第五章 水の愛を極めた者
転送された先には、誰かが立っていた。それはカッパのようだった。
「お待ちしておりました。勇者御一行様。水の賢者レイナス様が待っておりま
す」
と、カッパは言い、
「ああ、申し遅れました。ぼくは賢者様の使者を努めておりますウェールと言
います」
「そうですかぼくは、ケンといいます」
ケンは、そう言い、仲間を順に紹介した。
そして、歩いている内に、泉に出た。すると、ウェールは、口笛を吹いた。そ
の音色は新鮮でクジラやイルカの鳴き声に似ていた。その証なのか、出てきたの
は沢山のイルカたちだった。 その先頭にはクジラの姿も見られた。
「賢者様は今、あの小島にある宮殿にこもって侵略者から秘宝を守っている。
どうか、助けて下さい。ぼくもできるかぎりお供をし、戦います。すでに知って
いるかもしれませんが、賢者の使者を努める者は特殊な力を使えますから、足手
まといにはならないと思います」
そして、ウェールはイルカにまたがり、ケンたちにも乗るように言った。
「まずは、小島の近くにあるぼくの家のある集落へ行きましょう。その格好で
は不利ですから」
そして、ウェールの合図に共にイルカたちは一斉にすすんだ。
しかし、簡単にはつけなかった。水の聖地の侵略者が襲ってきたからである。
「ライジングフィッシュ!!・・・・やつらはボルト族の下部でもある生き物
です。普通の武器では倒れません」
「おい、それって・・・・」
と、ジョナルドが言い、大剣を振るった。そして、敵に当たった。すると、閃
光が刃先に走った。
「ちっ・・・・これじゃあ、つかえないぞ」
「この剣は、たしか・・・・」
デウスから授かったこの剣は魔法の剣のはずこれなら、使える。とケンは考
え試してみた。予感は的中し、敵を倒すことができた。
レナとユリシアは問題なかった。二人の武器は魔法の力が掛かっていたし、二
人とも武器はあまり使わないからである。
レナードも苦戦していたが、素早い動きで補っていた。
そして、ようやく集落に到着した。
そこで、ケンたちは敵の攻撃に備えた武器と防具を身につけた。ケンは感電し
ない服を着込み、ジョナルドは大剣にゴムをコーティングし、レナとユリシアは
ゴム製の鎧に着替え、レナードは陶器製の短剣に変えた。そして、全員がゴム製
の靴に履き替えた。 そして、昼食をごちそうすると言うウェールに案内され、
彼の家に行った。
「奴らの正体はボルト族。虎が進化した邪悪な雷の使い手。僕らには防ぐこと
ができても、攻めることはできないんだ」
その話には納得が言った。水は電気をよく通すからなと思いながら、山の部族
とやり方が同じだなと考えていた。部族の弱点を狙って侵略するという手段・・
・・許せるわけなかった。 「どういう相手なのですか?」
ユリシアが怒りを抑えた声で言った。
「別名ライジングタイガーとも言われています。そして、僕たちの種族の秘宝"
愛の聖杯"を奪おうとしています」
「とにかく、そいつらを倒せばいいんだな」
「そうです。食事が終わったら早速行きましょう」
食事は簡単な海鮮料理のようなものだった。そして、彼らは食後、小島へ向か
って出発した。 そして、行くとき、水玉の付いたペンダントをくれた。
「それを持っていれば、水の中でも息ができますよ。小島は洞窟の入り口があ
るだけですから。賢者様がいるのは海の塔と言って、半分以上水に浸かっている
のです」
と、ウェールは言った。
そして、イルカに乗って小島へと渡った。
その途中、また、ライジングフィッシュが襲ってきたが、すでに敵ではなかっ
た。感電もなくあっさりと倒していった。
そして、上陸して、一行は小島の中にある洞窟へと入っていった。
洞窟に入ると、すぐ戦いが始まった。名前から想像していた虎型の人のような
生き物が襲ってきたのだ。
「ケン、君の剣の力を使え」
戦いながら、ジョナルドが叫んだ。
「わかった」と、ケンは短く答え、「炎の賢者よ、我に力を"ファイヤーボール"
」
と、教わった通り、剣を振るってみた。
すると、赤い閃光が発し、赤い玉が出て、敵を攻撃した。威力はさほどなかっ
た気もするが、それでも、敵の勢いは衰えた。
「山の賢者の力ですかさすがですね」
ウェールは感心した顔で言った。
「しかし、僕たちの長の力だって負けませんよ」
そして、彼は、魔法の呪文を唱えた。
「水の分身よ。我の身代わりになれ」
すると、水が発し、敵の攻撃を防いだ。
「すごいわね」 レナが感心して言った。
そして、自分も魔法攻撃を行う。
「太陽の力よ、我が敵を熱せよ」
今回、ユリシアも珍しく攻撃魔法を唱えた。
「月の力よ、我が敵に神の鉄槌を与えよ」
レナのフラッシュ攻撃で敵の何体かは目を覆い、また、ユリシアの刃の攻撃で
ことごとく切り裂かれた。
そして、そのうち、大きな扉の前へとやってきた。
「水の神よ、扉を開け。我は賢者の使い。我といるのは勇者なり」
と、ウェールは扉の前で叫んだ。 すると、扉が開き、中には敵が待っていた
。
「来たか・・・・シャークマンを倒した者どもよ。だが、私たちはあの下級ど
もとは違う。貴様らは私らに倒されるからだ」
「その通り、我らは彼らと違う。協力戦で行くのだから」
「勝手にしなさい。どうせ、同じ目に合うのだから」
