第三章 聖地への襲撃

 今、ケンたちは予言者デウスの住む神殿にいる。そこは、天井近くにステン ドガラスがあり、教会を想わせる建物だった。
「やあ、待たせたな」
と、老人が入ってきた。そのとたん、レナ、ユリシア、ジョナルド、レナード の四人は反射的にひざまついた。ケンも慌ててひざまつく。
「君はケンだね?」
デウスはケンをまっすぐ見て、そう言った。
「君がここに来ることは知っておったよ」
「知っていた?」
「正確には、元の世界からここに来た理由を」
「え・・・・では、ユウコのことは?」
「もちろん、知っておる。彼女はここの地下に監禁されておる」
「どういうことですか」
「ここの地下こそ、魔界とこの世界をつなぐ扉がある場所なのだ。しかし、扉 を開くには八つの秘宝の力を封印する必要がある。そして、生け贄。それらが揃 えば、扉が開き魔王がこの世に復活する」
「その場所の入り口は?」
「あわてるな今は魔の封印がされておって、近づくことでさえ、できないのじ ゃ」
「封印を解く方法は?」
「もちろんある。六部族の神殿に赴き。賢者を助け、秘宝と正義の心を手に入 れることじゃ」
「秘宝って何ですか?それに、正義の心っていったいなんですか?」
「ふむ、まずは伝説を詳しく話す必要があるようじゃな」
そして、デウスは話始めた。エイトエルメルに伝わる全ての伝説を・・・・

昔、世界混乱に満ちていた。正義の聖なる力と邪悪な悪の力のためなり。
しかし、火、水、風、土、雷、氷の部族の賢者ここに集結する。神、それに太 陽の聖女と月の巫女を定め、八つの力与える。
聖女に、まっすぐ光に進む勇気の力
 巫女に、闇を負かす希望の力
火の賢者に、そびえる山の意志の力
水の賢者に、美しき海の愛の力
風の賢者に、忘れられない森の優しさの力
土の賢者に、生き抜くための地の知恵の力
雷の賢者に、勝ち続ける空の自信の力
氷の賢者に、仲間を大事にする雪の信頼の力
その力、勇者に集まり、魔の力封印されるなり。封印の地、聖地の定めるもの なり。
その後、聖女は太陽の神殿を、巫女は月の神殿を、賢者達もそれぞれ、山、海 、森、地、空、雪の神殿を建て、力を与えた秘宝をまつるなり。

「八つの秘宝のうち、太陽の勇気は剣に、月の希望は盾に込めれているとわか っている。しかし、その他の秘宝は部族の秘密だからとわかっていなかった。し かし、今、その様なことを言っている時ではなくなった」
「では、秘宝の公開をした部族がいるのですか?」
ジョナルドが、始めて質問した。
「ふむ、炎の民が、意志の腕輪を守ってほしいと使いを寄越してきたのだ。そ れで、誰を向かわせるか見当しておったところだ。しかし、その必要はなくなっ た。わしは、勇者に同行させようと思ったからな。そして、それは、勇者にしか できないことだ」
デウスの言葉に全員が頷いた。そして、彼は話を続けた。
「そして、その勇者とはケン君だ。さらに、彼に仕える者として選ばれたのが 、聖女レナ及び、巫女ユリシア、君たちだ」
 そのとたん、三人は驚いて顔を見合わせた。
「ぼくは、別の世界の人間ですよ。そのぼくが、この世界の勇者のはず、あり ません」
 と、ケン。
「なんて言うべきか・・・・」
 レナは、言葉を失っていた。
「そんな・・・・まさか・・・・」
ユリシアも冷静さを失っていた。
「すぐに、出発しろとは言わない。しばらくの間、考える時間を与えよう。そ れから、援護として、そこにいる戦士と盗賊をつけよう」
そして、デウスは部屋を出ていった。

「しかし、大変なことになったな」
 レナードが、人ごとみたいに言った。
「まったくだ」 ジョナルドも素っ気なく言った。この二人は援護だから、使 命の重さを感じていないのかもしれない。しかし、ケンは違った。勇者だと言わ れたことに強い衝撃を受けていた。
それは、レナもユリシアも同じだった。二人は、ジョナルドがケンが勇者かも しれないと言われたこともあって、そこ事にはさほど、驚いていない。しかし、 自分がそれぞれ、選ばれた者とは思っていなかったのだ。
「でも、やるしかない・・・・ぼくは、ユウコを救うためにこの世界に来た。 それが、世界を救うことにつながるなら・・・・ぼくはやる・・・・」
 やがて、ケンは決意を込めていった。
「確かに、ケンくんの言う通りですね・・・・わたしも巫女としての使命を受 けましょう」 ユリシアは、ゆっくり、しかし、はっきりと言った。
「わたしもやるわよ・・・・聖女として、やることを・・・・」
 レナも決意を込めた声で言った。
「結論は出たようだな」
それまで、腕組みをして聞いていたジョナルドが言った。
「君らが行くと決まった以上、こっちもしっかりと、援護してやる。そうだろ 、レナード?」
「もちろんだ。どこまででも、付き合うさ」
 レナードは大きく頷きながら言った。
「どうやら、決心がついたようじゃな」
そう言って、デウスが入ってきた。隣にはもう一人、誰かを連れてきている。
「はい、必ず使命を果たします。そして、この世界を救ってみせます」
「よかろう。では、紹介しよう。この方が炎の民の使者レッカー殿だ」
ケンは、そう言われて紹介した人物を見て驚いた。なぜなら、ドワーフを思わ せる生物が立っていたからだ。もっと、変わった生き物かもしれないと思ったの だ。ドワーフと言えば、ファンタジーの定番なので、この世界にはいてもおかし くなかったが、重要な生き物とは思っていなかった。 レッカーは、どっしりと した体格をしていて、ドワーフのイメージそのものだった。
「では、デウス殿。早速、魔法陣の部屋へ行くとしよう」
「ええ、歩いて行くのではないのですか?」
 意味が、よくわからず、ケンがそう質問した。
「ここから、部族の聖地までは歩けば、一ヶ月はかかるわ。そこで、転送の儀 式で他の神殿に直接行くことにしているのです」
ユリシアがそう説明してくれた。 彼らはデウスに連れられ、その部屋に行こ うとしたその時である。突然、外から爆音が響いた。

