある重厚な木のカウンターに圧倒される 古い映画にでてきそうな本格的なカウンターだけのバー。 正直いって大沢に似つかわしくない。 大沢にはもっと、軽い感じが好みだと思い込んでいたので 本郷は少し意外な感じがした。 本郷は隣に座ってあらためて大沢の横顔をじっとみつめてしまう。 根元まで綺麗に染めた茶髪、切れ長の大きな瞳。筋の通った鼻。 整った顔だちとセンスの良い服装に本郷は嫉妬心を覚えた。 (女の子にもてるホストの方がお似合いだな。) そんな事をぼ〜っと考えていると 大沢がさっと横から本郷の眼鏡を取り上げる。 「どうしてコンタクトにしないの?印象変わるよ。 それに髪、どこで切ってる?いいところ紹介しようか?」 前言取り消し、やっぱりとんでもなく失礼なやつだ。 本郷は怒りで首まで真っ赤になってしまう。 「それは、先輩としての忠告ですか?それともからかってます?」 真面目ひとすじできた本郷はたしかに身の回りに頓着しないタイプでは あるが、そんなこと仕事に関わらないなら放っておいて欲しい。 そんな本郷の気持ちが解るのだろう、大沢は余裕の笑みでなだめる 「そんなに怒るなよ。そのままでも本郷君は充分いけてるけどね」 からかうようなそんな言葉にむっとしたまま、本郷はドライマティーニを一気に飲み干した。 (ざけんな〜いけてるわけなんかない。小学校から、ずっと勉強一筋だった。 自慢じゃないが俺は彼女いない暦20数年というやつだ。 自分はきっと遊びまくっているんだろうになんて嫌味な奴。) 2杯目にも手を出そうとした本郷の腕を大沢はぐっと掴む。 「あんまり最初から飛ばさない方がいいよ、僕が家まで送ってあげるのは やぶさかじゃないけどね」 「ばかにしないでください。女の子じゃあるまいし。勝手に帰れますよ」 本郷はかっとして掴まれた腕を振りほどこうとした。 しかしどうしても振りほどけなかった。凄い力。こんな軟派な優男にどうして こんな力があるんだろう。 眼鏡も取り上げられたままだ。 「返してくださいよ。何も見えないんだから」 大沢は余裕の笑みで言い放つ。 「コンタクト本当はもってるんだろう?」 「もってるけど、童顔なんでバカにされるんですよ。僕は眼鏡の方が似合うんです」 「たしかに眼鏡もいいけど、僕としてはコンタクトがいいな、 だってさ、君は自分の姿を見ないで仕事ができるけど、僕はずっと君を見ながら 仕事するんだから、多少僕の意見も聞いて欲しいね。」 たしかに本郷は大沢のいうことも一理あると思うと上手に反論できない。 「よかったら、資金は僕もちでまかせてくれない? いやだったら、髪型ももとの美容室にいって戻すといいんだし」 お金の問題ではない。本郷だって社会人なのだ。....とは思うがやっぱり上手に反論できないでいた。 「週末空けておいて。携帯に連絡するから」 人付き合いの下手な本郷はやはり上手に断ることもできなかった。 |
