第六章 自信に満ちた賢者
転送は成功した。しかし、前の二人のように賢者も使いの者も待っていなか
った。
「聞いた話では、雷の守護者の民はオレたちを警戒しているってことだ」
ジョナルドが、誰もいない魔法陣の部屋を見渡しながら言った。
「詳しいわね、さすらいの剣豪さん?」
と、レナが兄妹とは思えない言い方をした。
「ふもとの村に行ったとき聞いたんだ。ただ、彼らは、翼を持った人と、村
長が教えてくれたよ」
「翼を持った人・・・・・・鳥人ってことかな」
「そのとおりだ」
ケンの言葉に応えたのはジョナルドではなかった。その声は天井から聞こえ
た。
そして、天井から翼を持つ人が二人、優雅に現れた。
「失礼したな私は空の賢者バドリアス。こちらは、私の使者をしているライ
ジルだ」
バドリアスは、自信に満ちた声で言った。
しかし、ライジルは警戒の目でケンたちを見ていた。
「賢者様、この方々を信じていいのですか?」
「少なくともデーモン族の門下ではない。そして、その少年がもつ剣と盾、
そして、その腕輪と杯は、勇者しか手にすることができない秘宝。信じるに値す
る少年だ。そして、太陽の聖女と月の巫女も信じても問題はない。後の二人は気
になるが、デウス殿が選んだ人材。何かあると言うことだろう」
「わかりました。彼らを信じます」
今度は自信に満ちた声でライジルは答え、ケンと握手をして、互いに名乗り
合い、協力を約束した。
そして、まず、敵の特徴を聞くことにした。
「アース族。別名でジャイアントと言われる種族です。雷の攻撃に耐久でき
る体質を持っています。しかし、水の攻撃に弱いこともわかっています。そして
、ぼくたちは奴らに対抗する手段を考えていました。ですが・・・・・・」
良い方法が見つからないと、ライジルは悔しそうに言った。
「水に弱い巨人か」
と、ケンは考えた。そして、
「近くに水飲み場はないのかい?」
と、聞いてみた。
「はい、一応、泉がありますが、奴らには浅すぎて、何の効果もありません
」
「集落に武器になりそうなモノは?」
「さあ、わかりませんねでは、集落に行きますか?」
「ぜひ、お願いします」
「しかし、期待しないで下さい。みんな、人を警戒してますから」
ライジルの言ったとおり、空の民鳥人は、ケンたちを歓迎しているわけでは
なかった。ケンは不思議に思って、ワケを聞いてみた。
「昔、ぼくたちの集落に夜盗の集団が攻めてきたのです。理由は集落から発
掘できる金でした。しかし、我らの守護神"サンダードラゴン"様の力で追い払いま
した。その後、当時のエレメリアの神殿主様がお詫びし、事件は決着がつきまし
たが、我々の人に対する不安は消えませんでした」
「その話は、聞いたことがあります。わたしたちは本来、協力し合って、生
きるべきなのに残念です」 ユリシアが祈る様に言った。
そして、ライジルは役に立つかわからないけどと、自分の家の倉庫から様々
のモノを持ってきた。
「どう、ケンくん?何か見つかった?」
と、レナが興味しんしんの顔で言った。
ケンは、いろいろ観察したが、あまり良いモノは見つからなかった。それで
も、竹の残がいで鉄砲を作ることができた。
「まず、ここに水をためてこうやると水が出るってわけさ」
と、ケンは即席の水鉄砲を使って見せた。
「頭にでも当たれば、効くと思うけど」
と、自信ありげに言った。
「そうですね。では大量に作りましょう」
ライジルが言い、その準備に取りかかった。
その間に、ケンたちは敵が身を隠す天空の館の進入作戦を立てる事にした。
それは、鳥人の勇士が大軍で敵を誘導し、その間にケンたちが館の中へ進入
するというものだった。うまくいく保証は無かったが、鳥人たちは皆、自信に満
ちていたので、ケンたちは作戦を実行に移すことにした。
翌日、鳥人の勇士隊が敵に対して戦いを挑んだ。そのすきに、ケンたちは、
ライジルと天空の館へと向かった。彼らが使ったルートは本来、館からの脱出口
だった。そこは、館の地下室だった。 進入には成功したが、廊下に出たら、小
型の巨人が陣取っていた。避けられず、ケンたちは戦いを挑んだ。
小型の巨人とはいえ、ケンの二倍はある大男だから、倒すのは容易なことで
はなかった。それでも、即席の武器のおかげで苦戦することなく倒すことができ
た。さらに、レナの攻撃魔法、ユリシアの援護魔法が手伝って、突破に成功した
。
「ここは、もう敵はいないな」
レナードが慎重に周りを観ながら言った。
「そのようですね」
と、ライジルが相づちを打った。彼は、すでにレナードが盗賊だったことを
知っている。本当なら、再び警戒するのだが、デウスの指名した者であることと
、状況的に協力することにしたのだ。 一階に上がると、歓声が響いていた。
「どうやら、うまくいったようね」
その声を聞き、レナが言った。
「うん、賢者様も戦っているんだ」
ライジルは相変わらず、自信に満ちた声で言った。
しかし、ケンたちに歓声を喜ぶ余裕はなかった。なぜなら、次から次へと敵
が現れたのだ。 「さっきの奴らより強いな」 ジョナルドは戦いながら、そうつ
ぶやいた。しかし、ケンにはそんな余裕はない。必死で交戦していた。
