第四章 炎の意志を持つ賢者

気がついたとき、ケンは全く別の部屋にいた。
「ここは?」
「ようこそ、炎の民の聖地へ」
 と、言う声がした。見ると壮年を思わすドワーフが立っていた。
「ただいま帰りました、アッカル様」
 と、レッカーが頭を下げる。ケンたちもそれに習い頭を下げた。
「わしは、アッカルだ。炎の民の長を努めておる。ゆえに、わしは山の賢者と も言われておる」
そして、ついて来るように言った。 そこは、山の地形を利用した集落だった 。ケンたちはまず、レッカーの家に行き、敵の特徴などを聞き込むことにした。
「我らの聖域に建つ建物が奴らに占領されておる。炎の塔といってな、秘宝を 守るために建てられた大切な塔なのだ。そして、占領した連中はどうやら、デー モンではないらしい。奴らに従うシャークマンだ」
「シャークマン?」
 ケンが疑問を口にした。
「波の支配者"ウェーブ族"の別名で鮫が進化した者どもだ。わしらの力が全く通 じん連中だ」
「それで、デウス様に相談を?」
 ユリシアが聞いた。
「そうじゃ、よろしくたのむ」
 レッカーが言った。
そして、敵の攻撃に備えた防具を揃える事にした。強力な水の攻撃に備えた鎧 を全員が着込み、武器もジョナルドとレナードは戦いやすい武器に買い換えた。 そして、山の塔へと向かった。 そこは、五重塔を思わせる建物だった。

一階では早速、シャーク族の戦士達が襲ってきた。情報どおり、丈夫な皮膚を していてなかなか倒せなかった。それどころかその体重でケンはつぶされかけた 。しかし、レナの強力な魔法で何とか切り抜けた。
「確かに、炎の魔法では処置できないでしょうね。きっと、デーモン族もそこ を狙って、シャークマンを寄越したのでしょうが」
戦いが、一通り終わってユリシアがそっとつぶやいた。
「なるほどね・・・・さあ、次へ行きましょう」
レナが言い、一行は階段を上り始めた。 二階では、さらに強いシャークマン の兵士が襲ってきた。鎧と剣で武装しており、一流の使い手ばかりだった。ケン は苦戦をしたが、ジョナルドがその腕を振るった。
「ふん、力任せに振って鎧を着るのは生意気な連中だな」
 そして、次々に敵を倒していく。ジョナルドの活躍で騎士達を一掃できたの である。
そして、三階ではさらに強い騎士が待っていた。彼らは鎧を着て剣を持つほか 、盾を装備し大型のワニにまたがっていた。
「人間の風情でここまでくるとはな」
 一番大きなワニに跨る騎士が言った。
「しゃべれるのか・・・・」
 ケンが身を起こして言った。
「ふん、当然だ。シャークマン騎士級族は人の言葉ぐらいはなせて当然だ。今 までのただ戦うしか能のない奴らとはそこが違う」
 そして、騎士達は突進を始めた。
「あれじゃあ、知能があるのは言えないわね。わたしたちの言葉を理解ししゃ べれるだけじゃない」 と、レナが言い、攻撃魔法の呪文を唱え始めた。
「全くです。こちらが知能が高いことを教えるしか無いようですね」
と、ユリシアは防御魔法の呪文を唱えた。
「太陽よ、我が敵に光の玉を放せ」
「月よ、我らを守る壁を築け」
二人の魔法は完成し、その効果を発した。光の魔法で騎士達は目を隠し、獣か ら落ちてしまう。そして、ワニ達は壁にぶつかり跳ね返された。そこをケン、ジ ョナルド、レナードに三人が一気に攻撃した。
そして、敵は先ほど会話をした騎士だけになった。しかし、ケンら三人は魔法 の援護を任せ、レッカーと共にそのまま殺到した。そして、見事倒すことに成功 したのだ。
「ケン、だいぶ腕があがったな」
四階に続く階段を上りながら、ジョナルドがそんなことを言った。
「そうですか・・・・どうも、実感がわかないけど・・・・」
と、ケンが自信なさそうに答えた。
「だが、確実に腕が上がっている。もっと自信をもちな」
と、ジョナルドが言い、片目をつぶって見せた。
そして、四階に着いた。しかし、誰もいなかった。
「誰かがいる姿を消しているのか」
レナードが言い、短剣を逆手に慎重に進んだ。そして、突然、短剣を投げた。 短剣は、まっすぐすすみ、突然落ちた。何かに当たったようだった。
「そこね」と、レナは呪文を唱えた。
「影に入りしもの、その姿を現せ!!」
 そして、その実体が現れた。
「おやあ、我の魔法を破るとは」
 現れたシャークマンは不気味に笑いながら言った。
「我が魔法を破るとは・・・・まあ、いい。お前らは私に倒されるのだから」
 と、シャークマンは呪文を唱えた。
「私の毒魔法を味わえ・・・・」
ケンは、とっさに持っていた盾で防いだ。そして、毒は効果を無くしてしまっ た。
「バカな・・・・シャークマン水術師の使い手の私が・・・・負けるはずない 」
 と、強力な魔法攻撃を仕掛けてきた。今度はユリシアも守備魔法を唱え、対 抗した。そして、ジョナルドが相手にトドメをさした。
 「こいつはシャークマンの魔法使いだ。そして、その頭だ」
と、レッカーは落ち着いて言った。
「そして、この上にはシャークマンの王か将軍がいるはず」
「その通りだ」
レッカーの言葉に応えたのはケンたちではなかった。見るとマントと兜をした シャークマンが上の階から下りてきた。
「おれは魔法使いとは違って強いぞ」
そして、さらなる戦いが始まった。レナとユリシアは援護魔法を唱え、レナー ドは後ろへと回った。正面からケンとジョナルドが攻めていった。かなり長く、 戦ったが、ケンたちは勝利を収めた。トドメを刺したのはケンだった。そして、 ケンはこのとき始めて自分に自信を持てた。しかし、疲れ果てていたのも事実だ った。しかし、それは、すぐにユリシアが癒しの呪文を唱えてくれたので解消で きた。 そして、ケンたちは最上階へと急いだ。 もちろん、最上階で待っていた のは、シャークマンの王シャークマンロードだった。
「わが、軍政ををうち破るとは・・・・貴様らなかなかやるな。しかし、ここ までだ。なぜなら、私に殺されるからだ」
と、シャークマンロードは強力な魔法を唱えた。水圧を利用した魔法だった。 「さすがに、すきがないな」
と、ジョナルドは大剣を手に身構える。
「わしもいよいよ本気を出そう」
レッカーは装備していた斧を手に身構えた。
「このファイア・アックスの力を思い知れ」
 と、レッカーは斧を振るった。
「何をするかと思えば・・・・」
と、シャークマンロードは不気味に笑う。
「水に対して、炎で対抗しようとは・・・・」
そして、さらなる魔法攻撃を放った。 しかし、ケンたちは不思議な炎で守ら れ何ともなかった。
「これこそ、聖なる炎。我らの守護神"ファイドラゴン"様の力だ」
ケンは、その力に守られるまま敵を攻撃した。ジョナルドとレナードは援護攻 撃をした。そして、レナは攻撃力を高める魔法を唱えた。ユリシアは攻撃魔法を 唱えた。 そして、シャークマンロードは倒れた。
「水の支配者が人間などに・・・・」
瀕死の傷を被っているはずなのに、シャークマンロードは動いていた。しかし 、それにトドメを刺したのはケンたちではなかった。
「ふん、人間などに負ける部族を助ける必要はない。死んでもらおう」
 そして、ロードを殺した者が姿を現した。
「何者だ!?」
 ケンが叫んだ。味方を殺すなど許せることではない。
「私はデーモン族の暗殺者"ダークハンター"のガースだ。今この場で貴様らを倒 してもいいんだが、私の敵ではない。私は弱い者を殺すことなど趣味ではないの だ。せいぜい、次に会うまでに強くなることだ」
と、言い暗殺者は消えた。
後に残ったのはケンたちだけになった。

