「Tannhauser」のためのガイド
Kehr wieder, wenn deinn dein Herz dich zieht! :
おまえが望むときはいつでも,また帰ってきなさい!
(第1幕第2場より ヴェーヌス)
『タンホイザー』
『タンホイザー』ワーグナー1845(1861パリ版)
中世の歌人騎士タンホイザー(ハインリヒ・フォン・オフターディンゲン)は愛の女神ヴェーヌスの館(ヴェーヌスベルク)で歓楽に耽っていたが,やがて快楽に飽き,騎士社会への帰還を願い,聖母マリアの名を呼ぶ。タンホイザーはワルトブルクの谷で領主ヘルマンとかつての友ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハらに出会い,領主の姪エリーザベトの名を聞くに及び城へ帰ることになる。
ワルトブルク城では,「愛の本質」をテーマに「歌合戦」が始まる。ヴォルフラムは「奇跡の泉」にたとえ,一同の喝采を浴びるが,一人タンホイザーは「ヴェーヌス賛歌」を歌い上げ,ヴェーヌスベルクでの滞在を告白してしまう。エリーザベトの取りなしによりタンホイザーはローマ巡礼で贖罪することになる。
エリーザベトは巡礼たちの帰還の中にタンホイザーを見つけられず,悲観に暮れている。彼女を愛するヴォルフラムが慰めるが聞き入れられず,彼は「夕星の歌」を歌う。そこへタンホイザーが現れ,「ローマ語り」で教皇に「この杖が緑の芽を飾らないように救いは与えられない」と言い渡されたことなどを歌う。ヴェーヌスベルクへ帰ろうとしたタンホイザーだが,ヴォルフラムの「エリーザベト」の一言がヴェーヌスを奈落に落とし,曙の中罪の犠牲となったエリーザベトの棺が運ばれ,タンホイザーは息絶える。合唱が神を讃え,若芽を吹いた杖を持ってくる。
タンホイザー伝説
ヴェーヌスベルクを抜け出したタンホイザーはローマへ赴くが,杖を引き合いに教皇に拒絶される。3日後杖は緑をなし,皆がタンホイザーの行方を追ったときには既に遅く,絶望した彼はヴェーヌスの洞窟へ還っていった。
名作オペラブックス16『タンホイザー』音楽之友社
トゥルバドゥール,ミンネジンガーからマイスタージンガーへ
■トゥルバドゥール
12C.オック語圏(南仏)で,ポアティエ伯アキテーヌ公ギョーム9世(1071−1127)を始祖とするといわれる。ギョームの孫エレオノールのルイ17世への輿入れにより,12C.中頃に北仏(ドイル語)に移植され(トルヴェール),やがて市民層へ。エレオノールの娘マリ・ド・シャンパーニュのもとでクレチアン・ド・トロアが『ランスロあるいは荷車の騎士』,『ペルスヴァルあるいは聖杯探求』などを書く。
トゥルバドゥール(吟遊詩人)が作詞作曲で,ジョングルール(吟遊楽人)が演奏って感じ?10C.頃出現したジョングルールはやがて騎士階級または同列のトゥルバドゥールの従者となるが,トゥルバドゥールの中にはジョングルールに身を落とすものも。ジョングルールは14C.頃から社会的地位の向上に伴い,メネストレルと呼ばれるようになる。
『タンホイザー』2幕の「愛の本質をテーマにした歌合戦」とはトゥルバドゥール達が繰り広げた「愛の法廷」(宮廷で恋愛に関するさまざまな議論,審判者は貴婦人)ではないかと思うのですが。
■ミンネジンガー
ミンネゼンガー,恋愛歌人。12C.〜15C.。騎士・貴族階級から市民層へ。
1156年に神聖ローマ皇帝フリードリヒ・バルバロッサとベアトリス・ド・ブルゴーニュの結婚によりフランス音楽がドイツに紹介される。内容的にはマリア賛歌,牧歌,素朴な恋愛歌など。
タンホイザーは1200−66頃のザルツブルク地方のミンネジンガーとされる。ハインリヒ・フォン・オフターディンゲンと同一人物であるかは不明。ヴォルフラムのモデルは実在のヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ(1170−1220)で,
他に『トリスタンとイゾルデ』のゴットフリート・フォン・ストラスブルクなど。
■マイスタージンガー
15C.〜16C.に都市の手工業が本職の詩人兼音楽家。『ニュルンベルクのマイスタージンガー』のハンス・ザックスは実在。
『中世・ルネサンスの音楽』(皆川達夫 講談社現代新書),『愛と歌の中世−トゥルバドゥールの世界』(ジャンヌ・ブーラン,イザベル・フェッサール 小佐井伸二訳 白水社),『新音楽辞典』(音楽之友社)
関係ないけど,有吉佐和子さんの『悪女について』が好きなんです。
『世紀末赤毛連盟』
高橋裕子 岩波書店
美術史から少女マンガまで。よい本です。

『ウェヌスとタンホイザー』(1907)
オーブリー・ヴィンセント・ビアズリー(1872−98)作・画
『美神の館』澁澤龍彦訳 桃源社,中公文庫
ヴェーヌスベルクでの快楽の日々を描いた未完の作。上の画は『ヴェーヌスと境界神 』1845-95
旧約聖書の神
アブラハムとイサクのエピソードのようにヤハウェは当然のように生け贄を要求します。
『マンフレッド』
バイロンの詩劇(1817)全編が収録された本が見つからないので物語がつかめないのですが…。(白鳳社の青春の詩集(すごいわ)にわりと入ってました)私は詩はわからないのよ。原語で読まないと韻とか味わえないし。
チャイコフスキー:交響曲Op.85(1885)
マンフレッドは1231年頃,皇帝フレドリック2世の子として生まれ,シチリア国王となった実在の人物らしい。
物語:自己の存在に悩み過去の罪に苦しみながら,その救いをアルプスの魔女の妖術に求めるが,救われることなく苦悩する。アルプスの山中をさまよったあげく,山の主神アリマネスの地下宮殿に迷い込む。彼が愛しながら死に追いやってしまった恋人アスタルテの亡霊が呼び出され,マンフレッドの死が予告される。
Vol.-3 Aug. 1996
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