そして、戦いが終わる頃、鳥人たちの士気が下がっていることに気が付いた
。
「何が起こったのかな?」
ケンは、二階への階段を上りながら叫んだ。すぐにわかった。しかし、それ
は、状況が悪くなったことを教えてくれた。
「見ろ、あれは、ダークイーグルじゃないか」
二階の窓から、レナードが叫んだ。
レナードの言ったとおり、巨人たちを援護して、エレメリアで戦ったダーク
イーグルとそれに跨るデーモン族が戦っていた。
「先頭の奴は、前にもリーダーをしていた奴だ」
レナードが叫ぶ。
「間違いないの?」
ユリシアが尋ねた。
「ああ、一度顔を見たら、忘れることはない」
レナードが、自信満々の顔で言った。
「なら、間違いないか」
ライジルは、それを聞き、満足そうに言った。
「それで、どうするの?ここから、援護する?」
レナが、呪文を唱える体制をしながら、聞いた。
「いや、誘導と気か付いて戻ってきたら、やっかいだよ。それより、ここの
敵のボスを倒した方がいいと思う。そうしたら、こっちの士気が再び上がるから
ね」
ケンが、即座に言った。 皆が、頷きそのまま先を急いだ。 そして、最後の
部屋に辿り着いた。
「待っていたぞ。侵入者ども」
部屋に入ったとたんに一人の巨人が声をかけてきた。
あいつが、ボスかと、ケンが思ったとき、
「誘導とは、なかなか面白いことをしてくれる。そして、面白い武器を使っ
てくれるな。しかし、お前らの負けだ。なぜなら、先ほど、賢者を倒したと報告
が有ったからな。長のいない軍隊ほどもろいものはない。もはや、状況は決まっ
たのだ。我々の勝利だ」
と、近くで待機していた巨人が言った。その声には自信が感じられ、ライジ
ルは珍しく、肩を落としていた。
「じゃあ、お前たちを残らず、倒してそっちの士気を最低にしてやる」 と、
ケンは叫び、ジョナルドと頷き合い、敵に向かって突進していった。 レナとユ
リシアも頷き合い、援護魔法の呪文を唱えはじめた。
「栄光なる太陽の光よ。我らに力を与えよ」
「月の光よ。我の仲間に絶対の壁を築け」 レナが唱えたのは、味方の士気を
上げる魔法で、ユリシアが唱えたのは、魔法壁を造る魔法だった。 レナードは
、後から走り、敵の急所に短剣を当てようとした。それをライジルが援護した。
「みんなの、自信を感じました。ぼくも全力で戦います」
「それでこそ、男ってもんさ」
ジョナルドが、そう言って励ました。その言葉にライジルはさらに自信を取
り戻し、敵を攻撃し出した。 それで、戦況は大きく変わった。ボスは一人だけ
になると、逃げ出したのだ。いや、外に出て元の大きさに戻ったと言うべきだっ
た。
「ハハハハ、これが、わたしの本当の姿だ」 と、ボスが叫んだ。
「我が、ジャイアントキングに楯突こうとは愚か者だ」 しかし、外の出たこ
とはケンにとっても都合がいいことだった。
「炎の賢者よ、我に力を"ファイヤーボール"」
と、叫び大きく、剣を振った。とたんに、力は解放し、火の玉が発動し、攻
撃した。
しかし、大した効果は無かった。そして、ジャイアントキングは岩の塊を召
還し、攻撃を仕掛けてきた。
「我が身を守りし、水の壁、現れよ"ウォータードーム"]
と、ケンは慌てて、叫び、盾を前に出した。
すると、ケンを中心に水のドームが発生し、その攻撃を防いだ。
「防ぐばかりでは何にもならないぞ」
水の守りを受けながら、ジョナルドが言った。しかし、彼の武器では急所を
当てることができずにいるのだ。ケンの守りを受けるしかなかった。 その時、
ケンは不思議な声を聞いた 「炎の新たな力を」
と、聞こえた。そして、発動の方法が聞こえてきた。
「炎よ、炸裂せよ。"クラッシュ・ボンバー"」
ケンは聞こえた通り、言い、振ってみた。
すると、火の塊がジャイアントキングに飛び、その周りに爆発した。
効果があるようで、キングは巨大な騒音とともに倒れた。そこへレナードが
飛び出し、急所へ短剣を突き出した。
それで、戦いは終わった。ジャイアントキングが倒れるのを見たデーモン族
は撤退を始めたのである。残った巨人たちには士気が無くあっさり、鳥人の勇士
たちに全滅させられた。 「それにしても、すごいな。どうやって知ったんだ?
」
集落に戻る途中、ジョナルドがそう聞いてきた。
「聞こえたんだ。不思議な声があの時と同じ声がね」
そう、あの声はユウコがさらわれたときに聞こえた声と同じだった。しかし
、ジョナルドは首を傾げた。
「そんな声、聞こえていないぞ」
と、ジョナルドは言い、レナたちに聞こえたかと聞いてきた。
全員が聞こえなかったと答えた。
「いったい、どういうことだ?」
「その答えは今、知る必要はない」
ケンの言葉に応えたのはレナたちでは無かった。黄色の龍が言ったのだ。
「守護神様」 ライジルがひざまついた。
「勇者よ。今はその時ではない。今は我らの秘宝を託すときだ受け取れ"自信
の筆"を」 ケンは、突然のことに驚きながら、重大なことを思いだした。
「そうだ。たしかバドリアス様が倒れたと奴らが言っていたんだ」
他の仲間もその言葉で思いだし、走り出した。
しかし、彼らはその様子をガースが見ていたことに気か付かなかったのだ。