Si je puis − IF I CAN もしわたしにできるならば
   ウィリアム・モリス,その生涯と芸術



「モダン・デザインの父 ウィリアム・モリス展」「カリグラフィーの誕生―中世写本の世界から印刷本,そしてモリスへ」「IF I CAN−もしも私にできるなら〜ウィリアム・モリスのテキスタイルに包まれて〜」1996 モリス没後100周年記念イベントGoods & Books

William Morris(1834−1896)

■1834年3月24日,ロンドン郊外のウォルサムストウのエルム・ハウスに生まれる。
■6歳の時,一家はウッド・フォールの邸宅に転居。ウォルター・スコットを愛読し,甲冑と馬で中世騎士のようにエピングの森に遊び,エリザベス女王のロッジのタピストリーに感銘を受ける。8歳の時,父に連れられカンタベリ大聖堂を訪問。
■13歳の時,父が病死するが,一家の生活は保有する株式により保障されていた。翌年,ウィルサムストウ(ウォーター・ハウス)に戻り,モールバラのパブリック・スクールに入学。学校生活は満足のいくものではなかったが,ここで福音主義から英国カトリック主義へ向かう。
■1853年,聖職者を志し,オックスフォードのエクセター・カレッジに入学,バーン=ジョーンズ,フォークナーらと出会う。チョーサー,ラスキン等を愛読。翌年,ラファエル前派とロセッティの名を知る。またはじめての大陸旅行において北フランスの大聖堂などを歴訪する。
■成人になり,相続により714ポンドの年収を得る。翌年,バーン=ジョーンズ,フルフォードと北フランスを再訪し,同じく聖職を目指していたバーン=ジョーンズと共に芸術を志すようになる。マロリー(キャクストン版)の『アーサー王の死』(1816年再版)を手に入れる。
■1856年,月刊同人誌を1年間発行。また建築事務所に弟子入りし,ウェッブに出会う。大学卒業。事務所の移転と共にロンドンに移り,バーン=ジョーンズと共同生活をはじめる。ロセッティに出会い,彼の薦めで画家を志す。この年,アーサー・ヒューズの『四月の恋』を入手。
■1857年,下宿の家具のデザインと絵付けを行う。刺繍制作(IF I CAN),オックスフォード・ユニオンのアーサー王伝説のフレスコ壁画を共同製作。モリスが描いたのは『トリストラムとイースルト』及び天井の装飾。壁画のために甲冑をデザイン。
■1858年,ロセッティがモデルとして見出した馬丁の娘ジェイン・バーデンと交際。翌年,詩集『グウィネヴィアの抗弁』自主出版,油彩画『麗しのイソウド(王妃グウィネヴィア)』(現存する唯一の油絵。モデルはジェイン)。
■1859年,ジェイン・バーデンと結婚。北フランス他へ新婚旅行。ウェッブの設計でレッド・ハウス建設。内装を行う。ジェイン,友人らも内装に参加。サロンとなる。翌年,ロセッティはエリザベス・シダルと,バーン=ジョーンズはジョージアナ・マクドナルドと結婚。
■1861年,モリス・マーシャル・フォークナー商会創設。ステンドグラス,家具,刺繍,後に壁紙や織物の制作を行う。翌年のロンドン万博に出品,メダルを授与。ステンドグラスを中心に順調に成長。またこの年,長女ジェイン・アリス(ジェニイ),翌年次女メアリイ(メイ)が生まれる。65年にレッドハウスを引き払う。(62年エリザベス・シダル死亡)
■1866年,セント・ジェイムス宮殿の2間(武具の間,タピストリーの間)の内装,サウス・ケンジントン博物館(現ヴィクトリア&アルバート美術館)のグリーン・ダイニングルームの内装着手。
■1868年,物語詩『地上楽園』(普及版)第1巻発行。アイスランド・サガを読み,翻訳に着手。『地上楽園』の最終巻は70年に刊行され,その頃カリグラフィーや彩色本の制作を始める。この頃,ジェインはロセッティのモデルを再び務めるようになり二人の間が親密になる。
■1871年,ケルムスコット・マナーをロセッティと共同賃借(74年モリスのみに)。奇妙な共同生活がはじまる。また2人を残してアイスランド旅行。
■1873年,はじめてのチンツ『チューリップと柳』をデザイン。住宅市場向けの仕事が増え始める。
■1875年,商会を単独経営のモリス商会に改組。翌年,東方問題協会の創設に参加し,この頃から政治に関与しはじめる。
■1877年,「古建築保護協会」(現在も活動中)を組織し,初代事務局長となる。
■1878年,ハマスミスのケルムスコット・ハウスに転居。環境美化運動に協力。この頃,タピストリー織りの実験を行う。
■1880年,モリス協会はセント・ジェイムス宮の内装を行い。翌年,染色のためのマートン・アビー工房開設。講演活動盛ん。82年ロセッティ死去(72年に自殺未遂をしている)。
■1883年,社会民主連盟に加入。翌年脱会し,社会主義同盟を創設。後に脱退し,ハマスミス社会主義教会を結成。
■1888年,エマリー・ウォーカーの講演(美術工芸展での印刷に関する)に触発される。
■1890年,『ユートピアだより』を連載。活字書体のデザインに取り組む。
■1891年,ケルムスコット・プレスを設立。ケルムスコット刊本『輝く平原の物語』,『ゴシックの本質』『グウゥネヴィアの抗弁,その他の詩』など。活字ゴールデン・タイプは15C.のヴェネチアのローマン体を,紙は15C.イタリアのものを手本の麻から製造。トロイ・タイプはドイツ初期印刷者に使われたゴシック活字に基づく。
 『聖杯の探求』のタピストリーに着手(95年完成)。この頃痛風がひどくなる。
■1896年,『ジェフリー・チョーサー著作集』他刊行(チョーサー・タイプ,挿絵はバーン=ジョーンズによる87枚)。10月3日,ハマスミスの自宅で死去。死因は「ウィリアム・モリスだったから」,直接的には糖尿病らしい。
■ケルムスコット・プレスは1898年まで刊行を続ける。
ケルムスコット・プレス「チョーサー著作集」1896
ケルムスコット・プレス『チョーサー著作集』1896

