第八章 知恵を極めし賢者

 ケンたちは転送の間を出たとたんに、獅子の顔をした人々,正確には顔が獅 子で首から下が人の姿をした人々に捕らわれ、牢屋へと入れられてしまった。そ して、尋問のため、ジョナルドが連れて行かれた。彼は進んで尋問に応じたので ある。
「何処から、来た?」
「目的はなんだ?」
「貴様の名は?」
 次々来る質問にジョナルドは落ち着いて話した。
「私の名はジョナルド。デウス様の命を受け、勇者の援護ではるばる来た。 君たちではだめだ。賢者殿と話したい。賢者殿はどこか?」
「勇者の護衛・・・・・・では、その証拠は?」
「そうだな・・・・・・その勇者、ケンが持っている秘宝かな」
「では、そいつを連れてこい」
「いや、その必要はない勇者一行を歓迎する準備をしたまえ」
 と、言う声がした。一人の獅子の少年だった。周りの獅子の民が頭を下げる 様子を見て、ジョナルドは彼が賢者の使者かなと、思った。
「さっき、デウス殿に確認をした。彼らは勇者一行に間違いなさそうだ」
 それを聞き、先ほどまで警戒していた獅子の民は態度を変え、その準備を始 めた。
 そして、ケンたちが来るのを待って、 少年は自己紹介した。
「ボクの名はガル。土の民の賢者ラオ様の使者を努めています」
 ジョナルドは、それを予想していたので驚かなかった。しかし、ケンたちは 少し、驚きを感じていた。今までの使者はほとんど、若かったが、ガルと言う少 年は若者と言うより幼い感じがしたからだ。
「怪しい者を調べる知恵ですよ」
 と、ガルはケンたちを捕らえた理由について説明した。
「知恵は大事です。そして、多くの知識を持つ者ほど僕らの中では偉くなり ます」
ガルは、平然とした顔で言った。ケンはそれを聞き,彼らはスフィンクスか なと思った.
「それで、ラオ様はどこにいらっしゃるのですか?」
 ユリシアが、ガルの目線を合わせ尋ねた。
「ラオ様は地下迷宮にいます。そこで、侵略者と戦っています」
 しかし、すでに日が傾いていた。そこで、考えたのが、今から行き、仕掛け るかどうかだった。とは言っても、ケンは雷の聖域での戦いで疲れていて、今、 戦える状態ではなかった。そこで、明日、一番で迷宮に行くことになった。

 翌日、ケンたちは迷宮の入り口へとやってきた。そこは、地上二階建てほど のピラミッドのような建物だった。ガルの話ではその地下は何層にもなる地下迷 宮が広がっている。その最下位に土の民の秘宝"知恵の水晶"が有るという。とにか くそこを目指すことにした。
 そして、迷宮に侵入したのは"ツリーマン"と言われる植物の魔物と、ガルは説 明した。例によって、土の民の力では対処できないらしい。しかし、ケンは、今 度は今までより楽かも知れないと思っていた。なぜなら、彼の持つ剣には炎の力 が有るからである。
 そうして、迷宮へと入った。
 地下への入り口は鍵で閉じられていた。しかたなく、鍵の捜索から開始した 。しかし、鍵はすぐに見つかった。二階にある部屋に有ったからである。しかし 、問題があった。ダークイーグルに跨るデーモン族の大軍が待ちかまえていたの である。
 一体の強さは大したこと無かった。しかし、その数が多すぎた。その数でケ ンたちは苦戦を強いられた。それでも、ケンはその頭を捜し出した。
「頭を倒せば、こいつらは撤退するよ」
 ケンは、頭に向かいながら叫んだ。
「なるほど、こちらが上とわかり士気も下がるな」と、ジョナルドが隣に来 る。
 さらに、ガルが並んだ。
「我が力よ、ここに集まりし者に英知の力を与えまえ」
