第2章 日本における古書籍市場の変容分析
第1節 日本型古書籍市場のゆらぎ
1)日本における古書籍店の動態
古書籍業界の実態は、店舗売の半減、大型古書籍店の倒・廃業が続出し、図書館依存の古書店も危険水域に入りつつあり、このような1980年代から2000年にかけてのリサイクル書店の産業構造は以下のような変容過程をたどった(図36参照)。
【図36 リサイクル系書店の変容】(出所:筆者作成)
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1980〜90年代前半 |
1990年代後半〜2000年代 |
店舗販売
店頭買取
古書労働
基本戦略
マーケッテイング 戦略
購買嗜好
経済戦略
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全盛期
大量仕入(集中)
肉体労働
多店舗・大型化
マスマーケッテイング
大衆一括告知
目的買い
規模の経済
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過剰期(一巡)
少量仕入(分散)
知能労働
店舗縮小・コスト削減
顧客別・差別化・マルチ化
衝動買い
範囲・連結の経済
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こうして多品種少量の差別化された古書籍をQR提供するネットワーク古書籍店の比較優位が形成される。リサイクル系古書籍ビジネス市場の成長率が上昇している背景には、不況期における消費者行動や、環境問題への関心の上昇及びリサイクル商品に対する負のイメージの払拭がある。
通商産業省の商業統計表97年版(最新版3年毎に 【リサイクル系アパレル・中古品店数の推移】
発表)では、中古品小売業(骨董品・中古自動車を除く)は、94年比20.8%プラスという成長傾向を示している。成長型リサイクル系企業の代表例であるガリバーインターナショナルは、日本初のフランチャイズ展開した中古車買い取り専門店であり、中核ノウハウである「値付け」機能を本部に一元化して査定ミスを極小化し、アマチュアの参入を可能にしたところにあり、衛星通信による無在庫情報販売システム(1998年開始)によって、地域間価格差を配慮した販売網を構築して利益最大化を実現してきた。
査定依頼 |
4180 |
| 4000 | | | |
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| 3500 | |
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| 3000 | |
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| 2500 | |
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| 【仕入れ】 | 顧客 | | ガリバー店 | 価格支持 | 本部 | | |
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| | 中古車オークション | | 2000 | |
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| 【販 売】 | 中古車販売業者 | | | ドルフィネット店 | | 1500 | |
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1000 |
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| | 売れ残り本部買 | |
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| | 顧客 | | 顧客 | | 79 82 85 88 91 94 97
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このようなリサイクル系ビジネス戦略の鍵は、売買価格 【ガリバーインターナショナルの売上高推移】
の設定にあり、「買価の30〜50%で売り、定価の70%以下で買う」というユーザーの標準的な意識に近い価格決定が要求される。リサイクル系店の利用者は、60%を越え、「購買機会がない」が50%を越えている。ここから、店舗を全国的に展開し、価格設定リスクを回避するネットワーク型リサイクル店の比較優位が形成される(出所 ウエイブ「リサイクル商品、リサイクルショップに関する女性消費者意識」1999年7.8月調査)。こうしたリサイクル業一般の特質は、古書籍業にも適用される。
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【リサイクルショップの価格志向】 【リサイクルショップへの購買行動】
2)CVS型古書籍店戦略
一定の古書籍業の集積地(例:東京神田・早稲田、大阪梅田、京都、名古屋鶴舞など)において「集積の利益」による店頭販売をおこなってきた伝統的な経営にかわって、CVS型戦略を志向する新たな動向がある。その典型が、フランチャイズ方式によるチェーン店を全国展開している中古ピアノ業から異業種参入した「ブック・オフ」である。新刊同様の本を定価の1/10程度で買い取ったうえ半額で販売し、ベストセラー・文庫本・コミック等の読み捨て分野に特化しつつ、若者と主婦層を主な顧客対象としている。
3)再販制再編下のバーゲン・非再販本戦略
書籍バーゲンは、値崩れ誘発を防止する再販制度擁護論や、出版の尊厳論の観点から批判を受けてきたが、現在では逆に再販制を擁護する観点から、出版社の書籍バーゲンセールが展開されている*1。現行の再販契約では、全ての書籍・雑誌を対象に出版社の意志で次の3つ形態を選択することができる。出版業界は、再販制維持の立場から、A・Bのバーゲン・非再販本戦術を採用している(詳細は「第6章書籍出版業の再販売価格維持制度の経済理論的分析」を参照されたい)。
| | | (定価表示→一定期間経過後時限再販へ移行の可能性) |
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| | | | | (部分再販による自由価格本・当初から非定価表示・¥表示、頒価表示) |
