クラフト染織産業の情報化戦略とシステム間闘争
ー西陣織・室町卸及び播州織の情報化試行を対象に
 
 
 
 
 
 
荒木 國臣【著】
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
東海デジタルアーカイブ研究センター
 
 
 
 
 
目  次
 
  はじめにー問題の所在と分析視角・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2  第1章 繊維産業における情報化戦略の展開過程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
   第1節 『繊維ビジョン』における和装型「繊維リソースセンター」構想とLPU概念の変容・・・・・・・・・・・・・・・・3
    1)戦後繊維産業政策における4事業ミックスの展開過程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
    2)繊維産業における情報化政策の展開過程ー「繊維リソースセンター」とTIIP事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
    3)『新・旧繊維ビジョン』におけるLPU概念の変容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
  第2章 クラフト染織装産業における情報化の実証的検定と限界分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
   第1節 情報化限界の実証的検定(1)ー「西陣織産業映像情報推進システムJIN−OVIS」の挫折とVRS     への転換・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
    1)西陣織情報化の初期段階・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
     (1)昭和50年代における西陣織産業の経営状況と情報収集・伝達機能の限界・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
     (2)昭和50年代における西陣織の初期情報化の特徴と問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
    2)西陣織情報化の第2段階:「西陣織産業映像情報システムJINーOVIS」の挫折・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
    3)西陣織情報化の第3段階:「西陣織産業映像情報システムVRS」への転換・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
    4)西陣織情報化の現段階:1990年代における和装「繊維リソースセンター」の試行・・・・・・・・・・・・・・・・・32
    5)西陣織情報化現局面の問題状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
   第2節 情報化限界の実証的検定(2)ー播州織「先染織物工程情報オンラインシステム」の混迷・・・・・・・37
    1)播州織産地における産地構造の変容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
    2)播州織産地における産地振興ビジョンの展開過程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
    3)播州織情報化戦略の第1段階:プロセス・イノベーションと事業協業化過程の特質・・・・・・・・・・・・・・・・・53
    4)播州織情報化戦略の第2段階:「先染織物工程情報オンラインシステム」の展開過程・・・・・・・・・・・・・・63
    5)播州織「先染織物工程情報オンラインシステム」の問題状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67
   第3節 情報化限界の実証検定(3)ー室町織物卸市場における「情報武装型卸売業」戦略の失敗・・・・・68
    1)「情報武装型卸売」戦略の初期段階・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・68
    2)室町卸売業における情報武装型戦略の展開と挫折・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72
   第4節 その他の繊維産地の情報化試行例(4)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76
    1)博多織産地の情報化試行・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76
    2)福井繊維VANの試行・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77
  第3章 クラフト染織産業における情報化限界論の論理と検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・79
   第1節 伝統和装産業における情報化限界論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・79
    1)QR(クイック・レスポンス)機能の不適合論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・80
    2)伝統的垂直分業システムとの衝突論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・80
    3)アジア国際分業構築不要論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・81
    4)オープン化とセキュリテイー問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・81
   第2節 クラフト染織産業における情報化消極論の批判的検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・81
    1)クラフト染織産業における情報化消極論の実践的な意味・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・81
    2)伝統和装流通における情報化の取引費用アプローチ分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82
    3)多品種少量QR供給における製・販・物流融合化戦略と伝統和装産業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83
  結語・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・86
  参照文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・87
 
 
 
 
 
 
 
はじめにー問題の所在と分析視角
 
 【問題の所在
 
 成熟・衰退産業としての繊維産業の将来を、市場高感度型製品の創出に求めるためのトワーク拠点として、「繊維リソースセンター」設立が推進され*1、積極的な情報化戦略が展開されている。ところが、繊維産業の一翼を占めるクラフト染織産業の情報化戦略の多くは混迷状況におちいり、情報化戦略の有効性をめぐる積極論と消極論の分岐が生まれている。手放しの賛歌とペシミステイックな消去論の両極を廃して、挫折と混迷の事実を把握し、その要因を分析して、産地再構築における情報化戦略の有効性の方向を明らかにすることが緊急に求められている。 究明する最大の問題は、クラフト染織産業における情報化戦略が伝統的な生産システムを再編成する過程で、産地企業間関係の水平的ネットワーク化と、伝統的な垂直的分業の産地システムの矛盾から誘発された新旧のシステム間闘争にある。このようなシステム間闘争は、クラフト染織産業の情報化戦略とクラフト型産業システムは、本質的に非和解的な背理の関係にあるのか、それとも主として情報化の推進形態と手法の問題であるのかを明らかにすることにある。                   
 
 【分析の方法と対象
 
 本稿は、高度なクラフト性と産地集積性を持ち、伝統的な生産システムが強固に継承されてきている典型例として、西陣織(京都)・播州織(北播磨)および室町卸問屋(京都)における情報化試行を対象とした比較分析を試みる。なぜなら、これらの産地は、日本で最も先駆的に情報化を試行してきた産地であり、先端的経営と伝統性が集中する典型的なモデル産地であり、今後のクラフト染織産業の情報化の課題が最も鮮明に凝集していると推定されるからである。分析の視点は、第1に情報化戦略導入が導入された産地実態、第2に産地情報化ビジョンの比較分析、第2に情報化推進過程における産地内の動態を明らかにし、システム間闘争の発現形態の比較をおこなう。最後に、情報化再構築に向けた課題の共通性と独自性を考察する。   
 先行研究をみると、情報化推進を肯定的・楽観的に評価している文献はみられるが、問題状況を報告・解明している文献は残念ながら少ない*2。本稿では、問題状況を分析した先行研究に依拠しつつ、産地協同組合と業者への聴取調査とアンケート調査、自治体商工部・研究機関への聴取調査による実証的な分析を試みる。 
 
 聴取調査 京都市総合企画局情報推進室          京都染織デジタルアーカイブ研究会
      京都デジタルアーカイブ推進機構         西陣織工業組合
      デジタルアーカイブ推進協議会          京都織物卸商業組合
      新映像産業推進センター             北播磨地場産業開発機構
      デジタルアーカイブ・ジャパン           西播地域地場産業振興センター
      愛知県絞工業組合               兵庫経済研究所
      京都絞工業組合                播州織構造改善工業組合
      京都伝統産業青年会              播州織工業協同組合
      京都染織青年団体協議会            播州織産元協同組合
      京都市役所伝統産業課
 
 
 
 
 
 
第1章 繊維産業における情報化戦略の展開過程
 
 第1節 『繊維ビジョン』における和装型「繊維リソースセンター」構想とLPU概念の変容
 
 1)戦後繊維産業政策における4事業ミックスの展開過程
 
 戦後日本の繊維産業政策の戦略的な重点は、[設備調整]・[構造改善]・[ファッション対策]・[基盤整備事業]の4事業であり、この4事業の配置によって繊維産業政策史を段階的に整理すると次のようになる(表1参照)。  
            
    昭和30年代     :
設備調整対策
 
    昭和40年〜60年代 :
設備調整対策
構造改善対策
 
                        (近代化→知識集約化)
    平成元年〜平成6年 :
設備調整対策
構造改善対策
ファッション対策
 
                        (知識集約化→情報化)
    平成6年〜現在   :
構造改善対策
ファッション対策
基盤整備事業
 
 
 昭和30年代は、織布業については団体法(当時は中小企業安定法)による設備調整命令(登録制)を発動し、紡績業等は繊維工業設備臨時措置法(繊維旧法、のち繊維工業設備等臨時措置法いわわゆる繊維新法)による設備登録制と過剰設備処理を実施する[設備調整対策]戦略が中心であった。               昭和40年代は、国際競争力強化特定4業種(綿スフ紡績業・合繊紡績業・綿スフ織布業・絹人絹織物業、その後メリヤス・染色業が追加される)を対象に設備近代化・企業集約化をめざす特定繊維工業構造改善臨時措置法(以下「特繊法」)が成立し、各産地の構造改善工業組合による構造改善事業計画による紡織などの中間工程の上乗せ廃棄と設備近代化をドッキングさせた「横の構造改善」といわれる[設備調整対策+構造改善対策]戦略に移行した。その推進機関として繊維工業構造改善事業協会が設立され、近代化政策による革新織機への代替が促進されたが、大メーカーの設備過剰・中小機業の不振・転廃業が深刻化していった。            昭和50年代は、高付加価値分野への進出をめざす「70年代の繊維産業政策のあり方」(産業構造審議会繊維部会・繊維工業審議会合同部会 昭和48年)と繊維工業構造改善臨時措置法(繊工法 昭和49年)・中小企業近代化促進法第3次改正によって、「知識集約化」を構造改善制度に組み込む政策転換がうちだされた。従来の設備近代化による「規模の経済」からソフト重視に転換したのである。ここでは、従来からの設備調整を踏まえつつ、設備近代化と商品開発・技術開発を結合する実需直結型構造改善がめざされた*1。特繊法と繊工法の違いは、構造改善の実施主体が特定業種ではなく全ての繊維工業者となり、さらに、昭和50年の中小企業近代化促進法第4次改正によって、構造改善の実施方式が、単一業種内に加えて、相互に連関する異業種垂直連携という「縦の構造改善」に転換した。           
 平成元年〜平成5年代は、昭和63年に繊維工業審議会と産業構造審議会の答申である『新繊維ビジョン(今後の繊維産業及びその政策のあり方)』が示した、多品種少量・短サイクルの内需対応の生活文化提案型産業への転換をベースに、繊維工業構造改善臨時措置法第6次改訂(平成元年〜平成5年まで)がおこなわれ、繊維リソースセンター設置とLPU(リンケージ・プロダクト・ユニット 実需対応型補完連携)による構造改善グループをめざす[設備調整対策+構造改善対策+ファッション化対策]戦略へと展開した。                 平成6年〜現在までは、平成6年の「繊維産業構造改善臨時措置法(新繊維法)」の成立とQR基盤整備がスタートし、1995年(平成7年)から開始されたLPU導入によって、従来の保護育成型近代化政策から、東アジア国際分業を前提とした高付加価値製品に切り替える本格的な転換が推進される。新繊維法は、政策対象を「繊維工業」から「繊維産業」に拡大し、生産から流通に至る繊維関連産業総体を構造改善の対象とする[構造改善対策+ファッション対策+基盤整備対策]戦略であり、QR推進の情報ネットワーク構築にある(表2参照)。    
 【表1 戦後繊維産業政策展開史】(出所:通商産業省『繊維ビジョン』1999年)

 
 繊維  ビジョン 設備調整 a
 
構造改善 a
 
ファッション対策a
 
基盤整備
 
通商枠組み
 
技術開発
 

ー昭42


 

昭31年

昭36年
 

<繊維旧法>
<新繊維法>
<中団法>
(昭32ー平7)


   ×

 


   ×

 


  ×

 

  STA
(昭36ー37)
  LTA
(昭37ー48)










自動縫製システム(昭57ー平2)

昭42年〜
 

昭41年
昭43年
昭46年



 

<設備事業>
(昭46ー62)
 

<特繊法>
ヨコの構造改善
(スケールメリット)


   ×
 


  ×
 

  LTA
(昭37ー48)
 

昭49年〜




 

昭48年

昭51年

昭53年
   
昭58年







 

<特安法>
(昭53ー58)
<産構法>
(昭58ー61)
 大企業

<繊工法>
タテの構造改善(垂直連携)



 




   ×


 




  ×


 

  MFA
(昭49ー平6)











 







  








 
 カルテル
 

 

平元年〜




 

昭63年



平成2年
 






 



企    業    カ    ル

<旧繊維法>
LPU
(個別グループ)


 

RC
(情報化
拠点)
 

IFI
(人材育成中核機関)



  ×


 

 

 FT構想

 
人間感覚計測応用技術
(平2-平10)

平6年〜













 

平成5年

平成6年


平成7年

平成8年

平成9年

平成10


 





 





 

<現行繊維法>
QR・クリエーション型構造改善事業










 















 















 











  



情報化基盤整備事業
TIIP1
TIIP2


QRC本格運営開始






WTO.ATC.
(平7ー17)







 












 







染色排水有害物質除去技術・廃棄物最終処理技術開発
 
10月末全廃








 
正式
開校

 
産地
人材
育成
支援



 
(平8-平9)
 
  (注)RC  :繊維リソースセンター          産構法:特定産業構造臨時措置法
     IFI  :(財)ファッション産業人材育成機関    TIIP1:繊維産業革新基盤整備事業フェーズ1
     FT  :ファションタウン            TIIP2:繊維産業革新基盤整備事業フェーズ2
     STA :綿製品国際貿易短期取極        QRC :QRコードセンター
     LTA :綿製品国際貿易長期取極        WTO.ATC:WTO繊維協定
     中団法:中小企業団体の組織に関する法律    MFA :繊維製品の国際貿易に関する取極
     特安法:特定不況産業安定臨時措置
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  2)繊維産業における情報化政策の展開過程ー「繊維リソースセンター」とTIIP事業
 
 繊維産業における情報化政策という視点から、高度成長期以降の展開を[知識集約化→情報ネットワーク化→デジタル・アーカイブ化]という3段階に区分して考察する。
 第1段階[1970年代 知識集約化戦略]は、産業構造審議会『70年代の産業構造ビジョン』(1971年)・中小企業政策審議会『70年代中小企業ビジョン』(1972年)が提起した、重厚長大型重化学工業を中心とする資本集約型成熟化を、知的経営資源を投入する新製品・新分野開発によって乗り越えようとする戦略であり、繊維産業ではデザイン開発力による製品差別化をめざすデザイン開発型企業への転換である。「知識集約化」は、、開発・生産・販売・最新情報収集・人材育成などの相乗効果を生む「範囲の経済」を実現する経営情報化を意味するから、広い意味で「情報化」とみなすことができる。
 第2段階[1980年代以降 情報ネットワーク戦略]は、中小企業政策審議会『80年代中小企業ビジョン』(1980年)によって提起された。フレクシブルな多品種少量生産によるQR提供を実現する、企業内業務の効率化をめざす情報処理システムの構築と、非定型的市場情報に敏感に反応するPOSシステム・業界VAN・CADーCAMシ
 第3段階[1990年代以降 デジタル・アーカイブ戦略]は、筆者が独自に区分した情報化戦略であり、繊維産業政策としての戦略的な認知は未だ受けていない。そもそもデジタルアーカイブは、歴史的文化財や資産をデジタル高精細映像で記録し、マルチメデイア・データベースに半永久的に保管・蓄積・公開利用することを意味した。このデジタル・アーカイブをビジネス化することによって、繊維産業の製品企画・デザイン部門に画期的な変化がもたらされ、顧客対応型CE・One to Oneマーケッテイングが飛躍的に前進する。つまり、産業のサイバー化の可能性を秘めた先端的な情報ネットワークが構築される。現段階では、京都デジタルアーカイブ推進機構の先導的な試行がある。第2段階以降の繊維産業情報化戦略の政策的な起点は、繊維工業審議会・産業構造審議会の合同答申『今後の繊維産業及びその施策のあり方(以下『新繊維ビジョン』と略称)』(1993年)にある。『新繊維ビジョン』は、公的な行政としては最初に繊維産業の未来予測を提起した構想であるが、そこでは、アジアNIES[定番・量販品]U日本[高付加価値品]という新しい国際分業を前提とした棲み分け、つまり国内生産は量的に縮小するが、質的な比較優位を構築するとし、その重点施策として情報化による「ニューフロンテイア戦略」を提起している(図1参照)。
 
 【図1 「今後の繊維産業及びその施策のあり方(新繊維ビジョン)」の概要】(出所:通商産業省『繊維ビジョン』P3を                                    参照して筆者作成 1999年
 
  我が国繊維産業の今後の方向ー市場創造とフロンテイア拡大  
 




 
  プロダクトアウトからマーケットイ  



 
  クリエーションを育む産業構造の構築  



 
  グローバル戦略の確立  



 
○マーケットインによる市場を軸とした関連業種間の連携とQR体制を確立し、効率的な流通構造を構築する
 
○ファッション産業・生活文化提案型産業をめざし、消費者を刺激し潜在的ニーズを引き出すクリエーション
 
○生産拠点と市場を世界に求め、豊富な国内資源とアジアとの交流によって世界ファッションをリード
 
 
                       a
   繊維産業政策の在り方ー市場創造・フロンテイア拡大へ向けた国内拠点と海外拠点の整合的確立  
    新たな構造改善の推進と基盤整備
 ー繊維工業構造改善臨時措置法の改正・延長ー   国際展開の円滑化  








 








 
  効率化推進  







 
  開発促進によるクリエーション型  







 
現地従業員研修・技術移転
○投資環境整備

 
○LPUの弾力化による構改事業推進
 
     産業構造
○ネットワーク型組織による開発促進
 生産チームよりも流通・デザイナー参加
○基盤整備
 人材育成・技術認定・品質行政・
 自主独立の中小企業・差別化競争の舞台
  としての産地・地域計画との連動

 
  情報化促進によるマーケットイン型     通商政策  
     産業構造
○流通参加の情報化
○基盤整備 ・情報化推進産業組織
     ・取引刊行改善
 
○MFA規制・セーフガード
 発動との比較考量による
○不公正貿易への対応

 
 『新繊維ビジョン』は、日本の繊維産業が成熟・衰退に至った構造的な問題として、@非効率的供給体制の残存・マーケットインの弱さ・クリエーション不全、A国際展開が生産拠点にとどまり、開発拠点へと発展していないこと、B技術開拓・人材育成によるニューフロンテイア展開が立ち後れていること、C空洞化と二極化に対応する産地戦略が整備されていないことの4点を挙げている。今後は、輸入規制などの保護政策ではなく、むしろNIESの開発支援をめざしながら、同時に内需主導型繊維産業構造を実現するという最も困難な課題を提起している。その戦略は、「プロダクト・アウトからマーケット・インへの構造改革」・「クリエーションを育む産業構造」・「グローバル戦略の構築」を基本にして、「ファッション化への対応力」と「QR(クイック・レスポンス)*1機能の向上」を媒介にした「新しい実需対応型供給体制」の構築によって、「生活文化提案型産業への新たな展開」をはかるとしている。      第6次改訂繊維産業構造改善臨時措置法(1989年)によってスタートした「繊維産業革新基盤整備事業TIIP(Textile Industry Innovation Program)」事業は、「高度情報化技術を活用して、繊維製品を扱う電子市場の実証のためのコンピュータ・ネットワークを開設し、あわせて生産・流通・販売のプロダクト・パイプラインを統合・短縮し、QRを実現するための情報システム・生産技術と開発などの研究開発をおこなう。長引く不況の下で、円高の進行による輸入の急増と国内の産地空洞化現象に直撃されて、特にそのしわよせが産地を形成する中小企業に集中しているところから、事態の根本的打開を図るための施策である」(繊維産業構造改善事業協会『繊維産業革新基盤整備事業の基本構想』1995年)とされ、次のような業務システムを開発するとしている(出所:繊維産業構造改善事業協会「電子ネットワークを利用した業務システムについて」1995年12月 図2参照
 【図2 TIIP構想概要】(出所:筆者作成)
[TIIPT業務システム開発]
  ○開発対象システム 原糸・織布・染色・副資材・縫製・アパレル・商社・卸・小売の全繊維関連業種の商品開発・生産計
          画・生産指示・需要予測・在庫管理・物流管理・電子ネットワーク管理などの業務
  ○開発テーマの選択基準
   @QR対応性(多品種・小ロット・短納期の生産・販売に適する革新的なもの)、A波及・導入の容易性(中小企業が導入   しやすいパッケージ価格の廉価性、直ちにQR対応が可能なパッケージ化ができる。個別の導入に当たって複雑な調   整が必要なものは望ましくない)、Bオープン性(特定の機種・メーカーに依存せず、できるだけ多くの機種に対応でき   る。MSーWindows又はUNIX上で稼働する)、C互換性(企画・商談・生産指示から支払・精算までの情報処理一貫   性を保つ業務システム間の互換性を持つ。EDIは原則として、QR推進協議会・繊維産業事業協会の定める標準メッセ   ージを使用する)
[TIIPU生産管理技術・生産技術システム開発]
[その他]TIIPの参加資格・内容]
  ○参加資格 @開発実績を有し、遂行に必要な組織・人員・設備を有する、A開発遂行に必要な経営基盤を有し、資金・  設備の充分な管理能力を有する、B参加は単独又は複数の共同(代表企業を定める、但しTIIPTは繊維企業が参加し  ていることが望ましい)
  ○開発費(1テーマ上限1億円)、○開発期間(必要最小限)、○成果物知的所有権(事業協会との共有)
[TIIP実証ネットワーク構築]
[TIIP電子市場実証実験]
  ○参加資格
 @企画・生産加工・物流・取引販売のネットワーク実験に関心のある法定「繊維事業者」、Aネットワーク利用  人数(1自業者当たり最大5人)分の実験専用パソコンを設置できること。ハード・ソフトともにTCPーIP対応を含めた接続条  件を満たしている。B貸与ソフトの適性管理ができるもの(実験ソフトは事業協会の無償貸与・1企業当たり接続ID5個)、C  取引グループの一括参加可能、 ○参加予定数(全体で3000社想定)、○パソコン(パソコン・デイスプレー・CD−ROM・  デジタルカメラ・画像スキャナー・ラベルプリンターは参加者側用意

A:多品種・小ロット商品開発・生産・供給対応の業務システム
(1)CADデータ変換システム                                        標準EDIシステム:現在のCADシステムは、機種のデータ交換性が低く、織布・アパレル・縫製の連携したシステム構築が困難であるため、CADで使用する部品データ・出力データの互換性を高める部品データベース構造・出力ファイル変換システムを開発し、織り柄作成・捺染用製版・衣装デザイン・裁断型紙作成のリードタイム短縮と多品種・小ロット生産を効率化する
(2)裁断パーツ物流システム
 縫製での型紙による生地裁断に代わって、コンピュータ支援自動裁断機(CAM)を有効利用するシステム。テキスタイルメーカーで生地を裁断し、色柄・サイズのパーツをカートンボックスで縫製メーカーに配送して、コンピュータ管理システムの支援の下でパーツを間違いなく組み立て包装し、QR対応をおこなう。
B:商品開発・生産・供給のリードタイム短縮適合の業務システム
(1)カートンボックス配送管理(SCM)・事前出荷明細通知(ASM)システム
アパレルから物流センターを経て小売店まで商品配送するときの商品管理をカートンボックス単位でおこなうシステム。入荷時検品の簡略化・物流センターの無在庫化によって、リードタイムを短縮する。SCMは、ASNシステムと共に利用する。
(2)ロールID対応型事前出荷明細通知(ASN)システム
ロールIDを利用し、織布・ニッター・染色・アパレルの管理をおこなうシステム。ロールIDは、ASNと共に利用する。
(3)自動補充システム
 店頭在庫量・売上予測による追加発注・納品を自動化し、在庫補充のリードタイム短縮と発注作業の省力化を実現する。
C:商品開発・生産・供給の単品管理適合の業務システム
(1)EDI受発注システム 中小企業を対象にした商取引の基本である商品の発注・受注をコンピュータでおこなうシステム
(2)JANコード自動付番システム
 コンピュータによる単品管理をおこなうJANコードソースマーキング支援ツールとして、JANの採番・空き番管理システム
(3)4レベルPLU対応型POS標準ターミナル
多大のJANコード情報を効率的に処理するため、従来のプライスルックアップ(PLU)機構を4レベル型の階層型PLU機構に改良したPOS標準ターミナルを開発する
D:電子市場適合の業務システム
(1)電子情報活用型商品開発システム
 生地見本・試作品に要するコストと時間を短縮するため、CAD・CAM・ネットワーク技術を組み合わせた画面による展示会やテスト販売をおこなう
(2)ネットワーク対応電子カタログ
 画像処理・商品検索システムによる商品見本の電子化を図り、ネットワークによるカタログデータの検索・配布ができる電子展示会をおこなう。
E:業務フローの改善・互換性確保などの共通的基本的基本テクノロジーに係わる業務システム
(1)フロア・レデイ・マーチャンダイジング(FRM)システム
ハンガーマーキング・スキャニングモジュール・物流管理システムなどによるアパレル・小売店での一貫ハンガー物流をおこなう。これによりダンボールレス化・梱包・開梱作業が不要となり、店頭へのリードタイムが短縮される。
(2)加工指図システム
指図ベース原価計算への応用を考慮したCADパーツデータ、表地・副資材・付属品データなどの指図ベース原価計算への応用を考慮した、商品企画部門・デザイン部門から縫製部門への加工指示を電子化するシステム。パーツデータ、表地・副資材・付属品データをデータテーブルとして整理する。業務システム間の互換性と指図の原価計算に必要な項目を持つ。
(3)アクテイビテイ・ベース・コスト分析システム
作業工程でおこなわれた個別の活動を最小単位として、商品・サービスの原価計算をおこなうシステム。要した時間・労力に応じたコスト配分の分析が容易となり、リエンジニア計画の立案と適切な評価が可能となる。
(4)あいまい検索システム                                     市場の成熟化が進行し、需要の個性化・ソフト化に対応していない供給側の問題を解決するための、デザイン・素材・製法に係わる類似語や同意語を体系的に整理した辞書を整備し、これを使用するあいまい検索システム。産地や商品分野が異なる企業で、同一のデータベース・システムを構築できる。
(5)多機能EDIシステム 経営・情報・商品企画・営業・購買・製造・物流・経理のデータを統合的に送受信するシステム。
 
 
 TIIP事業の特徴は、それまで個別に構築されてきたネットワークを、データ交換の業界標準化によって繊維業界の川上から川下までを統合し*1、EDI(electroic Data Interchange電子データ交換)とJANコードを制定し、各企業間の受発注業務の効率化を実現する点にある(図3 参照)。                   
 
 【図3 繊維産業EDI標準のイメージ】(出所:筆者作成)


 

QRコードセンター
 


 
                        JANコード情報 JANコード情報
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テキスタイル

 
発注・納品・決済
 

アパレル

 
発注・納品・決済
 

小 売

 
 A   @販売情報(単  
  品)



 
注・納品・決済       Bソースマーキング        @発信情報
                      発注・納品・決済
SCM
 


 

染色・織編業
 
A発送情報
 

縫製工場
 
@発送情報
 

物流センター
 

  *@RAD間EDI標準    ATA間EDI標準 
  ロールID
ラベル

 
  SCM  
  JANラベル                B縫製(AS間)EDI 
                                       標準     
 
 1999年の繊維産業構造改善臨時措置法の期限切れと繊維産業構造改善事業協会の廃止(中小企業総合事業団に移行*2)によって、TIIP事業は1998年3月に実証実験を終え、次世代の繊維産業高度情報化策定に向けた『中間とりまとめ(1998年)』では、次のような構想が提起された。
 