主な参考資料:1997,89年「ウィリアム・モリス展」カタログ。『ウィリアム・モリス アーツ・アンド・クラフト運動創始者の全記録

 なんだか何もかもモリス一人でやったように読めちゃいますが(実際かなりの部分そうだろうけど),商会成立後は職人を使った共同製作で,人物画やケルムスコット本の挿画はほとんどバーン=ジョーンズが行っています。バーン=ジョーンズの存在が目立たないように見えますが,二人は出会いから特に対立もなく,生涯離れることのない友人であったためなのではないでしょうか。モリスが画家を断念したのは身近すぎる友人の才能のせいであったと思うのですが。
 


「モダン・デザインの父 ウィリアム・モリス展」

May 30, 1997 東京国立近代美術館(竹橋)

「詩の本」1870 やはりテキスタイルが充実。でも一番気に入ったのは1870-73の彩色手稿本(右にあげたのは『A Book of Verse 詩の本』モリス,チャールズ・マーリ,バーン=ジョーンズ,ウォードル 1870。バーン=ジョーンズ夫人ジョージアナの誕生日に献呈)。ケルムスコット・プレスの黒と白のはっきりした印刷のせいかこういったものに注意がいかなかったのですが,中世礼賛のモリスが写本に興味を持たないわけがない。この本は共同作業ですが,全面に金を使ったような派手な装飾とは違い,あくまで地は白く,か細い書体と草花の装飾が清潔で愛らしい。金も使ってるけど,他の色(特に青)とのバランスが優美です。ケルムスコット本は展示の仕方からモリス最後の仕事としての評価が低いのでは?