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| | | (定価表示抹消・B表示、一定期間経過後再販から外す) |
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4)電子古書籍市場の成長
古書籍市場の電子化が最も進んでいるのは、アメリカであり、Interloc Home Page(カリフォルニア州エメリービル) に、全米1800古書店が参加し、400万点の在庫を保有し、7000件/日の注文を受けている。Advanced Book Exchangeは、世界21カ国の3、500古書店を傘下に収め、780万冊の在庫がある。 ebaY(JAPAN.CO.JP)は、インターネットによる古書・古典籍・コミックのオークション販売をおこない、1999年第4四半期1,000億円取引高(年間3000億円)→2000年3,360億円→2004年6兆円売上を予測している(図37・表34・35・36参照)。
【図37 ebaYシステム】 【表34 ebaYユーザー登録数推移】 10000
| 7500 |
バイヤー
| 代金支払
商品出荷 |
セーラー
|
5500 |
| | 3800 |
| | |
|
| ebaY
インターネット
ウエブサイト | 2100 | | 680 851 1300 |
| | 88 150 223 341 | | | |
| |
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4
1997年1998年 1999年
【表35 ebaY取引高推移】 【表36 日本インタネーート利用者と紫式部売上高推移】
901
739 |
2000
1800
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200 |
3億円
参加店全体売上 |
| 622 |
|
541 |
|
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307 |
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140 195 |
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| 104 |
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| 紫支部開店 |
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| 24 44 |
| |
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| 9 18 |
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| | | | | |
Q1Q2Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 95/6 95/12 98/2 99/6年月
1997年 1998年 1999年 凡例:勤務先・学校から
家庭・勤務先・学校から
家庭から
第2節 古書籍流通チャネルの変容
1)伝統的な古書籍流通チャネル
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| (非再販本・返品本・特価本) | |
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●店頭販売
●古書展
●頒布会
●カタログ
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(作家)
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出 版
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取 次
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書 店
| |
ユーザー
| | | | 組合 | |
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| 古書店 ●せり |
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| ●オークション
●仲間取引 |
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2)新たな古書籍流通チャネル(T:電子ネットワーク型)
電子ネットワークによる新たな古書籍市場として、サイト方式による仮想書店が立ち上がっているが*1、日本の電子ネットワーク型古書籍店を運営している代表的なサイトは以下のようになっている。
| | | | ネットワーク | |
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| | 垂直統合 |
古書店
古書店
古書店
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(作家)
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出 版
| |
取 次
| |
書 店
| |
ユーザー
| | |
電子古書店
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サ イ ト 名 |
運営者 |
開設年度 |
加盟店数 |
在庫総数 |
アクセス数 |
[スーパー源氏]
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紫式部社
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平成7年
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51店
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38万8千点
50万点(2000年)
120万点(2001年) |
30万件
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[日本の古本屋]
