エナメルインタビュー

Belne's Love extra
ENAMEL(絶版)付録テクスト
Belne Qpress interview より
全文掲載
お待ちかねのスターは、フォトセッションの時間ギリギリに長い体躯を少々屈めぎみにスタジオに入ってきた。ビニールレザーが、継ぎはぎされているマットな素材の大きなコートを着ている。オフステージではあまり口を開かないらしいという、ウワサどおりに単調で短いあいさつの後、彼はマネージメントに指示されるままP・Bとのフォトセッションに望んだ。どうやら、写真撮影は野性を消耗させるらしい。インタビューのために、別室にしつらえた大振りのソファに身を沈めると深い溜め息をついて、「撮影は苦手なんだ。」と言う。路上の花によって、ついにロックシーンの怪物と言われるようになった彼が、あの気違い沙汰の大ツァーの後1年あまりも姿をくらましていた理由から質問してみた。
(1987年5月グレゴリー・ビショップ Qプレス )
Belne in Qpress
Q:ロンドンにいない間はどこにいたんです?
B:どこかだ。あちこち。主に極東

Q:長期休暇ですよね。「路上の花」が貴方を消耗させたんですか?
B:ううん。ロンドンを離れたかっただけだ。

Q:路上の花ツァーという長い旅の終わりだったにも拘らず、ロンドンに帰還したくなかった理由は?
B:目的意識を喪失してしまうとこの街はかなりヘビィな街なんだよ。

Q:同感です。目的意識を失っていた?

B:俺は、人生の終わりの部分に路上の花に行き着いたと思っていた。
つまりあれがピークだと…。俺にはこれ以上のものはやって来ないと。

Q:若くして、しかもガードルードレアモンの影響下で起きたピークだった

B:それはあるね。

Q:でも音楽的にはほとんど影響を受けていない。彼のベイスはどうです

B:旨くないよ。だが衝撃的だ。気持ちが動く。それが大事なんだ。

Q:音楽的ルーツはやはり、リズムアンドブルース?

B:いや、クラシックと、70年代ブリットシーンだな。

Q:70年代ですか。
B:俺は16の時に家を出た。その時街中で鳴っていた音楽が今の俺を作って
る。街に影響を受けた当たり前のガキなんだよ。

Q:クラシックというのは?

B:ああ、古典音楽の専門学校に通ってたんだ。ピアノと声楽。ソルフェージュは卒業してたな。

Q:あなたの声を称してベルカントと呼ぶ人もいますね

B:ベルカントにしてはお恥ずかしいことだぜ。マイクなしでは、最前列の客にも、聞こえないんじゃな。

Q:ステージは大音量ですからね。

B:耳がイカレっちまうほどなんだ。

Q:今新しいアルバムに取りかかっているんでしょう?
B:うん。

Q:路上の花以降音楽的進展は?
B:音楽的進展。考えたこともないな。路上の花で俺は終わったと思っていたんだ。
(息をついて)何も終わっていない。俺の中に歌への衝動が残っている。
─ 彼はここで、長い間沈黙した。路上の花がもたらしたセンセーションが
彼自身にとっても脅威だった事を隠そうともしない。
彼が望んでいるのは、音楽的前進だけではないようだ。 ─

B:ふう。すまない、俺はちゃんと答えたんだっけ?

Q:ええ。ところで、1年のブランクの間にロンドンの主流は、
パンクからオルタナティブな方向へ、あるいはもっと政治的なメッセージ性を備えたラップ等
現代的なプロテストソングとも言うべき方向が出てきていますが…音楽的方向って考えたことあります?
B:ない。ぜんぜんないよ。 どうしてそんなに細かく分類するのかなぁ。
俺の頭じゃ付いて行けないね。パンクとオルタナティブの区別つかないもん。
ましてやどっちが新しい傾向かなんて考えたこともないね

Q:……あるまじき発言ですね。パンクとオルタナティブの区別がつかないって
Q誌に載せていいんですか?

B:俺がやってんのはもっとシンプルな「音」って作業なんだ
Gみたいにトレンドを知り尽くしていて、あえて迂回するなんて芸当、俺には全然ないんだよ。
その上、日常に根ざした怒りや反抗もないし。歴史的民族的背景もないんだ。
聴衆が、路上の花をすごく今日的にあるいはリアルに捉えてくれたのはGのアレンジの賜物だったと思うよ。

Q:なるほど
B:ああでも、ラスタな音にはひかれる今頃ワールドミュージックにはまっているのかも。
俺は時代錯誤な奴なんだよ、聴衆としては

Q:敢えて否定はしません。
B:ハハハ

Q:詩には文学的脈絡があり、60年代のシャンソンの詞のような
傾向があるとの評はどう受け止めています?

B:そんな評があったの?

Q:資料によれば、路上の花ツァー直後のメロディメイカー紙が、
ツァー全体の総括の中で詞を取り上げていてそういった評価が出てますね。

B:知らなかったな。うーんシャンソンはよく聴くんだ。
60年代か…もっとさかのぼるよ。プレベールの詞も好きだな。
歌い手なら、
レオ・フェレ、ピアフ、グレコ…ブレル… フランスの詩も好きだな。

Q:影響を受けた詩人とか…。
B:好きな詩人はマラルメ、シュペルビエル、ランボー、架空の詩人クロニアマンタル…。

Q:架空の詩人?
B:ああ、アポリネールの作中人物だ。

Q:それらはフランス人であるガードルードの影響?
B:いや、あまり関係ないな、Gに教わったのは、ファドだもん。

Q:ファドですか?
B:
※※アマリア・ロドリゲスとかね。それから、※※※ カンテフラメンコだ。
彼は結構エキゾチズムに傾倒しているね。
Q:そこからの音楽的あるいは詩的な影響は?
B:うーん解らないな。影響を受けるほど理解していないんじゃないかな。
註/※いずれも、伝説的シャンソン歌手60年代から活躍している.
※※ポルトガルの国民的歌手※※※フラメンコの特に歌を指す
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