しばらくして、部屋の中心が光り出した。
「ファイドラゴン様」
 と、レッカーがひざまついた。
「汝らの戦い見せてもらった。強き意志を感じた。よって、勇者に我が力を込 めた秘宝を授ける。受け取れ"意志の腕輪"を・・・・」
と、赤く光る腕輪が現れた。
「我の力解放したゆえに、水の聖地への転送ができる。勇者とその仲間よ、魔 法陣へ急ぎなさい」
ケンは、それを聞き、息を一回だけ飲み込み腕輪を手にはめた。
そして、その場を後にした。

しかし、転送の間で待っていたのは悲劇だった。山の賢者アッカルが倒れてい たのだ。
「アッカル王!!」 レッカーが駆け寄り具合を確かめた。そして、胸のナイ フを抜き取った。
「おい、そのナイフの液は猛毒だぞ」
それを見たレナードが叫んだ。そして、ユリシアが、駆け寄り解毒の呪文を唱 えようとしたが、アッカル王はそれを拒絶した。
「わしをやろうとしたデーモンはガースと名乗った。塔にあ奴を行かせるわけ にはいかず、戦っておったが、手に負えない強さと残酷さを持っておった」
 苦しそうにアッカルはさらに言葉を続けた。
「勇者よ、その腕輪は真の意志を持つ者だけに与えられる秘宝だ。そして、そ の剣に炎の力を与えよう・・・・それをわしに・・・・」
ケンは黙って剣を差し出した。するとアッカルは最後の力を振り絞って、光を 発した。そして、剣を返した。
「その剣は"勇気の剣"と言われる秘宝。それを持てるのは正義の心を持つ者だけ 。レッカーよ、勇者の力となれ」
 最後にそう言い残し、山の賢者は息を引き取った。
「あのやろう、怪しいと思ったのだが・・・・」
レナードは悔しそうにつぶやいた。
「すでに、邪魔者の一人を片付けたからオレたちには手を出さずに・・・・」
 ジョナルドも怒りを表わにした顔つきで言った。
 ケンは、しばらく山の賢者の遺言を繰り返したが、やがて、決意を胸に立ち 上がった。
「よし、行こう。次の聖地へ」
「わかった。わしが転送の儀式をしよう。その前に炎の力の使い方を教えてお こう」
と、レッカーが言った。
「まず、剣を敵に向けて、『炎の賢者よ、我に力を・・・・"ファイヤーボール" 』と言い、思い切り振るうのじゃ。そうすれば、炎の初級の力である火の玉で 敵を倒せる。そして、経験を積めばどんどんその力のかずと威力が増える。そし て、それは自力で使えるようになる」
「わかりました」と、ケンは頷いた。
 そして、彼らは魔法陣に乗り、レッカーの呪文で次の聖地へと転送した。

 そして・・・・
ガースはデーモンの住処へと姿を現した。
「山の賢者と役立たずは消してきたぞ」
 「わたしは勇者の暗殺を命じたのだが・・・・まぁ、いい。全て、お前に任 せるよ」
「それがいい。オレが本気ならあんたでも倒せるからな」
 そして、ボルト族の所へ行くと再び消えた。
「ふん、言いたいことを言ってくれる。それもしかたあるまい。我らの王の復 活のためにはな」 そして、対面していたデーモンは不気味に笑った。