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東京都古書籍商協同組合・三菱商事・大日本印刷 |
平成8年
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100店
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12万点
100万点(2000年)
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[Bizseek]
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平成9年
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個人売買可能
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探求書登録件数 4万2千件
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28万件
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*他に「Book Toen-神田」(神田神保町古書街)・「京都古書店案内図」(京都)・「古群洞」(外国文学翻訳書専門)などがある
3)新たな古書籍流通チャネル(U:マルチメデイア・ネットワーク型)
ところが最近CVSが主導する古書籍販売の電子ネットワークが構築され、「セブンドリーム・ドット・コム」は、資本金50億円・投資規模400億円で立ち上がり(平成12年)、取扱高予測は1.500億円(2001年)→3.000億円(2003年)であり、そのイメージ図は以下のようになる(図38参照)。このような古書籍流通システムの変容は、実は古書籍市場の歴史的な展開過程のより高次な形態である(図39参照)。
【図38 マルテイメデイアネットワーク型古書籍流通チャネル】(出所:筆者作成)
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キノトロープ
Eビジネス・システム提供 |
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セブン・イレブン
プラットフォーム構築
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NRI:ビジネス
リサーチ提供
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| プラットフォーム |
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店 舗
(全国8000店)
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ゲーム機
携帯電話
デジタル放送
PC
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ユーザー
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SONY
MD/IC
技術提供
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マルチメデイア端末
(全国8000台)
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衛星通
| 信ネットワーク
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三井物産商品情報
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| | デジタルコンテンツ | |
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| 旅行、音楽、写真、物販・ギフト・携帯電話 | |
eS-Booksと提携
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| チケット、車、情報提供サービス、 書籍 | |
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JTB:旅行サービス
提供
| | インターネットサイト | |
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NEC:IT設計
技術提供 |
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【図39 古書籍市場の史的展開過程】(出所:(株)紫式部社資料を参照して筆者作成)
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1920年代 |
1940年代 |
1960年代 |
1980年代 |
2000年代 |
主な対象 となる顧客
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数 奇 者↓
知識階級
|
知識階級
|
知識階級 |
マ ニ ア |
更なるマニア化 | | 一般大衆 | | | 一般大衆 | | | 一般大衆 | | マ ニ ア | 知識階級↓ | |
注文方法 |
葉書 |
葉書・電話 |
葉書・電話 |
FAX・電話 |
FAX・電子メール |
古書目録
の態様
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文字のみの略目録・発行部数20〜30部 |
文字と写真・写真版目録・発行部数100部 |
目録の量産体制・発行部数100〜300部 |
目録超大量発行・大量掲載・多様化・多項目 |
超過密情報量・古書データベースサービス |
スキル伝承 |
家内伝承・徒弟制度 |
OJT |
OFFJT |
戦
略
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店舗戦略
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訪問仕入れ→店頭仕入れ(大量→少量)→店頭販売→カタログ販売 →電子販売