「敵襲です。ダークイーグルの大群が攻めてきました」
何事かと、デウスが近くにいた兵士に聞くと、その兵士はそう答えた。
「どうしても、じゃまをしたいようね」
「仕方ありませんね」
 レナと、ユリシアがそれぞれそう言い、武器を手にそれぞれの魔法を唱えた 。 ケンも外に出たが、何しろ敵は剣の届かない上空を飛んでいるので手出しせ ずに、見守るしかなかった。ジョナルドも大剣を構えてはいるが、手出せずにい た。ただ、レナードは素早く屋根に登って、敵に見事な攻撃をしていた。そして 、空中で一回転し地面へと降り立った。 その時には、レナとユリシアの魔法は それぞれ、完成し攻撃していた。しかし、敵の抵抗は一向に終わらなかった。そ して、頭らしい敵が現れ、町を破壊し始めたのだ。
「人間どもよ。まだ、我らデーモン族の力がわからぬか」 と、ケンにもわか る言葉が響いた。
「まだ、抵抗するならこの町を破壊するしかあるまい」
「待ちなさい!!完全に怒ったわよ」
 叫んだのはユリシアだった。顔を真っ赤にし、その表情はとても恐いものが ある。 そして、強力な一撃魔法を放った。
「面白い・・・・デーモン族の騎士に立ち向かうとは・・・・」
 強力に当たったらしく、デーモン族の騎士は一人どこかへと消えた。そして 、後に残ったのはダークイーグルだった。 しかし、大半は逃げ去り、残ってい たのはボスらしいダークイーグルと少ない護衛だけだった。しかし、護衛にもや る気はないらしく、あっさり片づいた。 ボスとの戦いが始まった。その戦列に はケンたち五人の他にレッカーも加わった。 長い戦いの末、ケンたちは勝利を 得た。それをつかんだのは、レッカーの"炎の魔法"だった。聞けば、選ばれた者し か使えない神秘の力とのことだった。
「使えなければ、王がわしを選ばないさ」
レッカーは平然と付け加えた。
「それより、見事な剣さばきであったな。少年も、隣にいる男もデウス殿が指 名しただけのことはある。もちろん、二人のおなごもそっちの小柄な男も見事じ ゃ」
「ぼくには、ケンと言う名前がありますよ」
「オレの名は"さすらいの剣豪"ジョナルドだ」
 ケンとジョナルドはレッカーと握手をした。
「わたしはユリシアと言います。月の巫女をしております」
「わたしはレナ。太陽の聖女よ」
ユリシアはゆっくりと、レナは投げやりな口調で自己紹介した。
「レナードだ」
と、最後にレナードが素っ気なく名乗った。

 結局、その日は、皆疲れていて、炎の民の元には明日行くことになった。
 そして、翌日。ケンら旅の一行はレッカーと供に魔法陣のある部屋へと向か った。そこは、昨日、デウスと面会した部屋の地下にあたる部屋だった。その部 屋は丁度、白い線に八角形の形が描かれた星形の魔法陣で、中央が白く光ってい た。
「その奥が、ユウコ殿が捕らえられている部屋だ。しかし、強力な結界が貼ら れていて入ることができない。結界を破る方法は一つ。全ての秘宝を集めその力 を解放することだ。一刻も早く全てを揃え、ここに戻って来なさい」
儀式にはいる
前、さらに地階へと続く階段を指差しながらデウスが言った。
「はい、必ず」
ケンは、迷わず答えた。それにデウスは満足そうにうなずいた。
「それから・・・・あの剣と盾を持って行きなさい」 と、デウスは指差した 。
「ええ、しかし・・・・」
 ケンはためらった。
「持っていきなさい。これからは魔法の武器が必要だ」
「わかりました」 と、ケンは答え、剣を抜き、盾を取った。
そして、デウスは転送の呪文を発した。
「ここに集まりし者、いざ、炎の民の聖域”炎の塔”に転送せよ”」
 デウスの呪文とともに赤い光が発し、ケンたちはその中へと吸い込まれた・ ・・・
そして、後に残ったのはデウス一人だった。
「頼んだぞ。君の世界を救うためにも」 デウスはそっとつぶやいた。

そして、ここはユウコが捕らえられている地下の隠れ家である。
「将軍・・・・」
と言って、声をかけたのは昨日、ここの上の襲撃者だった。
「デーモン騎士が、人間に負け帰ってくるとは・・・・」
「申し訳ありません。ですが・・・・」
「ふん、理由は聞きたくない。すでに山の部族の元には、我らが誇る暗殺者を 送り込んでいる」
「暗殺者・・・・では、あの方を・・・・?」
「そうだ。あいつなら勇者どもを倒してくる。それに、こちらには人質がいる のだ」
将軍と言われたデーモンの目線の先には、少女が一人眠っていた。彼女こそ、 ケンが探す少女であり、世界を救うカギを握っているのだった。
二体のデーモンは不気味な笑いを響かせていた。