と、レナが前に出た。
そして、戦いが始まった。魔法を使うライジングタイガーの援護を受け、武装
したライジングタイガーが、突進してきた。
ケンたちもレナとユリシアの援護を受けて、攻撃した。
敵の戦士は桁外れの強さを持っていた。ケンとジョナルドは動きを見切られ苦
戦を余儀なくされた。ただ、レナードとウェールは好戦していた。相手の動きを
素早くかわし、急所を狙おうと攻めていった。
そして、まず魔法を使うライジングタイガーを倒した。
そこからは、ケンたちの活躍だった。何しろ水柱で守られ、思うように戦えな
かった。しかし、今、その守りがない。絶好のチャンスだった。そして、そのこ
とに油断していたのか、戦士はあっさり倒れた。
そして、次の扉を開けた。
「ふん、役にたたない部下だな」
と、入って来たケンたちを見たそれは言った。
「貴様が、ライジングタイガーの頭か?」
間合いを入れ、ケンが訪ねた。剣を構えいつでも交戦できる状態にする。
「その通り。私はライジングタイガーロード。貴様らに倒されるような者では
ない」
戦いは今まで以上の苦戦を強いられた。魔法と剣による攻撃を同時にしてきた
からだ。
それでも、最後のケンの持つ魔法の剣の攻撃でロードは倒れた。
「ぐはー・・・・おのれ、私はやられないぞ。そのぐらいなら・・・・」
と、言いロードは何かを言った。
「大変だ・・・・水に毒素を・・・・早く取り除かないと僕らは全滅する」
ウェールは絶叫していた。
「そんな・・・・なんで・・・・」
ケンも膝を落として悔しがる。
「我に任せよ」
と、言う声が聞こえた。見るとそこにレイナスが立っていた。
「我が命を掛けて、解毒をする。ウェールよ後を任せるぞ。そして、勇者よ、
汝にある愛の力徳と見たぞ・・・・」
そして、青いドラゴンが現れた。
「受け取れ、我が水の民の秘宝"愛の聖杯"を」
そして、レイナスも歩み寄り、
「その盾に我が力を託そう」
そして、ケンが、盾を差し出すとレイナスは水の力を与えた。
ケンは杯をつかみ、仲間と洞窟を出た。
しかし、そこで見た光景は悲劇だった。美しかった海が黒くなっていたからで
ある。
「毒のせいか・・・・」
ケンはそっとつぶやいた。
「イルカたちも毒に侵され、死にかけている」
イルカの様子を見たウェールが震える手で言った。
「わたしの力も役に立たないでしょうね」
ユリシアが残念そうに言った。
「はい、この毒は特殊ですから、月の巫女様の力を持ってしてもおそらくは・
・・・」
ウェールは肩を落として言った。
「だれか、いるぞ」
と、突然レナードが言った。
「何だって?」
ケンとジョナルドが同時に叫んだ。
「よく気づいたな。誉めてやろう」
そう言って現れたのはこの間の暗殺者だった。確か、ガースと名乗ったはず
だ。
「ふふ、ライジングロードもあっぱれなことをする。我が一族の毒魔法の壺を
死に際に使うなど。おそらく、満足しているだろう」
「貴様・・・・この毒を解消しろ」
ウェールが怒りを込めて叫んだ。
「ふん、そんなこと・・・・賢者が命と引き替えに解消するさ・・・・」
と、ガースはあざ笑う。
「あんたねぇ、絶対にゆるさないわよ」
と、珍しくユリシアが怒りの声を上げた。 そして、魔法の呪文を唱えた。
「月よ、我が敵に鉄槌を与えよ"ムーンクラッシュボンバー"」
と、叫んだ。
「あれって、月の魔法では最高位に当たる攻撃魔法よ。ユリシアが使うのをた
めらった力」 レナが叫んだ。
「彼女は怒ると恐いんだが・・・・今、その頂点だぞ」
ジョナルドはガースの攻撃に備える体制をとりながら言った。
「よし、いくぞ・・・・ファイヤーボール」
ケンは大きく剣を振りながら叫んだ。
「オレがこれしきで、退散すると思うのか・・・・・・・・ブラックボール・
・・・」
と、ガースは叫び黒い玉を放った。
「ケン、盾の力を・・・・我が身を守りし、水の壁よ現れせ"ウォータードーム"
と叫ぶんだ」
ウェールが叫んだ。
「わかった」
と、ケンは叫び、言われた通りに言った。
すると、水のドームが発生し、黒き玉を跳ね返した。
「これは・・・・今日はいったん引こう。しかし、賢者の命が解消の方法。そ
して、魔王様が復活すれば泡となる。さらばだ・・・・」
そして、ガースは消えた。
しばらくして、ユリシアは正気になった。ジョナルドの話では、彼女は普段も
の静かだが、怒るととても恐いらしい。そして、常に冷静で穏やかな性格をして
いる彼女の唯一の欠点だとジョナルドは言った。
その後、水の聖地の開放によって次の聖地に行けることがわかった。目的の地
は雷の聖域とのことだった。未だ、解毒できない水の聖域を後にする不安はあっ
たが、ケンたちはあえて、旅立つことにした。
転送はウェールがしてくれた。そして、次の聖地への呪文がケンたちを雷の聖
地へと飛ばした。
そして、ガースは隠れ家に現れた。
「ライジングロードは毒で水の聖域を侵したらしいな」
「ああ、"悪魔の毒坪"を使ってな・・・・」
「そうかでは、質問だ。なぜ、戻ってきた。貴様の使命は勇者の始末だ」
「はは、始末とは手段を選ぶ必要がないことだ。しばらく泳がせようと思う。
彼も本当は元の世界に戻りたいと思っているだろう」
「なるほど・・・・」
二体のデーモンは不気味に笑い声をあげた。