 ガルの呪文でケンは力が沸いた気がした。そして、ジョナルドと連携して頭 を倒すことに成功したのである。 そして、ケンの予想通り、敵は撤退を始めた 。しかし、その時にはレナ、ユリシア、ジョナルドも集まり、逃げる敵を足止め した。さらにケンが、敵に対して、"クラッシュ・ボンバー"でトドメをさした。こ うして、敵をほぼ全滅させたのである。 そして、改めて地下へと急いだ。巨大 迷路となっている地下だが、ガルが案内をしてくれているので、迷わずに進めた 。ただ、ツリーマンは強敵だった。炎の力で攻撃すれば、水を使い防ぎ、雷の力 で攻撃しても、身体を張って耐えて見せるのでなかなか倒せなかった。
「我が敵に熱線を浴びせよ」
 今度は、レナが呪文を唱えた。効果は絶大だった。敵はどんどん倒れていっ た。
 こうして、ケンたちは苦戦しながらも最下位の部屋へと辿り着いたのである 。
 しかし、そこには巨大な植物が寄生していた。そして、触手を伸ばして襲っ てきた。
 ユリシアは慌てて防御魔法を唱えた。しかし、巨大植物は容赦のない攻撃を さらに仕掛けてきた。 今度は花粉をばらまいた。
「注意しろ、こいつはしびれ粉だ・・・・・・」
 と、ジョナルドは叫んだ。しかし、彼は花粉を吸いかけていて、動きが鈍く なっていた。
「ジョナルド!!」
 レナードが近づいた。しかし、彼は巨大植物がばらまいた別の花粉を吸い、 眠ってしまった。
「眠り粉か・・・・・・」
 と、ケンは言い、近づけなくなった。あまり近づくと粉を吸ってしまう可能 性があった。まだ、毒を食らう粉を出していない。それを吸えば危険になる可能 性があるからだ。
 そして、巨大植物はまた、別の粉をまいてきた。まさにそれは毒の粉だった 。
「注意して、猛毒よ」
 と、ユリシアが叫んだ。
「ええい、このおー」
 と、レナは必死で抵抗していた。
 しかし、ユリシアは最初の触手攻撃で気力を使い果たし、レナも体力的に抵 抗できなかった。
「レナさん、ユリシアさん!!」
 ケンは叫び、二人の方に近づいた。しかし、ガルによって止められた。
「ぼくは力で魔力を高めることはできます。しかし、それには、時間がかか ります」
 と、ガルは冷静な口調で言った。
「ケンさんは、それまでできるだけあれの攻撃を防いで下さい。空振るだけ で防御になるはずですから」
「わかりました」
 と、ケンは前に出て身構えた。そして、巨大植物の攻撃を剣を振り回し防い でいった。 うしろでは、ガルの呪文を発する声が聞こえてきた。
「われ、ここに大地の英知を願う。かの者の魔力を上げる力となれ」
 ケンはその効果が現れたのを直に感じた。そして、炎の攻撃をしようと叫ん だ。
「・・・・・・クラッシュボンバー!!」
 効果はあった。巨大植物は爆音と供に枯れていった。その音でレナードは目 を覚ました。しかし、ジョナルドのしびれはまだ取れず、レナとユリシアも倒れ たままだった。
 ケンは、しばらくどうすればいいか迷った。しかし、一つ思い出した。水の 民の賢者レイナスは毒を浄化する能力を持っていることをである。もしかしたら 、盾にはその力があるのかもしれない。レナとユリシアに盾を向け、
「水の賢者よ、ここにいる者の毒を解除せよ」
 と、言ってみた。
 その効果はあった。程なく、盾が光り、二人の意識を回復させた。
「どうやら、ケン君に助けられたようね」
 と、レナは立ち上がりながら言った。
「ありがとう、ケン君」
 ユリシアは、笑顔を浮かべて言った。そして、ジョナルドに寄った。
「この者の麻痺を回復せよ」
 そして、ようやく、ジョナルドは身体のしびれから解放された。
 しかし、戦いが終わったわけではなかった。奥の部屋に行くと、牛が進化し たような生き物が待っていた。
「あれは・・・・・・ミノタウロス」