老舗経営 →非専門的・多店舗・大型化→店舗縮小→店頭・電子取引融合→マルチ | | マーケッテイング | 重要顧客相対取引 →大衆一括告知 →顧客別差別化 →単品クイックレスポンス
【誂え・悉皆制度】 【プロダクトアウト】 【マーケットイン】 【ワンツーワン】 |
顧客嗜好 |
目的買 →先着順・一点買・強迫買 →情報買・衝動買・漫歩買 |
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第3節 古書籍書市場変容の要因分析
古書籍市場における電子化の展開状況をみると、市場規模の急成長(表37参照)と、全売上高に占める電子取引の売上高の増大(表38参照)、特に高価格帯商品の電子取引による販売高が増大している(表39参照)。このような傾向は、「スーパー源氏」に参加した春風書房の例にみるとおりである(表40参照)。
【表37 電子古書市場推移】 【表38 電子取引による売上状況】
1200
1000
800
400
200
0 |
凡例: |
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| | 出店数
売上高
紫式部出店数
紫式部売上高 | 1200000
1000000 |
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| |
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800000
600000
400000
200000 |
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| |
| |
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| | | | | | | | | | | | | | |
95 96 97 98 99 00 95 96上96下97上97下98上98下99 上
【表39 高価格帯商品の販売動向】 【表40 ケーススタデー(春風書房売上推移)】
|
| 単位万円 250 | 凡例 |
| | 5
10 200
20
30 150
50
100 100
200
300 50 |
| | 合計
店舗
インターネット | | | | | | | | |
| | |
|
| |
|
| |
|
|
|
| |
|
| | | 400 | | | | | | | | | | | | | | 0 |
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1998年度 1999年度 95/5 95/11 96/5 96/11 97/5 97/11 98/5 98/11 99/5 99/11
(月刊売上別店舗数) (売上95/5=100)
情報通信技術によって、産業構造のプラットフォームは、垂直型業界内系列プラットフォーム(フルセット型)から、水平型業界横断プラットフォーム(フレクシブル専門化)へと移行し、プラットフォームの標準化が個別企業の系列内から、生産ー物流ー決済の業界内へ展開し、さらには超業界の標準化へと発展している。
このなかで、販売から部品調達・資金調達・製品・ブランドの諸過程のなかで、販売網・部品調達・資金調達過程をITが吸収し、企業の競争優位条件は、顧客情報感応型製品と高付加価値製品のQR供給にあり、この決定的な条件は、高次化された情報ネットワーク構築に懸かっている(図40参照)。
【図40 競争優位条件の変化】(出所:筆者作成)
| | | |
●製品優位・ソリュ-ションコスト
・マーケッテイング
・トレンド
●ブランド優位
・品質、信頼性
・イメージ
●顧客感応・QR供給
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| 販売網
部品調達
資金調達 |
|
aITが吸収
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| 製品 | | | a
a | | ブランド | | | | | |
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第3章 出版流通情報ネットワーク・システムの展開過程と課題
第1節 出版流通情報ネットワーク・システムの展開過程
第3章まで考察した書籍と古書籍市場における流通情報ネットワークは、全産業的な情報化の外部性の結果であるが、基本的に再販制と返品制という制度に依拠した変革であった。ところが出版産業の制度的根幹をなす再販制と返品制自体が問われ、ゆらいでいるなかで、再販制廃止後の新たな制度下の情報ネットワーク構築を当然想定しなければならない。この課題の考察にあたって、最初に流通情報ネットワークの歴史をPOSシステムに焦点を絞って整理すると*1、出版流通情報化システムの開発は、すでに1970年代から始まっていたことがわかる。
ビジネス・プロトコル標準化の準備期であり、通商産業省(産業構造審議会流通部会中間答申『流通活動のシステム化』)の流通近代化政策の一環として、取引先コードの統一化実験が開始され、納入業者の要望を受ける形で取引伝票の標準化と取引先コードの統一が実現し(1974年百貨店統一伝票(現在は統一伝票A様式)、1975年チェーストア統一伝票(B様式)、問屋統一伝票(C様式))、将来の製販3層共通業種別統一伝票の標準化の基礎がつくられた。現在流通業界で制定・使用されている統一伝票は次のようになっている(図41・42参照)。さらにこの実験過程において、将来モデルとしての「POSシステム」が初めて登場した。
【図41 流通業界の統一伝票の現状@】
【図42 流通業界の統一伝票の現状A】
ビジネスプロトコル標準化の発展・拡充期であり、POS研究開発期であった。POSシステムは、下記のような類型化によるモデル設計を導入した場合の効果を定量分析し、店頭レジ合理化を含む総合経営情報システムとして
| POSとEOSを統合した一体的な小売り情報システムとして捉える方向が打ち出された。このなかで一部の先進企業がPOSシステムの導入を開始したが、個別のバーコード・シンボル(表41参照)かNWー7などに分散した結果、商品コード・シンボルの標準化と共通商品コードの開発が迫られ、1978年にJANコード*1が、JIS標準化された。 |
|
スーパー型(食品・日用品対象)
百貨店型(耐久消費財対象)