タピストリー「Angeli Ministrantes 主に仕える天使たち」1894 圧巻は2.5m×2mの天使のタピストリー2枚(1894)。右のは「主に仕える天使たち」。人物画はバーン=ジョーンズ(デザイン:ジョン・ヘンリー・ダール)。彼の少女マンガチックな天使と敷き詰められた果物や草花が素敵なのでこのポストカードを10枚も買ってしまいました(¥150もするの)。クリスマスに使おう。でもやっぱりアーサーのタピストリーが見たかったなー。
 人物画はとにかくバーン=ジョーンズが好きなので,ステンドグラスも彼に絵でなきゃや。『エレイン』(1870)はどっちのエレインなんだろう。どっちもキライだけどさ。対になってる『ランスロット』は失われているとのこと。きゃーランスロットどこに行ってしまったの? でもエレインの隣には並べたくない。ランスロット好きーの話はVol.-3へどうぞ。
 他にバーン=ジョーンズのタイルで「いばら姫」の物語があるんですけど(1862-65),「いばらの森に入る王子」(「象徴主義ってば何?」参照)だけが後の油彩画と全く同じで,油彩の連作は3種類あるんですけど(こちらは全て同じ構図らしい),バーン=ジョーンズはよほどこの物語と特に横たわる騎士たちが気に入ってたのかも。大好きな『ランスロットの夢』(1896)もそんな感じ。

 この会場は1・2階に別れているので1Fから出るとすぐ売店があってこれはちょっと。まず前述通り絵ハガキ高い。ポスターないのはしょうがないけど『ラッピングブック』とか『ポストカードブック』あったはず。本もモリス本は山ほどあるのに『美しい書物の話』(アラン・G・トマス 小野悦子訳 晶文社 新刊 本文紙がすべすべ)と『ウィリアム・モリスへの旅』(藤原治彦 淡交社)のみ。もっとたくさん置いてよう。最近の美術展は結構関連書は揃えてるのにね。「芸術新潮」(下欄参照)もないや。かわりに日本製の布ものがたくさんだけど,かっぽーぎはやめて。売場もなんか教会のバザーみたいで美しくなーい,ていうかびんぼくさいぞ。公立って感じ。あとはヴィクトリア&アルバートのハンカチとか。だったら絵はがきも出典品だけじゃなくてもっと出してくれればいいのに。去年イギリスのおみやげにもらったカードはアーサーものがあったのに(これは確認したら,ヴィクトリア&アルバート(V&A)じゃなくてバーミンガム美術館のでした。でも要するにこの展示はV&A以外からは独自に集めてないってことですね)。他に陶器も。そんな普段デパートで買えるものはいいのに。モリス商会のインテリアで揃えようかしらなんてうらやましい剛気な方は新宿のOZONEに行きましょう(下欄参照)。でもOZONEの案内は置いてなかった。OZONEでもここのアナウンスをしてなかった。なんでもっと連携して盛り上げようって思わないのかなー。

 というわけで,いつもの「もっとこーすればいいのにっ」編
 わたしは作品重視であまり作家の人生には興味ないんだけど,モリスはクリエイターというよりプロデューサーとかアート・ディレクターな部分が多分にあるので,持ってきたものをただ並べるだけじゃダメ。この美術館は(公共の美術館は全般的に)殺風景だからモリスのような雑多な作品を並べるにはかなり気を使わないと。89年の伊勢丹美術館のはその点壁紙を貼ったりして工夫してたけどちょっとこじんまりとしてた。

 モリスのつくったもの,だけでなく,ああいう人だから「モリスの人生」展みたいな方が面白いのに。例えばレッドハウスの設計図やステンドグラスがあるんだけど,全然レッドハウスの形や概念は見えてこないの。もっと写真パネルなんかを使ってフォローして欲しい。一応時代ごと(プロジェクトごと)に区切ってるんだから,コーナーごとにメリハリを付けて欲しい。モリスは住居そのものにこだわってるし,かなり移り住んだんだから,家の外観・庭や内装の写真を大きく引き延ばしてアプローチにするとかさ。あとNHK大阪の5分×5本ビデオシリーズ(4Fで上映注意。しかし企画展を観に来て常設展示を観ようなんて気になれるかしら)があるんだけど,これを各コーナーの入り口で流すとかね。最初の入り口でイメージビデオみたいなのを上映してたんだけど,これは少年時代にすでに彼の嗜好が出来ていたって言いたいみたいで,だったらそのエピングの森の写真とか,更に青年時代に感銘を受けたアミアンの大聖堂の写真でモリスの成長をたどって欲しい。あ,ラファエル前派とか機械化される時代背景とかの説明も欲しい。もちろんケルムスコット・プレスはもっとこれがモリスが最後に辿り着いたものだって言ってくれなきゃ。本て小宇宙なんですもの。

