You presume!  7/7

生意気なんだよ 

七夕番外



 暑い中黙々と子供会の流しそうめんの為のやぐらを組んでいる少年がいる。

 帽子を目深に被っているので注意してみなければそれが誰かは解らない。

 判ったとしても、それが宇井涼平だと誰も信じないに違いない。

 いったい誰がこの生意気そうな美貌の少年があの一匹狼で誰にも懐かなかった通称『ノン』の姿だなんて思うだろう。

 実際、つい最近まで彼がゲームセンタ−で遊びながら 誰彼構わず喧嘩を売っていた刃物のような少年だったなんて当時を知ってる者は目を疑うだろう。

 ここ数カ月でノンは確実に変わった。それは実は一番近くにいるはずの高村誠が本当は一番驚いていた。

 もともと口下手ではあるが、根は信じられないくらい素直な子だとは思っていたけれど、 ここまで態度だけは素直とは嬉しい誤算だった。

 頼んでもなかなか手伝ってくれる高校生は少ないのに、ノンは高村が何も言わなくても 何が必要なのか自分で判断してどんどん仕事をこなす。

 「ノン無理すんなよ」

 こんな炎天下で何時間も仕事をすれば倒れてしまう。

 「一度道場に戻って冷たいものでも飲まないか?」

 高村がノンの顔を覗き込むとノンは無言で高村の後をついて来た。

 実はあの後……高村が無理矢理に近い形でノンと身体を繋げてから、そんな雰囲気に何度かなって 3度ほどまた、身体を繋げてしまっていた。

 抱けば抱くほどノンの反応は良くなり高村はノンにのめり込みそうになる自分を必死に押さえていた。

 相手はまだ16才の子供だ。

 寂しいから高村に懐いているに過ぎない。

 抱き合っている時は言葉がいらないほど熱い時を過ごすのに、事が終わると二人は何かそこにいるのがいたたまれないように言葉も交わさずに互いに即行離れて帰ってゆく。

 ノンを抱く度に二人の会話は少なくなっていった。

 

 今でも噛み付くようなノンの過激さが高村の前だけでは無くなりまるで借りて来たネコのように大人しい。

 高村も他の少年達の前では余裕のある兄貴という素振りができるのに、ノンの前だけではどうしていいのか解らなくなってしまう。

 こんな居心地の悪い思いをするならば会わない方が互いに楽だと思うのだが、ノンは高村が何も頼まなくても 高村のバイトを助け、ぶっきらぼうながら子供達の面倒まで見てくれるので足蹴にするわけにもいかなかった。

 そして困った事に二人だけになってしまえばとたんに妖しげな空気が二人の間に流れ互いに 無言でいてもじっと見つめあい、気がつくと唇を合わせている。

 高村は迷っていた。ノンはこれを望んでいるのだろうか?自分に懐きたいが懐き方が解らずに 身体を繋げて距離を測っているのではないか?ノンにのめり込んでいるのは自分だけではないのか? そうだとしたら、ちゃんとノンと大人である自分が距離をとってやらなければいけないのだ。

 道場に入るなりそこにあった自販機からジュースを買って黙ってノンに手渡すとノンも無言でそれを受け取りじっと高村を見つめている。 高村はそれに気付かぬ振りをして声をかけた。

 「今夜の子供会の七夕まつりも手伝いに来てくれるか?」

 「いや、後片付けだけくる」

 「じゃあ今流しそうめんが上手くいくか味見しながら試すのだけ手伝ってくれないか」

 「ん……」

 そういいつつも、ノンはそこから動こうとしなかった。

 「どうした?」

 高村が振り返ったと同時にノンが不器用ながらも素早くその唇を押し当ててきた。

 高村はそのまま後頭部を掴むとノンのその柔らかな唇を貪っていく。

 充分にその弾力のある感覚を楽しんだ後、ノンの顔をそっと覗き込む。

 「ノン……無理するな……お前らしくないじゃないか」

 そう言った高村にノンは一言も発せずにそのまま走り去っていった。

 結局ノンは七夕祭りは勿論、流しそうめんも後片付けにも顔を出さなかった。

 あのままノンに触れていればまた今夜もノンを抱いてしまっただろう。

 でも、それは多分違うのだ。

 懐かない野良猫が自分にだけ懐くようになってしまった今、ノンらしくないノンを 一番扱いかねていたのは高村だった。

 抱くのは簡単だ。だけどその後に来るであろう様々な物事が、高村を臆病にさせていた。

 (生意気なんだよ2に続く予定)

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