専門店型
|
| |
【表41 バーコード・シンボルの諸形態】
一方、耐久消費財・玩具・雑誌・衣料品分野では、商品管理属性情報の多様性や商品イメージを理由としてOCR-POSの導入が始まり、その後のJAN-OCR併記表示の源流が形成された。1979年に、JAN型POSの店頭実験が開始され、タッチ式「ワンド・スキャナー」とサーマル式ラベル・プリンターという世界初の方式が採用された。この時期に、通商産業省の主導で、POS用クレジットカードの標準化実験がスタートし、1979年の磁気ストライブカードのJIS化と、1983年のNTTによるクレジット・オンライン・ネットワークシステムの試行によって、クレジットカー
| ドの基礎が形成された。出版業界では、「客注問題」改善のため、業界3者による客注専用伝票制度*1を発足させたが、処理作業上の区分の困難によって挫折した。JAN標準タイプ(13桁)の最初の2行は国コード(日本は49)、次の5行が商品メーカーコードでありメーカーが申請する。次の5行が商品アイテムコードでメーカーが自社商品へ絶対単品単位で付番する。最後の1桁は、チェックデジットで機械の誤読を防止するモジュラス10を採用している(図43参照)。小物商品には、短縮タイプ8桁コードを使う。JAN普及状況は以下のようになっている(図44・表42参照)。 |
| |
【図44 JAN型POS導入店舗数】 【表42 JAN型POSシステム業態別導入状況】
コンビニエン・スストアS社の全店一斉POS導入(1982年 1,700店)と、全国商工会議所のJANコード受付窓口業務開始(1985年 450カ所)によって、本格的にPOS導入が開始された時期である。さらに、流通業界オンラインデータ交換システム(1980年 日本チェーンストア協会JCA 標準伝送制御手順方式)がスタートし、通産省のJ手順(流通業界全般標準手順)と標準データ交換フォーマット(食品・日用品の受発注用)が制定された*2(1982年)。この間、POSデータによる流通データサービス(RDS)実験が開始され、POSーDB企業が立ち上がったが、流通業におけるRDS利用は進展していない。POS・EOSの普及に伴う商品マスター・データ収集、メンテナンス、入力コストを削減するJAN共通データベースの構築が始まり、JICFS(JANアイテムコード・ファイルサービス)が活動を開始した。こうした企業間情報ネットワークシステムの進展に対応する卸売業の指針をまとめた通商産業省「情報武装型卸売業ビジョン」が策定され(1985年)、次世代卸売情報ネットワーク構築の契機となった。
JANコードの全面展開と受発注オンラインへの採用及び汎用性VAN、物流コードシンボルITF標準化や総合POSカードシステム導入による情報ネットワークの構築期である。この時期の特徴の第1は、左表にみるような「無
| | | JANコード対象商品群の全面展開 | | 1982年 家電・玩具・家庭薬・家庭用品
1987年 共通雑誌コード
1990年 書籍ソースマーキング
公共料金・NHK・生命保険
|
| | 形消費財」に及ぶJANコードの全面展開であり、第2は、メーカーと卸・小売を結ぶEOS・VANの受発注オンラインへのJAN採用が本格的な企業間データ交換システムを開始し、レジ周り生産性の枠を越えたことである。第3は、1982年のJ手順制定と第2次通信開放によるVAN*1乱立が、汎用性と地域VANを求める標準EOSーVANである「ベンサム」*2の運用によって解決された(図45参照 1988年)。 |
|
【図45 地域流通VANのための標準EOSベンサム方式】
第4は、物流用統一コードとシンボル化であり、国際用ITF14桁・国内用ITF16桁がJIS基準として採用され(1986年)、物流コードシンボルのITF標準化*1が進んだことである(図46参照)。こうした動きは、主としてスーパーとCVSが中心であり、中小単独店の遅れに危機感を抱いた中小企業庁の「未来型中小小売商業地域総合流通情報システム化」研究が開始され(1986年)、商店街単位から地域ネットと全国ネットを指向する「商店街カードシステム」が結実した(POS・EOS・ポイントサービス・クレジット・ICカード・銀行POS・顧客総合サービスの7システム統合)。 第5は、企業間EOSの標準フォーマット(商品コードのJAN化・企業コードの共通取引先コード化)とQR調査研究が開始され、さらにJ手順から国際基準である電子メール方式(MOTIS/MHS)によるH手順への転換によって、漢字送信と高速送信が実現され、EDI時代の序曲となった(1991年)。
出版流通の場合、前述した客注専用伝票
制度の挫折後、従来の個別VANを越える出版業界統一VAN(Value Added Network 付加価値通信網)の構築が開始され*2、業界3者をオンライン化した在庫情報・発注データ・送品データ・POS実売データ・返品データ等を自由交換できる総合ネットワークをめざした運営会社設立をめざしている。しかし、データフォーマットと書店コードの体系化、多品種少量輸送の物流システムとの連動、返品制をめぐる3者のせめぎ合い等の障
の障壁が解決されていない。 |
| |
QR・ECR等のEDIをベースにした企業間システムの構築と、電子商取引時代を展望した本格的な企業間情報ネットワーク構築への研究開発が始まった時期であり、OBN(オープン・ビジネス・ネットワーク)という次世代ネットワークの開始期でもある(通商産業省のEC実験事業スタート 1995年)。 流通業界では、次世代物流EDI「SCMラベル」(事前にオンライン電送された出荷検品明細データと受領検品作業の効率化)によるEDIと物流システムの統合が開始され、急速に普及していった(表43参照)。
【表43 流通情報システム化基盤整備展開史】(出所:小野耕三「流通情報システム化25年の歩み」(『流通とシステム』 No.92 p4〜5 1997年)
第2節 EC革命における顧客管理システムの極大化分析
1)POSシステムによる顧客管理の極大化分析
POS(Point Of Sail 販売時点情報管理システム)は、小売やサービス業の店頭において、売り上げとサービス情報の登録機能を持つ端末とコンピュータを接続し、目的に対応してスキャナーやカードリーダーを接続し、省力化・省脳化・キャッシュレスショッピング・顧客管理システムを構築することである。POSシステムの基本構造は、POSターミナルとストアーコントローラーが中心となって、目的に対応するツールを接続し業務処理がおこなわれる(図47参照)。
