エイトエレメル物語 ケンと八人の賢者 作 今井大輔
プロローグ
その昔、世界が混乱に満ちた頃、魔界の者が世界を支配していた。
しかし、人と共に暮らす六部族が立ち上がり、神に選ばれし、太陽の聖女と
月の巫女が勇者と協力し魔界の者をこの世から追放した。その地は魔界への扉が
あり永遠に封じられた。
六部族は、火、水、風、土、雷、氷を守り、その地に留まり、太陽の聖女と
月の巫女はそれぞれの神殿を建て、その地を守った。
その地の名は「エイトエルメル」。八つの正義の力が眠る聖地である。
聖地の話が始まって、千年たち人々は平和に暮らしていた。しかし、エイト
エレメルを支配しようとする謎の部族が現れ、扉を強引に開けてしまった。しか
し、それを知ったある者が、六部族に伝わる秘宝と二つの神殿に伝わる秘宝の力
を使い、扉は閉じられ、謎の部族「デーモン族」はエイトエルメルを追放され、
その長は封印された。最後に呪いの言葉、「新たな邪悪な部族の出現と共に世界
は魔王の支配となれ」を残して・・・
五百年後、その言葉を裏づけるように新たな部族が現れ、エイトエレメルに
侵攻してきた。六つの部族は抵抗を続けたが、やがて、人の住む地にまで侵攻し
てきた。二つの神殿の長は新たな勇者の誕生を待ち、神に祈りを捧げたが、この
世界に勇者はとうとう現れなかった。
そして、不思議な力が作用し別の世界への扉が開き、かつて魔王の復活を企
んだ「デーモン族」がその世界へ入り、魔王の復活に必要な生け贄に捧げようと
したのである。
その世界とは、我々の世界である・・・
第一章 冒険は突然始まる
ケンは正義感の強いごく普通の黒髪の少年である。その日、幼友達のユウコ
、そして、二人の家族と山にハイキング出かけていた。
「ふー、あとどれぐらいで頂上だい?」
ケンは、後ろで地図を見ながら歩くユウコにそう聞いた。ユウコは、短い茶
髪を持つ少女である。
「あと、一キロほどたいしてないわ」
ユウコは平然と答えた。 ケンはそれを聞き、ため息をついた。距離のこと
ではなかった。言い方がバカにしたようだったからだ。
ユウコはクラスの人気者というより学校中の人気者だが、ケンだけに見せる
「ちょっと、素直じゃない所」があり、そこがユウコの唯一の弱点だとケンは思
っている。
そして、しばらくしてユウコの声が聞こえた。
「ケン、変な生き物がいるよ」
「なんだって?」
「だから、変な生き物キャー」
と、今度は悲鳴が聞こえた。
「ユウコ?どうしたんだ」
と、ケンは近づいた。
そこにはたしかに、どの動物図鑑にも載っていない生き物が六体いて、ユウ
コの周りを囲んで、何かを言っていた。観察すれば、するほどおかしな生き物だ
った。二本足で立っているがその肌は血のように真っ赤だった。そして、その頭
には角が生えていたその生き物は”オニ”のようだった。
だから、ケンは夢かと思い、自分の頬をつねってみた。しかし、覚めなかっ
た。そして、今日の朝、いい夢を見ていて、ユウコにたたき起こされたのを想い
出し、これが現実に起こっていると確信した。そして、近くに落ちていた小枝を
拾い、そっと近づいた。
オニの一体がユウコを捕まえ、聞き取れない言葉を発していた。そして、も
う一体がうなずき、大木のそばに行き、何かを言った。そのとたん黒い穴があい
た。そして、オニ達は次々に穴に入っていった。
ケンは慌てて、後を追ったが、最後の一体が入ると同時に穴は消えてしまっ
た。
「どうなっているんだ?」
ケンは大声で叫んだ。
「ユウコ、どこにいるんだ?」
今度は、ほとんど絶叫していた。
と、その時である。大木が再び穴を開けたのである。今度は澄んだ白い光が
輝いていた。そして、その光から, 「彼女を救いたければ来なさい」と、言う声
が聞こえた。 ケンは息を飲み込み、穴を見つめた。やがて、ゆっくり歩き出し
た。ケンは光の中をひたすら走った。疲れても走り続けた。そして、突然、まぶ
しい光が現れた。ケンは反射的に手で目を覆った。そして、気を失ってしまった
。 しばらくして、誰かの声を聞き、ケンは目を覚ました。女性の声だった。
「ユウコ」
「すみませんが、わたしはユウコと言う名ではありません」
それを聞き、ケンはハッとして起きあがった。
そして、声の主を見て、驚いた。ユウコとは感じが違う長い銀髪を持つ女性
が座っていた。年も自分やユウコより年上という感じだった。
「わたしはユリシアと言います。月の神殿の巫女の一人です。あなたは?」
女性はそう言って、ケンの名を聞く。
「ぼくの名前はケン。ここはどこですか?それに、つきのしんでんっていっ
たい?」
「ここはわたしの村の村長の家ですよ。月の神殿を知らないのですかケンさ
ん、あなたはいったいどこから来たのですか?」
「どこって、日本からですが」
「ニホン聞いたことがない地名ですねあなたは、エイトエレメルを知ってい
ますか?」
「エイトエレメルどこですか?」
聞いたことがない地名だった。
「どこと言われましてもわかりました。あなたは、別の世界の人ですね?」
それを聞き、ケンは驚いた。しかし、すぐ納得した。あの光は別の世界の出
入り口だとしたらケンは思い切って、先ほど見た出来事を彼女に話した。
「そうですか」 ユリシアはしばらく黙っていたが、やがて口に出した。そ
の表情は暗くなっていた。
「あなたが、見たのはこの世界の部族デーモン族ですわ。そして、その少女