 
  [情報共有・情報流通の促進]  
●SPA(製販統合型製造小売)
●QR体制構築
  @標準EDIメッセージ標準化整備
  A繊維産業革新基盤整備事業TIIPaEDIソフト・ネットワーク実験の第1段階終了(1997年)、今後は
                 繊維産地内情報化システム開発へ向かう(今治・石川・尾州・播州)
  BQRコードセンター整備a商品情報データベース本格運用開始(1997年)
  CTIIPの波及効果a生機IDコード、SCM・ASNの改良、アパレル企業と百貨店間取引効率化
  Dサプライチェーン効率化促進(垂直連携・統合)
 
 このような通商産業省が主導する繊維産業情報化推進政策が、実態としてスムーズに進展していない背景には、日本の繊維産業の独特の生産・流通システムがある。                        第1は、メーカーと小売のパートナーシップを阻む委託販売・返品制である。委託販売・返品制は、商・工機能分離のリスクヘッジ構造であり、小売業は価格決定の主導権を喪うかわりに、在庫管理と在庫リスクを負わないで済むが、製品流通の不透明性をもたらす。第2は、大手メーカーが個別に推進してきたシステムを、業界標準に変換する場合のコード・分類のコスト負担問題が生じるという点である。
 このような問題点を克服する方向として、@電子商取引の高次化によって取引効率化・透明化を図り、流通の多段階性による機能重複を解決する、AサプライチェーンのBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)、B垂直連携・再編(機能内製化・SPA・商機能取り込み・パートナーシップ)などを挙げているが、このような方向は、さらに産地内の軋轢を誘発すると予測される。なぜなら、定番品の大量生産と超高級一品生産の双方を実現してきた複雑・多段階、零細経営の下請・賃加工といった既成の生産システムと、企画・開発や需要即応型生産システムは、基本的に相容れないからである。『新繊維ビジョン』(P4参照)は、このシステム間闘争を不可避の打破すべき課題として、次のような「構造改善事業」の基本フレームをめざしている。        
 





 
  伝統的産業構造  
  ○分断性
  ○複雑性
  ○産地性
  ○零細性
  ○下請制


a


 

○繊維リソースセンター創設
○LPU(実需対応型補完G)
○情報基盤整備
○ネットワーク化
 


a既成構造打破a

 

○商品企画機能
○新たな構造改善
○情報化環境整備
 




 
 
 
 この「構造改善事業」推進にあたって、個別企業へは、融資・債務保証・補助金・課税特別措置をおこない、産地組合・第3セクターによる円滑化事業の実施、事業協同組合による施設共同化の3つのとりくみによって、統合的な情報ネットワークを構築するとし、このインフラ拠点として「繊維リソースセンター」を位置づけている(図4参照)。
 
 【図4 構造改善事業施策体系】(出所:通商産業省生活産業局『新繊維ビジョン』1999年を参照して筆者作成)

 「繊維産業構造改善臨時措置法a繊維産業の構造改善を図るための基本指針(繊維法第3条通産省制定)
 
 ○ <繊維事業者>構造改善事業計画(繊維法第4条←通商産業大臣」承認)  
     【事業内容】   【助成措置】
 
 

 
 
 
 
・新商品、新技術開発
・設備近代化
・生産規模、方式適正化
・販売、在庫管理の合理化
  (情報ネットワーク化)
・経営規模適正化
・取引改善、構造改善事業
    ・融資制度     中小企業事業団
日本開発銀行
中小企業設備近代化資金
中小繊維工業活性特別貸付


 
 

 
    ・債務保証←繊維産業構造改善事業協会
    ・補助金  情報ネットワーク
         地場産業等振興対策
                      ・課税特別
 ○ <産地組合・第3セクター>構造改善円滑化計画(繊維法第5条の2←通産大臣承認)  
      【事業内容】   【助成措置】



 
 
・新商品、新技術開発  
・人材育成       
・情報提供       
・共同施設設置、設備リース
・展示会開催その他構造改善
   ・融資制度     中小企業事業団
日本開発銀行
中小企業設備近代化資金

 

 
   ・債務保証←繊維産業構造改善事業協会
   ・補助金 ←地場産業等振興対策
                       ・課税当別
 ○  <事業協同組合>施設共同化事業計画(施設共同化事業実施要項←通産大臣承認)  
      【事業内容】   【助成措置】


 
・共同施設
・設備リース
・その他
   ・融資制度←中小企業事業団
   ・債務保証←繊維産業構造改善事業協会
   ・課税特別
 
 この「構造改善事業」推進施策の特質は、第1に、設備近代化・生産規模と方式の適正化・販売と在庫管理の適正化・経営規模の適正化・取引改善等の経営改善を、基本的にすべて個別事業者に委ねている点にある。従って、中小零細規模の比率が高い繊維関連企業では、多様な助成措置を利用し得る一定の資本力を有する企業は限定され、小零細規模企業の事業参入が閉ざされる可能性がある。特に、販売・在庫管理を情報ネットワーク化し得る企業は、初期投資に耐えられる資本力を持った企業か、または既に自前の販売ネットワークを確保しているアパレル大メーカーに限定される。取引改善では、伝統的に形成されている複雑・多段階の流通チャネルのなかで、集散地問屋の支配的圧力から自立し得る産地メーカーは少ない(特に和装業者の場合)。つまり、個別業者の自立的な改善努力を補完する共同化事業の放棄によって、産地メーカーの階層分化が誘発される可能性がある。。
 第2に、産地組合と第3セクターによる情報化戦略が、単方向的な「情報提供」のレベルにとどまり、双方向的な「情報交流」ではないという点である。情報化拠点としての「繊維リソースセンター」が、従来型の展示会場の機能向上ではなく、企画・開発力を強化する拠点として位置づけられるためには、ネットワークの双方向性が求められる。                                    
 次に拠点施設となる「繊維リソースセンター」の位置づけは、『旧繊維ビジョン』(昭和58年)の「ファッションタウン」をめざす「ファッション・コミュニテイー・センターFCC」を引き継いだ「繊維工業の創造力強化及び相互交流の促進のための基盤的施設」(通産省生活産業局繊維製品課による概要説明)とされ(図5参照)、中央(繊維工業改善協会)と全国ネットを結ぶ地方拠点として、全国主要13繊維産地に設置される。
 
 【図5 繊維リソースセンターの機能】(出所・通商産業省『ファッション大国への道』1991年 P222を参照して筆者作成)
 


 

繊維工業構造改善事業協会*1
 


 
                   指導・調整・支援
 
(産地)繊維リソースセンター
 
 














 

 

(政府出資+産地組合又は自治体・業界・銀行














 



 
  [情報収集・整理]   の第3セクター方式)


 
素材・2次製品・技術・需要情報
等の資料・データ収集整理
 
 





 
  [情報提供・交流]  


 
  [調査研究]  


 
  [人材育成]  



 
○素材閲覧、データ提供
○情報機器による専門家指
○生産者と内外デザイナー
 ユーザーとの交流
 
○素材動向分析
 ○需要動向分析
 
○テキスタイルデザイナー
  マーチャンダイザー養成
○センター研究成果公開
 
 
 
   [利用対象:デザイナー・アパレルメーカー・マーチャンダイザー・服飾関係学生・海外バイヤー]
 
 
 このような「繊維リソースセンター」のプロト・タイプは、アパレル大メーカーにおいてすでに単独で推進されてきたが(表4参照)、@大企業との系列化した賃加工生産形態により、企業間ネットワークも下請企業のインタオペラビリテー不在によって重複投資が余儀なくされる、A系列企業の零細過多性によって、資金・人材難からコンピュータを導入していない企業が相対的に多い、B産地組合の体制が未成熟である産地が多い等の問題を残している。
 
 【表4 繊維企業コンピュータシステム開発例】(出所:筆者作成)

















 

   シ ス テ ム

   概  要

   開 発 企 業

繊維企業間データ交換システム
 

取引データのオンライン交換
データ入力作業の省力化

伊藤忠開発 80社参加(1988年)
 

ミシン糸トータル管理システム

 

多品種小ロット・短サイクルに対応する販売・在庫・原価・ 生産管理のOA化

富士通フェニックスセンターにおけるトータル管理・東洋紡
 

織機モニタリングシステム

織布工場のFMS

大和紡

コンピュータ・カラー・マッチングシステム

測色・色合わせ・調合作業の自動化、染色FAシステムのモデル

クラボウ
 

全自動ニットマシン

 

デザイン企画から製品化までの一貫システム
 

島精機製作所のニットマシン全自動化システム
 

















 
 こうしたプロトタイプの経験を踏まえたうえで、業界全体の標準化をめざす「繊維リソースセンター」を推進する政策的な課題は何であろうか?
 第1に、効率的・開放的な川上から川下に至る一貫した総合的情報ネットワークの構築は、次の@〜Bのベストミックスが実現できるかどうかに懸かっている。
 @共同情報処理システムによって、運用コスト軽減・変換コスト軽減・汎用プロトコル共同開発・ハード共同購入 によって、初期投資と運用コストを低減すること
 Aビジネスプロトコル標準化を、企業経営の管理体系に影響が少ない分野から実施する。データ交換フォーマ ット・帳票標準化のための用語統一から始めて、商品コード・属性コード標準化に到るフェイズを設ける。
 B業界データベースを、各工程段階別一次データベースと、それらを交流する二次データベースから構成し、さ らにファッション・技術情報の専門的データベースと産地情報データベースを結ぶ複合的データベースに発展さ せる*1
 第2は、中小零細企業のデジタル・デバイドを克服する支援施策であり、中小零細企業への指導・啓蒙活動を充実させ、ハード・ソフト導入への金融・税制支援、中小企業大学校・事業協会による技術指導員育成が求められる。
「繊維リソースセンター」の具体的な展開は、第2章第2節の播州織の実証的な検定で考察する。
 
 
 
 
 3)『新・旧繊維ビジョン』におけるLPU概念の変容
 
 繊維リソースセンターを情報拠点としつつ、生産の主体となるのがLPU(linkage puroduct unit 実需対応補完グループ)である。LPUは、『旧繊維ビジョン』(昭和58年)で、構造改善事業の推進主体として提起され、「高級化、多品種・少量短サイクル化に特色づけられる市場に柔軟かつ積極的に対応するグループを形成すること」を目的とした「実需対応型供給体制の構築に必要な情報収集、商品企画、多品種・少量対応などの諸機能を相互に補完」する「複数の企業の連携」と位置づけられている。    
 ところが『新繊維ビジョン』(昭和63年)では、LPUグループを「我が国繊維産業の構造改革をリード」するものと高く評価したうえで、「今後の構造改善の在り方については、LPUの基本的発想を生かしつつ、効率性追求からさらに進んで情報化・開発へと軸を移動するためのネットワーク型への転換」を提唱し、LPU概念の質的な転換が図られた(下線部筆者)。                                      このようなLPU概念の「弾力化」*1といわれる転換をもたらした第1の要因は、新素材用途を軸にしたメーカーと流通企業の共同開発チーム(PT)の試行や、実際に情報ネットワークの形成によって実現した新合繊(テンセル)の成功にあった。
  合繊のPT*2  
○元請(企画機能)と下請(生産機能)の系列組織  ○大量生産・大量販売の最適システム
○生産行為と設備近代化によるチーム化     ⇒○下請企業群の開発インセンテイブ低下
○チーム加盟による安定的取引関係        ○下請け工賃引下げによる受注競争誘発
 




 
   ↓                     
  新合繊によるPT戦略の転換  
○生産から開発を軸とする連携          ○自主独立の提案型中小メーカー
○企画機能を持つ流通・デザイナー参加     ⇒○系列型からネットワーク型組織
○連携による情報の共有            ○企画機能のネットワーク連携
 




 
 第2の要因は、流通サイドの短納期且つ柔軟な経営指向に対して、メーカーサイドの設備重視という経営指向の違いから、流通サイドが旧LPUに参加しなかったことにある。なぜなら旧LPUは、中小メーカーの設備近代化を中心とした構造改善であり、流通サイドのインセンテイブはむしろ情報化にあったからである。
 こうして登場した新LPUの「弾力化」の内容とねらいは何であろうか*3。1994年(平成6年)に繊維産業構造改善事業協会がまとめた新繊維法施行後の5年間(1989〜1993年)のLPU実施状況調査からみる(図6@・A参照)。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 【図6@ LPU構造改善事業の概要と特徴】(出所:繊維構造改善事業協会『LPUによる構造改善事業等の実施状況』                      平成6年を参照して筆者作成)







































 

   構造改善事業形態


     概    要

@構造改善円滑化事業(法第5条2項型)
  産地組合による構造改善事業実施グ
  ループに対する育成・支援事業事業
  実施グループ  






 


 9







 

 6/9グループが旧繊維法による知識集約化構改事業の産地一括型構改事業から継承的に円滑化事業に移行し、傘下LPUの構成員に近代化の設備リース事業を中心としている。新3グループは、傘下組合員のLPU化をめざし、当面は産地組合の共同施設の推進をめざしている。旧法産地一括型構改事業に参加したが、新繊維法円滑化事業から撤退した産地組合は7組合(必須要件であるグループ構成員間の垂直連携関係ができない・組合役員の債務保証が得られない等の理由)。円滑化事業実施9グループ傘下LPUは23グループ・参加事業者119名、1実施組合あたり参加LPU数は2.6グループ、1LPUあたり構成員数5、2名。

A計画・構造改善事業
 

47
 

○LPUグループ平均構成員数*1(最高20・最低4名)・平均投資額
  4条1項型  5、2名・  289百万円
  4条2〜4項型 8、1名・1,514百万円
  総グループ  6、7名
  910百万円
○構成員業種
  小売業者を含むものが3グループ(アンテナショップの役割を担 い、自社ブランドの製品開発・他商圏開発をめざす)、非繊維事業 者を含むものが2グループ(合成皮革製品製造業者のワンセット販 売、情報処理業者によるグループ内情報化をめざす)
○垂直連携状況(商取引関係における発注企業への依存率)
  全グループ平均     73%
  4条1項型グループ平均  67%
  4条3・4項型グループ平均 79%
○垂直連携形態(括弧内はグループ数を示す)
 親機(アパレル製造卸)と子機(下請縫製業者)のグループ化(22)
産元商社と賃機(3)・親機(アパレル製造卸)と子機(下請縫製業者)と異業種(14)・異業種(7)・同業種協同組合員と異業種協同組合員(1)


 
   


23
 
○法第4条1項型(任意グループ)
   産地組合の円滑化事業実施の下に
  おける法人格を持たない任意のグルー
  プ化によるLPU
   


 1
 
 ○法第4条2項型
   協同組合の組合員が非組合員であ
  る繊維事業者と垂直関係を持ったLP
  U      
   

22
 
 ○法第4条3項型
   協同組合の組合員が互いに垂直関
  係を持った組合単独のLPU
   

 1
 
 ○法第4条4項
   繊維事業者2名以上による合併又
  は共同出資会社

B共同化事業
  零細事業者により将来LPU化して構
 改事業を実施する基盤作りのための共
 同化事業実施グループ

 



 1

 

 中小毛織物業者63名(この場合は、垂直連携・機能保管連携の構成要件はない)による経通し機の増設による経通し工程の集約化・自動化とマス見本整経の共同化を推進・平均投資額673百万円

 
 
 
 
 【図6A LPUによる構造改善事業実施概要】(出所:繊維産業構造改善事業協会『LPUによる構造改善事業などの実                        施状況』平成6年を参照して筆者作成 *Gはグループの意)

 

       4条1項型G

      4条2〜3項型G

(1)新商品・新技術開発に関する事業*1





 

産地組合が円滑化事業として行って当該事業に依存し、それに対する賦を事業費として計上しており、自らの施の設置計画はない



 

協同組合自体が開発専用の施設を設置して実施するもの16G、協同組合において製品の製造用と共用として取得するもの2G、中核企業が有する当該施設を協同組合が賃借し、共同事業と

して推進するもの3G、委託事業として行うもの2G(新規施設取得8Gの平均設備投資額は73百万円)

(2)設備近代化事業*2
@共同事業設備近代化


A設備リース事業*3





B個別企業の近代化事業*4
(3)生産又は経営の規模又は方式の適正化に関する事業*5


(4)取引関係改善事業*6
(5)労務対策事業

 

                   昭和63年度までの知識集約化構改事業Gが平成元年以降も継承する場合のみであり、4条1・4項型Gには発生しない
23G全て円滑化事業実施組合から受けている。事業費の大半が当該事業であり、各Gの中核企業のみが設備リースを受けているのが13/23Gであり、G全体の近代化には到っていない。1G平均リース額257百万円。
12/23G実施

 

                     8/23が継続実施Gで、うち5Gが今回当該事業を実施している(1G平均563百万円)

17/23Gが実施(総G41のリース総事業費11.511百万円)しているが、前・後工程の共同事業化が主眼となっており、設備リース事業のウエートは低い。テキスタイルG(タオル・レース)の平均リース額426万円、縫製8Gの平均リース額152百万円で、織・編機器の高価格を反映している
 12/23G実施
*24Gの5カ年総投資額5,602百万円
 
○生産方式の適正化 @工程の協同組合による共同事業化 AG員間の生産品種の特化           B特注品・欠品対策 C情報管理システム        
○経営方式の適正化 @物流センター設置(4条2〜4項型Gの15/24が設置)
         A情報管理システム構築 B共同仕入れ
 契約の書面化は全Gで計画、その他決済早期化・現金化、返品処理改善、共同購入、検査基準明確化、適正取引価格実施、時期的受注の平準化
 時短・稼働時間短縮・労働環境・福利厚生など。労務対策事業計画5G

 
 以上のLPU戦略の基本事業の1つである図6ーAの(3)「生産・経営の方式適正化事業」の具体的な内容は、以下のようになっている。
 「@一部工程の協同組合による共同事業化」は、機器の自動化・高機能化に伴う高額化によって個別企業の負担では設置困難な場合、或いは高能率化によって個別企業のみの使用では余剰能力が生じる場合、又は外注依存工程において外注先問題(外注先確保難、デリバリー上の時間・経費増加、仕掛りまでの日数不確定性、高品質に対応できない技術水準など)が発生した場合、組合による共同事業化でグループ内一貫生産システムを確立し、高品質化・多品種少量・QR生産を実現するとしているが、この協同組合による共同事業化が注目される。
 
  ○生産工程のグループ内内製化(外注工程の協同組合共同事業化による内製化・一貫生産体制構築)

 
染色・捺染工程の外注依
 

a
地元施設のネック状態・ロスタイム発生
遠隔地業者の日時・経費負担増

a
内製化による解決
 

 
 
染色技術の能力不足
a
隔地先勝業者依存
a
合大規模染色工場
a
他産地との差別
 


 
主婦内職による
縫製工程

 

a
 
労働力確保難
デリバリーコスト(200〜300人
 

a
 
自動ヘム縫機による共同事業
大都市主婦潜在労働力による都市
縫製工場のファッション水準上昇


 
  ○仕掛工程の一元管理

 
グループ員多
生産量大量

a
仕掛り工程間生産管理・物流複雑化
タイムロス発生

a
一元的生産管理
工程間物流統合

a
ロットまとめ
ロスタイム解決

 
  ○原糸大型パッケージ化対応

 
原糸パッケージ大型化
(従来1〜3
s→5〜10s)

a
スペース必要
フオークリフト運搬

a
協同組合による整経工程
の共同化

 
  ○隣接工程の共同事業化


 
2次縫製品化(タオルのヘム縫製からバスロープ・エプロン・乳児衣服化へ)

a
 
共同事業化による対処(カーテン地製編業へのインテリア卸業者からの裁断・縫製依頼)


 
 「Aグループ員間の生産品種の特化」は、個別企業の多品種少量生産推進によって発生する不経済性・非効率性を、グループ内構成員の取扱品種を特化することによって、グループ全体の総合的なQR商品供給を実現するとしているが、リスクを共同して負うという合意が形成されるかどうかという問題が残る。
 「B情報管理システム」は、協同組合によって一元的に統合される生産工程間管理システムを意味し、経営方式適正化は、受発注・販売・在庫・デリバリーなどの総合管理システムでおこなうとしているが、成功事例として挙げられているのは、生産工程管理システムの共同事業のみであり、中心となる総合管理システムについての報告がなされていない。
  ○組合員間生産品特化による積極的な機能補完連携の構築


 
親機・アパレル製造卸
が細分化して外注し, 多品種少量化をめざす

a
 
末端製織(編)・縫製業者
は、仕掛工程の準備工程の負担が大きくなる

a
 
 Gで対外的には総合商品供給化
対内的には専門化・ロット化を図り、効率化実現をめざす


 
                                               
   a
    
生産アイテムを組合員毎に特化*1
a
 
個別企業の既得商圏流動化
一部企業の商圏消失
a
 
共同化意識(相互信頼)
リーダーシップ

 
  ○見込生産から受注生産への転換

 
見込み生産品は合弁による海外生産
オーダー・イージーオーダー品は国内専用工場(ロット生産から1品生産体制へ)

 
 
 このように繊維産業構造改善事業協会のLPU事業は、基本的にはプロセス・イノベーションを中心とする試行であったがゆえに、幾つかの問題が誘発された。
 第1に、構改事業実施事業者が、財務表・財務内容の非公開や、生産分野の譲渡・調整、人的交流などの経営ソフトのオープン化に対して消極的となった。
 第2に、製造業者のグループでは、構改事業が製造工程中心になり、市場や流通を意識した構改事業に発展せず、特に取引関係改善事業は個別グループ対応に委ねられてしまった。こうして共同施設の設置などのハード面から、開発機能・製品構成・生産分野調整などのソフト面への発展に至らなかった。特にテキスタイル産地において、知識集約型構改制度の産地一括型事業の範囲にとどまる傾向がある。
 第3に、グループ内内製化をめざす固定投資のコスト負担*1を共有する意識が弱い。
 第4に、グループ構成が、伝統的な親機と子機や、製造卸と賃加工縫製業者による垂直編成が中心となり、対外的な産地中小企業群のネットワーク型編成になっていない。
 このような問題点を繊維産業構造改善事業協会への相談案件からみると、複数の中小繊維事業者を中心とした集約性の発揮をめざす要件(垂直連携・機能補完)を満たさないグループがかなりあり、さらに次のようなタイプの企業は、参加企業の同意を得られなていない(表5参照)。
 @特定先とグループ化せず、広い取引関係を指向する下請企業
 A巨額投資(借入金)へのリスク負担の危機感を示す企業
 Bグループ化により中核企業に吸収される警戒感を示す企業
 C総合商社や非繊維事業者などの大企業や産元商社・繊維専門商社で多数の取引先を有する企業が、中核  企業として取引先を限定することが困難なものがある
 D中核企業とその他の企業の経営規模格差が大きく、協同組合経営の実効性が期待できない。協同組合の共 同施設は組合員公平奉仕の原則から事業規模に応じて利用機会が保障されるが、実質的に中核企業が独占  的に利用している場合がある。また、構成員が分散立地したり、過大投資や土地取得難等の理由によって共同  事業が機能していない例がある。
 次に、成果をあげているLPUは、@中核企業が販売情報にアクセスできる、A中核企業が特定取引先を持っている、B優れた商品開発力を持っている、C近代化された適度の設備がある、D準備工程と物流の共同化が遂行されている、Eリスク分担と利益配分の合意がある等の特質がある。             成果をあげていないLPUは、@中核企業が販売情報にアクセスするルートを持たない、A中核企業が特定取引先を持たない、B商品開発力が弱い、C近代化された設備が過剰負担となっている等である。

【表5 現行LPU参加事業者に関する調査結果】(出所:『新繊維ビジョ                         ン』P116










 
 
 こうしてLPU成功の条件は、安定的な販路の確保と事業共同化のコンセンサスの形成にあり、その帰趨は中核企業の姿勢に懸かっていることが分かる。最大の条件である販路問題は、中核企業自身の販路開拓力にあるが、基本的には流通業者がLPUに参加しなかったことにあり、また事業共同化のコンセンサスは、中核企業によるグループ編成に対する警戒感が生まれたところにある。
 
 このような旧LPUの問題を克服する「弾力化」は、@LPUの承認要件を緩和すること(中核企業のグループ内取引50%以上、傘下企業の取引先が中核企業第1位という条件の弾力的運用)、A審査期間を短縮すること、B支援施策の改善であり、このような緩和の背景には旧LPUの失敗による産地危機がある。
 





 
  日本の繊維産業完全市場自由化  
 ○設備登録制の平成7年廃止
 ○MFAガット・ウルグアイラウンド新協定
  10年以内の消滅

 


a


 
  国内製造拠点の生き残り策  
 ○ネットワーク型組織の構造改善事業
   (流通参加型・開発・情報化指向)
 ○無人化、省力化           ○共同化、統業化
 





 
 新LPU戦略の最大のねらいは、「零細事業者を除き、ある一定規模以上の事業者であれば、一定のボリュームゾーンを扱わなければ、経営の安定化を期することができないことから、かかる分野での競争力確保のため、無人化、省力化のための設備投資が必要」としたうえで、「産地の分業体制の中で、個々の企業の競争力を維持していくには、関連各工程が産地内に揃っていることが必要条件となるが、高齢化と後継者難により、準備工程等それぞれの産地の弱い工程が抜け落ちていくおそれが顕在化しており、今後このような工程を共同化又は統業化により維持・整備していく必要がある」として、LPU見直し内容の第1位に「以前の産地一括型の構造改善は、積極的な取り組みを行わない者をも実際上支援対象としてしまう恐れがあるから適当でない」としている点に象徴的に現れている(『新繊維ビジョン』P126〜127参照。下線部筆者)。
 つまり、新LPUの戦略目標は、明らかに産地一括型構造改善を否定し、「中核企業」と認定された中堅企業を中心とする参加企業と工程内部化による産地再編成にある(傍点筆者)。旧LPUにおける「傘下企業の取引先第1位企業を中核企業とする」という参加条件の緩和は、大メーカー主体のLPUでは傘下企業がLPUを活用できないという問題点を解決し、大企業がLPUに参入する道を開くということでもある。これは、旧LPUの中核企業中心主義の方向をより拡大し、産地中小零細企業群を、LPU戦略の対象から制度的にも実質的にも除外することを意味する(LPU不参加の場合の財政・金融上の不利については、P16注3参照)。                 このような新LPU構想を、中小零細・家内企業形態が主流となるクラフト染織産業に機械的に適用するならば、資本力の大きいごく一部の織元・製造卸(製造問屋)による産地の垂直的内製化をさらに拡大する。中小企業群が集積する産地クラスターを、水平的なネットワークシステムへ転換し、産地集積性をさらに高度化するというLPU本来のねらいは、逆に産地性自体を自ら掘り崩す可能性をはらむものとなる。
 LPUに対する評価を具体的に検証するために、典型的なクラフト染織産地である西陣織・播州織及び室町卸業の情報化推進過程の動態を実証的に考察する。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
第2章 クラフト染織産業における情報化の実証的検定と限界分析*1
 