 やはりイギリスに行くしかないのだろーか。とするとフランスもアイスランドも押さえねば。まるきり「ウィリアム・モリスへの旅」。イギリスはさ,すごく好きで行きたいけど空港に降りただけなの。
 込み具合は8時までの金曜日は6時くらいからやや人が増えるけど,結局マイナーで地味な企画だから休日もあまり心配しなくてよいと思う。「新日洋美術館」がピンとくるものでなかったから影響は少ないんじゃ。
 街中ではないので,せっかくだから北の丸公園をお散歩してちょっと森を散策するモリスになってみる。ただし武道館はダフィーに注意。パレスホテルのケーキはおいしいらしい。
 訂正,混んでるらしいです。


「ウィリアム・モリスの生き方」 (川端康雄)

July 05, 1997 東京国立近代美術館講堂

 さすがにもう目新しい話はない。川端先生のお話は去年聴いたしね。といいながら心に残るものはある。
 モリスの製作したもの,特にモリス商会やケルムスコット・プレスの製品は,なによりもまず「自分が満足できるものがないなら,自分たちでつくろう」という理想の生活への高い欲求とそれを実現する芸術家としての才能とともに行動力・統率力がモリスのモリスたる所以であったのだろう。もちろん,財力という要因ははずせないが。
 したがって,製品群は消費者のきまぐれに左右されたものでも流行に追従したものでもない。技術の研究もまた効率ではなく,理想の体現のための質の向上であり,機械化よりも手仕事の再評価であった。
 しかしながら,『理想の書物』(W. ピータースン編 川端康雄訳 晶文社)の編者序文にあるように,モリスは決して機械を否定していたわけではなく,例えばケルムスコット・プレスでは少量印刷には手動印刷機が合っていたためで,それは質の管理も含めてだが,あくまで「理想に近づくための技術」なのだ。タイポグラフィの研究にも積極的に写真術を利用している。
 パーソナル・コンピュータという小さな工房を得て,わたしたちも21世紀の小モリスになれるだろうか?


 5/27〜7/13 東京国立近代美術館(竹橋)
 講演会(近代美術館講堂)14:00〜(先着200名)
 6/7「デザイナーとしてのウィリアム・モリス」薮亨
 7/5「ウィリアム・モリスの生き方」川端康雄

 3/18〜5/11 京都国立近代美術館
 7/25〜8/31 愛知県美術館



カリグラフィーの誕生
  ―中世写本の世界から印刷本,そしてモリスへ」

June 7,1997
ブリヂストン美術館土曜講座「書物の歴史と美術」Part2:書物の美(講師:高宮利行)

 カリグラフィーというのは,活版印刷が普及してから写字僧達が自分たちの職が無くなることを恐れて,それまで当たり前だった,写本において「美しい字を書く」という行為を「芸術」として認識させようとしてできた「概念」だそうです。同じことは,大砲の発明による白兵戦の放棄による騎士の存在意義の喪失から生まれた「騎士道」「武士道」の精神にもいえるそうです。3大発明のうちの「活版印刷」と「火薬」が「カリグラフィー」と「騎士道」を生み出したというのは面白いですね。カリグラフィーは西洋書道とも解せるし。
 と思ったら,「中世の修道僧はともかく,その後広まったカリグラフィーに 日本の書道のような「道」という考え方は無いのではないか」とのことです。うーむ。そういえば華道とフラワーアレンジメント,茶道とアフタヌーンティ,剣道とフェンシングは違うなあ。