【図47 POSシステムの概念と機能】(出所:筆者作成)
POSシステムは、店舗の発生情報を精確・詳細に把握するから、小売段階の店舗発生情報を集約する小売情報システムの基本となる。POSシステムの対象は、商品管理・物流管理・顧客管理・従業員管理・会計管理等の小売過程の全情報をカバーするが、基本情報はあくまで商品管理と顧客情報である。
商品管理におけるPOSシステムの最大の貢献は、従来の部門レベル・データから、単品レベル・データの把握を実現し、SA業務(仕入れ〜店間移動〜売変〜補充発注〜棚卸)の全過程管理を可能とした点にある。
POSシステムにおける情報管理の発展過程をみると、ハード部門である会計管理の店舗内業務処理(レジ会計)からソフト部門である商品管理・顧客管理へと発展し(図48参照)、商品管理システムの情報システム化が実現していったことが分かる(図49参照)。
【図48 POSシステム情報内容の発展】(出所:筆者作成)
【図49 POSシステムの商品管理サイクル】(出所:筆者作成)
商品の単品管理を実現するPOSシステムは、顧客管理システムを[売場における名簿の収集と蓄積(店舗レベル)]→[POSによる顧客情報の登録と蓄積(店舗・本部レベル)]→[POSからの商品と顧客情報の連動と分析]へと次第に高度化した。この最終レベルにおける商品情報と顧客情報の統合的な把握は(図50参照)、従来のマーケッテイングを革新し、QR(JIT)による即時的な単品供給を可能とした。顧客管理システムは、収集→蓄積→活用→メンテナンスの4機能を包括したデータベースを構築し、それに対応する階層的企業組織と連動し、POSシステムによってこの過程をオンラインネットワーク化する契機となった(図51参照)。
【図50 商品・顧客情報のC・Mマトリックス】(出所:筆者作成)
【図51 顧客情報の収集〜活用フロー】(出所:筆者作成)
2)マーケッテイング効果測定法の諸形態とその限界
従来のマーケッテイング効果測定の古典的な手法は、或る施策とその結果との関係を精確に測定するために膨大な時間とコストを要し、対費用効果の疑問が持たれたのに対し、インターネット・マーケッテイングの効果測定は、安価で且つ瞬時に効率的に行うことができる。
【従来のマーケッテイングの効果測定】
| | | 事後測定 | | ●マーケッテイング活動終了後の事後測定で戦略タイムラグ発生
|
| | | | 人的情報獲得 | | ●調査対象者探索
回答ガイダンスを調査員に依存
|
| | | | データアナログ処理 | | ●調査表記入の回答を
人的作業で集計作業をおこなう
|
| |
【インターネットマーケッテイングの効果測定】
| | | 同時測定 | | ●ネットにより、活動と同時進行で効果測定が可能、即時戦略化
|
| | | | 電子処理情報 | | ●調査対象者への
依頼・回答・集計 が自動化される
|
| | | | デジタル処理 | | ●ネット回答によって、最初からデジタル処理
ができる
|
| |
インターネット・マーケッテングの効果測定法は、アクセス分析・広告効果測定・インターネット視聴率・行動分析
の4形態があり、測定目的によって最適方法が選択される。
| 効果測定方法
(測定主体) | 測定目的
(測定方法) | 測定 指標 | 測定内容の特徴 と効果 | アクセス分析
(サーバー運営者)
|
サイトアクセス数の把握
(サーバログ解析)
| HIT数
| サーバーのデータファイル数を指標とする簡易測定が可能な指標であるが、1ファイルのデータ量と無関係に1HITと計算し、精密ではない | PV(ページビュー)
| 見られたホームページのページ数(HTMLファイル数)を指標とし、ページ単位広告の直感的な測定に向くが、1頁の情報量に無関係に1PVと表示される | 訪問者数
| そのサイトのトップページのPV(ドメイン数)を指標し、延べ数ではなく重複しない人数の近似値を探索できるが、あくまで概数である |
広告効果測定
(媒体社/サーバ運
営者)
| 広告効果度合いの測定
(媒体社・自社ログ゙解析)
| PV | 露出したバナーの延べ回数(ページ数)で、認知度アップ・シンボルマーク訴求度・キャッチコピー訴求度・メジャー感訴求度をねらう看板効果 | クリック数
| クリックされたバナーの延べ回数で、自社サイト来某者拡大・詳細情報提供・見込客発見・購買行動契機獲得の効果 | | CTR | Click Through Rate CTR=(クリック数/PV)×100で、自社サイトへの誘致率を測る | CPC
| COST Per Click CPC=(出稿金額/クリック数)×100
で出稿の対費用効果を測る | | インターネット視聴率(視聴率サービス提供会社) | 中立的媒体力の把握
(契約者モニター)
| 視聴者数
PV
| 依頼者のパソコンに測定ソフトを挿入するか、契約サイトのサーバーに測定ソフトを挿入し、中立の第3者調査機関によってバナー広告サイトの広告媒体価値を測定し、バナー広告料金に反映する |
行動分析
(サーバー運営者)
|
サイト訪問者の行動分析
(クッキー・登録システム)
| 個人別視聴行動・登録・購買行動 | アクセス分析の来訪人数(量)に対し、行動内容という質を測定する
|
|
次にこれらの効果測定法のなかで、バナー広告の効果低減問題を考察する。同一広告の大量且つ継続的な出稿は、CTRを低減する「バナー広告の効果低減」を誘発し、他の広告に比して逓減傾向が顕著となる。或る広告を何人が見たかを示す「リーチ」指標と、その広告を単一の人物が何回見たかを示す「フリクエンシー」の各飽和点を発見し、低減特性を分析して未然に防止することが必要となる。
【図52 特定サイトの低減特性】
| | | 特定サイトに毎週一定量のPV出稿を連続し、急激にCTRが低減する時期を発見する。例えば、毎週20万PVの出稿で、6週目にCTRの急激な低減がみられた場合、以降100万PV毎にバナー表現をリニューアルする対応を試みる等(図52参照)。また複数サイトの低減特性を発見できれば、PV総数の適性配分が可能となる。例えば、A・B両サイトに毎週20万PVの出稿を行い、Aサイトは6週目に、Bサイトは5週目で急激なCTRの降下があった場合、それぞれ100万PV、80万PVの効率的配分をおこなう等(図53参照)。 |
|
【図53 複数サイトの低減特性】