 本章では、繊維産業の情報化を先駆的に試行している代表的な産地である西陣織・播州織及び流通チャネルの典型として室町卸売業を対象にして、実証的な検定をおこない、クラフト染織産業の情報化が混迷状況にある要因を分析する。
 
 第1節 情報化限界の実証的検定(1)ー西陣織産業映像情報システムJINーOVISの挫折とVRSへの転換 
 
  1)西陣織情報化の初期段階ー工程自動化とプロセス・イノベーション
 
   (1)昭和50年代における西陣織産業の経営状況と情報収集・伝達機能の限界
 
 昭和50年代の西陣機業を取り巻く経営状況の特質を、生活映像情報システム開発協会『西陣織産業に対する映像情報システムの導入に関する調査研究報告書』(昭和54年)をもとに検証する。
 西陣機業の不況の実態を製品種別によってみると、帯地の不況要因*2は第1位が生産過剰であり、その理由は西陣帯地の独占的な市場占拠率(84.2% 昭和51年生産額)にあり、西陣機業の生産動向が帯地市場需要に決定的な影響を受けることである。着尺は、他生産との競合問題や先染織物の需要低迷から「消費需要の減少」が第1位であり、ネクタイは、先染からプリント移行に伴う「需要減少」とイタリアを中心とした欧州産の「輸入増加」が挙げられており(表6参照)、西陣織の需要減退は、「不況」と「嗜好の変化」・「外国輸入品との競合」という重層的な要因によっている(表7参照)。
 
 【表6 西陣産地不況要因】(出所:生活映像情報システム開発協会『西陣織産業に対する映像情報システムの導入に関                  に関する調査研究報告書』昭和54年)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 【表7 西陣織需要の減退要因】(出所:前掲書)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 この結果、昭和52年から53年にかけて西陣産地の約1000台の織機が共同買上廃棄され、廃棄の必要性を感じている機業が67.7%にのぼり、特にネクタイ部門は73.3%に達している(表8参照)。
 
 【表8 織機の共同買上・廃棄に対する意識】(出所:同上書)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 次に西陣機業の流通チャネルの特質を『第7・8次西陣機業調査』でみると、帯地販売は西陣産地問屋(60.6%)・室町卸問屋(24.8%)であり、この二者で85.4%を占めている。正絹・化合繊着尺もほぼこの傾向を示すが、産地問屋扱い比率が低下し、室町卸問屋扱いと他地区卸問屋扱いが上昇している。ネクタイは、関西二部問屋への販売比率が26.5%・関東一部問屋26.5%・関東二部問屋16.4%であり、東西二部問屋への販売比率が増大している(表9参照)。販売形態である「売切り」と「委託」の比率をみると、売切り76.8%・委託21.1%(「委託」形態は帯地・着尺のみ)であり、卸問屋優位はゆらいでいない(表10参照)。
 
 【表9 品種別販売先構成】(出所:同上書)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 【表10 品種別販売形態】(出所:同上書)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 西陣織の流通問題の中心は室町問屋問題であり、80%を超える機業が室町取引の「改善の必要」を指摘し、「現状で満足」は帯地5.9%・着尺0%に過ぎない。具体的な改善事項として、品種・規模を超えて全ての機業が「取引の改善」を要望し、委託販売・返品・値引・歩引等の機業側の不利益待遇の改善を求めている(表11参照)。しかし、現実の販売政策への期待は、「特定の問屋との取引集中」が高く、問屋依存傾向を払拭できない実態がある(表12参照)。
【表11 産地問屋のあり方に関する改善事項】(出所:同上書)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 【表12 今後の販売政策】(出所:同上書)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 このような状況に対して西陣織業界は、商品企画・生産を質的に飛躍させるために、垂直的マーケッテイング・システムの開発を提案し(『和装業界の活路開拓対策のためのマスタープラン』昭和55年)、室町卸を中心にした家業的経営から脱皮して、消費者ニーズを川上に逆流させる垂直的連携によって、企画・生産・販売のネットワーク化を模索している(図7参照)。西陣機業における情報化戦略の背景には、このような産地危機が伏在していたのである。
 
 【図7 和装業界活路開拓マスタープラン図】(出所:京都商工会議所『繊維リソースセンター構想調査報告書』P113)













 

                   C経営システム化・人材育成
   @消費者需要分析 A販促戦略開発  

 
   
 

 

 

 




 
     


 

消費者
 


 

a
 

小売店
 

a
 


 

前売卸
 

a
 

元 卸
 


 

a
 

織物産地
 

a
 

原材料産地
 


 
     


 

 

 

 

 

 

 

 



 



 



 


 


 

 

 

 

 

 
               B垂直的マーケッテイングシステム開発
 
 
@消費者需要分析
 
A販促戦略開発
 
B垂直的マーケッテイング
 
C経営システム化と人材育成
 
   ・ライフスタイルの変容            ・消費者ニーズ対応型    ・家業的経営からの脱皮
    による和装需要減退           ・和装品流通における    ・企画〜生産〜販売の一体化
   ・市場細分化による和           卸売のチャネルキャプ     ・職人集団から専門集団への脱皮
    装ポジショニング            テンとしての位置づけ
 
 
 
 
 
 ところが、昭和50年代における西陣織工業組合の情報収集・伝達活動をみると、基本的にはプロダクト・アウトによるマーケッテイング戦略であった。

●広報活動 「西陣織たより」(月刊 発行部数3.250部)・「西陣グラフ」(月刊 発行部数18.000部)
       「西陣パンフレット」(年刊 発行部数5.000部)

●催事・ファッション活動:共同開発西陣織新用途発表会・帯は西陣展・本綴秀作発表会・雨のコスチューム 展・京の染織展・染と織の祭典・伝統文化と美の祭典・西陣夏のきものと帯大会・西陣ネクタイ新作発表会・ 京都染織展・春の西陣帯展・西陣織展など開催

●モニター制度:デパートを除く呉服専門店1、600店(昭和54年時点)を対象とする基礎調査(客筋・店頭 か外商か・売場面積・店舗数・創業時期・年刊売上・資本金・西陣売上割合・仕入産地構成)を実施

●年1回和装振興アンケート(売筋概要・図柄・色彩・意匠・販売価格等のデータ提供中心で、売筋予測は 行わない)

●意匠登録業務(保護期間は1年で最大15年更新可能、保護意匠は非公開として盗作を防止するが、年4
 〜5件の違反がある)

●技能教育(小規模零細機業の企業内OJTを補完する西陣織高等職業訓練校及び織機調整工技能養成 制度、現在西陣着尺織物共同就業訓練所、修学期間1年)
    【カリキュラム概要】
     ・普通科目 経営大要・体育
     ・専門学科 織物準備法・撚糸法・織物分解設計・精錬染色・織物組織・紋織法・生産工学概論
           織物概論・力織機
     ・実技学科 基本実技(製織準備基本作業・機械基本作業・製織基本作業・測定検査基本作業
           安全衛生作業法)・応用実技(事業所自主訓練)

●試織(目指)(製織工程の本織は西陣外出機で作業されるが、試織は織元内機でおこなわれ、織元の総合的デザイン情報による独創力が結実する)







 

問屋からの
売筋情報
 
 
 
 試  織
(組織・色・柄)
1〜2柄起こす

 
 
   
 

問屋
持ち込み
(3〜5軒)
 




 


 

織元オリジナル
 
 

展示会での
動向探索
 

 


 
   
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   (2)昭和50年代における西陣織の初期情報化の特徴と問題
 
 西陣織の技術革新は、生産工程の自動化(プロセス・イノベーション)として明治期以来展開され、ジャガード機の導入による織布の自動化に始まって、意匠家のパターンアナライザー化・紋彫家の紋彫機化・織布工の力織機化という全行程自動化が推進され、この段階をここでは情報化初期とみなす(図8参照)。
 
 【図8 西陣織生産工程自動化過程】(出所:西陣織工業組合『西陣織産業映像情報システムにおける技術上の課題と                       展望』P137より筆者作成)
 
   [現在]     [展開]


 

正 絵
 


 


 

正 絵
 
 

            




















 


          意匠家 →




 








 
   ← パターンアナライザー


 

紙テープ
 
 

 















 




 


 ←  コンピュータ
 
 


 


 

意匠図
 


     


 

意匠図
 


 
   紋彫家 →  ←   紋彫機        自動紋彫機


 

紋 紙
 


 


 

紋 紙
 


 


 
   織布工 →   ←   力織機      
 


 

織 布
 


 


 

織 布
 
     
     
 
               ↓
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 この生産工程自動化(機械化)の段階で形成された産地システムは、設計・企画部門を産地内に配置し、製造拠点を外部化(丹後出機)するものであった。しかし、このような産地システムは、スキルの継承や設計変更にフレクシブルに対応するシステムではなかった。                              この障壁を打開するために、西陣と遠隔地工場の空間的距離を、CG技術によって作成した意匠設計をアナログ回線による伝送によって短縮し、次いでデジタル回線と光ファイバーによる電送への変換が試みられた(図9 参照)。製品配送では、道路状況に対応した配送車管理システムによる迅速な物流を実現しようとしている。さらに、織物の傷等のトラブルを高画質・高品質のハイビジョンCADによって画像解析するシステムが開発され、従来のスキル保持者の肉眼による視検を克服しようとしている(京都市染織試験場)。こうして西陣織情報化は、生産工程自動化=機械化という段階から徐々に情報の新たなオンライン化へと進んでいく。
 
 【図9 西陣織屋の初期情報化進展例】
                 (西陣産地)

 

 染物屋



 



 

 

 

 
 織屋
 

 

原料供給



 

 
(糸は除)
 
                  a
                 分業化
 
    (西陣産地)                           (遠隔地工場)


 

染物屋
 
 
 

 工 場

ヒトがる受領
 





 
 
原料供給者
 


 



 

織 屋
図案作成
 

 

        ヒトによる設計図運搬
      (ヒト)
                   a


 

染物屋
 
    ニーズ対応
 
                     

工 場

PC出力
 





 
 
原料供給者
 
(遠隔地工場)

 



 

織 屋
図案作成
 

 

       通信回線によるデータ電送
   (CGによる自動設計)
 
 
 
 
 
 1970年代になると、自治体・研究機関・産地組合を中心に京都産業の情報化を対象とする調査・研究がおこなわれ、多様なビジョンや報告書が一斉に提出された(表13参照)。
 
  【表13 西陣織情報化計画・構想の展開】(出所:筆者作成)

































 

1975年(昭和50年)



 

 西陣織工業組合「第1次西陣機業振興対策5カ年計画」

 京都経済同友会『京都産業における知識集約化の方策』

 情報収集機能強化と組合員に対する伝達機能強化に向けた「有線TV放送導入」構想提起
 京都伝統産業の知識集約化による新工芸産業センター構想提起

1976年(昭和51年)


 

 西陣織工業組合事務局

 西陣織工業組合振興対策委員会・京都府・京都市プロジェクトチーム

 西陣織会館TVスタジオ配線・配管工事実施、
情報化システム研究調査着手
 

1977年(昭和52年)



 

 生活映像情報システム開発協会『商業地域での映像情報システムの現状と将来』
 京都商工会議所『京都産業の明日の発展のために』

 西陣CATV構想が通産省振興計画の事業認定を受ける


 

1978年(昭和53年)





 

 西陣織工業組合「西陣織産業映像情報システム開発特別委員会」設置    大阪通産局・京都府・京都市積極的支援決定               京都府中小企業団体中央会活路開拓調査指導事業補助決定        生活映像情報開発協会依託決定

 【情報収集機能と伝達機能】から【西陣織産業基盤の情報化】へと拡充



                
 

1979年(昭和54年)


 

 西陣織工業組合

 生活映像情報システム開発協会映像情報システム開発本部

 『西陣織産業映像情報システムにおける技術上の課題と展望』
 『西陣織産業に対する映像情報システム導入に関する調査研究報告書』
 

1980年(昭和55年)

 

 京都市経済局

 

 『西陣織産業映像情報システムの活用に関する調査研究報告書』
 
 ここでは、伝統産業の情報化を展望する京都経済同友会『京都産業における知識集約化の方策』(昭和50年)と、室町卸業の情報化を展望した京都商工会議所『京都産業の明日の発展のためにー知識集約化の展望』(昭和52年)の2つの提言を分析し、1970年代に京都産業の情報化が提起された背景を分析する。この2つのビジョンには、次のような伝統産業の知識産業化への共通認識があった(図10参照)。
 
 【図10 京都経済同友会「美の産業Industries for Beauty」構想概念図】(出所:京都経済同友会『京都産業にお                                ける知識集約化の方策』昭和50年より筆者作成)



 

欲求の高度化・多様化→素材的・機能的価値
           から精神的価値へ
 



 

産業構造の知識集約化

 



 

使用機能と情緒機能
複合である伝統産業
 


 →
 
 
知識集約化への萌芽を
持つ京都伝統産業
多様な伝統産業の集積
高度の知性・感性の集積

 
 



 

知識産業としての伝統産業への転換
 



 

新工芸産業
センター構想
 
 この時期における西陣織情報化の戦略的な位置づけには、どのような特徴と問題があったであろうか。京都市経済局の『西陣織産業映像情報システムの活用に関する調査研究報告書(以下『西陣調査研究報告書』と略記)』では、西陣織の情報内容を、生活的側面(西陣催事の予告結果集約・生産価格動向・西陣地域集会情報・従業員コミュニケーシヨン)と、生産的側面(組合事業活動情報・全国売筋情報・国際コレクション情報・全国織物産地情報・技術革新情報・図案作成資料情報・紋紙電子保存と画像再生・市場動向情報・コンピュータによる試織)に分けたうえで、次のように述べている。
 最初に西陣機業の基本的な特質を、「西陣機業は、今日の資本生産の原則である<規模の経済>を追求できないという宿命的な特徴を背負っている。国民全般から期待され且つ支持されている衣裳文化の象徴としての西陣は、これまでの伝統的技術による先染織物の技法を守らなければならない。その性格のため、明治以来の洋装化と近代的大資本生産によるプリント織布の一般化という、今日の経済原則に完全に従えない西陣の織布技法の宿命を背負っている」(『西陣調査研究報告書』P49 下線部筆者)と規定し、下線部にみられるように、西陣機業の特質を<規模の経済>に適合し得ない宿命的な伝統性を持つと強調している。昭和50年段階では、西陣織の基本戦略はあくまで伝統和装に置かれ、フレクシブル専門化による<範囲の経済><連結の経済>の構想はなく、新たな製品戦略明の展望は成熟していなかったことが分かる。
 
 次いで『西陣調査研究報告書』は、情報化戦略の方向を以下のように説明している(下線部筆者)。

 西陣産地が、全国の和装マーケットの現状と未来の情報を総合的且つ集中的に収集するということが可能となれば、それによって産地の織元の情報蓄積力を質と量ともに高めることができ、これがひいては、西陣の核をなしている帯地マーケットから、和装全体のマーケット、さらには洋装および布地全域のマーケットでの中核的な位置を占めることが可能になるかもしれない。西陣機業における望ましい情報構造は以下のように要約できよう。
  @全国の和装マーケットの趨勢と未来の情報が、総合的且つ迅速に収集できること
  Aその情報が、いち早くデザインとなリ、意匠図を生みだし、適量且つ多量な織布を生産すること
  B生産された製品が、いち早く、産地の主体性が確保された流通経路を通じて、消費者にとどけられること
  C西陣織情報化システムの内容
    イ、前売情報(生糸相場・織物相場・色彩・デザイン等)の即応性
    ロ、市場情報への即応性
    ハ、生産・在庫・経営管理(西陣全体の生産量把握と調整・機業経営)
    ニ、画像ファイリングによるシミュレーションの即応性
    ホ、統一伝票制度による流通合理化
 
 ここでは、情報化戦略の推進主体が、下線部にみられるように織元の主導性・統括性に置かれており、現業部門や流通が参加する産地全体のネットワークとして構想されていない。西陣織工業組合『西陣織産業映像情報システムにおける技術上の展望と課題』(昭和54年)においても、「西陣の生命力は、○分業化された高度の技術力、○分業の要、織元の想像力と指導力から生まれてくる。・・・・(中略)・・・・西陣織映像情報システムは、第1期エリアとしてこのような織元を対象に、マーケット情報・デザイン情報等商品企画力の充実・産地コミュニケーションの充実を主目的にし、・・・・(中略)・・・・また、第2期エリアは生産工程分業家(図案製紋、原料準備等各工程) 第3期エリアは問屋(産地、室町)と情報網を拡大」(下線部筆者)するとしており、織元→現業部門→室町卸商と進む段階的な情報化として位置づけられていた。実はこうした段階的な推進政策が、産地全体の合意形成を阻害し、逆に現業部門の非協力と室町卸問屋の反発を誘発することとなった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  2)西陣織情報化の第2段階:「西陣織産業映像情報システムJINーOVIS」の挫折
 
 1970年代における西陣織の本格的情報化は、「西陣織産業映像情報システムJINーOVIS」(以下JINーOVISと略記)というシステムの導入から始まった。「JIN-OVIS」は、「第1次西陣機業振興5ヵ年計画」(1975年開始)において市場対応型製品企画・開発機能の向上を図るプロジェクトとして提起され、HIーOVIS*1を応用した情報ネットワーク・システムであり、『新繊維ビジョン』の「繊維リソースセンター」構想のプロト・タイプであった(図11参照)。
 
 【図11JIN-OVIS概念図】(出所:京都市経済局『西陣織産業映像情報システムの活用に関する調査研究報告書』1970                 年を参照して筆者作成)



 

西陣織工業組合本部
 汎用コンピュータ
 
@自主放送サブシステム(市場動向・製品技術動向・経営講座等)
Aリクエスト動画・静止画サブシステム(古典文様・古代裂データベース)
B創作補助サブシステム(図案作成・配色検討CAD化)
C経営管理サブシステム(受発注・在庫合理化、効率化)

組合員
情報機器
 



 


 
                              (光ファイバー)
 


 
  (将来)全組合員による共同管理システム(受注・販売・在庫  
 
 「西陣織産業映像情報システムJINーOVIS」は、双方向メデイア・光ファイバー・コンピュータ技術・映像技術を組み合わせた@からCのサブシステムから構成され、Bの創作補助サブシステムは、コンピュータに記憶させてある図案・色彩から40種程度の選択が可能で、図案は、基本的な地模様に合成やモチーフの反復・対称・回転配列・不要部の消去・補正・修正などが行えるという中枢システムである。JINーOVISの工程間の情報の流れは次のよ
うになっている(図12参照)。
 【図12 JINーOVISにおける情報の流れ】        
異業種
 
                   広
              
  映像情報センター

  ○自主ソフト制作
   送信
 
  顧 客  
    

 

西陣織工業組合
 
   映

 
 像 衣装・装飾デザイナー  
 情

              
 報 仕立屋  
 ア
                           ク
呉服屋
 
                自主放送       セ
                再放送        ス
問 屋
 
                ライブラリー
  糸問屋  
  織    元

  ○企画・営業
内部織布工・デザイナー
 
  図案業  
   
  撚糸業     衣装図業  
   
  糸染業     紋彫業  
   
 
整経業
 
紋編業
 
  絖業   整理業  
  賃織業  
 【図13 西陣織映像情報システムにおけるプログラム・ソフトの分類】(出所:西陣織工業組合『西陣織産業映像情報                          システムにおける技術上の課題と展望』P121をもとに筆者作成)
 
                          基礎情報(○・●・△)繊維の基本構造、糸の特徴

@商品
企画力
充実
 
  時代感覚把握             マーケッテイング情報(○・●)  現行モニター制度
                     ファッション情報(○・●)    との連携
  的確なデザイン選択          基礎デザインソース(△・一部○)
                     デザイン情報(○・△)      CADへの展開
  的確な織機・素材選択          新製品開発情報(○・●)
                          インテリア情報(○・●)
       新商品開拓              工業情報(○・●)工業用布

A西陣地域コミュニケーション充実
 

          告知(○・△)
          住民参加番組(○)

B後継者育成
 
                  講座(○・△)
                  作品保存(△)
                  技芸保存(△)

C伝統工芸品・技術保存
 

                凡例: ○自主放送 ●再送信
                      △ファイル
 
 プログラム・ソフト(図13参照)では、 「情報の収集期間と反復伝達期間(案)」(京都市経済局『西陣調査研究報告書』)では、市場動向捕捉の中心となる室町問屋の動き(1ヶ月単位)と百貨店売筋情報(1ヶ月単位)・和装モニター店情報(6ヶ月単位)・表14参照)、本部が収集した情報を組合員へ伝達する単方向であり、双方向性を実現していないことがその後の現業部門の反発と非協力を招く1つの原因となった(表15参照)。
 
 【表14 商況情報収集先】(出所:京都市経済局『調査研究報告書』P31)
 
    産地問屋・室町の動向          京都府商工部
 
    百貨店売筋・企業調査          京都市経済局
 
    モニター店売筋・企業調査         業界紙・経済紙
 
    商況セミナー中継            市場開拓課収集整理
 
    原材料相場              百貨店
 
    消費者動向・家計調査          モニター店
 
    他産地動向               コンサルタント
 
    金融調査                原糸商
 
    統  計                金融財政事情研究会
 
                       調査金融課収集整理
 
                       生産管理課収集整理
 
 【表15 情報収集期間と反復伝達期間】(出所:京都市経済局『調査研究報告書』P31)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 さて、「西陣織産業情報映像システムJINーOVIS」の導入をめぐって誘発された軋轢を回避するために、次のような漸進的な改善策が提起されている(『西陣織調査研究報告書』P67参照)。
 
  【システム構築構想の基本】                  【システム構築構想の具体的手順】




 
@西陣織製織工程に急激な変化と影響を与えないこと
A歴史的に蓄積されてきた生産技術を否定するものでないこと
B過大な投資を必要とするものでないこと
C合理化・省力化による関連工程等への影響を及ぼさないこと
D織元が内在的に持っている美的感覚・センスを壊さないこと




 
@現行製織工程に直接関与しない部分から導入する
A順次漸進的な工程の高度化・高
付加価値化を進める
B最終的に全工程の高度化・高付
加価値化を実現する
 





 
 
 この改善策の具体的な内容は、JINーOVIS構想に象徴されるクラフト産業情報化と伝統的な産業構造との非和解的なシステム間闘争の性格が露わに示している。
 第1に、Bの初期投資を主として組合員に依存した結果、その財政コスト負担が困難となるという問題が生まれた。システム総建設費の概算は、約45億円であり、調達方法は次のようになっている(表16参照)。  
 
 【表16 西陣情報システム資金調達方法(案)】(出所:京都市経済局『調査研究報告書』P53)






 

 国庫補助金    (50%) 2,277百万円
 地方自治体補助金 (20%)  910,8
 近代化資金借入  (24%) 1,093
 金融機関借入   ( 6%)  273,2
 総建設費          4,554百万円
 
 その他ランニングコストは、人件費・制作費・営業経費・管理費・借入金償還の合計が、年間2億6千万円と試算されている(『調査研究報告書』P54)。これは端末を500と仮定した場合であるが、1,000端末の場合は3億7千万円、1,500端末の場合は4億7千万円になり、西陣機業総数は1,101社であるから少なくとも1,000端末の3億7千万円を計上しなければ
ならない。そこで計画段階では、システム導入の予算策定に当たって、活用利益と運営費の比較考量をしている。西陣各機業が、企画・開発のために計上する参考図書購入費と図案作成費(及び図案購入費)のうち、情報化システムによって図書購入費の30%、図案作成費の50%が代替されると予測し、それは出荷額の1%に当たると推定する。西陣機業1,101社の総出荷額2,350億円(昭和51年度)の1%は、約23億円となるから、1,000端末の3億7千万円を大きく上回り、財政的展望は明るいと結論づけている。しかし、年間200万円以上の参考資料購入費を計上する大手織元にとっての活用利益は大きくなるが、中小織元にとっては運営費が負担となった。
 第2は、Dの織元が所有するデザイン・衣装原画のオープン・セキュリテーの問題である。創作補助システムに載せる意匠画は、公知意匠と企業企画意匠であり、後者の知的所有権が問題となる。企業企画意匠のオープン化によって売れ筋製品の模倣が発生し、さらに原画デザインが流出し、セキュリテイー技術とデザイン保護が最大の問となった*1。特に織元の製品差別化は、安易なオープン化を許さない意匠原画の独自性にあるから、意匠原画が充分に保護されない状況では公開できない。こうしたデザイン意匠原画のオープン化が進まないことによって、専門的デザイナーが、斬新な創造的アイデアによって市場ニーズに応えていく商品開発力は閉ざされた。
 第3は、流通システムへの影響であり、情報化による製販直結の発生が、既成の室町卸商による流通チャネルの主導性に脅威を与え、室町卸商の非協力が誘発された。実は、ここに伝統和装産業の流通システムの基本的な問題がある。情報化システムは、流通チャネルの多様化による製造メーカーと卸問屋関係の再編成を誘発するが、室町問屋の流通支配は揺るぎなきちからを持っていた。 
 第4は、JINーOVISの推進主体が、織元(産地製造問屋)に置かれ、現業部門の参入は第2段階へ先送りされていたことである。こうして情報は織元へ一元的に集中し、織元支配の一層の強化し、価格競争に追い込まれる現業部門の危機感が生まれた。以下にみるように、JINーOVISの映像情報プログラムは、織元の商品企画・図案作成を中心に作成され、現業工程のプログラミングは進んでいない(図14参照)。
 【図14 生産工程における映像情報の位置】(出所:西陣織工業組合『西陣織産業映像情報システムにおける技術上の                      課題と展望』P123)


 

 マーケッテイング情報

 ファッション情報

 登録意匠ファイル
 


 

織元
 
 
企画
 


 

 
       イメージ
 
 組織ファイル  

→先行して作成

 


 

図案家
 
 
図案
 


 
 

 
 文様ファイル  
 
            正絵  画集ファイル  





 

製紋
 





 

 意匠登録

 技芸記録

 織布ファイル
 

製織
 
 




映       像       情       報       プ       ロ       グ       ラ       ム





 
          製品
 
          販売
 
 現業部門の染色業者は、「この業界の変化は、まず小売部門の変化が先行し、次に卸商が変化を起こし、それが白生地、そしてわが染工場に影響を及ぼしていることが判明する」として、以下のように指摘している。