 グーテンベルクの活版印刷が,既に完成されていた写本をなぞることからはじまって,「美しい書物」を目指していたにも関わらず,大量生産によって,価格だけでなく質の低下が進んでいったのは,DTPにもあてはまりそう。最初「何もかも自分でできる理想の実現装置」として期待されたDTPはいつのまにか,安価な版下作成キットとなり,更なる本の質の低下を招いてしまったのが似ているよーな気がする。DTPはまだまだこれからの部分があるはずだけど,読者の縮小による本自体の衰退が続く限り,「本」という形はやがて「写本」やプライベート・プレスのような趣味の世界・美術品になってしまうかもしれません。

 DTPに興味があって今もモノクロ数ページなら作ってるけど,Webやオーサリングの方がまだ個人の創作また発表の場として現実的だもん。
 今のデジタル化の動きの中で,コンピュータによって受け手としてだけでなく送り手にもなれるっていうことが一番画期的だと思う。インタラクティヴって本当はそういう意味の方が大切かも。リアルタイムのリアクションて面白いかもしれないけど,とにかく浅いというか…。うーん,わたしはやっぱりインタラクティヴの送り手になりたいのかなー。コラボレーション(ていう言い方はなんかうさんくさい)という意味ならどちらかというと未完成のものに手を入れていくグループウェアの概念だと思うし。
 何度も書いてるようだけどパソコンってその一台(複数台でもいいけど)が自分の延長になる感覚になってこそ,パーソナル・コンピュータなんだと思う。道具なんだけど,脳が手足を道具として使うような身体的な延長だと思うの。たぶんわたしが今受信機としてより発信機として(発表するしないに関わらず)使ってることの方が多いからかもしれないけど。

 チェーンブック(鎖付きの本)は,書見台だけでなく,棚に収納してるものにも付いていたそうです。書見台から離せない本って,ディスプレイから離れられないデジタル本(Webも含め)のような気がしたんですけどね。だからデジタル素材もいつか携帯するのが当たり前になるのかなーなんて。でも読むだけなら,携帯に向かってもいいけど,ウィンドウをいっぱい開いて調べものをしながらかつ周りの本も持ってきて何かを書いてる・作り出してるのは読書ではないのでやっぱり机上のものだと思う。もちろん,大きいディスプレイでかつ家の中くらいなら持ち運びが簡単,ならよいけど。疲れるから。

 モリスが「なんでも自分で何もかもやっちゃう自爆型編集者」(書物の森,DTPの迷宮(書物の森へ))っていうのは訂正します。分業というのは否定していたけど,共同作業なのですね。
 「絵入り本はマルチメディアか?」というの(高宮先生の意見ではない)に対して,グループウェアでは? と思ったのですけど,初期印刷本においては互いの作業は独立していて意思の疎通はないし,モリスの作業も皆で意見を出し合うというよりたぶんモリスがアート・ディレクターとして仕切っていたんだと思う。ただ,ウェルギリウス叙事詩のボーダーは本当に邪魔でトータルなデザインとしてみても統一がとれていないので,まだこの頃はディレクターという意識がなかったのでしょうか? あれだけ中世にこだわったのに写本の複製ではなく,白と黒(と赤)の織り成す独特の世界を作り上げたケルムスコット・プレスの本になるというのは面白い。常にお手本になるものがあっても最後にはモリスの作品という一意的なイメージに結実するのがすごいと思うし,そういう極めた作品が好きです。
 それより,アーサーのタピストリーはV&Aの回顧展にはあったのか。ちぇっ
 ところで,丸善が買った42行聖書は今慶応が持ってて,インターネットで公開してるそうですが,一体どこにあるのっ?

