シュー・ア・ラ・クレーム

chou a la creme 16




 あまりの空腹に本郷は目覚めた。ちょうど昼過ぎだ。コンビニにいってお弁当でも買ってこよう。 そう思って、大沢のマンションを出た。
 マンションの隣が運良くコンビニで 食料や飲み物を調達すると急いで部屋に戻る。全く地下鉄も近いし、なんて便利なマンションなんだ。 本郷は感心するより呆れ、もし自分が一緒に住むとしたらここの家賃の半分を出した方がいいな。 などと考えてそんな自分に驚いた。
 部屋に入ると 大沢はあどけない顔をして眠っている。まるで幼子のようだ。 時計の音や、外来の車の音だけが聞こえている。 本郷は洗面所からタオルを探し出すと顔だけ洗ってまた、大沢を覗き込んだ。
目が醒めたのだろう。大沢は何かを捜すように手を伸ばす。 本郷はその手をぐっと握りしめた。
「喬、まだ、いてくれたんだね」

  「どこかまだ、痛いところある?」

  「全身が痛いけど、たいしたことじゃない。もう起きれるよ。」

   そういうって起き上がると本郷の顎を掴んでキス。  
 それから2人は腰を庇ってベッドにかけたまま本郷の買ってきたお弁当の包みを開いた。
  本郷の方から沈黙を破るように話し出す。
「泣いた赤鬼って知ってる?ミッチがあのお話が大好きで、俺が青鬼になってやるっていうんだ」
たしか、里の人々に恐れられていた優しい赤鬼が友人の青鬼の助けによって里の人々と仲良くなり、 青鬼は自分が悪役をやることで結果的には親友の赤鬼に迷惑をかけないために去っていくという話だった。
「本当はあそこの小料理屋でミッチに襲われる喬を助けるはずだった。でもトラブル続出で間に合わなくて。 それでも、約束だから昨日はミッチに俺の身体を自由にしていいっていったんだ」
「それって酷くない?」
「ごめん、でも僕はあの時、いろいろな状況で追い詰められていた。ミッチとの繋がりが会社にばれてミッチの会社に移らざるをえなくなったんだ。このままではもう、喬と会えないと思ってやけになった」
 そういって俯く大沢の表情が幼く見えて本郷は大沢を抱き締めてやりたいような衝動にかられる。
「もう、いいよ。それより僕は今後のサンダースさんと大沢さんがどういう付き合いをしていくのか そっちの方が知りたい。僕と暮らすって本気なの?」
「本気に決まってるじゃないか。だって僕のバックバージンを捧げてやっとつかまえた君だもの。信じて欲しいね。」
「でも、サンダースさんが大沢さんの会社の重役なんだろう。もし、今後誘われたら どうするの?」
「その時はやめる」
「まじ?」
「まじ」
 そういうと僕等は顔を見合わせて笑い出した。
  「危なくなったら、喬、君が守ってくれるんだろう?そのためにも一緒に暮らさなくちゃ」
 そんな泣きたくなるような暖かい言葉を胸に抱くと涙が出そうになるじゃないか。
大沢とのこの満ち足りた時間を本郷は手放したいわけがない。 涙が溢れないように唇を噛み締めそっと大沢から視線を外す。やっぱり本郷にはかなわない。
 だからあえてふざけたように
「身体がよくなったら、今度は僕にやらせてね」といって大沢を苦笑させた。 (完)

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