は魔王の復活に捧げる生きにえでしょう。」
「くわしい話を聞かせて下さい」 ケンは思い切って聞いてみた。
「くわしい話は村長さんが知っているわ」 答えたのは、ユリシアではなか
った。短い金髪を持つ女性が部屋に入りながら言った。
「ああ、私はレナ。太陽の神殿の聖女の一人よ。君の名前は?」
「ケンです」
「じゃあ、元気なら早速行きましょう」
そう言って、レナはケンの手を強く引っ張った。
「ちょっと、レナ。かってに」
「いいじゃない、どっちみち気がついたら連れてくるようにいわれているし
ケン君って、別世界の人なんでしょ?」
「ええ、神殿できいたとおり」
「何のことですか?それに、ぼくのことも」
話がついていけず、ケンは二人に聞いてみた。
「ええ、あなたの格好はどう見ても変わっていたから神殿主様が予言した別
世界の者ではないかとね」格好と聞いて、ケンは自分の格好を見てみた。ハイキ
ングの格好ではあるが、別に変わっていない。そして、そばにいる二人の女性を
改めてみた。 いずれも見たことがない格好だった。ユリシアもレナも中世のヨ
ーロッパの女性が着ていそうな服装で、ユリシアは、三日月が描かれた帽子を被
っていた。レナも太陽が描かれたマントをしていて腰には短剣を下げている。明
らかに変わった格好をしている。だから、ケンの格好を変わっていると思われて
も仕方がない気がした。
「とにかく、村長さんに会わせて下さい」 ケンは、起きあがるとそう言っ
た。そして、はじめて自分が寝ていたのがベッドだと気がついた。木製でごく普
通にありそうなものだった。 そして、二人に連れられ、一階に下りた。 連れら
れた、部屋にはヒゲを生やした老人が座っていた。ユリシアが、彼が村長のアレ
ックさんと、紹介してくれた。 ケンはまず、名前を言い寝かしてくれたお礼を
言った。
「気にすることはない・・・それより・・・」と、アレック村長は本題に入
った。
何でもケンが倒れていたのは森の中で猟師の一人が発見したと言うことだっ
た。
「ちょうど、昼時だったからな本当に運がよいことじゃ」
ケンは自分を発見してくれた人にお礼を言わなければと思い、ふと窓を見て
みた、ちょうど日がはいるのが見えた。
「ところで、ぼくはどれぐらい世話になったのですか?」
「ああ、今日の昼から今までだから、一晩も経っていないよ」
「そうですか・・・」
「ケンくん、まず食事にしよう話は長くなるだろう」 そう言われて、ケン
は始めてお腹が空いていることに気か付いた。
すると、村長の奥さんらしい人が入ってきて、スープを入れてくれた。さら
にパンらしい、モノも出された。
食事が終わった後、アレック村長はこの世界エイトエレメルに伝わる伝説を
話し始めた。そして、最後に別世界とつながったらしいという話をした。
「単なるうわさではなかったようじゃ。現に別の世界から来たケン君がおるか
らな」 「元の世界に戻れるでしょうか?」
「わからん、それに君だけが戻っても仕方なかろうデーモン族に連れて行かれ
た、君の友達の」
「ユウコです」
「そう、ユウコさんを救わなければ声のことも気になるしとにかく、明日、デ
ウス様に会わせるべきだろうレナ、それに、ユリシア、デウス様の所へお連れし
なさい。彼一人ではどう考えても危ないそれにケン君、その格好ではなく、鎧を
着なさい。剣も譲ろう」
「誰ですか、デウス様って?それに鎧と剣って、使ったこともないのに」
「二つの神殿の長をなさっている方ですわ。」と、ユリシアが言い、おやすみ
なさいと言い部屋を出ていく。
「詳しくは、明日ね。じゃあ、おやすみ。」レナもそう言って部屋を出ていっ
た。
ケンは頭の中が真っ白になりそうだった。わかったことは、そこに行くのは危
険で、冒険になるということだった。 翌日、ケンは朝の日差しを受け目を覚ま
した。
「ケンくん、おはよう。よく眠れたかな?」 一階に下りると、アレック村長
がそう声をかけてきた。
「おはようございます。おかげさまでぐっすり眠れました」
ケンは、元気よく挨拶した。 そして、朝食のあと、早速鎧を着てみた。サイ
ズはちょうどよかった。そして、剣を握ってみた。握りもよく使いやすかった。
さらにマントを覆い、出発の準備は整った。
「本当に何から何までありがとうございました」
「ああ、そうだ。これを忘れるところだった」
と、村長は革袋をくれた。中には宝石らしいモノが入っていた。
「それは、我々の世界のお金だよ。大した額はないがね」
「お金もらえませんよ」
「しかし、ケンくん。君の世界のお金は価値のない石ころと同じだよ。持って
いた方がいろいろと便利じゃろう」
「わかりましたでも、余った分は返します」
「別に返さなくてもよいが君の気持ちは受け取るよ」
そして、ケンはもう一度お礼を言い、別れた。 その足で、自分を助けてく
れた猟師にお礼に行くことにした。しかし、その猟師は不在で、レナが待ってい
た。
「あなたを見つけたのはわたしの兄よ。先に都に行ってしまったわ」
理由を聞くと、レナはそう答え、荷物を持ち、ついてくるように言った。連
れて行かれた先は、ユリシアの家だった。彼女も用意を整えており、首を長くし
て待っていた。そして、三人は村の出入り口に向かった。目指すのは、デウスと
言う人物がいるエイトエレメルの中心地エレメリアである。しかし、それは、突
然始まった旅の最初に過ぎなかったのだ。