 

1,この10年間、染工場は流通に関して全く関与していなかった
2,流通システムの激変に対して染工場は受け身であり、対応を余儀なくされてきた
3,その結果染工場全体にとって、(イ)計画生産が不可能になり、(ロ)限られた枠の中でしか付加価値の創造を得ることが出来なかった。或いは対応を余儀なくされてきた結果として、(ハ)染工場は優勝劣敗のしのぎをけずることになり、(ニ)総合的な意味でこの産業の発展に大きな損失を来したと推測される
                   (出所:京都友禅協同組合『我が業界友禅の明日を考える』1979年)
 







 
 こうした染色部門の問題が提起された背景には次のような状況がある。
 昭和30年代における和装ブームを背景とした染呉服の量産体制は、元卸問屋の主導権を確立し、染工場経営に大きな影響を与えた。元卸の要請に応えるスクリーンや機械捺染の設備更新と増設などの生産規模拡大は、、手描き分野での主婦パート労働力の導入を誘発した。また商品の正絹染呉服のプロパーゾーン(元卸引き受け)と自家染出し(前売問屋引き受け)の分化が生まれた。さらに、染工場の商業分野拡大が、従来の委託加工から企画・デザイン部門への進出をもたらし、決済方法も現金決済から手形決済へと移行した。特に小売業のNCの急成長は、染工場へのダイレクト大ロット発注をもたらし、染工場自身の商品開発力が問われるようになった。     ところが、昭和48年の過剰生産に直面した元卸の覇権は打撃を受け、流通のヘゲモニーは混迷し、こうして現業部門である染加工部門は、景況の影響を最も受ける受け身の存在となっていった。このような染色業者にとって、織元の主導するJINーOVISは、織元に進捗状況を単方向で報告するに過ぎない従属性を一層強める可能性を持った。こうしてJINーOVISは、5年間の実験を経て最終的に中止されるに到った。           
 
 
 
 
  3)西陣織情報化の第3段階:「西陣織産業映像情報システムVRS」への転換
 
 VRS(画像応答システム)は、NTTが1977年(昭和52年)に実験サービスを開始したキャプテンとHiーOVISの中間に位置するシステムで、静止画・動画・同報動画・リクエスト動画などのサービスを受けることができる。VRSは、組み合わせプログラムとソフトづくりが難解で、広帯域伝送のコストが高くなるが、将来の光ファイバーケーブルの普及によるコスト低下が期待された。                                西陣織工業組合がVRSへ転換した理由は、第1に、画像伝送時は光ファイバーであるが、ユーザーが呼び出すときは既存の電話回線を使うため、コストが割安になることにあった。第2に、配色の組み合わせが、キャプテンの16色やJINーOVISの40種に較べて、VRSは無限であり、画像への色・かたちの変更が可能なCAD機能を併せ持つ点で、商品企画への応用がより可能となる点にあった。西陣織の商品開発の生命は、デザインであり、コンピュータによるデザイン・図柄・模様の情報検索システムであるデータバンクによって、映像画面を必要なときに必要な情報を瞬時にしかも無限に取り出すことが最大の魅力となった(図15参照)。  
 
  【図15 VRSの概念図】(出所:日刊工業新聞特別取材班『企業&地域INS』1984年参照)
 











 
  西陣織会館スタジオ  
 
  VRSセンター   他の組合員宅へ   組合員宅  

 
ビデオカメラ
 
    デオカセット
コーダー
 


 












 







 







 

 
コンバータ
 

 
TV受像器
 

 
 








 

 

 



 
   

 
コンピュータ
 
  ンバーター
 

 

 
汎用コンピュータ
 

 
カメラ
 

 
   
          プッシュフォン
専用キーボード

 
  プリンター     プッシュフォン
専用キーボード

 
  データベース   ファイ
        映像回線( バー)
制御回線
 
         

 
  局交換機     ハードコピー  
   











 
 
 この西陣織VRSもJINーOVISと同様に、コスト負担とデザイン・セキュリテイー問題に直面した。しかし、それ以上に深刻な問題は、大手織元商社が織元機能に加えてデザイン創作機能を高度化し、西陣産地外の出機(下請制で、丹後→韓国→中国→東南アジアと展開)へ一層依存する体制を強め、東アジアを含む産地の再編成がより一層進展していったことである。 JIN−OVISの挫折とVRSへの転換は、光ファイバーをめぐる技術やコスト問題とともに、クラフト染織産業における情報化と産地システム再編成の相互関係の問題をますます鮮明にした。   
 
  4)西陣情報化の現段階ー1990年代以降における和装「繊維リソースセンター」の試行
 
 『新繊維ビジョン』では、伝統和装産業型「繊維リソースセンター」の内容が空白となっており*1、当時の通商産業省生活産業局がクラフト染織産業の情報化の方向を明示し得なかったことを示している。このなかで京都和装業界は、独自に伝統和装産業型「繊維リソースセンター」構想を提起し*2、そのSUB(基本的事業単位)を、@データベース・サービス事業(「繊維総合データベース」構築)、A人材育成事業を企業内OJTから専門機関によるOFF-JTへ展開する、B商品開発事業のマーチャンダイザー機能を確立する、Cイベント事業のマルチメデイア化に置いた(図16参照)。
 
  【図16 リソースセンターの予測データベース】(出所:京都商工会議所『繊維リソースセンター構想調査報告書P95)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 西陣織工業組合が同時期に策定した「第3次振興対策ビジョン」(1991年)では、プロダクト・アウトからマーケット・インへの転換をめざす「生活文化提案型産地」への転換を掲げ、その内容を@和装商品の多角化・総合化、A洋装・装飾テキスタイル素材の開発、B技術・生産システムの再構築による市場対応型モノづくりシステムとする戦略を打ち出した。具体的な事業計画として、@「マーケッテイング情報センター」設置、A西陣コレクション開催、B西陣ブランド確立、C西陣ファンクラブ開設、D西陣織作家養成、Eまちづくりビジョンを置いている。ここで提起された@の「マーケッテイング情報センター」が伝統和装産業型「繊維リソースセンター」のプロと・タイプであり、「きものファッション・グループ」がLPU(実需対応補完グループ)のプロト・タイプである(図17参照)。
 【図17 第3次西陣機業振興対策ビジョン概念図】(出所:西陣織工業組合『西陣年鑑』1993年 p230より筆者作成)

 

生活文化提案型市場
創造型産地への転進

 

 










 

 
               
               
           a    a               

 
市場創造
情報受発信機能

 





 
@マーケッテイング情報センター設置
A西陣コレクション開催
B西陣ブランド確立
C西陣ファンクラブ開設
D西陣織作家育成
E街づくりビジョン作成
  
  
  
  
  
  



 

 

 和装商品の
多角化・総合化


 

   a

 

技術・生産システム
   の再構築


 


a

  

 洋装・装飾テキ
スタイル素材の開発


 
    
 
   




















 

 

 









 
    a   a   a



 
@プレタ着物・帯開催
A化合繊新素材開発
B西陣着物学会開催
C着物ファッショングループ結成



 




 
@西陣イトマ開催
A関連工程技術者育成援
B関連システムの有効活用


 




 






 
@アート商品開発
A洋装・装飾アドバイザイザー制度の確立
B国際テキスタイルコンペ定期開催
C海外デザイナー・アーテイ
ストの招請・交流






 


 

 

 

人材の確保・育成
 

 

 
   
             a    a

 
ファッションオーガナイザー育成
トータルコンダクター育成

 



 
@セミナー開催
A人材育成の教材開発
B女性経営者育成
C待遇改善



 


 
 

 

市場ー企画ー生産ー物流ー販売ーイベントの
  ビジネスシステム(Value Chain)の確立

 

 

 

 
                    a






 

和装リソースセンター構想
 ・データベース事業
 ・商品開発事業
 ・人材育成事業
  ・イベント事業

 






 
 
 
 
 
  5)西陣織の情報化現局面の問題状況
 
 結論的に云えば、伝統和装産業における情報化戦略と産地システムの矛盾は、非和解的な性格のものではないということである。中小零細現業部門のコスト負担を支援する政策の整備や、電子画像のセキュリテイーとデザイン保護技術は飛躍的に発展しており、財政的・技術的に実現可能なことである。根本的な問題である産地問屋と現業部門・室町問屋を統合した情報システムの構築は、産地問屋→現業部門→室町問屋へと展開する段階論に問題があった。
 西陣織の企画・開発・製品戦略は、@伝統的高級品による差別化、Aアパレル洋装化、Bインテリア・洋品化に分かれるが、JINーOVISとVRSは@の伝統的高級品化のソフトウエアーを構築するという路線を選択したのであり、ここに致命的な問題があった。
 このようなJINーOVISとVRS起動後における西陣産地の実態は、これらの問題を鮮やかに示している。西陣情報化戦略が起動した1978年(昭和53年)からほぼ10年経過した1987年(昭和62年)に実施された西陣調査委員会の「第12次西陣機業調査」では、機業が重視する経営機能とコンピュータ導入に関する実態は以下のようになっている(表17・18・19参照)。
 「商品開発力」が75.8%であるが、「情報収集力」・「人材育成」等は20%台であり、依然として織元の経験主義
的な感性やカンに依存する傾向が根強く残っており、「コンピュータ導入に関する予定」では、58.2%が「導入予定なし」と答えている。また、ダイレクトジャダード(直織装置)について「必要あり」とした企業は、404企業(45.3%)、逆に「必要なし」とした企業が478企業(53.6%)にのぼっているようにプロセスイノベーションへの志向も後退している。
 
 【表17 コンピュータ導入について】(出所:『第12次西陣機業調査の概要 詳細編』p4より筆者作成)
 
         意匠紋工程管理2。7%


 

経営管理
 


 

9%
 

  導入予定あり23.%
 

         導入予定なし58.2%
 


 
   11、1%    経営管理+意匠紋工程管理
 
 【表18 重視する機能】(出所:同上書P5より筆者作成)
    地区内出機拡大7,1%  地区内出機縮小0,9%            廃業4.0% 無回答0.2%


 


 


 

地区外出機拡大14.8%
 


 


 


 

      現状維持54.0%
 

品種転換
 


 


 


 
  内機分工場拡大5.1% 内機分工場縮小1,8% 地区外出機縮小10.5%
 
 【表19 ダイレクトジャガードについて】(出所:同上書P5より筆者作成)


 

       必要なし478企業・53.6%
 

       必要あり404企業・45.3%
 


 


 
                                           無回答9企業1.1%
 
  西陣織は、室内装飾品を主力とする「繊維産業」型企業群と、帯地・着尺を主力製品とする「伝統工芸」型企業群からなり、前者の「繊維産業」型企業群は成長してきたが、和装需要の低迷の影響を最も受ける「伝統工芸」型企業群は衰退して、著しい企業間格差が生まれている。これは、西陣織情報化の対象である「伝統工芸」型企業群の情報化への消極性と衰退の悪循環を生み、産地全体の衰退を招いている。次は、1998年2月4日に西陣親機69企業対象に実施されたアンケート結果(回答企業35・回答率50.7%)である*1
  【市況感】               【7〜9月売上状況】


 
項目 好調  普通  不振
着尺
  0%
 3.3%
11.1%
13.3%
88.9%
83.4%


 
項目 大幅増加 増加 不変  減少 大幅減少
着尺
 0%
 0%
0%
.3%
 0%
16.7%
77.8%
70.0%
22.2%
10.0%


 
  【10〜12月売上予測】              【丹後山地への出機計画】










 
 項  目  増加 横ばい 減少

 
項目 増設 現状維持 減機

 
   着


 
紋御召
絣・縞無地
夏 物
雨コート
コート・羽尺
16.7
0.0%
0.0%
0.0%
20.0%
16.7%
25.0%
0.0%
0.0%
0.0%
66.6%
75.0%
100 %
100 %
80.0%
着尺
0.0%
0.0%
75.0%
58.6%
25.0%
41.4%
   【織工賃】


 
項目 全面的賃上 品種により賃上 現状維持 賃下げ
着尺
 0.0%
 0.0%
  0.0%
  3.2%
 0.0%
64.5%
100 %
 32.3%



 
袋   帯
名 古 屋帯
袋名古屋帯
黒 共 帯
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
14.3%
28.6%
50.0%
33.3%
85.7%
71.4%
50.0%
66.7%
   【生産計画】


 
項目 増産 現状維持 減産 太字は顕著な傾向 を示す
 
着尺
 0.0%
 0.0%
 0.0%
46.7%
100%
53.3%
打 掛 け 0.0% 33.3% 66.7%
 
 織物別売上状況では、帯で「大幅増加」・「不変」が若干みられるものの全体として減少し、着尺は「減少」・「大幅減少」が100%となっており、業況も前四半期に較べて「不振」が約10ポイント増加し、80%以上が不振となっている。これに伴い、帯では半数が減産するとし、丹後産地への出機も約40%が減機するとしている。織工賃も帯が若干上げたいとする企業もみられるが、大部分が「現状維持」ないし「下げたい」としている。「要望」は、織元は「難物減少・減産・販売難」を挙げ、出機は「製織確実・難物減少・早期注文指示」を指摘し、その他業者は「多品種少量即応」を挙げているが、産地織元よりも、むしろ出機やその他の業者が多品種少量対応と早期注文指示等の情報化への要望をもっていることが注目される。
 以上にように情報化戦略の挫折と混迷のなかで、西陣織は著しい衰退傾向を示している。このような西陣産地の衰弱の基本的な要因を直ちに情報化戦略の挫折に求めることはできないが、少なくとも情報化戦略を通して、問題の焦点が、産地システムの中枢を把握する「織元」といわれる産元商社と、流通システムを支配する「室町卸商」を統括者とする産地システムにあることが鮮明になった。織元が、産地コンダクターとして、産地の形成・発展に果たしてきた歴史的役割を認めたうえで、情報化段階における織元の役割を新たに再構成することを求めている。このテーマの考察は、次節の西陣織以外の産地との比較分析のなかで試みたい。             
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 第2節 情報化限界の実証的検定(2)−播州織「先染織物工程情報オンラインシステム」の混迷
 
 繊維産業構造改善事業協会がめざすLPUのネットワーク(業界VAN)のモデルとして、播州織「先染織物工程情報オンラインシステム」が注目されているが、この地域VANも混迷状態にあるといわれる。本節では、播州織産地における地域VAN構築の背景と進捗状況の問題点を検討する。
 
 【図18 播州機業地域】(出所:西脇青年会議所作成)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  1)播州織産地*1における産地構造の変容
 
 先染織物は、原糸を染色方法別に分け、チーズ染色の場合はソフト・チーズ巻き、ビーム染色の場合は荒巻製経(あらまきせいけい)をおこなう。染色後、経糸(たていと)はサイジング(糊付)、畦(あぜ)取り、経(へ)通しをおこない、緯(よこ)糸は管巻(有織機)またはコーン巻き(革新織機)を施して製織する。その後検反→整理加工→検査→梱包→出荷へと進む(図19参照)。
 
 【図19 播州織生産工程*2(出所:太田康博「播州先染織物業における産地構造の展開」(日本中小企業学会『インター
                  ネットと中小企業』P118 同友館 1997年所収より一部筆者修正)
 
ソフト・チーズ巻1)
 
チーズ染色
 
サイジング(糊付)3)
 
畦取り6)
 
経通し7)
 
原糸
 
  管巻4)
 
製織  
 
 
  荒巻整経2)
 
ビーム染色
 
  コーン巻5)
 
 
 
 
  検反   整理加工    検査    梱包     出荷
 
    (原反入荷→原反加工→毛焼き・糊抜マーセライズ加工→サンフォライズ加工→特殊加工→)
    注1)チーズ糸を木管から穴のあいたステンレスの筒に柔らかく巻き付ける
      2)経糸をそろえながら、ビームに大まかに巻き取る
      3)糊を付けて糸を引き締め、製織効率の低下を防ぎ、品質を保つ
      4)緯糸用の木管に糸を巻き取る
      5)コーン(チーズを円錐形にしたもの)に糸を巻き取る
      6)縞柄にそって経糸を上下別に整理する
      7)経糸をドロッパー(経糸が切れた場合に自動停止させる部品)、綜 (織り機の開口運動をおこなう部分)、       に通し、織り機に仕掛ける状態をつくる
 
 産地の社会的分業が進展した背景には、@先染ギンガム織物の世界市場における市場占拠率が安定していたこと(日本:韓国:台湾≒1/21/41/4)、A多品種少量生産に対応する機織・染色の技術的分業が進んだこと、B家内工業的な親方ー子方の「のれん分け」の慣習によって小規模化が促進したことがある。第1次石油ショック(1973年)以降、産元商社が原糸を調達し、バイヤー(産地外商社・紡績企業・卸問屋・アパレル企業)との共同企画による受注生産が進行、産地内では産元商社が発行する指図書(さしずしょ)によって、染色・準備・織布・整理加工業者が賃加工生産を行う産元商社が生産全体のコンダクターとしての位置を占めていった*3(図20参照)。     
 【図20 播州織の社会的分業・企業間関係】(出所:前掲書をもとに筆者一部修正)
 

 
 
        海外バイヤー  

 
    川              製品仕様決定                      川
    上 紡績企業  糸売 商 社   卸問屋   製品仕様決定 アパレル企業  下



        
       
               賃織り・手張り*1     商品企画・商談


 
 


 
   
 
糸商
 手張り
産元商社
(播州織産元協同組合参加26社 非加盟含めて
                       指図書    約100社)

 

           賃加工   賃加工      賃加工
    川
    中 染色業者   準備業者   織布業者   整理加工  


 
 
  準備業者  
 






 
 
 産元商社は、サンプル作成→見積・商談→原資調達→指図書作成→生産・納品管理→在庫出荷管理→工賃支払など分業化された生産工程の全過程を掌握しているが、多品種小ロット・短納期化に対応するサンプル・縞割表・見積書・指図書の作成業務と精算・納品管理のコスト負担が著しく上昇している*2。                
 播州織の紡績ー産元系列形態は、次のように専属系列型と複数系列型に分けることができる。
 @専属系列型(1紡績1産元):大和紡・倉紡・富士紡・敷紡・日東紡・東邦レーヨン・長谷虎紡・大阪5綿6社
 A複数系列型(1紡績複数産元):東洋紡・日紡・鐘紡・呉羽紡・第1紡・半田紡
 系列契約内容からみると、次の3類型に分けることができる。
 @産元商社完全責任制(賃契約が紡績と産元商社間で完結し、下請契約は産元商社の自由決定で行われる。  例:富士紡・日東紡・倉紡・敷紡・日紡・大阪5綿6社)
 Aチーム・プロダクション制(系列の全機構が職能別に分化され、紡績自らが全機構を統括し、産元商社は手数  料を受け取る下機管理の代行業となっている。例:東洋紡・鐘紡)
 Bフレクシブル断続型(元方紡績は固定せず、景況に対応する浮動的な契約で、中小紡績・商社と中小産元に  多い。例:新紡・新々紡・大阪5綿6社など)
 
 
 
 
 大手産元商社の経営形態は、次のような@→A→B類型へと展開し、中小産元は資本力と経営戦略により再編成されてきている。
 
  高度成長期  
@特定紡績企業連携型
特定紡績企業及びその協力企業と連携し
て、賃加工をおこなう従属的傾向を強める)

 


 a

 
  第1次石油危機  
  A共同企画・受注生産型型
(バイヤーと共同で商品企画を行い、糸買布売による受注生産を行う)
 


a

 
  現 在  
 B自主企画・見込生産型*1
(自社企画の商品を見込み生産し、産地内外に複数の協力企業を持つ)
 


*播州織産元協同組合に参加する産元商社22社で産地生産の80%を占め、不参加商社は50社ある(出所:兵庫県織物協同組合連合会資料 2000年現在)
 
 
 この経営形態の展開は、予算統制無き無計画販売や下請企業への経営指導の放擲などの前近代的経営に終始する産元商社を淘汰したが、固定資産が少ない産元商社の倒産は、機業者へ直接的な打撃を与え、昭和27年(1952年)〜昭和39年(1964年)に倒産した大手産元13商社に関連した企業被害は、609企業で被害総額49,600万円(1企業当たり817千円)にのぼった(表20参照)
 
 【表20 昭和25年以降倒産した産元商社調】(出所:兵庫県商工労働部『播州織もの産地診断勧告書および報告書』昭                      和40年 p45)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 染色部門は、素材と色の多様化・品質基準の上昇によって、試色が増大し、作業が複雑・繁忙化した。特にバッチ方式で遂行されるチーズ・ビーム染色は、小ロット対応の小容量染色機(約70ポンド)が求められるが、輸出向け大量染色をおこなう大型染色機(約400ポンド)を持つ企業の小ロット対応が困難となっている。期近(まじか)発注が増えるに従い、受注逼迫期の短納期対応が困難となり、さらに受注減少と単価低迷が小容量の染色機の導入を遅らしている。このなかで、他産地向け糸染色の域外受注(ジーンズ・ニット製品用)や海外合弁企業の設立に活路を見いだし、産元商社への従属から脱出する染色企業も出現している。                     染色準備段階(色見本分析・染料配合)で、従来は膨大な過去のデータから類似品を抽出し、推定によって色配合をおこなっていたが、現在はコンピュータによるカラーマッチングを導入して、色合わせ時間の短縮をおこなっている。また、瀬戸内海汚濁規制の排水規制値上限に達しているために、染色率を上昇させる新染料の開発が求められている。兵庫県繊維染色工業協同組合への参加企業15社(殆どチーズ染色・ビーム染色で装備)、15社のうち整理加工兼業2社・織物業兼業1社である。
 準備部門は、分業化進み、播州織の比較優位を形成する条件となっている。経糸糊付は、専業者によって行う機械化が困難な手作業工程の零細家内工業であるが、高齢化・後継者者難によって休業・廃業が続出し、経営状況は深刻である。廃業織布業者・兼業農家・主婦などへの外注(アウトソーシング)が激増し、特に労働集約的工程である経通し工程は短納期対応が困難となり、サイジング工程は、多色一斉サイジングが開発されてから、素材多様化に対応するスキルの維持と継承が求められ、兵庫県織物協同組合連合会は兵庫県繊維工業指導所との共同で、ワインダー作業の共同作業場化や経通しの国産機械化を試行している。域内準備業者は23社で広範に立地している。
 織布部門の経営形態を歴史的に整理すると、戦前期昭和12年代までの[糸買い縞売り]形態(自己責任で原糸購入→自ら製織作業→自己責任で販売)*1は、昭和13年代に急速に[賃織]形態へ移行する(昭和12年の綿業輸出入リンク制で、戦時統制による外貨獲得を狙い、紡績業の輸出綿製品引渡量に応じた綿花輸入量の許可制が契機となり、原糸供給源である紡績業の支配力が強化されたことによる)*2。昭和30年代にはいると、米国向け輸出増に対応した染色・整理加工の品質維持から、紡績→産元系列による染色工場指定方式が採用され、産元から直接染色工場へ発注する[ネット工賃制度]形態へ移行した*3。昭和40年代の賃織率の全国比較をみると、播州産地の賃織率は93.1%(全国平均56.5%)であり、糸買縞売7%はほとんど意味をなさない程度まで進んでいる(表21参照)。昭和30年代後半から、新規労働力確保難・賃金上昇・受注対応難によって、織布業者はそれまで内部管理していた準備工程を切り離し、製織に専念するようになった。こうして織布業者の地位は低下し、景況の影響を最も受ける部門の一つになった(図21参照)
 【表21 品種別にみた賃織と糸買の割合】(出所:兵庫県商工部『播州織産地診断勧告書及び報告書』P180)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 【図21:賃織形態と織布業者の変容】(出所兵庫経済研究所『兵庫の地場産業シリーズ第1号』昭和59年P71)
 
 [昭和13年段階の賃織形態]   a [昭和30年代の賃織形態]   a  [昭和30年代後半の賃織形態]
 
紡績
 
紡績
 
紡績
 
 
産元
 
大手織布業者
 
産元
 
産元
 
                         
 
織布業者
                 
                                        
 
染色
 
整理加工
 
染色
 
織布
 
整理加工
 
染色
 
準備
 
織布
 
整理加工
 石油危機後の生産調整による織工賃暴落を防止するための共済制度、1985年のプラザ合意以降の織工賃下落に対応した隔週週休2日制の導入や革新織機の導入が推進されたが、工賃下落との悪循環に陥り(表22参照)、織布部門の設備高度化に準備工程が追いつかず、充分に稼働できない状況が生まれている*1。産元機能を併せ持つ大手織布業者は、大量生産体制とともに高難度の製織や短納期受注による受注確保、新鋭織機の導入・仲間取引による受注確保などをおこない、一部にはヒット商品によって他工程を内部化する者も現れている*2。平成8年に準備部門の合理化を推進する共同準備センターを設立して、ドローイングマシンを導入し、開発機関として播州織総合開発センターを設置した。こうした織布業者の階層分化は、以下のように整理される(図22参照)。
 【図22 織布業者の経営類型】(出所:筆者作成)


 

 原糸メーカー
 


                 B
 
            市中糸
            売り放し糸
            A

量販店
小売店
 

 

 





 











 

  B
 

  産元商社
 
 
 
       B
集散地問屋
総合商社
 








 

       B
 

海外市場
 







 
 




 

専門貿易商社
 


 

大手織布業者
 


 

地方生地問屋
 
B


 

中小織布業者
 


 
 

