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amulet |
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俺がそいつを意識したのはいつだったか覚えていない。 受験からの開放感と都会の洗練された女子大生にすっかり浮かれた生活を送っていた俺は 夜の帝王などと有難くないあだ名を付けられるようになっていた。 実際、今時の女子大生に殆ど性のモラルはなく、事が終わった後に 「見た目よりテクニックないのね」なんていわれることもしばしばで、ちょっぴり自信を無くしかけていた。 自分がいいなと思う子は向こうが淡白でこっちが勘弁してと思う奴に限って しつこく関係を迫ってくる。 俺はしだいに恋愛に関して自暴自棄というか諦めの境地みたいな気持ちだった。 セックスは確かに気持ちいいけれど、それだけでは埋められない何かがある。 郷里を同じくする悪友甲賀に 「お前と違った意味で悪目立ちしてる北埜って知ってるか?女を侍らせてハーレム作ってるらしいぞ」と教えられたのはそれから間もなくだった。 小さな白い顔に少し長めのストレートヘアのその男は北埜流星(きたのりゅうせい)という どちらかというと華奢な印象の男だった。まだ、どこか少年臭さが抜けない感じで、ハーレムとか言ってる割には、童貞クンじゃないの?ッて言う感じだ。 明らかに筋肉とガタイの良さを誇る俺とは違うタイプだ。 俺はとたんに興味を無くした。男なんかどうでもいい。ああいう男がいいっていう女もいれば、おれじゃなきゃ嫌だっていう女もいる。それでいいじゃないか? だが面白く無い事に廻りが放っておいてくれないのだ。 何かと比較されイヤでもその存在を意識してしまうのに、なぜかしら北埜にじっとみつめられている事が多いのに気がついた。 もしかしたらホモかよ?勘弁して欲しいな。俺はそう思う。 男なんてこれっぽっちも興味がないと思っていたけれど、甲賀が俺にいう。 「北埜なら俺、お願いされてもいいな」 「何が?」 「北埜相手なら充分勃つってことだよ。この前さ、なにげに手が触れたらアイツ、真っ赤になってるんだぜ?可愛いと思わね?俺に気があるのかも」 俺は驚いた。 北埜は甲賀にもモーションをかけていたのだ。 俺はその時、なぜか無性に腹がたった。なぜ、そんな気持ちになるのか自分でもわからなかったが、まるで北埜のバカにされたような、そして騙されたような気になり、あいつにも同じ思いをさせてやろうと決意していた。 俺は女達の輪の中にひとり入っている北埜に声をかける。 「人畜無害な顔でハーレム作ってる北埜流星ってお前か?」 女達はどうやら俺の悪口でもいっていたのか、真っ青になっている。 「俺も仲間に入れてくれよ」 北埜だけがきょとんと幼い顔をさらに幼くして俺をじっと見つめていた。 俺達はそれからなぜかつるむようになり、後で分った事だが北埜が女達を集めているわけでは無いようだった。自然に女が集まってくるのだ。 思いのほか、北埜はいい奴だった。そしてすごい聞き上手だった。北埜が聞いていると思うと 他のやつらにはバカにされそうな真面目な話や、深い話が自然にできた。 女達とベッドに入るよりずっと充実した時間に思える。いつのまにか北埜達との時間が俺にとって無くてはならない大切な時間になっていた。 北埜は時々切ないような何かを訴えるような瞳で俺をじっと見つめている事があった。そのうえ、目があうと不自然に俺から目を逸らす。甲賀の話を聞いていなければ誤解してしまいそうだった。 俺の心に残酷なモノが芽生える。もし、俺が女達を北埜から引き剥がし、俺のものにしたらどうなるのだろう?それでもこんなに俺を慕うような熱い瞳で見つめる事ができるのだろうか? 甲賀が言ってるように、どんな男にもその気になる男なのかもしれない。そうだとしたら、別に俺だけにこんな目をしてみつめているわけではないのだ。 俺は女達をひとりひとり呼び出すとそれぞれに北埜の魅力について尋ねてみた。すぐに俺をみてその気になる女もいれば、北埜の可愛さについて熱く語る女もいた。俺がちょっと強く頼むとみんな快くグループを抜けてくれた。 残ったのは、最初から一番難関だと思っていた葉子だった。 |