慶應義塾大学所有「42行聖書」
 パイロット電子図書館実証実験における実験用コンテンツだそうで,ダイレクトにつながるURLにリンクを張っても変更の可能性があるとのことですので,ぜひ見たい!という方はご面倒でも以下のやり方でたどり着いて下さい。
パイロット電子図書館→「評価実験(パイロット電子図書館評価実験)」→「実証実験システム」→「検索画面」→「9.慶応義塾大学稀覯書」と進みます。ユーザ名はguestです。

 ブリヂストン美術館土曜講座「書物の歴史と美術」Part2:書物の美
 6/14「版と本−言葉と絵が交わる場所」 柄澤 齊
 6/21「絵巻を探る−中性のことばと絵」 五味文彦
 6/28「本の肖像−現代における装幀とその表現」 菊池信義



 「IF I CAN−もしも私にできるなら
     〜ウィリアム・モリスのテキスタイルに包まれて〜」


May 13,1997 リビングデザインセンターOZONE(新宿パークタワー)

 実はOZONEに行ったのは初めてです。去年「パソコンのある部屋展」ていうのに行きそびれたし,ついでに行こうとしてなんか迷ってしまうのです。甲州街道を初台に向かって行けばいいだけなんですけど。

 で,この企画なんですけど,ホントにテキスタイル(クロスとファブリック)しかないです。モリスの思想とかもちろん期待しちゃいけないんですけど,ファブリックの使い方とか,なんか奥様手作り風でやだわ。モリスのテキスタイルは前に東急本店(渋谷)の別館(今はアニエスやサザビーが入ってる)がインテルナ館ていってた頃に置いてあったんですけど,その頃より明るい色のシリーズが増えたような気はします。日本製の発色のよすぎるテーブルクロスはまた違いますが(これは持ってる)。とにかく企画展としての価値は?なのでわざわざ行くほどのものではないです。5/27〜の「モリス展」にあわせて近郊からいらっしゃる方はせっかくですからどうぞ。(そういえば,「モリス展」のチラシも置いてなかった。やる気あるのかっ)

 このあとは蛇足。OZONEといえば,コンラン・ショップ(インテリア・雑貨)が有名ですけど,ポップな食器と一緒にさりげなく並べられた白い陶器がウェッジウッドなのはえらいかな,と。ブランドだからというより,シンプルな食器は陶器の質感がとても大切なので。
 まだ新しいきれいなビルですし,公園に隣接してますので休日のデート・コースにいいかも。オペラシティがもう見えるところにあるので,Apple,じゃない,ICCに足を延ばすとお台場よりかっこいいのでは? あ,でも初台から出発して新宿に向かってタカシマヤ・タイムズスクエアで世俗に戻るのもいいかも。相変わらず紀伊国屋は使えないけど。もちろん,新宿西口パソコン・ショップめぐりでも可。
 でもどーして新しいビルって,どれもこれも中も外もペカペカなのでしょうね? 年月とともに味はでないでしょうね。


■その2 木版手刷壁紙見本を見せてもらう
June 30,1997

 「新国立劇場」の見学の帰り「暮らしにもっとデザインを―サー・テレンス・コンランからの提案―」に行って,ついでにモリスの内装材料を見に6Fのショールームへ行く。
 インテリア素材メーカー・リリカラ(Lilycolor)の人が閉館間際なのに「どうぞゆっくり見ていって下さいねー」と声をかけてきたので「モリス好きなんですよー」って話になったら,なんと木版手刷りの本物の壁紙見本があるからお見せしましょうって言われてしまった。前に行ったときは誰も声をかけてこなかったのに,(オペラ座見学だから)ちょっときれいなカッコをしていたのが勝因か? このクソ暑いのに(ま・お下品ね)髪もおろしてたし。世の中そんなものです。ぷん。
 手袋をはめてめくったモリスの壁紙は,美術館の暗いところと比べ明るいところで見たせいか,パターンが大きく感じられたし,現在出回ってる印刷ものより色合いが柔らかというかマットな感じ。刷ったままで表面を加工していないからかも。うーん,貴重なものを見せていただきました。リリカラのおねーさんどうもありがとう。前はなかった「モリス展」のチラシと割引券が出てた。

 リビングデザインセンターOZONE(新宿パークタワー)10:30〜18:30 水曜休館 入場無料
「IF I CAN−もしも私にできるならば〜ウィリアム・モリスのテキスタイルに包まれて〜
 4/17〜8/26 リビング情報バンク(6F) ,5/8〜6/24 生活スタジオ(7F)