| | バナー広告の場合、表現方法の異なる複数のバナーを、媒体別に出稿し、それぞれのCTRとCPCを測定すれば、「表現効果」と「媒体効果」の相関が把握でき、媒体と表現を最適化した出稿パターンを発見することができる。表現効果は、ターゲット訴求型・機能訴求型・オケージョン訴求型に分類され、媒体は、顧客階層型(一般・男性・女性・ヤング)と興味関心型(検索エンジン・ビジネス情報・生活情報・エンタテイメント情報)に分
けられ、これらの組み合わせの最適化によってCTRが上昇する。 |
|
次に顧客の行動分析によって、行動パターンと嗜好パターンを把握する質的な「行動分析」の深化過程をみる。「行動分析」は段階的に次のように整理される。
【ログ解析による行動分析】 ページへのアクセス数とドメイン・ブラウザーを捕捉できるが、特定個人の追跡 はできない。事例@では、実線と2重線の導線が商品購入効果を示している。つ
まり、[ページC]→[アンケート回答]→[商品購入]のサイト充実度が分かる。
(事例@)
[視聴者] → [ページ] →[アンケート] →[掲示板発言] →[商品購入]
|
A
| |
|
|
B
| |
a
| |
|
| |
回答
| | |
あり
| | |
購入
|
|
| | | | | | | | | | | |
C
|
b
| |
| | |
|
|
| | |
|
| | | | | | | | | | | | aアウト |
|
|
|
|
|
|
|
非回答
| | |
なし
| | |
非購入
|
|
D
|
c
| | | | | | | | | | | | | |
| | |
E
|
| | |
|
【クッキーによる行動分析】 サイトがアクセスしたブラウザーに発行する認識番号で、ブラウザーの行動追跡と
個人行動の近似値が分かり、ワン・トウ・ワン・アプローチが可能となる。
|
視聴者A
=ブラウザー
|
@アクセス・・・・・・・・・・・・→
←・・・・・・・・Aクッキー発行
Bブラウザーにクッキー埋込 |
サイト
|
|
| Cブラウザーのクッキーを
識別し行動を記録
Dクッキーによる顧客行動解析 |
|
視聴者行動
ページb視聴→アンケート回答→掲示板発言→商品購入
| Eカスタマイズページの表示
Fパーソナライズアプローチ
|
【登録システムにより行動分析】 会員登録のID(パスワード)によるログイン後の行動を全て捕捉し、個人行動 を完全に把握でき、ワン・トウ・ワン・アプローチを極大化することができる。
| |
(蓄積) データベース
(蓄積)
|
|
|
視聴者A
|
@個人情報の登録・・・・・・・→
←・・・・・・・・・・・・・・AID発行
|
サイト
|
・・・・
|
| B個人認証
|
|
視聴者行動 C
カスタマイズページ→表示→視聴→商品購入
|
aアウトDさらに行動j情報蓄積
次回アクセス時に精度
高いパーソナライズ化 |
登録システムによるレスポンス広告の管理指標として、CPR(Cost Per Response)という顧客行動の対費用効果を表す@〜Bの3指標のなかでは、CPRegが最も重要な指標である。
@CPC(Cost Per Click1クリックに要した費用)=出稿金額/クリック数
ACPR(Cost Per Inquiry 資料請求件数1件に要した費用)=出稿金額/資料請求件数
BCPReg(Cost Per Registration会員登録1名に要した費用)=出稿金額/会員登録件数
次に、行動分析の@〜Bの3指標から選択し、時系列的な測定を加えた結果による創造的評価をおこなう。
【時系列分析】
アクセス数分析は、分析の時間単位(日・月・週・時間帯)を決定し、一般的には日単位(曜日をクロスさせてもよい)の総クリック数とCTRの推移をみる。
右記の事例の場合、総クリック数は下降しているが、月単位のCTRの大きな変動はないから、クリック効果低減はないと推定し、出稿PV数を増大する戦略を選択する。またCTRが8日から14日に下降していることは、競合企業の大量バーナー出稿などの外部要因によると推定される。
|
| | | 総クリック数・CTRデータ解析 | | 500
400
300
200
100
(%) | | 1.00 |
0.80
0.60 |
0.40
| | 総クリック数 0.20
CTR | | | | | | | 1 4 7 10 13 16 19 22 25 28 31 |
|
3)戦略的な仮設設定と検定型インターネット・マーケッテイングー「生活者調査」分析
効果測定法は、施策実施後の顧客行動の精確な測定によってより効率化するが、本質的には現実追認情報(待ち分析)であり、創造的な戦略を発見する仮設設定や検定には限界がある。「インターネット生活者調査」は、従来の生活者調査の時間・コストを大幅に削減する効率性を追求する。
【従来型の生活者調査】
| | | | | 効率化追求 | | ●マジョリテイープライス効果
と数値目標の管理
|
| | | | 定型化可能 | | ●定型的数値情報と時系列的継続による経験値の蓄積
|
| |
【インタネット生活者調査】
| | | | | 創造性追求 | | ●新規顧客獲得と新サービス開発によるCS(顧客満足)
|
| | | | テーマ対応 | | ●広範なテーマと
外部環境影響評価による最適方法の選択
|
| |
インターネット生活者調査法の手順と概要は、以下の@→Bの流れをたどるが、それによって把握されるデータは市場の全体動向を把握する点では完全ではなく、試行錯誤によって精度を高めらることが求められる。
クローズ型(高い調査回収率・良好回答に偏倚・仮設発見型調査)
自社顧客調査
@調査対象者設定 セミクローズ型(回収率不安定・回答良好偏倚混在・絞込み可)
一般層調査
オープン型(回収率予測不可・回答偏倚なし・相対評価型調査)
定量調査(選択肢設定法)→・集計分析容易 →大サンプルの行動・意識調査
・回答クオリテー平準化 質問量限定
A調査形式設定 ・サンプル代表性希薄 著作権・肖像権問題発生
定性調査( 自由記入法 )→・独自型調査 →製品開発・サービス開発
・自己生活空間で実施 豊富なアイデア吸収
・生の言葉
・意見・思想の自由表現 ワントピック型
・ネットGI(グループインタビュー ワンテーマ型
・インタラクテイブモニター制 テーマ掘下型
レポート型
グルーピング →同類意見をまとめ全体傾向を把握、経験値では10G程度
B調査データ集約・分析 正負分類法 →プラス・マイナスに分類し正負評価を把握
マトリックス法 →個人のテーマ別発言数・内容の鳥瞰
ストリーム分析→話題の流れから新たなアイデアを視覚的にプランニングし、商 品開発・広告メッセージヒントを探索
