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You presume! |
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「ノン!あぶねーぞ!後ろ気をつけろ!」 それはまさにノンと呼ばれた少年に竹刀を持った高校生が襲い掛かってくるところだった。 彼は少しだけ身体を傾けながらそのまま軸足を回し竹刀ごと回し蹴りを炸裂させた。 「おぼえてろ!」 数人の高校生はお決まりの捨て台詞を残して這う這うの体で逃げ出してゆく。 「大丈夫か?」 そういう程たいして心配そうでもなく高村誠は少し離れた場所から姿を現した。 「たいしたことねーよ」 「ノンはどうしてそう喧嘩っぱやいかな?」 余裕の笑みで高村がにやりと笑うとノンは睨めつける瞳を返した。 実際彼の本名は『ノン』なんかじゃない。宇井涼平という立派な親から貰った名前があるが 出席を呼ばれる時しかその名を聞く事はない。 なぜなら、誰も彼を恐れて彼の前でその名を呼ぶ事はないし。唯一呼び掛ける高村ですら、ノンと呼んでいるのだから。 ノンっていうのは誰がつけたか、上手く付けたと思う。ノンの本名の『ウィ』にかけて『YES』なんて絶対いわないのんだから、『ノン』なのだ。 空手の指導員をやってる大学生の高村は幼い頃からノンを良く知っていた。 とにかく生意気だったが、それだけにその闘争心は空手にぴったりだとなにかにつけて彼を誘っていたが、絶対にうんとはいわない。 最近はもう誘うのを諦めながらも、喧嘩してるノンに「もっと腰をまわせ!」だの「ためをきかせろ!」などとアドバイスするのを楽しみにしているのだ。 ノンは一度聞いたアドバイスを見事にその場で拾得している。ありがとうなんて言われた事はないが、 彼が必ず高村のいうことを聞いてそれを忠実に守っているの見るとやっぱり可愛いやつだと思ってしまう。 素直じゃないようで本当はとてつもなく素直な奴だと思う。まだ、誰の色にも染まっていない純粋さ。それを守る殻が棘のようにとんがってるだけなのだ。 「高村さん!大変だ!ノンがまた変なやつらに取り囲まれて!」 「いつもの事だろうが……」 高村はくわえ煙草のままその視線を伝票から離そうとしない。 「違うんだ、いつものちんぴらじゃない。多分ヤクザだ!3人もいるんだよ」 高村は最後まで聞かずに立上がった。 「場所は?!」そのまま、駆けながら追ってくる少年に場所を尋ねる。 「『ペットペット』の裏です」 飛ぶようにペットペットまで辿り着くと、3人の大男相手にノンが挌闘している。相手が相手だけに相当苦戦を強いられてるようだ。 その時、ヤクザらしい男のポケットから出てくる手がきらっと光った。 「けーさつだ!警察がくるぞ!」 高村はそう叫ぶとノンを片手で放り投げるように肩に担ぎ上げ、警察の一言で怯んだ男達をそのままそこに残したまま、ささっと逃げ出した。あまりの事に残された者達は呆然としている。 「離せ!ばか、はなしやがれ!」 暴れるノンを戻ってきた道場に落とすように降ろすと高村は思いっきり平手を張った。 「なにしやがる、てめー」 「自分の技量を考えろ!結局はみんなに迷惑をかけるんだぞ」 「うるせー。俺にかまうな!」 「はっきりいってやるぜ、あのままなら、お前あの男達に輪姦されてたぞ」 「ちくしょー逃げ出すぐらいなら輪姦された方がまだましだ!」 そのノンの言葉を聞いた瞬間、高村の潜在意識の中に納めていた箍の外れた音がした。 「そうか、じゃあそれがどんなものか俺がやってやろうか?」 暴れるノンを押さえ込みながら道場の2階の和室に連れ込む。 ノンは必死に暴れたが、力の差であっというまに高村に裸に剥かれてしまった。 悔しそうに彼が触れれば切れるような瞳で高村を睨む。 「睨んだって俺にはきかないぞ!」 「うるせーよ」 「強がったって震えてるんじゃねーか」 「さ、寒いんだよ……、やるならさっさとやんねーか!」 そういいながらも、隙を見つけて高村を蹴り上げようとしたり、噛み付こうとしたりでちっともじっとしていない。鳩尾に高村の正拳をまともに受けて、声も出なくなったノンはそのまま苦しそうに床に転がり落ちた。 「生意気なんだよ」 そのまま鳩尾を踵でぐっと押さえ込みながら高村がシニカルな笑みをもらす。 「そこがお前の可愛いところなんだがな……」 やっと大人しくなったノンを優しく大きな手で撫でながら、高村はそっと彼の上に覆い被さっていた。 |