■1996 モリス没後100周年記念イベント ■

1996年度ラスキン連続研究講座
  統一テーマ ウィリアム・モリス(没後100年)

主催:(財)ラスキン文庫,国立教育会館(虎ノ門)
4/20「社会思想家としてのモリス」草光俊雄
5/11「モリスと中世趣味−タピストリーをめぐって」湊典子
6/8「『ゴシックの本質』とレッサーアーツの思想」川端康雄
7/13「ロシアにおけるラスキンとモリス」川端香男里

「ウィリアム・モリス展 書物の美と理想」
  ケルムスコット・プレスと世界の三大美書

11/5〜11/25 モリサワ・タイポグラフィ・スペースオープニング記念第一回企画展(飯田橋)
 モリサワ所有のケルムスコット・プレス刊行本53点と「世界の三大美書」とされるアジェンデン・プレス「神曲」,ダブス・プレス「英訳聖書」の展示(三大美書のもう一冊はもちろん「チョーサー作品集」)。
11/2 英欧写真紀行『ウィリアム・モリスへの旅』記念講演会 藤原治彦 モリサワ9Fホール



■ Goods & Books ■

Goods
 なんとなくロボット型で検索してたら東洋紡のカタログがあった。OZONEで置いてる壁紙(デスクトップに貼るやつじゃないよ)はリリカラという会社ですけど,ファブリックは東洋紡だったのかな。そんなにむちゃな値段ではなかったような。ローラ・アシュレイで揃えるより安いと思う。けど,ベッドカバーとか縫うしかないけどね。気が向いたらもう一度OZONEに行こうっと(買えないけどね)。日本製のテーブルクロスやエプロン,カップ&ソーサーはとりあえずプランタン銀座が一通り置いてたと思う。がこのへんは柄をのせただけなのでモリスのデザイン,というには無理があるけど。レターセット(ミドリ)はやっぱり銀座のUNCLEっていう文房具屋さんにあります。2,3丁目の辺。伊東屋には確かなかった。あと紅茶缶はアーサー・ブルック・ティーというのがある。お味は知らない。象印のポットもあるな。

Books
 
ウィリアム・モリス−ラディカル・デザインの思想』 小野二郎 中公文庫
 
理想の書物
  ウィリアム・モリス著 W.S.ピータースン編 川端康雄訳 晶文社
 
ウィリアム・モリスへの旅』 藤原治彦 淡交社  
ウィリアム・モリス アーツ・アンド・クラフト運動創始者の全記録
  クリスチーン・ポールソン著 小野悦子訳 美術出版社
 
美しい書物の話−中世の彩色写本からウィリアム・モリスまで
  アラン・G・トマス 小野悦子訳 晶文社

 これはほんの一部です。他にモリス自身の著作や,ジェインや家族に関する本など多数出ています。

「芸術新潮」6月号 特集「ウィリアム・モリスの装飾人生」
 語り口が軽すぎて表現が下世話なのは置いといて,彼の筋は通ってるけどあまりにバラエティな人生がおわかりいただけるかと思います。でもロセッティはどちらかというと友人というよりやっぱり師であったろうし,それよか生涯の友人であったバーン=ジョーンズにもっとスポットを当てて欲しい。ついでに彼が生み出したものよりも彼を生み出したものをも少し閲覧して欲しいなー。エピングの森とかアミアンの大聖堂とか騎士物語(これはわたしの趣味)とか…。



 他に,Vol.-2「書物の森,DTPの迷宮」とかVol.0「象徴主義ってば何?」を読んでない方はついでに読んでいただけるとうれしい。

■バックグラウンド・イメージは,壁紙「Willow Bough - 柳の枝」1887。これは現在も手に入ります。
■「IF I CAN」は15世紀のフランドル画家ファン・アイクのモットーで,モリスも自分のモットーとして,自身による刺繍のデザインにも施されている。


TOP  HOME