 
 *注A自主生産販売システム(織布業者が自己のリスクで糸を買い、製織して販売する形態。絹・人絹織物が中心の時代は、    市中糸や売り放し糸を使用した自主生産があったが、合繊繊維が主流の現在は少ない)
   B委託加工生産システム・賃織り(織布業者が糸の供給を受け、製織した布を納入して加工賃を得る形態。委託元によっ    て異なる)
     B1、原糸メーカー賃織り(原糸メーカーが、自己企画・自己リスクによって糸を供給し、製織した織物を受け取る。製織      技術開発水準の高い有力大規模織布業者を系列化し、原糸メーカー傘下の系列企業集団を形成する。有力織布      業者は、親機として中小織布業者に賃織り生産をおこなわせる)
     B2、商社賃織り(原糸メーカーと直接取引関係を結んでいる第1次商社である集散地商社が、自己企画・自己リスクに      よって織布業者に糸を供給し、製織した織物を受け取る。大口受注力のある大手・中堅織布業者が多く、採算性を      重視した高品質の定番品が中心となる)
     B3、産元賃織り(産元商社が自己リスクで糸を買い、織布業者に供給して賃加工させる。産元商社は、特定原糸メー      カーと取引関係を持ち、細分化した生産工程の専門業者を統括して、製織した製品を納入する)
     B4、親機賃織り(大規模織布業者(親機)が、中小織布業者(下機)に、自工場ないし委託工場でサイジングした糸を      支給して賃織りさせる)
 整理加工部門は、原糸部門に匹敵する高付加価値工程(風合・表面感・機能加工など)であるが、一貫加工ラインを持つ装置産業としての設備能力に見合う受注を確保する必要があるが、研究開発費・設備投資コスト負担から、受注を産地外企業に奪われる傾向があり、染色・織布部門に較べて1985年以降の生産量は最も減少している。紡績企業と連携して、整理加工設備を社内に設置したり、播州織工業協同組合・北播織工業協同組合・野間織工業協同組合との共同加工工場へのさらなる設備投資で対応しようとしているが、組合員のコスト負担が過重となっている*1。域内加工業は5社で、うち4社が播州織整理加工協会を組織し、PL法施行のPL産地規格を定めて品質管理による対外信用付与に努めている(未加入の1社は後発の織布業兼業企業)。           縫製業は、播州織商品化(ハンカチ・テーブルクロス)を契機に発生したものと、関西地域大手企業の下請けから成長したものに分類され、インテリア部門は自社販売力を形成しているが、シャツ・ブラウス部門は下請け賃加工が主力となっている。西脇多可縫製品協同組合に52社が参加している。
 【表22 織工賃年平均推移】(出所:播州織構造改善工業組合資料をもとに筆者作成)
                                      (単位 円/ヤード)
   170
   160
   150
   140
   130
   120
   110
   100
    90
    80
    70
    60
    50


 
  ギンガム(90×60)
ポプリン(120×70)
サッカー(80×75)
 
 









 
     51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 平元 2 3 4 5 6
 
 高度成長期から現在までの企業間関係の変化を図式化すると、石油危機以降、産地内の社会的分業が、産地業者の階層分化を誘発したことが分かる(図23参照)。                         第1は、各生産工程での企業間規模格差の発生である。特に、装置産業的性格の強い染色部門では、新染色方式の実用化と設備近代化による量産体制の実現から、新規参入障壁が形成され、逆に大規模施設を要しない準備・織布部門は、新規参入が容易であり、小規模零細の事業所数が急増し、過当競争が激化した。こうして現業部門の規模格差は、生産工程別の工業組合の分化を生み、特定地域への集中立地をもたらした(表23参照)。
 第2は、産元商社と現業部門の乖離である。産元商社は、自ら生産に携わることを放棄して生産管理に集中し、情報・営業・企画の中枢機能に一元化し、現業部門に対する支配的な管理を強め、現業部門の反発を誘発した。なぜなら、市場情報は産地商社に一元化され、他工程や川下情報は現業部門に届かず、現業部門の商品企画への参入機会が奪われたからである。さらに、小売価格決定後に生地値・工賃が決まるため、現業部門は工賃競争に陥っていった。円高によって、総合商社は加工賃値下げを要求し、さらに内需転換に伴う手形決済の増大と手形サイトの長期化(120日〜150日 表24参照)*2や分割払いは、現業部門の資金循環を悪化させた。返品・引取遅延・クレーム処理などは、産元商社に有利に処理された。
 【表23 企業の形態別・従業員規模別比較】(出所:兵庫県中小企業振興公社・新事業創出支援センター(兵庫県産業                      情報センター)『地場産業実態調査報告書』平成12年)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 【図23 播州織産地の企業間関係の変容】(出所:筆者作成)
 
[高度成長期=紡績企業・商社主導]:輸出向け定番品・少品種大ロット生産






 
  元方       現業部門  




 
紡績企業
商  社
(市場情報)
(商品企画)


 
賃加工
 

産元商社

 
  縞割り*1  指図書*2


 



 

産地メーカー

 
生産・納品管理


 

準備業者

 



 

   
             
 
[第1次石油危機・プラザ合意以降=産元商社主導]:内需転換・多品種小ロット・短納期
    特定紡績企業連携
産元商社
 
     縞割り・指図書


 

QRSブランド

 

 
受注     現業部門  



 







 

紡績企業
商社
 
賃加工 縮小→   元方     縞割り・指図書  
産地メーカー
 
 織布外注化
準備業者
 


 
産元商社
(市場情報)
(糸買布売)
(商品企画)
(自主企画)(見込生産)

 


 

 

 

サンプル
     

アパレル企業
集散地問屋
 
       


 


 


                    出所:太田康博「播州先染織物業におけ     る産地構造の展開」(日本中小企業

 
      対立関係誘発    
  生地値・工賃決定
返品・引取遅延
クレーム処理

 
 


 
          学会『インターネットと中小企業』同
          友館 1997年)をもとに筆者作成
 
  【表24 昭和40年段階の支払手形日数からみた産元数】(出所:兵庫県商工労働部『播州織産地診断勧告書およ                              び報告書』昭和40年 P159)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 このように産元商社が紡績から自立する傾向が、直ちに産地の主体性回復過程を示すものかどうかは即断できない。なぜなら、紡績離れによる糸買は縞売に直結せず、紡績との企業間関係も実態としては受注中心になっているからである。産地ブランドの縞売を実現するために、貿易実務力を持つ貿易商社を販売代理者として位置づけるような産地のマーケッテイング機能の強化が求められる。
 こうした産地構造の変容のなかで、主要部門の生産状況指標は衰弱傾向を示し、播州織の生産指標は、円高以降の海外市場悪化・米国輸入規制と輸入製品の急増を契機に、著しく減少している(表25・26参照)。
 
 【表25 播州織生産状況】(出所:兵庫県織物工業組合連合『播州織の概要』各年度版より筆者作成)










 
379.338  387.769
  377.377
         367.181
  生産高(単位千) 
生産金額(億円) 
 
輸出比率(%)
 
 
   1.310  1.220    351.487 1.097
72.2 70.6      1.193 1.148 318.172 1.023 947
       59.8              305.662 51.7 843  766
           52.5             282.060       697   648   
               50.6          239.392  232.664      39.0  621  40.8
                   42.6               200.163   195.525 585
                                      192.394   180.102
                                  36.4
  昭60  61   62   63  平元   2   3   4   5   6   7   8   9   10  
 
 【表26 播州織品目別生産数量の構成比と輸出・内需比率の推移(%)(出所:兵庫県織物協同組合連合会各年度                                   資料より筆者作成)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  2)播州織産地における産地振興ビジョンの展開過程
 
 播州織産地は、輸出主導型の大量生産体制から多品種少量生産と輸出・内需混合型の多品種少量生産体制へ切り替え、新製品開発・デザイン開発・商品企画力上昇・新たな整理加工方法の開発・在庫管理・販路開拓をめざす産地システムの再構築と、提案型・複合型多角的産地を形成するための以下の課題が問われている。
 @分業システムにより、生産管理が寸断され、非効率となっていること
 A一貫した整品管理ができないこと
 B受注生産を中心としてきたことにより、産地のオリジナルな製品を企画・販売する方式が未成熟であること
 C素材提供型大量生産システムから脱却し、多品種少量生産体制へ移行しにくいこと
 1991年(平成3年)に兵庫県が策定した『兵庫県地場産業振興ビジョン』では、下記のような基本フレームを提起し(図24参照)、翌年に(財)北播磨地場産業開発機構が「繊維リソースセンター」として設立された。その基軸は、零細規模経営・分業体制・賃加工形態という伝統的産業構造からもたらされる低付加価値性・脆弱な経営基盤の限界をいかに突破するかにある。『兵庫県地場産業振興ビジョン』では、「力のある企業の育成と力のある産地の形成に向けて、・・・・(中略)・・・・分業体制を生かしながら、振興のための中枢機構がオルガナイザーとなって、産地基盤の強化をめざす」(下線部筆者)とし、大手産元商社を核とするグループ編成(LPU)を打ち出している。 
 
 【図24 兵庫県地場産業振興ビジョンの基本フレーム】
      地場産業活性化の方向             政策支援の方向



 
基本的視点 (1)新たな生活文化の提案
      (2)柔軟・多様な雇用の場の提供
      (3)個性豊かな地域づくりへの提案
      (4)国際化への対応

 
基本的な視点 (1)自律的発展の促進
       (2)ソフトな経営資源の充実強化
       (3)企業化・商品化の促進
       (4)地域との一体性強化



 

 
   


 














 
具体的方策(1)産地オーガナイズ機能の強化
      @ソフト経営資源支援機能の強化
      A相互補完的企業グループの育成
     (2)商品企画開発体制の確立
      @情報収集提供機能の強化
      A商品企画力・デザイン力の強化
     (3)生産体制の整備
      @多品種少量短納期生産への対応
      A設備合理化・省力化
     (4)販売体制の整備
      @情報発信機能の強化
      A販売戦略の強化
     (5)人材確保・養成機能の強化
      @人材確保対策の推進
      A技術者・デザイナー等の養成


 








 
施策内容 (1)新製品・新商品・デザイン開発への支援
     (2)需要・販路開拓に対する支援
      (3)人材養成に対する支援
     (4)設備の合理化・省力化に対する支援
○指導機関の連携強化・ネットワーク化
  工業技術センター
  産業デザインセンター
  産業情報センター
  中小企業総合指導所








 


 
 
 このビジョンの重点は、生産効率化による価格競争力強化・高付加価値化による非価格競争力強化・販路拡大という製品戦略にあり、次のような施策を提起している。
 @個々の企業の(特に産地現業メーカー)の整品・技術開発機能の強化と個性化
 A産地全体として、工程間の連携を図る共同化・集約化・ネットワーク化の推進
 B各工程の合理化・人材確保のための雇用環境整備
 C産地イメージを高める総合織物産地化
 しかし、A〜Cは、産地の内在的なシステム変革を伴うにもかかわらず、中・長期的な課題として先送りされ、伝統的システムの再編は遅れている。その理由は、西陣産地と同じように、LPU(相互補完連携グループ)が、大手産元商社を核とする企業間連携という形態で提起され、産元商社と現業部門の情報交換・分配面での軋轢と、現業部門自身の受け身の経営姿勢によって、LPUが機能せず、情報ネットワーク構築をめぐる混迷をもたらした点にある。ここに『兵庫県地場産業ビジョン』の問題があった。                        播州織産地における振興ビジョンはどのように展開したであろうか。播州織産地ビジョンは、通産省の中小企業構造改善事業を具体化した兵庫県織物共同組合連合会『播州織構造改善ビジョンー総合織物産地をめざしてー』(1989年 図25参照)と、通産省『繊維ビジョン』の繊維リソースセンター(北播磨地場産業推進機構)を具体化した播州織21世紀戦略員会『播州織21世紀戦略ビジョン』(1993年)及び播州織戦略検討会議『播州織21世紀戦略ビジョン<行動計画>』(1996年)によって提起された。  
 
 【図25 兵庫県織物協同組合連合会『播州織構造改善ビジョン』(1989年)概要】
 
 1)産地の特質と課題
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 2)産地戦略
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 3)工程別の課題と施策
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 4)推進施策・制度
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 播州織21戦略委員会『播州織21世紀戦略ビジョン』(1993年)・播州織戦略委員会『播州織21世紀戦略ビジョン<行動計画>』(1996年)は、以下のような内容である。
 
  [産地の課題]  

  a
 
  [停滞の要因]  
○素材産地からの脱皮
○二次製品化による高付加価値化
○提案型産地の実現

 
○国際競争激化
○産地機能の弱さ
 商品企画・デザイン力・縫製技術力不 足・資金力不足
○地域住民との交流不足

 

 






 
 
  a播州織戦略委員会『播州織21世紀戦略ビジョン』 (1993年)・『行動計画』(1996年)概要      
 
    [産地戦目標]    





 

●下請構造からの脱皮
  ・産地ブランド商品開発
  ・マーケットイン体制確立
  ・自販力確立
 





 

●産地構造の変革
 ・フレクシブル生産体制確立
 ・情報化、システム化
 ・関連・周辺業種集積
 





 

●意識改革
 ・創造性発揮
 ・ファッション環境
 ・ビジョン、戦略推進
 





 

●地域交流活性化・ファッションタウン ・コンベンション施設・都市基盤整備 
 

    全体・部門別行動計画

   短期行動計画

  中期行動計画

 長期行動計画

[産元商社]

 

情報力
QR推進協力企業群確保
製販直結販売チャネル構築

企画、販売スタッフ育成  「生産者会議」設置 
 

情報管理システム構築
(工程情報・製品情報)
 

新産地システム構築
流通センター構築
 
[染色部門]
 
需要短サイクル、多様化対応
個性化、差別化対応技術
新染色強化       染色機小口化群管理  QR対応生産システム
 
排水処理共同化
工場団地化
[織布部門]

 
提案型ものづくり参加
量販型素材からの脱却
変化織重視
試織普及
チーム・グループ形成   開発プロジェクト・チーム結成


 


 
[加工部門]

 
差別化推進
加工能力による棲み分け
 
新加工強化、協業化・共同化、工程管理情報システム化、繊維工業指導所連携

 


 
[準備部門]

 
機械化、合理化
共同、協業、チーム化

 
自動経通機導入     工程管理情報システム化 共同・協同事業化 共同工場建設                    

 
[縫製部門]

 
アパレル、デザイン育成強化
他工程程との交流、連携

 
新素材、複合素材開発  ばんおりブランド開発チーム
繊維工業指導所との連携 
ばんおりアパレル育成

 


         
[行政部門]
    

 
産地支援
ファッションタウン基盤整備 インダストリアルツーリズム

 
見本市・イベント見直し


 
道路交通、情報通信整備
ばんおり工房建設
道の駅設置
インターネット発信
工芸デザイン高等教育機関設立

 
[組 合] 企画・開発機能重視 組合組織再検討 組合統合・再編 新組合組織結成
[全 体]

 


 
開発プロジェクトチーム結成情報分析会議設置
 


 
企画会社設立

 
 
 
 以上の『播州織産地構造改善ビジョン』及び『播州織21世紀ビジョン』・同『行動計画』は、組合再編を含む産地構造の全面的な変革をめざすものであり、西陣産地のビジョンに較べてより徹底した挑戦的な内容となっている。これらのビジョンの産地の現状と課題に対する認識はほとんど同じで、基本戦略も共通性がある。ただし、これらの複数のビジョンを架橋し、相互の連携を配置しながら推進する組織的・制度的な体制はとれていない(図26参照)。これら播州織ビジョンが、現実にどのように推進されていったかを、プロセス・イノベーションと事業共同化及び情報ネットワーク化の3点から検討する。
 
 【図26 播州織産地振興ビジョン比較表】(出所:兵庫県織物協同組合連合会資料をもとに筆者作成)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 3)播州織情報化戦略の第1段階:プロセス・イノベーションと事業協業化過程の特質
 
 播州織の産地振興施策は、構造改善事業(昭和51年以降、繊維工業構造改善臨時措置法による)→産地ハイテクシステム導入促進事業(昭和60年以降、中小企業技術開発促進臨時措置法による)→事業転換対策費補助事業(昭和61年以降、特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法による)→加速的技術開発支援事業(昭和62年以降)へと展開した(図27参照)。
 
 【図27 播州織産地施策推進状況】(出所:兵庫県織物協同組合連合会『播州織産地構造改善ビジョン』平成元年 P83)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 播州織のプロセス・イノベーションの指標である製品規格化・作業標準化・品質管理が、既に昭和40年代より全国水準を上回っているのは、輸出向商品のクレーム防止という輸出検査制度と、賃織りの厳格な取引条件のなかで取り組まれた技術改善志向にある。作業標準化・品質管理の実施率の全国比較をみると、全ての分野で播州織が上回り、特に製品規格制定率87.8%(全国50.4%)と社内規格・作業票率36.2%(全国17.9%)及び準備工程品質管理59.0%(全国38.5%)の分野で高い実施率を示している(表27参照)。           【表27 作業標準化・品質管理実施率の地域別比較】(兵庫県『播州織産地診断勧告書および報告書』昭和40年                             P208)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 規模別にみると、播州織産地はすべての規模で全国水準を上回っている。但し、製織工程の品質管理の実施率は、51〜100台機業41.2%(全国77.3%)・101〜300台機業37.8%(全国83.4%)であり、中堅から大機業の実施率がむしろ立ち後れている。また準備工程の品質管理の実施率は、301台以上機業33.3%(全国78.5%)で大きく立ち後れている(表28参照)。
 
 【表28 作業標準化・品質管理実施率の規模別比較】(出所:前掲書P208)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 品質管理を支える専門技術員の設置率が、全国565/10,543(5.4%)・播州28/936(3.0%)と極めて低いのは、経営者と保全工に依存できるギンガムの製品特性とともに、零細機業の雇用力に原因がある。デザイナーが少ないのは、賃織機構のもとでデザインが最初から指定されていること、及び新デザインの著作権保障が不充分で、デザイナーの存立基盤が希弱な点にある(表29参照)。                
 【表29 専門技術員とデザイナー設置数】(出所:兵庫県商工労働部『播州織産地診断勧告書および報告書』P209)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 技術指導は、県立繊維工業指導所・織物検査機関・組合・元方紡績機業等によって分散的におこなわれており、これらを統合する技術指導のシステム化が求められている。ここでは、兵庫県繊維工業指導所の昭和40年代における準備工程の合理化計画をみる。従来同一工程で行ってきたチーズ巻とビーム巻を分離することによって、所用人員比率を59%に削減し、所要時間比率は52%に削減された(図28参照)。             このような染色工程の技術革新は、準備工程の機械化を誘発し、従来織布工程に含まれていた準備作業が独立・専業化していく契機となった。チーズ染色と連携するソフト巻工程(工業化移行年次45年)と、ビーム染色と連携する荒巻整経(工業化44年)は、染色工程の1工程として専業化し、さらにサイジング部門としてビーム染色と連携する一斉糊付(工業化移行年次44年)とチーズ染色と連携するビームツービーム糊付(工業化移行45年)の工程が、織布部門から独立した(図29・30・31)。このように、工程における技術革新と分業が連動し、分業化がより進展した。
 
 【図28 先染織物準備工程合理化計画表】(出所:兵庫県商工労働部『播州織産地診断勧告書および報告書』昭和40                      年 巻末資料より)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 【図29 綛糸染色法とチーズ染色法・ビーム染色法の工程比較】(出所:前掲書P15)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 【図30 チーズ法染色法導入による生産人員就労比率と節減人員】(出所:前掲書P16)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 【図31 チーズ法導入による播州糸染織物生産合理化計画】(出所:前掲書P17)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 このようなプロセス・イノベーションの推進は、資本力を持つ大規模企業の工場から進んだが、遅れていく零細工場の協業化・共同化による設備革新が求められ、さらに個別企業では対応できない排水処理をめぐる水質規制に対応する共同化問題が浮上した。播州織産地には、このような協業化・共同化の条件はあったのであろうか。   播州織産地の特筆すべき点は、細分化された分業システムがもたらす作業ロスと価格競争を、共同・協業化によって打開する試みが歴史的に蓄積され、整理加工工程における共同整理加工場や、準備工程における協業化がすでに取り組まれてきたことにある。準備工程の協業化形態は、組合共同準備工場形態と個別組合員間の協業化形態からなる。前者は組合経営の共同工場によって、合理化・設備近代化のコスト低減を実現し、共同販売によって適性工賃を確保し、製品一元化による経営安定をめざしている(図32参照)。後者は、個別零細企業間の協業化によってロスを改善し、共同受注や技術・経営・経理の情報交流をおこなう。
 
 【図32 組合運営による共同準備工場(案)】(出所:兵庫県商工労働部『播州織産地診断勧告書および報告書』昭和4                         0年 P345 を参照して筆者作成)
  A商社   @組合員   共同集検場  
      受注    A原糸出荷 共同準備工場糊付  
  B商社 受注         糊付指示    指図書により A組合員  
  共同事業部
商事課
         乾燥糸廻送        製品出荷
  C商社 共同受注     組合員に指図書指示 B組合員   整理工場  
                  整経指示      整経ビーム搬出
   糸 商    B原糸出荷 共同準備工場整経   C組合員  
   倉  庫  
  D組合員  
                               (指図により製織)     海外
 
 このような協業化・工場集団化に対する業者の期待値は、42.5%(全国20.8%)と高く、その内容は工場集団化21.7%>共同出資会社11.3%>合併5.0%>その他4.5%の順となっている。協業化への期待を規模別でみると、全国的には中小規模が高く零細・大規模企業では低いのに対し、播州織産地は逆に20台以下の零細機業と100台以上の大企業での協業化志向が強いという特徴的な傾向がある(表30・31参照)。
 
 【表30 協業化希望工場の割合】(出所:兵庫県商工労働部『播州織産地診断勧告書および報告書』昭和40年P364)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 【表31 規模別にみた協業化希望状況】(出所:前掲書P366)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 また共同事業志向においても、播州織産地は全国平均に較べて抜きん出た高水準を示している。その内容は、賃織共同受注29.4%>共同炊事23.8%>副資材共同購入19.4%>共同寄宿舎15.3%>共同販売14.9%>金融事業14.3%となっている。
 規模別の共同事業志向をみると、全体として共同受注・共同炊事が高く、特に20台未満企業において顕著な期待がある。規模別で注目されるのは、50〜100台の中堅企業において共同炊事の志向が高く、100台以上の大企業においても共同購入・共同販売の希望が高いという点であり、結論的には規模を越えて共同事業への志向が高いという傾向を示している(表32・33参照)。  
 
 【表32 共同事業希望工場数(希望工場数/実工場数×100%)昭和38年9月】(出所:兵庫県商工労働部『播州                                   織産地診断勧告書および報告書』P367)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 【表33 共同事業希望工場数 規模別】(出所:前掲書P368)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 このような播州織産地の強固な協同化・共同化志向の背景には、政府による中小企業共同化政策が展開される前から、播州織産地の危機を克服してきた歴史的な蓄積があり、それが広巾先染織物の産地危機に直面して、協同化・共同化へのインセンテイブを再び高めたのである。兵庫県商工労働部の調査時点である昭和39年8月は、中小企業共同化政策の全国的な広報活動は未だ緒についたばかりであったことも、これを実証している(図33参照)。
 
 【図33 播州織産地組織と共同化の歴史的展開】(出所:兵庫県商工労働部『播州織産地診断勧告書および報告書』巻                         末資料より)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ただし、播州織の共同化戦略の歴史的な問題点は、第1に、織布工場ではなく、製織活動に随伴する後工程である整理加工工程が中心となり、実質的な利用利益は、産元商社ないし大手機業者が享受し、中小織布機業の利用利益はなかったという点である。第2は、共同化戦略の狙いが、主として零細経営をカバーする少品種大量生産体制による「規模の利益」実現にあったという点である。こうして播州織の共同化戦略は、生産技術の近代化と労働力削減効果という効果を発揮してきたが、多品種少量生産と製品差別化に対応するものではなかった。
 しかし、歴史的に積み上げられてきた播州織産地の共同化戦略の蓄積は、従来の細分化された分業がもたらす技術の特化と小資本経営による多品種少量生産の可能性を生み、問題点である工程相互の無関心と非有機的な関係及び価格競争による零細業者の撤退を克服する垂直連携グループ(LPU)を実現するための潜在的な条件を育んできたことも確かである。                                   共同化が、賃織制から脱却した縞売りへの移行を実現するかどうかが問われている。このような先駆的な試みは、遠州産地におけるLPU形成*1や京鹿子絞の総合加工方式*2として試行され、ネットワーク連携による「連結の経済」を生み出そうとしている。播州織産地の新たな共同化は、このような情報ネットワーク戦略の構築に懸かっている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  4)播州織情報化の第2段階:「先染織物工程情報オンライン・システム」の展開過程
 
 播州織情報化は、西脇市が通産省の「ニューメデイア・コミュニテイー構想*1」の指定地域となり(1984年)、ファッションタウンとしての活性化を図る産地振興型情報システムとして「先染織物工程情報オンラインシステム」と「先染織物データベースシステム」が起動した時点で本格的にスタートした。この過程は以下のように時系列的に整理
される。































 
1952年(昭和27年)
1967年(昭和42年)

1976年(昭和51年)


1977年(昭和52年)
1979年(昭和54年)
1980年(昭和55年)
1982年(昭和57年)
1983年(昭和58年)
1984年(昭和59年)


1988年(昭和63年)

1989年(平成 元年)

1990年(平成 2年)
1991年(平成 3年)

1992年(平成 4年)




1993年(平成 5年)
1994年(平成 6年)
1996年(平成 8年)
1998年(平成10年)
1999年(平成11年)
 
播州織綿スフ織物調整組合(「特定中小企業の安定に関する臨時措置法」による)織機登録制実施
「特定繊維工業構造改善事業臨時措置法」による構造改善実施(播州織産地78億4,800万円投下し、織機廃棄3,901台・34億6,800万円、うち革新織機101台・4億6,200万円)
新繊維構造改善事業の産地一括型知識集約化グループとして承認(設備リース・共同施設事業として、昭和53〜58年の受付合計66億2,400万円、織機更新1,384台・51億1,600万円うち革新織機782台・32億9,900万円)
「播州織総合開発センター」設立(総工費2億5千万円 知識集約化拠点施設)*2
産地中小企業対策臨時措置法の指定業種となる
播州織工業協同組合 事務OA導入
播州織工業共同組合 構内LAN構築
通産省ニューメデイアコミュニテイー構想発表
西脇市が通産省「ニューメデイア・コミュニテイー構想モデル地域」第1号指定を受ける
「播州織ニューメデイア・コミュニテイー推進協議会」発足
兵庫県繊維工業指導所 縞割表のCAD化取り組み開始・経通し国産機開発開始
「(株)播州織情報センター」発足(西脇市・基盤技術研究促進センター・業界6組合・金融機関6行・その他企業6社出資の第3セクター) ・播州織工業協同組合 ドローイングマシン導入
先染織物工程情報システム第1次運用実験実施
北播磨地場産業開発機構設立*3・TIIPT事業認可
先染織物工程情報システム第2次運用実験実施
先染織物工程情報システム第3次運用実験実施
先染織物データベースシステム開発
先染織物工程情報システム第3次運用実験実施               
先染織物データベースシステム運用実験実施
試験研究機関終了・「(株)播州織情報センター」独立採算事業化
播州織産元システム構築
特定中小企業集積活性化法の計画認定
播州織産元システム機能拡張
繊維産業構造改善事業協会TIIPU事業認可
検反巻・包装・梱包自動システム導入
「QR98−日本」(於大阪)で、「播州織産地の物流・情報ネットワークシステム」開発効果報告
検反巻・包装・梱包自動システム本稼働開始
 