 ガルは、持っていた巨大なハンマーを構えながら言った。
 ミノタウロスの大軍が押し寄せてきた。ケン、ジョナルド、レナード、ガル の四人が牛の魔物に飛びかかった。レナとユリシアは援護に回った。まだ、疲れ が残っているらしく、レナの声には、迫力がなかった。ユリシアはほとんど、回 復しているらしく、いつもの声が聞こえて来た。
「・・・・・・我が敵を熱せよ」
「・・・・・・我の仲間を守る結界となれ」
 その力に助けられ、ケンたちはミノタウロスの軍勢を圧倒した。
 その時、次なる敵が現れた。ツリーマンだった。迷宮で戦った連中より大き く強そうな感じがした。
「我が、充実なる部下であるダークフラワーを倒した者どもだな」
 と、ツリーマンは言った。
「だが、我キング・ツリーマンにはかなわんぞ」
 そして、キング・ツリーマンは攻撃を仕掛けてきた。
 ケンはだいぶ疲れていた。何しろ迷宮に入ってからずっと、連戦が続いてい たから体力の限界に達しようとしていた。 だから,盾の回復の力を使うことに した。
「水の賢者よ、我らを癒せ」
 しかし、効果を発揮する前に敵が攻撃を仕掛けてきた。
「危ない・・・・・・ケン、よけろ」
 ジョナルドが叫んだ。 結局、盾の力は発動しなかった。しかし,なぜか剣 の方が光った。そして,ケンの耳に聞き慣れた声がささやいた。
「炎よ、その力を持って我らを覆う衣となれ」
 ケンは、聞こえたとおりに叫んだ。すると、ケンを中心に巨大な翼が現れ, キング・ツリーマンの攻撃からケン達を守った。
「これは,フェニックスの力・・・・・・?」
 レナは、驚きの声を挙げた。その声には元気が感じられた。レナの体力は元 に戻ったことは間違いないようだった。
「さてと、反撃開始よ」
 その声には、威勢があった。
 体力が回復したのはレナだけではなかった。ユリシアもジョナルドもレナー ドもガルも体力を回復したらしく、敵に向かった殺到した。
 もちろん、ケン自身も体力を回復させていた。仲間に遅れないように敵に向 かい走った。  「ふん、体力回復したところで我を倒せるはずがない」
 キング・ツリーマンは言い、触手による攻撃を仕掛けてきた。
「攻撃を返す力よ」
 ガルが叫び、持っていたハンマーを振るった。すると、触手は跳ね返りキン グ・ツリーマンを攻撃した。
「これが、ぼくたちのちからの一つ"マジックカウンター"だよ」
 ガルが、得意そうに言った。そして、その攻撃には確かな打撃を与えたよう だった。 「さあ、今です」
 ガルのその声に合わせるようにレナが攻撃魔法を唱えた。その援護を受けな がら、ジョナルドとレナードが攻撃を加えた。
「わたしの魔法も跳ね返したらいいんだけど」
 と、ユリシアは残念そうに言い、防御魔法を唱えた。
 そして、最終的にケンがトドメを指した。
 キング・ツリーマンはこの攻撃に対抗出来ずに、炎に包まれ倒れた。
 そして、やっとラオに会えたのである。しかし、ラオは大変弱っていた。も はや、ユリシアの回復魔法も効果のないぐらいだった。
 その時、土色の竜が現れた。
「汝の戦いは見せてもらった。汝は我が秘宝を使うのにふさわしい」
 龍のそばにめがねが現れた。
「それは"知恵の眼鏡"です。では、ケンさん盾を差し出して下さい。土の民の 力を与えましょう」
 ケンはうなずいて、"知恵の眼鏡" を受け取り,ガルに盾を差し出した。
「土の力を与えよ・・・・・・」
 そして、ケン達はつぎの聖地へ行く準備を始めた。まず、集落に戻り十分休 んだのである。 翌日、ガルの呪文で次の聖地に向かった。
 残る聖地は二つ。しかし、残りの聖地での戦いで、戦いが終わるわけではな いことをケンはまだ知らなかった。