 西脇市ニューメデイア・コミュニテイー構想は、播州織産地である西脇市が、零細・複雑多岐の個別企業では対応できない地域情報システムを構築し、ファッションタウンとして活性化を図ることをねらいとし、基本構想は下記のように、a)から進んでf)に至る段階的なものである(図34参照)。







 

               a)工程情報オンライン化・過去の業務のデータベース化
○現状業務の改善(効率化)   b)決済システムのオンライン化・共同計算システム(財務・給与など)
               c)共同受発注システム導入
               d)デザインシステム導入
○商品開発力上昇       e)海外情報・商品情報データベース化
               f)外部データベース化
 







 
 
  【図34 播州織VANのシステム構想】(出所:西脇市『西脇ニューメデイア・コミュニテイー構想』1985年)

 
 
 
    情報センター    











 
 










 











 











 
  工程情報ファイル     
  
工程進捗情報  
  
  
  
  
  
   検索

 











 
 










 
  産元商社     受発注処理

  入出荷処理

  請求支払処理
 
  染色工場  

 

 
  染色工場     織布工場  

 

 
  織布工場  
 過去業務の記録
 検索(企業別)
 共通情報案内

 
  準備工場  

 

 
  整理加工場     整理加工場  
   


 

 
 
センター処理とのインターフェイス部分
 
   
 
 
外部データベース
 
ローカルデータ入力
 
 
 推進主体として設立された「播州織情報センター」の目的は、播州織製造部門と卸売機能を併せ持つ産元商社を中心として推進する業界全体の情報化にあり、次のような(1)→(2)→(3)へ向かう。
 (1)先染織物工程情報オンラインシステム(指図書などの受発注書類の情報化)
 (2)先染織物データベースシステム(織物情報・業務契約・荷動き情報のデータベース化)
 (3)行政情報・生活情報・コミュニテイー情報提供システム
 これらの事業計画で実質的に稼働しているのは、(1)の「工程情報オンラインシステム」であり、産元商社から出されたオーダーを短納期化するQRS(60日→40日)をめざす指図書のオンライン化が完成している。そのモデルチームでは、ホストコンピュータとして汎用中型コンピュータを導入し、産元商社(1社)にオフコン、現業工場にパソコン、大部分の零細企業にはFAXが設置されている*1(図35参照)。    
 
 
 
 【図35 A産元商社のモデル・システム】(出所:筆者作成)
 



 
  播州織情報センター  
  汎用中型コンピュータ  
 
         @市場情報
←基礎情報システム A生産情報
         Bマネイジメント情報
 


 
  産元商社  
  オフィスコンピュータ  
 
          @製造計画立案・修正
 ←製造管理システム A生産作業指図
          Bプロセス情報
               指図  指図  指図  指図



 
  染色業者

 

パソコン
 
(FAX)



 
  準備業者

 

パソコン
 
 (FAX)



 
  織布業者

 

パソコン
 
(FAX)



 
  整理加工

 

パソコン
 
 (FAX)



 
 
 産元商社がつくる指図書は、品名・数量・納期・染色条件・糊付方法・織上サイズ・加工条件・仕上サイズ・出荷先などの製造・加工要件を記した生産工程の管理書である。「先染織物工程情報オンラインシステム」は、指図書をオンライン化し、工程の進捗状況を瞬時に把握し、業務の効率化と迅速化を図ることを目的としている(図36 参照)。
 
 【表34 製織指図書凡例】(出所:兵庫県商工労働部『播州織産地診断勧告書および報告書』昭和40年 P144)

























 

























 
 左記は、同一機業者に別個の産元商社から同時に発注された製織指図書であるが、同じ立ギンガムでも産元A・Bで大きく異なる(表34参照)。
 産元Aの計算が正しいとすると、1ydについて産元Bは0.0015Ib多く糸を供給している。これを1万ydに換算すると、15Ibとなり、糸値175円とすると産元BはAに較べて2,625円損している。
 逆に機業者から言えば、経糸本数がBに較べて42本多く糸量が0.0015yd少ないから、指定密度を織り上げる注意が必要となり、経糸42本分の綛取・糊付・整経費用35,000円が余分に必要となる。従って、BはAに較べて加工条件がよいということになる。
 これが、産元と機業者間のトラブルを誘発したが、オンライン化されて糸量計算の公正性が確保されるのか、それとも産元優位の価格競争をより誘発するようになるかは、織布機業者の共同性の水準にかかっている。



 
 
 
 
 【図36 播州織産元商社の業務オンライン化】(出所:筆者作成)
 
  T発注・受注・入札チャネル
 






 
  海外商社  

 a
 
  大阪商社  

a
 
  播州産元  
(1)発注 @縞見本・播州産元指定
     A播州産元指定なし
(2)価格 @売値条件指定
     A無指定、合見積後決定


 
@播州産元指定
A入 札
 
@縞見本提示・売依頼(一般的)
A入 札
 a)ジャンブック(その場で契約)
 b)カウンター(バイヤーの指値訂正)
 c)オファー(産元値決め、一般的)

 


 






 
  U播州織元業務
 

 
  大阪販売駐在員       業務内容        業務特性  



 
 (1)大口扱い職員
 (2)小口扱い職員
 (3)小走り職員

 



 
(1)注文取
(2)縞売込み
(3)入札
(4)紡績賃織契約
(5)加工指図書送付

 



 
○産元中枢業務
○受渡・仕入経験を経て6 年で一人前

 





























 
a

 
      a
     (本部)
      a
  @
 

(1)加工指図書点検・区分
(2)社内営業業務統括・調整

 

 

○社内業務熟練要
○勤続2〜3年要

 







 
a
 
  営業総務    
   
  A

 

      a

(1)染色・織布・加工場決定
(2)工賃決定・賃織契約
(3)染色指図書・製織指図書
(4)工費決済
(5)下請管理

 

○製織・染色業務熟知要
○勤続2〜3年要

 


a

 
  仕入業    
(1)平織
(2)変り
(3)特殊

 



 

 


 

      a

(1)原糸入出荷管理
(2)綛取屋・染色・織布への
  原糸経路掌握

 

 

○原糸知識要
○勤続1〜2年要

 



 
a
 
  原糸業    
   
 


      a
 

(1)見本整理
(2)加工条件の決定
(3)加工指図書作成
(4)織上・積出見本・検査
(5)製品受渡・出荷管理

 

 

○見本整理は入社最初の
 業務・見習業務
○加工指図・受渡は勤続
 2〜3年要

 





 


a

 
  受渡業    
(1)見本
(2)検品
(3)受渡

 



 

  B

  C

      a
 (染色・織布・整理加工業者へ送付)

(1)例月試算表作成
(2)社内検討材料作成
(3)予算統制

 

 

○全業務熟知要
○経理事務熟練用

 



 
a   経理    
     
 

 
 
凡例)社内LAN播州織オンライン・システム(@eCの双方向)
 
  5)播州織「先染織物工程情報オンラインシステム」の問題状況
 
 「播州織先染織物工程情報オンラインシステム」構築の初期段階で、なぜ混迷状態が派生したのであろうか。  産元商社が、総合商社や海外バイヤーと結ぶ取引契約は、(1)制約条件(品名・数量・納期・支払条件・引取条件・取扱商社・仕向先等)、(2)製造・加工条件(染色条件・糊付方法・織上サイズ・加工条件・仕上サイズ等)、(3)原価・利益条件(染工賃・織工賃・加工賃・糸代・成約値・単位原価・単位利益等)である。これらの契約情報は、各企業の顧客リスト・受注先・納期・稼働率に関係する事業秘密となる情報であり、オープン化困難な情報である。。
 これらの情報は、産元商社の内部情報であり、指図書に記載されるのは、(1)の品名・数量・納期及び(2)の製造・加工条件であり、最終販売先・原価・利益・支払条件などは、企業秘密として指図書には記載されない。従って、現業部門にとって指図書のオンライン・システム化は、作業の進捗状況を報告する単方向的なシステムに過ぎないから、一方的な労力コストと繁茂性の負担が増大するのみである。
 つまり、オンライン機能の実態は、現業部門が各工程の進捗状況を産元商社へ集中する単方向の垂直型の情報一元化であり、産地全体の双方向性はない。こうして産元商社と現業部門の垂直的な従属関係は、情報化によってさらに深まり、現業部門はオンライン・システムに対して消極的となる。                 このようなオンラインの単方向性は、播州織情報化が地域情報化戦略の下位戦略として位置づけられ、「上から」(通産省)の外発的政策であったという基本的な問題があるとともに、受容した産地業界は分業の頂点に立つ産元商社が主導したという点にある。産元商社は、従来からの特定現業メーカーとの取引集中の見直し・改善を放置したままで、情報ネットワークを推進し、現業メーカーはさらなる工賃競争に巻き込まれて、産元商社との信頼関係を失ったのである。双方向的なオンラインに対しては、日本的なコスト安を理由とする双方向性消極論と、将来性を考慮した双方向性推進論があり、現実にはコスト問題が重視されていった経過がある。
 このなかで産地全体を調整すべき位置にある「播州織情報センター」は、企業間のコンセンサスを形成するセンター機能を発揮し得ず、ニューメデイア・コミュニテイ構想は、産地商社主導型の産地VANによる生産管理システムにとどまってしまった。                                     
 「播州織先染工程情報オンラインシステム」の混迷は、産地商社だけでなく現業部門の情報化メリットを実現するような双方向性を持つオンライン構築が不可欠だということを示している*1。すでにこのようなオープン化は、紡績企業・総合商社の系列化にある大手産元商社と連携している現業部門で稼働しているが、問題は、中小零細規模の産元商社と現業部門の産地VAN形成にある。こうして播州織情報化は、強固な産地共同化の基盤と条件がありながら、産元商社に偏倚した試行によって、双方向的なオンライン化に失敗した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 第3節 情報化限界の実証的検定(3)ー室町織物卸業における「情報武装型卸売業」戦略の失敗
 
  1)「情報武装型卸売」戦略の初期段階ーアパレル産業
 
 石油危機以降の全国的な不況への対応と、さらに川上と川下を直結する「流通革命」によって惹起された「問屋危機論」・「問屋消滅論*1」への中小卸売業界の対応として、中小企業庁は次のような「情報武装型卸」戦略を提起した(中小企業庁取引流通課『中小卸売業の情報化ビジョン』P33 1985年 図37)。
 
 【図37 『情報武装型卸売ビジョン』概略】(出所:通商産業省『情報武装型卸売ビジョン』昭和60年より筆者作成)



 
  【情報武装型卸業の定義】  
 『オンライン・ネットワークを構築し、コンピュータを高度に使いこなし、「モノ」を販売するだけでなく
ネットワークより収集・蓄積される「情報」や、補充・発注等の「システム」を販売する卸売業である』
 
   
   
   
 
    a





 
  【情報武装型卸業の内容】  
 情報ネットワークの構築
@オンラインリアルタイム処理システム
Aロー・コストオペレーション・システム(徹底した単品在庫管理システム+効率的ピースピッキングシステム)
Bデータベース構築による付加価値の高い情報・システム提供
 





 
    a





 
  【方法】       【情報ネットワーク共同化】  
@内部構築
A外部委託


 


 
【共同情報ネットワーク  @同業種卸の共同化
の4形態】       A異業種卸の共同化
            B系列グループの共同化
            C業界共同VAN
 
B共同化  
の3形態
 

 





 
 このような「モノ」から「情報」への卸売機能の高度化は、次のような課題に直面すると考えられる。
 @消費者直結と流通チャネルの多様化による小口・多頻度配品を実現する需給結合・物流・在庫管理機能の高度化と、物流コスト負担の上昇を解決すること
 A取引先の分散・多様化に対応する決済と受発注を結ぶシステムや、リスク負担のシステム化を実現する金融機能の高次化
 Bデータベース機能を駆使したメーカーや小売への情報提供や、コンサルテイング・シュミレーションの提供
 C異業種参入により、製造メーカーと大規模小売業が直結し、卸売機能の代替が進む可能性に対応する
 これらの諸課題を情報ネットワークによって処理する場合に、「卸売情報」がどのように処理され、従来の流通システムにどのような影響を与えるか注目される。
 経営情報を形式情報(ルーチン型で数値化可能)と意味情報(非定型的で恣意性がある)に分けると、「情報武装型卸」戦略は、まず形式情報をデータ化し、順次に意味情報へ移行する階層的なシステムとなる。その階層は、データ化・客観化の可能性によって、@コミュニケーション情報(文書通信のデータ効率化)aAデータ・プロセッシング(経営管理数値データ処理・効率化)aBインフォメーション情報(情報提供・宣伝・顧客アプローチの効率化)aCインテリジェンス情報(市場情報・経営情報・シミュレーション・意思決定)と展開すると考えられる。このような階層的な高次情報ネットワークを構築するために必要なコストと対費用効果が算定した事業計画が求められるが、通商産業省の事業計画(案)は以下のようになっている(図38参照)。
 【図38 情報武装型卸売業基盤整備事業】(出所:通産省『繊維ビジョン』P141 1999年)

      情報化事業

        実施状況(98年12月末現在)

 
  







 

EDI標準メッセージ


 

○51メッセージ作成済                       ・小売-アパレル間:26メッセージ(VICS:34メッセージ)
 ・アパレル-テキスタイル間:13メッセージ(TALC:11メッセージ)
 ・テキスタイルー縫製間:12メッセージ(該当メッセージなし、トライアル版)

JANコード

○QRコードセンター本格運用開始(97年10月20日)

POS情報分析システム開発

○プロトタイプ開発・改良終了

その他

○TIIP事業を通じたSCM・ロールID整備

 
 
 
















 

構造改善グループ支援

○40グループ568社でグループ内情報化推進中

繊維産業革新基盤整備事業TIIP










 

○25業務システム開発(現在全国規模での実証実演終了)13業務システムを商用化(残りは検討中)








 
 システム適用業種     実証実験登録企業数







 
R−A間    10
TーA間    3
S−A間    3 
T−AーS間   1 
A       1
T       2
その他     5
小売         65
卸          143 
アパレル        273
テキスタイル(除く卸業) 445 
その他
       146

 
  計   25システム        1,076
       注)R:小売業、A:アパレル、T:テキスタイル、S:縫製 

繊維産業生産・流通高度化基盤整備事業TIIP2

○4産地(石川・今治・播州・尾州)における情報システム開発終了。平成10年4月より実証実験開始。

中小繊維事業者情報化モデル事業TIIP3

○タオル業界をモデルとし、今治産地と全国卸、小売業者間の取引と生産の一体化等をめざした情報システム開発を開始

ビ ジ





構築

先進的情報システム開発実証事業


 

○情報技術を活用し、繊維産業のサプライチェーン全体の効率化・最適化を図り、業界共有のビジネスモデル構築を目的としたQRアークテクチャー・イニシアテイブ・プロジェクト(6案件)及び画像情報の先進的活用等のプロジェクト(4案件)を開始。

中小企業向け業務アプリケーション・ソフトウエアー開発事業
 

○カーテン・カーペット、服飾副素材など中小企業者を中心とした業種のサプライチェーンの効率化を図るための情報システム(6案件)の開発開始
 





 

情報化導入支援事業
 

○基礎テキスト開発終了し研修実施 専門家育成研修(石川・今治・兵庫・一宮)・情報化導入研修(札幌・仙台・東京・大阪・広島・福岡)

QR推進協議会
 

○QR大会実施・QRガイドブック・QR推進宣言・
 
















































 
 この卸売業の情報武装化は、アパレル大メーカーを中心とした繊維VANとして構築されていく。伊藤忠は、受けけ渡し業務のオンライン化から始め(1975年)、1983年には繊維メーカー(東洋紡・東レなど化繊8社)との間をオンライン化、1984年には織布・染物工場との間をオンライン化することによって、川上から川下に至る全過程のオンライン化を実現した。伊藤忠の繊維VANは、契約から代金決済に至る一貫データの交換と効率化(ペーパレス・省力化)を実現したが、その際に相手先企業の商品のコード/システムを使用し、VAN側がデータ交換することにしている(図39参照)。
 
 【図39 伊藤忠の繊維VAN】



 

    繊維加工業
撚糸・織布ユニット・染色・縫製

 



 
 


 

合繊メーカー
 
 

 

 伊藤忠
 


 

アパレルメーカー
 


 
 


 

紡   績
 


 

海外ユーザー
 


 
        東レ・テイジン
         クラレ・旭化成
        ユニチカ・カネボウ

物流企業
 


 
        東洋紡                                        
 
 このVANでは、FENCISのネットサービスとアプリケーションサービスを一体化したシステムとして、店頭POSと小売本部(オフィコン)を接続する多様な端末・センターの連携を実現し、VANセンターに保存された顧客情報による販売戦略の策定や、インテリジェント・サービスをおこなっている。こうしたアパレル業界におけるVAN利用は、自社構築型の店頭販売物流一貫システムを、アパレルメーカー・グループのSIS戦略的情報システムとして実現する可能性を拓いている(図40参照)。
 
 【図40 アパレル業態向けVAN利用形態】
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 伊藤忠にみられるアパレル中心の情報ネットワークの進展は、伝統和装産業に影響を与え、NCや量販店・組織販売における情報化が推進され、伝統和装の生産・流通チャネルに一定の変容を誘発している(図41参照)。 
 
 【図41 クラフト染織産業における流通の変容】(出所:筆者作成)

  流通チャネル事例

         流 通  概 要

【NC(ナショナルチェーン)】
 やまと・鈴乃屋・三松

 

ユーザーセグメンテーションと本格的マーチャンダイジングによる単品大量販売システム・SC(ショッピングセンター)と商社金融利用で急成長・顧客層を20〜30歳代に絞り込み・中振袖中心・マニュアル化された販売手法・多店舗販売

【組織販売】 全農・うえだ・月の友・まるやま・サンシン・草の葉
 

 40年代呉服需要大衆化背景・大手小売店がフォローし得なかった草の根顧客層を新チャネルに組織し急成長・展示即売会形式・需要の一巡化傾向を克服するアフターケアが弱い・過当競争で既存組織利用型の衰弱傾向

【量販店】さが美(ユニー)・せいざん(ダイエー)・錦(ジャスコ)・ゆう苑(ユニード)・

 母店である量販店がデイベロッパーとなりSC内出店による立地優位で成長・呉服部門の独立・専門店チェーン化指向に転換・ノウハウ専門知識に弱い・外商組織販売との販売ミックス模索

【L・C(ローカルチェーン)】
みやび(広島)・たけうち(赤穂)

 NCの点型全国展開に対する地域集中立地の商圏制圧戦略・小売店グルーピング・販売技術と商品構成標準化・大量仕入大量販売

【元卸】 京朋・一

 

 昭和30年代以降の染呉服ブームと大衆化を背景・染工場への大量発注と備蓄機能によるクイックデリバリーとしてチャネルリーダー化・海外生産と輸入・49年不況で淘汰進行・減量経営と受注生産への転換から前売問屋に主導権移行

【前売問屋】
 

 関東系織物問屋のプロパーゾーン(並み品)の染呉服の全国ローカル量販体制・在庫一掃型から市場開拓型消費者セール方式・問屋の小売り機能付加

【白生地問屋】
 

 裏絹生地の海外輸入攻勢・表絹生地需給不均衡・減産強化・機屋市場混乱・過剰織機廃棄・大手産地問屋倒産

【百貨店】         高島屋       

 シェアー傾向的低下・集客力低下・顧客サービスの比較優位・集中仕入れ・外商拡大・自社ブランド創造(高島屋)

【染工場】
 

 大量生産・技術革新・合理化・海外生産・商一化・新チャネル開拓
 
































 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  2)室町織物卸業における情報武装型戦略の展開と挫折
 
 最初に戦後の室町織物卸業の展開過程を整理し、室町織物卸業が情報化戦略を導入していった背景を考察する(京都商工会議所『京都産業の明日のためにー知識集約化の展望』P114参照)。

第1期(1945〜1949年) 敗戦後の統制経済期
   ・「衣料登録商」による取引許可制度・配給制度・単名手形のみで割引制度なし
   ・40%の織物消費税付加
   ・単名で融資を受け、産地へ前渡金を持参し、仕入れて得意先へ販売する、得意先は前金で支払う
   ・ヤミ取引横行
第2期(1950〜1959年) 統制解除と自由取引開始
   ・織物消費財廃止に伴う価格暴落(小松子1.800円→650円)と朝鮮特需・農村景気による価格暴落    ・手形決済による仲間取引による転売横行と連鎖倒産対策として、白生地産地連絡協議会結成
   ・産地業者・染呉服・白生地業者による生産調整による適量生産システムの起動
   ・1959年皇太子結婚を契機とする振袖・訪問着ブーム爆発
第3期(1960〜1970年) 高度成長期
   ・高度成長・ブライダル市場拡大・所得平準化・核家族化による所得弾性値上昇(1.5)
   ・和装市場好況期
第4期(1971〜    ) ドルショック以降不況期
   ・所得弾性値傾向的下降 
 
















 
 室町卸業の情報武装型戦略は、第4期の不況期以降に導入された。この背景には、アパレル繊維VANの進展と量販NCの進出を契機とする流通チャネルの変容があったが、一般アパレルの情報化戦略を機械的にクラフト染色産業に導入した場合に、同じような効果が現れるであろうか。アパレル産業で現れた流通チャネルの変容は、クラフトにおいても同じように発現していくのであろうか? 
 
 次に、伝統的な生産・流通システムの変化を類型化し、情報化によって誘発された変容を考察する(図42参照)。
  【図42 和装流通チャネルの変容類型(白生地除く)】(出所:筆者作成) 
 
 A:基本タイプ(伝統型)          [中継・分散機能]
                        ↓
 
地方問屋
 
 

 
 
 

 
   


 

生産者
 
 
産地問屋
 
 
集産地問屋
 
 
小売店
 
 
消費者
 


 

 

 

 

 

 
     (染加工問屋)
 
(前売問屋)      *注 太線は主要チャネルを示す
 
           ↑        ↑        ↑
        [品揃え・集荷機能] [品揃え・集荷・中継機能] [分散機能]
 
 B:大規模店・多店舗・チェーン店タイプ
 
 都市化・核家族化・人口流動化と和装商品の高級化・個性化は、顧客層を絞り込むターゲット戦略を指向する「専門店」化をもたらし、次いで専門店相互の連携によって間接コストの低減をねらう「チェーン店」化に進み、従来の地域密着型の小規模零細「単独店」は駆逐される。こうして、多種・大量な商品を扱う業態は、集散地問屋から直接仕入れるか、または地方問屋が産地問屋から直接仕入れることによって、規模の利益を実現する。つまり、以下のような流通チャネルに再編成される。


 

生産者
 
 
産地問屋
 
 
集散地問屋
 
 
小売商
 
 
消費者
 


 

 

 

 

 

 
   
地方問屋
 
   
 
   
   
 C:生産集中タイプ
 
 不況下の和装高級化は、西陣・丹後・友禅への生産集中をもたらし、集散地問屋は直接生産者から仕入ることによって品揃え・集荷機能を高めようとして、以下のような流通チャネルが形成される。
 


 

生産者
 
 
集散地問屋
 
 
小売商
 
 
消費者
 


 

 

 

 

 

 

産地問屋
 

 

 

 

地方問屋
 

 

 
     
 
 D:情報ネットワークタイプ(第3次「問屋不要論」)
 
 IT技術の進歩による生産者と消費者の情報ネットワーク形成が進むと、流通に介在した問屋が省略され、多様な製販直結が進展するという予測がある。なぜなら、製販直結の情報ネットワークにより、取引相手探索コストが零に近く極小化し、物流業の宅配システムを利用して商品輸送コストも低減されるからである。ここに新たな「問屋不要論」が登場する根拠がある。
 


 

生産者
 
        オンライン発注・宅配システム
消費者
 


  注:太線ほど主要チ
 
 
産地問屋
 
 
集散地問屋
 
 
地方問屋
 
 
小売店
 
 


 
   
 

 

 
       ヤネルで、破線は副
          次チャネルを意味す
                 る
 
 現在の流通チャネルの変容は、第1に、大手メーカーと大手小売業が直結する製販同盟というかたちで進行し、この製販同盟には、小売りPB戦略をめざす共同商品開発形態と、自社物流センターを持つ大手チェーン・ストアーに製造メーカーが直接納品する直送形態の2つがある。
 第2は、インターネットやパソコン通信によるEDI(電子販売・サイバー販売・オンデマンド販売)や、テレマーケッテイイング・宅配直送によって、注文から決済までの全過程をメーカー内で完結する形態である。
 1980年代の情報ネットワークによる卸売業危機論は、「卸売業の社会的機能自体の無機能化」論と「他産業による卸売業機能の代替」論の2つがあり、通商産業省『情報武装型卸売業ビジョン』(1985年)は、卸売業の社会的機能であるネットワーク機能・データベース機能・リスク負担機能のうち、前2者は情報化によって逆に強化され、リスク負担機能は小口・多頻度納入によってさらに卸売業への期待が高まるとして、「問屋消滅論」を批判している。
 「他産業による卸売業機能代替」論は、情報武装した小売・メーカー・物流・VAN事業者が、より効率的な卸売機能を遂行するために、伝統的卸売業を駆逐するという予測であり、現実にFC・VC・CVS本部によるネットワーク機能とデータベース機能の内部化が進行し、物流VAN業者による配送・受発注データ交換と在庫管理を融合したサービスが提供され始めている。通商産業省『情報武装型卸売業ビジョン』は、卸売業の3機能を有機的に統合するオルガナイザー・コーデイネイターの優位性によって、卸売業の部分的な代替は進んでも、卸売業総体の消滅はないとし、「規模の経済」から「範囲の経済」・「連結の経済」への移行は逆に卸売業の機能を強化するとしている。                                              このような1980年代の予測は、その後の展開のかで現実的に実証されたわけであるが、1990年代に入ると卸売業は、従来の三層構造(製・卸・販)を融合する新たな動向が生まれた。
 第1は、需要即応型供給であるECR戦略(食品・日用雑貨)とQR戦略(繊維・身の回り品)や、コンシューマーの社会経済的視点による産地直送システムの進展である。ECR・QR戦略が、基本的に製販同盟をもたらすか、または卸売本来の3機能を強化する卸売業への集中をもたらすか、注目された(例えば、加工食品業界における菱食の制覇や、出版業界における日販・東販の制覇など)。                         この分岐は、小口・多頻度物流に対応する品揃え機能は卸売業が優位であり、このような製品分野では卸売業への集中が進む可能性が高い。さらに、特に豊富な品揃え機能を整備した卸売業が、逆に電子販売へ参入するという方向で、卸売業主導による従来型3層構造の融合化が起こる可能性もある。
 
 このような卸売業一般の流通チャネルの変容は、そのまま繊維製品の流通チャネルに適用されるだろうか? 通商産業省『新繊維ビジョン』では、繊維流通改革として、情報化[標準化・重複コスト削減・共同戦略・物流効率化・多機能化]による流通コスト低減をあげ、具体的な低減効果を30%減と試算している。アパレル物流におけるEDI化で配送費20〜30%削減効果があるとしているが、伝統和装産業においては流通システム自体の再編成をめぐる軋轢が誘発されると予測される(図43参照)。
 
 【図43 アパレル産業における物流・商流の概要】(出所:通商産業省『繊維ビジョン』P123をもとに筆者作成)
 
商流:原糸・紡績→糸商→産元商社・親機→撚糸→整経→織布→染色整理→産元商社・親機→生地商社→アパレル→縫製→アパレル→小売
 
 
委託加工
 
 
 
委託加工
 
 
     原糸・紡績  
    多様な配送形態(自社・運送子会社・物流





 
         業者委託)・帰り荷便共同活用試行

 
   撚 糸  
       a
  整 経     自社自動車で配送配送コストは発送側
       a       で通常加工賃に含まれる
     短距離でコスト意識弱い


 
   織 布  

物流業者委託 コスト意識あり


 
  a
  染色整理  
   

 
染色整理
(他産地)
      物流業者委託
     縫    製        配送コスト発送側

 
 
  物流業者委託
    ア パ レ ル        配送コスト発送側



 
             共同化試行(30%効率化)
 
  納品代行   配送コスト発送側
 

 

専門店
 




 

 
量販店    


 
  百貨店    
商品センター     流通センター     配送共同化(10〜30%効率化)
 配送コスト発送側         a
 

                  
 共同化試行
 
  店舗     店舗  

 

 

 

 

 

 
  店舗までの全配送コストアパレル側(共
   同化で30%効率化)
           顧    客  
 
 
 
 
 伝統和装製品の小口・多頻度配品は、 【室町卸し情報化の概念と企業対応】
和装高級品分野ではそれほど進まなかったが、洋品分野については同じような現象が誘発されている。金融機能とコンサルテイング機能の高度化は、流通チャネルにおける卸売業の主導権をさらに強化する可能性があるが、逆にの製販直結は既成卸売業が消滅する可能性をはらんでいる。ただし、室町問屋の卸売機能は、容易に異業種参入を許さない高度に専門化されたスキル(目利き)をもっているがゆえに、和装業界の製販直結は限界がある。
 しかし、製販直結の影響を最も受けるのは、需給調整・物流・金融・在庫管理の諸機能を果たしてきた室町織物問屋であり、特に情報仲介機能が衰弱する可能性がある。このような製販直結戦略に対抗して、流通チャネルにおける卸売業の主導権を維持しようとしたが、京都織物卸商業組合が提起した「情報武装型卸売業」戦略であった*1
 さらに、クラフト和装産業の商品開発

 
 企業対応レベル
T U  V  W
    組合事業
 
Tコミュニケーション
 ・ワープロ
 ・ファクシミリ
 ・パソコン

○ ○ ○ ○
  ○ ○ ○
      ○
共同利用通信回線
ネットワーク構築(室町商社間・主要都市間専用線・移動体通信事業)
Uデータプロセッシング
経営管理コンピュ  ータ化       ・POS
商品単品物流管理 ・受発注管理・決済 

  ○ ○ ○

    ○ ○

 

共同利用コンピュータ設置               共同利用地域VAN     共同機器開発・技術支援 
 
Vインフォメーション  ・ファクシミリネットワーク ・ビデオデイスク    ・ビデオテックス  
パソコンBBS   ・ホームショッピング 

   ○ ○ 
      ○

      ○
 

共同メデイア開発      きもの情報発信 


システム化研究推進
Wインテリジェンス
POS+MIS
モデルシミュレーション
 

      ○

 

市場データ収集      情報分析         モデル開発・予測 
機能が、室町問屋の経験主義的な手法(個人的な接触や同族を優先する、商人気質が重視される、権威主義、人柄重視のマーケッテイング、単方向の情報)に依依存している構造を打破し、市場データベースと商品企画データベースを駆使するマーチャンダイジング機能を強化しようとする織元に対する卸売業の防衛的な性格を持っていた(図44参照)。            
 
  【図44 室町織物卸商業組合の情報武装型卸売モデル】(出所:筆者作成)







 
 
    「POSシステム」                 @事務処理効率化
「室町VAN」 (データ処理の効率化)       A需要動向の的確な把握
○情報ネットワーク  
 
  「室町INS」
 
  商品企画の的中精度上昇   きめ細かな販売戦略
 
○情報通信システム  
 
「ムロマチ・インターコム(共同利用通信)」      B物流・在庫管理の適正化 「キモノ・ネット(消費者・小売店向け)」       C取引効率化
 
 







 
 ところが、この構想に対する個々の卸商の対応は、店内事務処理のコンピュータ化・本支店間のオンライン業務処理にとどまり、企業間ネットワークの構築に進まなかった。その背景には、次のような要因があったと考えられる。
第1に、情報化に伴う取引契約の近代化と、既成の取引慣行(「浮貸」等の委託販売・返品制度)の矛盾が派生したことである。室町問屋の取引慣行は、基本的に「不当返品」・「リベートシステム」・「専用コード」などの前近代的な特質がある。情報化システムは、「日本型取引慣行=前近代的・非合理的」⇔「西欧型取引慣行=近代化」とする図式的な把握に陥りやすく、リスク分散効果を持つ日本型取引慣行の一定の合理性を機械的に否定する。   
 第2に、企業業務の標準化(商品コード・伝票・帳簿・伝送のフォーマット化)が進まなかったことである。取引先が専用フォーマット・ビジネスプロトコルを求めるため、システムファイルとソフトウエアーのコスト負担が増大した。
 第3は、最も重要な要因は、卸商の情報ネットワークそれ自体に対する懐疑である。特に共同VANによる的確な需要動向の把握と流通は、「売れ筋」商品への模倣を誘発するのではないかという不安が生まれた。卸商にとって、需要動向の捕捉こそ企業ノウハウであったからである。
 第4は、定型的形式情報のレベルにおいて、室町卸は、次段階の取引先の在庫の不透明性と返品処理問題を抱えている。この問題は、特定小売店との関係を強化するなかで解決する。非定型的な意味情報への接近は、最終情報収集者としての営業担当者を企画開発部門へ参加させる方法をとっていた。
 結論的にいうならば、流通戦略としての一般的な「情報武装型卸売」戦略は、必ずしも室町卸業には適合的でなかった。第1に、完成商品の再販事業である一般卸と異なり、室町卸業は最終商品づくりの加工機能を受け持つ製造卸的性格を持ち、メーカー的観点を併せ持つマーチャンダイザーでもあるという点にある。第2に、「キモノ」という和装商品は、加工食品や日用雑貨などの数値化し易い分野と異なり、感性や好みという数値化しにくい製品であり、また売筋と死筋が明白な短サイクルのアパレルと異なり、長期サイクルという製品特性があるからである。
 
 第4節 その他の繊維産地の情報化試行例(4)
 
 1)博多織産地の情報化試行
 
 博多織工業組合は、1981年(昭和56年)から中小企業事業団の産地特定事業の一環として、デザイン作成から製織までの生産工程をコンピュータによる図形処理化し、省力化する3カ年の開発実験をおこない、1983年(昭和59年)から実用実験に入った。従来は、デザイン原画(正絵)を方眼紙上に意匠図で描き直す意匠描き工程・意匠図を読みとる色分解工程・紋紙をつくる紋彫工程に多くの時間と労力・コストがかかった。          色分解機・色柄編集装置・ジャガード直織装置によって省力化し、CADによって、グラフィック・デイスプレイ上で、デザイン・色柄修正・配色・合成・編集を自由にできるようにした。この効果は、(1)意匠描きの省力化、(2)デザイン・配色の効率化、(3)紋彫り作業の廃止などであり、デザイン開発から製織までの時間が1/3に短縮され、多品種少量生産への対応が期待された(図45参照)。
 
 【図45博多織のCAD/CAMによる新開発過程】(出所:『COMPUTER GRAPHICS』No4、1984年より筆者作成)
    多色分解  
  正 絵    

 
  高速色判別  
 

 
       i

        i

6色分解走査
 
 a
 

分光パターンデータ
 

a
 

色見本の学習
 
特徴パラメーター
統計的最大決定
高速色判別<ハード>

 
    a
a

 
意匠図
 

 
制御ソフト
 

 
原始データ
 

 
学習ソフト
 
画素データ
 

a


 
                                        

 
  色柄編集  
 

 
  織組織変換  
 

 
  ジャガード制御  
 

 
試織  
 
  色判別結果  a
  色符号データ
  図形処理
(ファームウエアー)
a
 
 組織変換
 織組織データ
a
 
機構制御 直織選針機構
色柄データ再生 織機

 
ジャガー
ド織物


 
色判別データ   修正
タブレット操作    配色
マルチタクスOS   合成
   制御ソフト  

 
 
 しかし、このシステムは次のような技術的な問題があった。第1に、色柄編集工程でのマンマシンによる修正に要する知的熟練と時間が予想以上に負担となる、第2に博多織独特の柄・色・織・風合の図形処理機能が、そのまま他産地に適用できないこと、第3に図柄データとソフトのファイル化にともなう意匠権保護問題である。
 
 
 
 
 
2)福井繊維VAN構想の試行
 
 福井繊維VANは、郵政省「テレトピア構想*1」(1983年 昭和58年)におけるコミュニテイータウン型と伝統地域産業型と福祉医療型のミックスとして推進され、繊維総合産地の活性化をめざし、(1)系列繊維企業群を中心とするVAN(商社・原糸メーカー系列下の関連企業間の取引データ・指図データの交換システム)、(2)繊維技術データベース(福井県繊維工業試験場のテキスタイル・カントリー事業の一環で、繊維試験場のCPUと繊維企業をデータ通信回線で結び、設計・試作・開発・デザイン開発・処理に利用する)、(3)多角的繊維情報共同利用システムMISSTA(繊維協会の情報をデータベース化して企業に提供、繊維構造改善事業協会へのアクセスや広報活動など)の3システムからなっている(図46参照)。福井繊維VANの特徴は、核となる福井繊維工業試験場と福井繊維協会が、県内繊維関連企業をユーザーとして展開する点にある。企業系列VANは、垂直連携による自主的な形成を期待されているが、商社・大手メーカーへ情報が編流したり、染色・加工の異系列間の独自のVANについては不明確で、系列外の中小メーカーの淘汰や資本力による階層分化が予測される。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 【図46 福井繊維VAN構想】(出所:福井市『福井テレトピア基本計画』1984年を参照し、筆者作成)

 

繊維工業構造改善事業協会
  MISSTA


 




 

原糸メーカー

 




 

商社(域外)
 


 
  FAX   CPU  

 










 

 

 
  CPU   FAX      (需要動向
    生産実態情報)
 

系列外織物編物業
 


 

産元商社
 




 
メーカー
系列
VAN
(取引)
(指図)



 

 
 社
 系
 列
 V
 A
 N
(取引)
(指図)

 

商社(域内)

 
  FAX  
 

 
  FAX  
   
  FAX  
 


 
 

VAN会社

 
 
 



 
  CPU  

 

福井県繊維協会
データバンクシステム
(商品経営情報)
 








 




 

福井県繊維工業試験場
 



 

撚糸・仮撚業
 



 

 
 
 
CPU
 
 繊 FAX
 

 
  FAX
 
 




 

撚糸・仮撚業
 




 



 




 
   

 







 

 
FAX
 

 


 
維技術データベース
 (設計・分析・デザイン情報)
 

 
  FAX     CPU  
 

VAN会社
 


 
       
       



 
 





 

商社系
織物編物業



 





 

染色加工業



 



 

染色加工業



 





 

メーカー系
織物編物業

 

 

 
FAX
 

 

 
FAX
 

 



 

 

 

 

 

 
FAX
 

 



 

アパレル問屋

 



 





 

  配送センター





 





 

縫製業
     




 

(集配
cpu
 

 

 
FAX
 

 



 
在庫管理システム)
 

 

 

倉庫業
 
 
輸送業
 

 

 

 
   
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
第3章 クラフト染織産業における情報化限界論の論理と検討
 
 第1節 伝統和装産業における情報化限界論
 
 第2章で検討したクラフト染織産業における情報化戦略を比較すると以下のように図式化される(表35参照)。これら産地のの実証的な検定から導き出される情報化限界論の理論的な根拠は、次頁の1)から4)の諸形態に整理される。
 
 【表35 西陣織・播州織・室町卸情報ネットワーク比較】(出所:3産地組合資料をもとに筆者作成)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  1)QR(クイック・レスポンス)機能の不適合論
 
 伝統和装における情報化限界論の第1の論拠は、和装の製品特性は必ずしもQR機能向上を求めないという点にある。なぜなら、伝統和装産品の特質である@素材がシルクに限定され、Aフォルムの基本型が歴史的に固定され、B伝統的な和装服飾慣習(冠婚葬祭時の着用)のフォーマル性は、短サイクルのファッション化につながらない等の製品特性は、QR生産を必ずしも要請しないからである。和装産品の生産・供給システムは、企画・発注から数ヶ月を要する長周期性を持ち、「売れ筋商品」をリアルタイム・短サイクルで追加投入するQR戦略は、中心的な課題とはならない。従って和装業界にとって、機械的にLPUによるQR機能を追求することは、生産・供給稼働時間におけるアキ(未稼動)期間を拡大し、売れ筋への模倣を誘発したり、追加受注の困難をもたらし、不安定な全量受注によって見切り商品を生む。例えば、「中振袖」(春期フォーマル着)の染加工元卸問屋の業務・取引サイクルは、初春期に「秋冬物商戦」を展望して製品企画を開始し、約一年の周期を描いて需要者に届くサイクルとなっている(図47参照)。
 
 【図47 中振袖における染加工元卸問屋の業務・取引サイクル】


 

意匠企画・確定
 

→ 見本染 →
 

内見会・展示会による受注
  (前売問屋対象)
 

→色・配色検討 →
  生地手当

友禅企業へ発注
 
 

 
   (2〜3月)  (手描物・刺繍は約3ヶ月の加工期間)

 →
 

染加工業者から仕上品納品
 

→ 検反 →
 

前売問屋へ納品
 


 

集散地問屋
 


 

地方問屋
 


 

小売店
 


 
                                          (9〜10月)
2)伝統的垂直分業システムとの衝突論
 
 伝統和装産業における情報化消極論の第2の論拠は、工程別に細分化された零細経営によって支えられている社会的分業システムと複雑多段階の流通チャネルは、水平的ネットワーク関係を本質とする情報化システムと、基本的に矛盾するという点にある。例えば、京友禅の産地システムは以下のようになっている(図48参照)。
 
【図48 京友禅の生産・流通システム】


 

丹後縮緬生産者
 
 
丹後産地問屋
 
 
白生地問屋
 
 
染加工元卸問屋
 
 

 

 

 
   
 
                                委託   受納


 

染め加工企業
 


 
 
前売問屋
 
 
集散地問屋
 
 
地方問屋
 
 
小売店
 
   
 

 

 
 


 
 
 この京友禅の既成システムに、生産自動化と即納性をめざす情報化システムを導入した場合の変容を予測すると、第1に織物産地では、織元による関連工程の内部化と出機の内機への編成替えを誘発し、第2に、染加工工程の統合が推進され、第3に流通チャネルにおいては、白生地問屋・染加工問屋・前売問屋の統合と再編成や、末端小売店との直結が起こる。こうした再編成に対する抵抗が誘発されることも、西陣産地のJINーOVISと室町の情報武装型卸売業の挫折によって実証されている。
 次に垂直連携による市場高感度型QRをめざすLPU(実需対応型補完連携グループ)を導入した場合に、どのような変容が予測されるだろうか。
 第1に、大規模小売業(チェーン専門店・百貨店)が、産地有力メーカー・染加工元卸・有力染加工企業と直接に提携し、集散地問屋・前売問屋を排除するか、または前売問屋がシステムリーダーとなって有力小売店と産地加工メーカーを直結するといった製販直結に移行することが考えられ、既存の地方問屋・白生地問屋・染加工卸問屋が排除される可能性がある。さらに産地の工程間分業の連携グループが、集散地問屋や大規模小売業と直結する製販直結をめざし、産地問屋を排除するケースも想定される。
 第2に、染見本によって、最終需要者から直接受注をおこなっていた誂友禅業などの染織業においては、デジタル・アーカイブの3次元映像情報システムを駆使した直接受注による製販直結が予測される。
 第3に、最も重要な点は、システム変容に対する各業者のインセンテイブの衰弱である。既成のシステムは、例えば「仲間売り」(染加工元卸問屋→前売問屋)にみられるリスク分散による棲み分け効果をもたらしたが、情報化戦略は、自己責任原則による業者間競争と淘汰をもたらし、従来の取引関係のなかで保障されてきたリスク低減効果は失われる。
 
  3)アジア国際分業構築不要論
 
 『新繊維ビジョン』の基本戦略であるアジアNIES諸国との新しい国際分業[NIESの量産品=日本の高付加価値品]の構築は、伝統和装産業においては必ずしも追求する課題ではない。なぜなら和装は、洋装と異なって日本独自の民族衣装であるから、和装市場の国際性は限定され、基本的に国内完結型の市場だからである。
 
  4)オープン化とセキュリテイー問題
 
 伝統和装産品の製品競争力の源泉は、企業内で占有されてきた意匠デザイン原画の比較優位性にあった。この最も秘匿されるべき分野が、セキュリテイー技術が未成熟のままデータベース化・オープン化された場合、盗用・盗作による模倣品が発生し、メーカーは大きな打撃を受ける。
 
 以上の1)〜4)に挙げた情報化限界論の論拠には、幾つかの事実認識の誤謬がある。以下次節において、情報化限界論の批判的検討を試みる。
 
 第2節 クラフト染織産業における情報化消極論の批判的検討
 
  1)クラフト染織産業における情報化消極論の実践的な意味
 
 クラフト染織産業における情報化消極論は、第1節でみたように、QR生産不適合論・生産システム衝突論・産地内相互依存論という伝統和装産業固有の独自性に根拠を置いているが、情報化戦略それ自体を全面的に否定しているわけではない。情報化消極論は、『新繊維ビジョン』構想の積極性を認めたうえで、伝統和装産業における直裁的な有効性に疑問を投げかけ、QR機能向上による「実需対応型供給体制」構築を将来課題として先送りし、当面の課題を産地システム自体の変革を誘発しない範囲内での「情報交流・発信」機能に留めようとする。こうした伝統和装産業の漸進的情報化論は、実践的にはどのような意味を持っているだろうか?
 第1は、伝統和装産業における産地システムの変革は、情報化戦略とは無関係に、既に産地振興政策において追求されてきた課題でもあったという点である(通商産業省生活産業局『旧繊維ビジョン』参照)。漸進的情報化論は、実質的に伝統的な産地システムを超歴史的な固定的システムとみなし、システム変革を共同して推進しようという業者の潜在的な期待を自ら閉ざす結果となる。
 第2に、情報化の内容を、伝統的生産システムの枠内における「交流と発信」のレベルに留めることによって、情報化戦略の効果を実質的に後退させる。情報化戦略の核心的意義は、ネットワーク構築による個別企業を越えた水平的連携関係の構築にあるが、「交流と発信」レベルへの限定は、既成の織元(産元商社)への情報一元化をもたらすことは、播州織の試行で実証されている。
 第3に、伝統和装産業においても、定番品(着物・浴衣・手拭い・暖簾など)のアジア下請加工が進展し、高級品分野でもデザイン原画が海外流出し、アパレル産業と同様の価格優位によって国内産地の衰退が進行している。つまり伝統和装産業においても、東アジア国際分業の最適生産システムは、すでに所与の事実となっている。
 第4に、データベース構築におけるセキュリテイー問題は、伝統和装における最大の課題の1つではあるが、他方で技術的・政策的整備に向けた世界標準構築への試行が急速に進展している。QRは、商品アクテビテイー・POSデータ・在庫データなどの企業戦略性の高い情報を共有することでもあるから、@情報の非対称性の除去、A適切な商品構成の提案、Bデータによる計画生産を実現する企業間パートナーシップが問われる。伝統的な和装業界のパートナーシップの形成が遅れているなかで、米国企業(コービス社など)のデザイン原画のデジタル化権取得攻勢があり、セキュリテイー問題を理由とする消極論は、このような事態に対抗し得ない。
 第5に、伝統和装産業の情報化消極論の致命的な問題は、伝統和装を「和装」として固定的に把握して、洋装・インテリア分野への多角化戦略や異業種交流による新製品開発などを視野に入れない点にある。こうしたアパレル洋装・インテリア分野の比較優位は、情報ネットワーク構築によるQRにある。
 第6に、伝統和装産業の情報化試行の失敗の一要因は、その外発的支援政策にある。例えば、室町卸商業組合の「情報武装型卸売業戦略」は、通産省産業政策局主導が卸売業のルネッサンスとして提起した『情報武装型卸売ビジョン』(昭和60年)の機械的適用の側面が強い。通産省の『情報武装型卸売ビジョン』(昭和60年)は、「問屋無用論」に対抗する流通システム開発センターの「VANの進展等情報ネットワークと今後の卸売業のあり方に関する研究委員会」(委員長:田内幸一一橋大教授)の答申にもとづいている。しかしこの答申は、主として一般消費財を対象とする大手卸売業中心の情報化ビジョンであり、伝統和装産業への機械的・外発的適用には限界がある。 
 外発型情報化政策は、ハード整備から入りソフト面に向かうという方法が採られ、産地の既存の情報流通の在り方を尊重して内発的に発展させるという視点が弱く、必ずしも産地内の情報技術力の育成・強化に向かない特質があった。ハード・インフラを整備するが、その後の企画→設計・試作→評価→生産→販売のプロセスは、産地に任され、両者がうまくマッチングしないのである。特に伝統和装産業の情報化支援政策は、異業種交流や共同事業を含むソフト面開発を重視する必要があった。                           
 
  2)伝統和装品流通における情報化の取引費用アプローチ分析
 
 商品流通システムは、生産者と消費者の間に発生するコストの極小化をめざす。流通総コストを最も単純化すれば次の@式となる。                     
 流通総コストC1=取引相手探索コストC2+商品輸送コストC3・・・・・・・・・・・・@
 @式は、生産者・消費者間の取引回数Nと取引距離Dの合計値の比例関数であるから、式Aが成立する。
 C1=C2+C3=f(N×D)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・A
 いま、生産者(M1〜5)・消費者(C1〜10)が相互に直接取引相手を探す場合を考えると、N=10、D=5×10であるから、C1=f(N×D)=10×50=500となる(イ)。
 一方、単一の流通業者Dが介在して取引業務を代替した場合は、N=5、D=5+10であるから、C1=f(N×D)=5×15=75で、明らかにDの介在によってC1は低減する(ロ)。
 さて、伝統和装産業における一般的な流通チャネルは、産地問屋(W1)→集産地問屋(W2)→地方問屋(W3)→小売店(R)であり、(ハ)のような図式を描く。このように流通チャネ








 
ルが複雑多段階の場合、C1の極小化は実現するかどうかをみると、N=2、D=5+2+1+4+10=22となるから、C1=f(N×D)=2×22=44となり、C1は低減する。なぜC1の極小化が実現するかというと、産地問屋は品揃え・集荷機能を、集産地問屋は品揃え・集荷・中継機能を、地方問屋は中継・分散機能を担い、小売商は分散機能を担い、生産と消費の距離・数量・品質を合理的に調整するシステムとなっているから






 
である。
 さらに産地問屋の存在は、産地の零細小規模企業の分業を可能とする生産コンダクターの役割を果している。ここに、歴史とともに古い和装商品の生産・流通チャネルの一定の合理的な根拠が存在したのである。          




 








 
 
  3)多品種少量QR供給における製・販・物流融合化と伝統和装産業
 
 アパレルにおける多品種少量QR供給の課題は、欠品排除と在庫圧縮を両立させるシステム開発にあるが、このような条件が、即自的に伝統和装製品に適用できるか否かを検討するために、最初にアパレル中堅製造卸である(株)ヤマエーの直結型2層流通をみる。(株)ヤマエーの生産・販売・物流のフローは次のようになっている(図49参照)。
 
 【図49 ヤマエーにおける生産・販売・物流フロー・システム】(出所:ヤマエー資料より)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 具体的に、得意先A社との受注(4月1日)から出荷完了(5月30日)までの流れをコンピュータ画面で追跡してみると次のようになっている。       
 
 @得意先別・商品別受注処理システム      
 
 受注伝票入力で、4月1日に52−1フリル付きピロケース200枚,@¥400,納期5月30日で受注し、受注残・照会(商品別)で、52−1フリル付きピロケースをB・C社からも受注しており、これまでの受注数量430枚,出荷枚数195枚,受注残235枚であることが示されている。受注残・照会(得意先別)をみると、4月1日に受注NO.35213で入力された200枚の注文があり、納入終了0であることが分かる。受注履歴照会をみると、受注NO.35213入力されたA社の52−1フリル付きピロケース200枚は、納期が5月30日であるため、まだ出荷されておらず、売上メモが入力されて出荷されると、画面の2行目以降に出荷日付・数が記録され、残量が減少し、受注履歴が分かるようになっている。
 
 A加工依頼予測システム
 
 加工依頼入力をみると、200枚の受注に対し、52−1フリル付きピロケースをP(ピンク)120枚、S(サックス)120枚と色明示し、5月30日に納入することを商品管理部に告げている。ここで、受注製品製造の加工指図をする前に、営業担当者が加工依頼メモを入力しているのは、注文キャンセル・変動に対応した営業担当者の判断による予測をおこなっている。予測加工依頼データは、商品別・納期別加工依頼一覧表として、商品管理部が定期的に取り出し、自社生産・外注・生産配分の判断をおこなう。加工依頼照会(1)は、ピロケース分類に属する全種類を網羅し、多品種少量であっても同一サイズの物をまとめて裁断する効率を高める。加工依頼照会(2)は、同一柄関連商品を網羅して原材料調達の最適化を図っている。仕掛(仕上)・残照会は、1つの商品の加工の加工先別・色別展開の把握をおこない、5行目にある加工指図NO.50655,ウツミ縫製に発注した同商品の加工進捗状況が仕掛(仕上)・履歴照会において、日記式に指図数・納入数・仕掛残数量が記録されている。
 
 B瞬時情報に基づく商品管理
 
商品管理表(1)は、52−1フリル付きピロケースに関する計数情報である受注残数・仕掛数・加工依頼数・在庫数が瞬時に判別でき、在庫数が実地棚卸と一致していれば、商品管理は完全である。商品管理表(2)〜(4)は、商品管理表(1)の所在別・色別内訳であり、商品管理表(1)は(2)〜(4)の総合データであり、全体として全ての商品に関するデータを全員が瞬時に識別し、取引先の問い合わせに精確に回答できるシステムとなっている。
 このようなアパレルにおける多品種少量QR供給をめざす製・販・物流融合化は、糸段階の企画から最終商品が小売店等に並ぶまでのリードタイム(約1年)を短縮し、市場対応型マーケットインを実現することにある。最も先駆的な米国では、1985年に主要なテキスタイル・アパレル・小売業を結集してQRを全面的に実施した場合のリードタイムの短縮実験をおこない(図51参照)、翌年にVICS(Voluntary Inter-industry Communications Standards)を
推進主体とするQRS標準化をおこなった
その内容は、@繊維製品単品識別コードの採用 UPC(Universal Product Code)、
AEDI(Electronic Data Interchange)標準化、B物流梱包識別コード標準化 SCM(Shipping Container Marking)である。日本型QRSは、1993年の『新繊維ビジョン』を受けて、1994年に「繊維産業情報ネットワーク構想」(図50参照)が提起され、この構想が日本型QRSのフレームワークとなった。次いで新繊維法による情報化推進計画が策定され、@JANソーズマーキング推進、AJANデータベース構築、BEDI標準化を打ち出した。その後繊維対策予算に計上され、VICSに対応する自主運営組織であるQR推進協議会が発足した。日米のQR推進を比較すると、米国は民間セクターが主導し、日本は公的セクターによる産業政策として推進されている。日本型QRは、米国VICSーEDIの標準メッセージを日本語に翻訳し、

【図51 QRによるリードタイム短縮試算 米国1985年実施】


















 
 
 
 
 
日本型商習慣に照合して取引情報項目を追加するという作業過程をたどっている。第1のJANが、1978年にJIS化されて各業界での採用が進んだが、衣料品ファッション商品群の導入は最も遅れた。その理由は、再発注機会がないファッション製品への色・サイズ別単品コード番号の付番の必要性、色・サイズ別連番制の可能性という商品特性にあった。アパレルの場合、1シーズンに膨大なアイテム数が発生し、シーズン毎に新たな番号が発生する商品管理上の問題があったが、何れもコンピュータ技術水準の発達によって解決された。
 日本で最も先導的にQRSを導入したのは、岩田屋とワコールのシステムであり、POSデータ入力から納品までのリードタイムが3日に短縮され、週2回の発注サイクルが可能となった(図53参照)。






 

【図52 通産省繊維産業情報ネットワーク構想図】






















 
 【図53 JANコードを利用した岩田屋とワコールの自動補充システム】
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 米国と日本でQR効率化に成功した繊維製品は、シーズン性が少なく、ライフサイクルが6ヶ月を越えるベーシック商品に多く、米国よりシーズン性が高い日本型繊維製品のQRの成功には限界がある。従って、日本型QRの成功の条件は、原料手配と加工指示をおこなう最終的な決定時期に合わせた段階的なテスト・マーケッテイング(シーズン1年前に素材を、半年前に色をテストする)をおこない、そのテスト情報をPOS分析する情報分析技術の高度化に懸かっている。
 結 語
 
 クラフト染織産業における情報化をめぐる考察から、以下のことが明らかとなった。情報化は、実需即応供給体制・多品種少量生産・企業間連携・流通チャネル再編成などのシステム変容効果を誘発する。しかし、クラフト染織産業においては、工程細分化・賃加工形態・零細過多性・産地集積性などの産地システム特性との直接的な緊張関係を誘発する。従って、クラフト染織産業の情報化戦略は、次の問題群に対して特別の関心を払わなければならない。
 第1は、産地商社(製造問屋・製造卸)に従属的に編入している現業部門が、情報ネットワークに参入する細心の制度的な支援措置が求められる。現業部門の参入により、インタオペラビリテイーの不在による重複投資のリスクが回避され、産地のトータルな活性化の契機となる。
 第2は、情報リテラシーの非対称性や資金調達力の格差が最も顕著に現れるソフト構築とランニング・コストを協同で克服する産地組合の共同性を制度的に高める。
 第3は、産地の内発的な推進力を、産地集積性を高度化する方向で発揮し、一部のメーカーの高度化に偏倚しないいことである。偏倚に収斂する情報化戦略は、産地性それ自体を喪失させる。
 第4は、クラフト染織製品の定量化できない感性的な意味情報の尊厳性を社会的に承認し、家内伝承的に継承されてきた工芸デザインとスキルのオープン化の限界を踏まえる。そのうえでセキュリテイー技術を整備することである。                                             クラフト染織産業の情報ネットワーク構築をめぐる相剋は、基本的には、伝統的産業構造と新たに生まれ出つつある産業構造の熾烈なシステム間闘争の一つの現象形態である。クラフト産業の情報化をめぐる積極論と消極論の分岐は、クラフト染織産業の情報化戦略それ自体の問題ではなく、導入方法と形態に問題があったことを明示している。その環は、産地商社の役割行動が、産地集積性に依拠するか、企業集積性に依拠するかの選択に懸かっている。            
 産地は、市場の滴を前にたじろく保護主義と伝統に固執するペシミズムを峻拒し、共同性と自己責任制を統合した未踏の戦略的フロンテイアに挑戦している。ここにクラフト染織産業の戦後情報化試行の挫折と混迷の経験を経て辿り着いた結論がある。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
参照文献
 
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[225]兵庫県織物協同組合連合会『播州織産地構造改善ビジョン 総合織物産地をめざして』(平成元年)
[226]西脇市『播州織ニューメデイア』(1984年)
[227]西脇市『西脇ニューメデイア・コミュニテイー構想』(1985年)                          [228]本宮達也『ハイテク繊維の世界』(日刊工業新聞社 1999年)                         [229]阿部武司『日本における産地綿織物業の展開』(東京大学出版会 1989年)                   [230]さくら総合研究所・環太平洋研究センター『アジアの経済発展と中小企業』(日本評論社 1999年)          [231]青山和正『解明 中小企業論ー中小企業問題への多面的アプローチ』(同友館 1999年)             [232]米川伸一『東西繊維経営史』(同文館 平成10年)                              [233]寺岡 寛『日本の中小企業政策』(中京大学中小企業研究所 1997年)                    [234]日本労働研究機構『資料シリーズNo.91 アパレル産業における人材育成と労使関係』(日本労働研究機構 1999年) [235]吉田 寛『地域産業活性化の構図』(中央法規出版 昭和58年)                        [236]中小企業庁『中小企業政策の新たな展開』(同友館 平成11年)                        [237]小林靖雄『日本の中小工業ーその経営的視点ー』(同友館 1993年)                      [238]三輪芳朗・西村清彦『日本の流通』(東京大学出版会 1991年)                        [239]植草 益『日本の産業組織 理論と実証のフロンテイア』(有斐閣 1995年)
[240]日本労働研究機構『資料シリーズNo.91 アパレル産業における人材育成と労使関係』(1999年) 
[241]小林靖雄『日本中小工業』(同友館 1993年)                               [242]中小企業庁・中小企業総合研究機構『中小企業政策の新たな展開』(同友館 平成11年)             [243]吉田 寛『地域産業活性化の新たな構図』(中央法規出版 昭和58年)                     [244]植草 益『日本の産業組織 理論と実証のフロンテイア』(有斐閣 1995年)                   [245]中小企業庁『平成12年版 目で見る中小企業白書』(同友館 平成12年)                    [246]通商産業省立地公害局『地域経済活性化ビジョン』(通商産業調査会 昭和62年)
                                    (2000年9月30日脱稿)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
荒 木  國 臣
(あらき くにおみ)
 
略歴
1943年 岡山県生まれ
1967年 東京教育大学文学部哲学科卒業
1996年 名古屋市立大学経済学部大学院前期課程卒業(日本経済・経営専攻)
名古屋市立大学経済学部研究員
 
 
 
主な著作
『人格の危機と地域認識の形成』(篠田出版 1985年)
『有松町並み保存にみる歴史的環境保全運動の形成と展開』(赤磐出版 1987年)
『日本絞り染織産業の研究』(同時代社 1997年)
『発見・探求 地域経済』(地域経済研究センター 1999年)
「東アジア繊維経済圏ネットワークの論理解析」(日本流通学会『流通』12号 1999年)
「クラフト産業におけるデジタルアーカイブ戦略の現状と課題」(日本流通学会『流通』13 2000年)
『デジタル・アーカイブのマネイジメント分析』(東海デジタルアーカイブ研究センター 2000年)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
クラフト染織産業の情報化戦略とシステム間闘争分析
ー西陣織・室町卸及び播州織産地の情報化試行を対象に

2000年9月30日 第1版第1刷 発行
 
著 者 荒木 國臣
 
発行者 東海デジタルアーカイブ研究センター

*1 繊維工業構造改善事業協会『繊維産業ファッション化対策調査報告書ー繊維リソースセンター基本計画』参照
*2中村宏治「繊維産業の情報化推進構想と和装産業ー繊維リソースセンター構想をめぐって」(『商工金融』1993年4月)が代表的である
*1 この構造改善の障壁として、「従来の繊維行政が横割りの団体を基礎にしていた関係で、やはりそれをある程度使わねば進まず、その横の団体を使いながら縦型の構造改善をやるということの難しさ」(藤原一郎「繊維産業政策の現状と問題点」(並木信義『日本の繊維産業』P150 日本経済新聞社 1977年))があった
*1 QRは、Quick Responseの略で、米国において1986年にVICS(Volunntary Inter-industry Communications Standards)という協議会が設立され、繊維の生産から流通に至る情報化戦略が起動したことに始まる。QRの本質は、異系列のパートナーシップ(垂直統合・垂直連携)を情報ネットワークによって実現し、比較優位を構築することにある。このQRは、米国型SPA(Speciality of store retailer of Private label Apparel自社内垂直統合)方式か、イタリア型中小企業組合方式かの何れかの形態をとる。アメリカにおけるQRは、1980年代初頭に繊維製品の過剰が発生し、プロダクトアウトからマーケットインへの転換に対応するPOSシステム(販売時点情報管理)・EDI(電子データ交換)・ASN(事前商品情報提供)・SCM(出荷情報バーコード管理)・FRM(メーカー出荷状態で店頭陳列)・クロスドッキング(無在庫物流)などが民間主導で推進された
*1TIIP事業への参加企業は、全国で1,250社が参加し、業務システム25件と生産システム10件のシステム開発が行われている。標準化の内容は、シンタックスルールは、CIIとEDIFACTの双方に対応し、利用者が選択するが、現実はCII標準が先行している。標準メッセージは、小売り・アパレル間で(財)流通システム開発センターによって18件(1995年度内+9)が完成し、テキスタイル・アパレル間で7件(1995年度内+3)が完成し、アパレル・縫製間は12件完成予定である(何れも2000年度)
*2 現在中小企業総合事業団の繊維商品コード情報センターでは、@QRコードセンターシステム(サービス提供業務)、ATeFIAネットワークシステム(情報提供業務)、BTIIPシステム(受発注・在庫管理など)、CQRコードセンター会計システム(サービス提供業務)、D協会内LAN(事業所内基盤システム)が稼働している
 
*1 繊維工業構造改善事業協会の役割は、@繊維リソースセンター候補地選定、Aリソースセンターの事業内容の調整・情報ノウハウの交流促進、B情報の整理分析・ソフト提供、C人材育成研修教材の開発・提供とされている。全国に設置された繊維リソースセンターは、(株)繊維リソースいしかわ・(株)今治繊維リソースセンター・(株)大阪繊維リソースセンター・(株)浜松ファッション・コミュニテイーセンター・(株)国際ファッションセンター・(株)倉敷ファッションセンター・(財)一宮地場産業ファッションデザインセンター・(財)桐生地域地場産業振興センター・(財)北播磨地場産業開発機構・(財)福井県ファッション産業振興基金協会の10カ所である
 
*1 これらのデータベース運営は、費用は業界負担・一部自己負担とし、充分な企業秘密を保持しうるものとする。予想されるデータベースは、@段階別受給表作成(現行の糸ベース繊維需給表にかわる、内需・在庫を反映した、原糸段階から内需発生までのタイムラグを考慮)、A売れ筋情報の川上へのフィードバック、Bファッションデータベース(ファッション情報の蓄積とマルチメデイアによる映像情報提供)、C産地データベース(産地組合などが中核となる受発注・入出荷・生産・工程管理・デザイン情報の提供)などである
*1 『新繊維ビジョン』P31参照
*2 大手メーカーによる一貫型生産体制ではなく、複数事業者からなるプロダクション・チーム(PT)をいう
*3 『新繊維ビジョン』のLPUが従来と異なる財政・金融的な点は、@従来よりも融資金利が低くなる、A組合がつくるLPUは金利が低下するが、つくらない場合は中小企業金融公庫の対象となり、金利は高めになる、B廃棄事業における従来の織機に対するWJLの換算比率が実質上高くなるなどがある
*1 法規上は4条1〜3項型は4名以上、4条4項型は2名以上と最低数の規定はあるが、最高数の規定はない。構改事業の目的である実需対応型供給体制の構築からみて、大規模人数ではなく10名前後のグループ化が適数と考えられている
*1 昭和63年までの知識集約化構改事業では大臣承認必須事項であり、成元年以降の新たな構改事業では必須事項でなくなったが、一般高度化資金融資比率80%・無利子、固定資産の圧縮記帳・1/2課税・特別償却なdの特例措置があり、実質的には必須事項となっている
*2 設備近代化事業は、生産又は経営方式の変更を伴わない設備の代替・増設事業を言い、共同事業における設備近代化事業とグループ員個別企業の設備近代化事業とがある
*3 設備リースの対象設備は、織機・編機・ミシンなどの主要設備が中心であり、自動化による省力化・多品種少量・QR対応を目的としている
*4 G全体計画に必要であるが、何らかの理由で高度化資金の対象となり得なかった設備計画
*5 この事業は、生産・経営の規模と方式の適正化事業であるが、規模の適正化は2〜3GのみでG内工程間の能力的ネックを解消するための事業計画であり、主力は実需対応型供給のための方式適正化事業に全Gが参加している
*6 日本繊維産業の流通チャネルの複雑多段階・取引の不明瞭性の前近代的取引慣行の改善をめざす構改事業の必須事業となっている
*1 例えば紳士外衣製造グループにおいて、ビジネススーツ・フォーマルスーツ・ジャケット・スラックス・ジャンパー・ブルゾンなどを特定企業に専門化する
*1 全体として、絹人繊・棉スフ・毛織物等の織物業が産地組合の実施する円滑化事業の下に法第4条1項型の任意のLPUを形成し、タオル・靴下・レース・縫製といった最終商品製造業は法2〜4条型の協同組合による法人格を持ったグループ化によっている。LPUの投資資金の調達方法をみると、設備資金は中小企業事業団高度化資金(年利率2.1%)70%(但し、例外的に融資比率80%、無利息のものもある)、残り30%(自己調達資金)は概ね銀行借入20%程度(繊維産業構造改善事業協会の債務保証付す)、純自己資金(返済・支払利息の発生しない資金)10%によるものが大半であり、運転資金はグループ内で情報化共同事業を実施するば場合ハード・ソフトのうち、ソフト購入資金の一部として中小企業事業団の高度化資金(運転資金)を導入しているのが5グループある。
 
 
*1 限界論の代表的立論として中村宏治「繊維産業の情報化推進構想と和装産業ー繊維リソースセンター構想をめぐって」(『商工金融』1993年4月)がある
*2衣料品消費動向の落込みの要因として、@消費飽和説(消費者にはこれ以上欲しい商品はない)、A需給ミスマッチ説(消費者のニーズに供給が対応していない)、B変形窮乏説(家計支出に占めるローン返済・レジャー等の雑費支出の増大)などが指摘されているが、衣料品に限定すれば市場成熟化が進行し、需要の個性化・ソフト化に対応していない供給側の問題もある
 
*1 HiーOVISは、Highly Interactive Optical Visual Information Systemの略であり、(財)映像情報システム開発協会が1978年(昭和53年)から奈良東生駒で運用実験を始め、光ファイバーケーブルを多用した完全双方向型映像情報システムである。 
*1具体的には、@既に出版されている「文様集」のファイリングを行う場合の出版社との契約関係、Aファッションショーの撮影とファイリングの契約関係、B撮影素材のデータ扱い・パッケージ扱いの契約などの問題が発生した
 
*1 伝統和装産業については、「調査研究テーマ例」として、「伝統的織物技術の調査 伝統的織物の素材、文様等について新たな観点から調査研究し、新規の織物の開発の可能性について検討する」とのみ触れられている(通産省『ファッション大国への道』 P231)
*2 京都商工会議所繊維リソースセンター調査委員会『繊維リソースセンター構想調査報告書』(平成3年)
*1 「吹っ飛ばせ不況!暮らしと営業の危機突破実行委員会」実施
*1 兵庫県北播磨地域は、神戸市北西約40kmにある内陸部2市6町村からなり(面積585.3ku県土7%、人口14万8千人県人口の2.7%(平成2年国勢人口)、地域産業として 播州織・縫製・釣針がある。播州織の起源は、寛政4年(1793年)に比延庄村(現 西脇市比延町)の大工飛田安兵衛が京都西陣織の技術を導入したことに始まり、現在ではドレスシャツを主力製品とする世界最大の輸出型綿スフ先染織物産地として形成されたが、1985年のプラザ合意後内需転換を余儀なくされ、多品種小ロット・短納期化を迫られてきた。これらの地域は、「産地中小企業対策臨時措置法」(昭和54年)の産地地域として指定を受けている。山崎 充『日本の地場産業』における類型編成を適用すると、播州織は「伝統型・輸出型・地方型・社会的分業型・非産地完結型」地場産業に区分される。
*2 播州織の基本的な生産工程は、産元商社が調達した原糸を、染色→準備→織布→整理加工の工程順に処理する。播州織は先染織であるので、最初に染色工程で原糸を染色し、準備工程で配色とデザインに合わせたサイジング(糊付けし、タテ糸をつくる作業)をおこない、織布工程で機織作業を実施し、最後に整理加工工程で光沢加工・防縮加工を施し、検反仕上げ・包装して出荷する。
*3 産地の中核的存在としての産元商社は、産地形成期・発展期において、産地全体を運営する重要な役割を果たしてきた。それは、@原糸調達→サイジング→織布→染色→整理加工の全行程の有機的な連結を図る、A原材料仕入れ・市場情報収集・商品企画・新需要開拓などの経営機能を補完してきた、B専業化した各工程の情報伝達と需給調整機能を果たした点にあり、現業工程部門は産元商社との相互依存関係によってリスクを低減することができた。しかし、産地成熟期に対応する製品差別化と多品種少量生産・QR段階では、このような生産工程の分断と自動化対策において、逆にシステム疎外をもたらしている。
*1 産元商社の原糸手配は、紡績から賃加工として受ける場合を[賃織り]、市販のものを購入する場合を[手張り]という。賃織りの場合、産元は紡績の販売代行という立場で、表面上の契約は紡績と商社となる。市販糸価格が安いときは手張りが有利であるが(通常1ポンド当たり15円程度の開きを基準とする)、原糸の安定供給と糸代金の資金負担がない点では、賃織りが有利である。紡績(ほぼ東洋紡)との企業間提携が強い産元は賃織りを選択する傾向がある。賃織りと手張りの比率は、約6:4である。
*2 産元商社は、総合商社の引合い価格に対し、糸値・加工賃・織工賃に産元マージンを加えたオファー値を提示し、契約する。原価構成の概略は、糸代30〜35%+織工賃(準備作業を含む)35〜40%+染色10%+整理加工10%+産元マージン5〜8%である。
*1 自社の専属的な企業間関係を持つ織布業者を多数擁する産元商社は、計画的な生産プランを組めるが、傘下織布業者専属率50%以下の産元商社は、生産・納期管理の水準が低下し、自主企画力が弱い。
*1 西脇産元が自ら糸買いをおこない下機に賃織させて大阪5綿8社に縞売りする形態と、織布業者が自ら糸買いする形態が並存し、独立織布業者が織機台数・従業員数において圧倒的な独立性を保持し、染色・整理加工部門を下請化し、製織方法・技術の独自性を持ち、産元制度はその基盤を喪失しつつあった。
*2 昭和12年の綿リン制施行によって、原糸取得権は織布業者に残ったが、販売権・配給権は紡績資本が独占し、西脇産元商社はその系列代行業者として再生していった。昭和24年の統制解除によって、紡績糸の大量販売をめざす紡績資本は、産元代行業者の系列編成競争を強化し、より強固な産元制度が確立していくが、この段階ではまだ織布業者の独立性は保持されていた。
*3 昭和31年のワンドル・ブラウス事件と同時に発生した硫化ブラックの褪色問題を契機に、産元商社が染色・整理加工部門を直接統括するネット工賃制度が確立した。織布業者は、織工賃のみを産元からうけとり、染色整理加工料は産元から直接染色・加工業者に支払われる方式であり、織布業者は単なる賃織製織業者に転落し、現在の産元統括型賃織生産システムが確立した。
*1 1992年度では、産地織機台数15,428台中2,804台が休機した。
*2 織布業者は、播州織構造改善組合を中心に、新合繊・対菌繊維を開発し、対菌繊維はカーテンとして製品化されて高齢者介護施設などへ納入されるようになった。西脇・多可縫製組合と協力したパジャマ・エプロンなどの最終製品への進出も検討されている。
*1  整理加工場は、播州織工業協同組合の場合、敷地面積約2万坪・建坪約7千坪に、全長160mの高速樹脂加工機2台、全長68mの高速樹脂加工機2台、サンフォライズ加工機2台が稼働し、織布業者から搬入された原反を検査し、指図書にもとづいてシルケット加工(加工速度50〜150m/分、月間加工能力450万m)・サンフォライズ加工(月間加工能力225万m)・樹脂加工(加工速度30〜120m/分、月間加工能力315万m)という光沢加工・防縮加工を施し、検反仕上(綿スフ検査協会・日本染色検査協会・日本紡績検査協会の独立機関が実施する)・包装ののち輸出向けは神戸港から出荷する。
*2 従来、産元商社が紡績から受け取る賃織り代金の手形サイトは、45日〜60日であり、産元が支払う加工賃・織工賃は、織布業者・準備業者へは現金支払でおこない、染色工場・整理加工工場に対しては手形決済(サイト90日〜120日)でおこなっていた。
*1 織物の設計書を作成すること。縞割りは、産元がバイヤーからのサンプルをみて、色・柄の構成要素を分析し、経糸・緯糸の使用本数と配色を縞割表に記入する作業であり、この作成ミスは転用不可能である先染製品の莫大な損失を発生させる。この作業をカラーカメラで自動的に読みとるCAD化の試行が進んでいる。
*2 加工内容・納期などを記載した生産指示書
*1 遠州産地では、準備工程を含めた織布までの生産機能を持つ10機業程度から成る親機中心のグループと、織布・染色・販売の機能を含めた産元商社中心のグループ化が図られ、グループ内で経営・販売・資金・技術・商品企画などの能力を持つ中核企業が形成されようとしている(静岡県商工部・遠州綿スフ織物構造改善工業組合『静岡県広幅織物産地振興ビジョン』昭和54年参照)。
*2 京鹿子絞工業協同組合は、地場産業振興対策補助金を単独組合として受ける日本で唯一の産地組合であるが、従来の閉鎖的な工程間分業を打破するメーカーと職人のジョイント制で、共同でリスクを負いながら、新製品開発を進める「総合加工方式」を1990年(平成2年)から試行している。
*1 通産省のニューメデイア・コミュニテイ構想は、産業から生活の地域コミュニテイー情報化を全国でバランスよく推進し、高度情報化社会を実現しようとするもので、西脇市は24類型のモデル・システムの産地振興型として第1号指定を受け、今後のモデルとなると考えられる
*2 播州織総合開発センターは、「繊維工業構造改善臨時措置法」(昭和49年)にもとづいて、新商品・新技術開発、情報主集・提供、教育・研修、素材や製品の試験・検査などの知識集約化事業を目的にされたが、産地織布業者の構造改善工業組合の共同施設にとどまり、染色・整理加工・産元商社が加わる産地総体の施設になってはいない
*3 繊維リソースセンターとして、西脇市・加西市・中町・加美町・八千代町・黒田庄町・滝野町・山南町の2市6町と、兵庫県織物協同組合連合会・兵庫県繊維染色工業協同組合・播州織産元協同組合・播州織整理加工協会・西脇多可縫製品協同組合・播州釣針協同組合の業界団体によって発足した
*1 それまで電話による折衝で直截な連絡が困難であったが、夜の間に溜まったFAXをみて、翌日の作業予定と照らし合わせて、納期の返事が返ってくるようになったり、産元商社のメンバーが自転車や自動車で現業との連絡をとっていたのが、不要となるというメリットがうまれた。
*1他方、通商産業省のTIIP(Textile Industry Inovation Program 繊維産業革新基盤整備事業)の第1段階として、約1000社参加の繊維ビジネスの川上から川下を包括する業務システム開発の実験を経て、第2段階の繊維産地の生産加工部門の主要繊維産地(今治・石川・尾州・播州)の産地内情報化システムの開発実験が進んだ。1996年からは、播州産地の織布業者を中心とした2つのLPU(リンケージ・プロダクト・ユニット 実需対応型補完連携)がスタートしているが、このLPUが、新たな企業間関係の構築を促進するかどうか注目される。その内実は、信頼関係にもとづいた産地企業間の情報共有化と水平的取引関係の実現にある。
*1 「問屋不要論」は、1960年代の大型スーパーの全国展開という第1次流通革命の中で初めて登場し、1980年代の電気通信回線開放によるVAN事業自由化で再登場し(第2次流通革命)、1990年代において情報ネットワークによる第3次問屋不要論ともいうべき主張が登場している
 
*1 京都織物卸商業組合『情報武装型問屋への脱皮ー室町業界へのニューメデイア提言』・『室町市場振興ビジョン報告書』参照
*1 郵政省「テレトピア構想」は、テレコミュニケーション(電気通信)とユートピア(理想郷)を組み合わせた造語であり、11タイプのモデル都市にデジタル統合網(地域INS)・キャプテン・双方向CATV・VANを導入し、地域高度情報化を実現する構想である