|
インターネット生活者調査は、Quick(質問票印刷・リクルート・データ入力不要)、Large(大サンプル・希少対象者発見可能)、Wide(空間隔壁なし)、Interactive(ネット)、Visualize(動画・静止画・音声可能)、Low cost(コスト削減)等の圧倒的な優位性を潜在的に有するが、Reliability(IT人口が少なく、標本抽出や母集団との関係が不明でサンプル代表性に問題がある)、Security(なりすまし回答やプライバシー等の機密性・著作権・肖像権問題)などの点が緊急の課題として問われている。
第3節 出版流通における情報ネットワーク・システムの課題
1)印刷媒体消滅問題
オンライン・メデイア(ユーザー=発信者)の進展により、活字媒体が消滅し、究極的に電子パピルスによって古書籍店も消滅するという予測について検討する。最初に、情報媒体を伝達形態によって分類すると、次のようになる(表44参照)。
【表44 情報媒体の伝達形態による分類】(出所;筆者作成)
情報媒体の形態を、印刷媒体から電子メデイアへの代替可能性を基準として類型化すると以下のようになる。
【局所・検索・即時型メデイア】 情報の内容・形式が固定化され、検索への要求水準は低く、印刷媒体で対応が可能である。但し、即時性が要求される株式情報・交通情報等は、ニューメデイアへ移行するが、印刷媒体の地位はゆるがず、付加価値によって共存が可能となるゾーンである。
【局所・検索・遡及型メデイア】
学術文献などの専門的利用と高次の検索要求に対応する蓄積型電子メデイアへの代替化が進む。辞書・電話帳の日常的利用は、価格・携帯性・利用簡便性において印刷媒体が優位であるが、電子メデイアのコスト・パフォーマンスによっては一部代替が進む。
【局所・通覧・即時・遡及型メデイア】
現時点での電子メデイアは、通覧性に劣り、書籍やポスター等の印刷物が代替される可能性はない。但し、CD-ROMやCD-I等の文字情報に画像情報や音声情報を加えたマルチメデイアは、従来の印刷媒体とは別個のメデイアとして形成され、この場合は従来の印刷物の代替は起こらない。
【地域・検索・即時型メデイア】
即時性と検索性への要求が強く、予約提供サービスが連動することにより、電子メデイアの優位性が高くなるが、携帯性も要求されるので、全面的な代替は起こらない。
【大域・検索・遡及型メデイア】
業務用においては、企業間受発注システムとの組み合わせによる代替が進む。
【大域・通覧・即時・遡及型メデイア】
自然に受け手の目にとまることが重要なので、放送系は電子メデイアへの代替可能性があるが、容量が制約されるので印刷物への影響はない。
2)再販売価格維持制度のゆらぎ・廃止(これについては第2章第1節(3)で詳述)
3)プラットフォームの標準化(データ互換性)
出版業界の統一VAN構築の障壁として、個別ネットワークのデータ・フォーマットと書店コードの分散を統合する問題がある。個別企業主導型VANは、次の3形態に分類される。 (1)メーカー主導型(大手メーカーを中心とした単独企業による販社・卸売業などの取引企業と情報交換する流 通VANであり、メーカーサイドの自社商品を中心とした運営の傾向が強い(事例:資生堂)
(2)卸売り主導型(流通業の川中である卸売が「問屋無用論」に対抗して、情報ネットワーク化を図り、情報武装 型卸売業として流通の主導権を握ろうとするVAN(事例:食品・出版)
(3)小売業主導型(大手量販店・専門店・CVS・ボランタリーチェーン等が、卸売業に対する発注・納入の効率 化をめざし、POSデータの収集や売上げ分析のフィードバックをおこなう。小売の論理で展開され、商圏支配と 売れ筋商品に偏重している
4)CVS主導型出版文化の変容
出版情報ネットワークにPOSシステムを導入したのは、大手CVSであるセブンイレブンであり、出版業界内部の反対論を排除して*1、1987年に傘下チェーン店舗で全ての雑誌にバーコード印刷を導入し、次いで文庫本からコミックスへの付与した(1994年)。POSシステムによるマーケッテイング・データは、リアルタイムの悉皆データ*2であり、出版社の伝統的な懸賞葉書・愛読者カード(返送率が数%であり、マニアと高齢者に偏倚)方式に対して優位に立った。CVS市場の急成長は、書籍・雑誌の編集・出版システムに大きな変容をもたらし(表45参照)、出版社の企画がCVS情報に依存する傾向が拡大し、CVS主導型の出版物が増大した。このようなCVSによる出版に対する主導性は、文化財・公共財としての出版産業のあり方をゆるがせ、再販制と委託制の再検討を迫る契機となっっている。
【表45 CVSの出版戦略】(出所:筆者作成)
|
CVS出版戦略 |
分 野 |
事 例 |
CVS客層向け出版戦略
|
タウン情報誌
雑誌感覚の文庫
ハウツー・シリーズ |
『ぴあ』・『Tokyo Walker』・『関西Walker』
「夢文庫」(河出書房新社)・「ビジュアル文庫」(白夜書房)
「Ray文庫」(主婦の友)・「業界小説文庫」(イースト・プレス)
競馬・パチンコなど |
売れ筋戦略
|
文庫本(50点買切)
写真集 |
西村京太郎・斎藤栄・内田康夫・赤川次郎などの推理小説やTV関連と雑学中心の文庫
宮沢りえ(ファミリーマート1991年予約販売) |
死に筋商品排除
(回転率至上主義)
|
瞬時返品
|
発売後返品日は、週刊誌4日・月2回刊7日・月刊誌10日・文庫本2週間である
|
| |
5)地域出版文化の変容
地域出版文化の発信機能を担ってきた地方小規模書店は、配本・配送の非効率性から取次の支援を失い、転廃業によって、地方読者とのチャネルが断ち切られ、地域文化の空洞化が進み、出版文化産業事業団の調査によれば、無書店の地域町村は、全2581町村の47.5%、無図書館の町村78.7%、書店も図書館も無い町村が1095町村42.4%存在している。書店・図書館・CVSの都道府県別の居住距離をみると(10平方q当たり)、東京都約5店に対して北海道は0.5店に過ぎず、公共図書館は東京都2館以上に対し、ほとんどの県が100平方qに1〜2館である。このような地域文化の格差は、取次業の効率性原理によってもたらされた(表46参照)。
【表46 品目別類型化による都道府県別書籍・雑誌小売店商店数・年間販売額】(出所:通商産業省『商業統計表 品目別』)
このような出版文化の地域格差と無書店地域の問題を克服するうえで、出版情報ネットワークの地方展開は重要な意味を持ち、地方配本の多様な形態が試行されている。
第1に、宅急便業者による無書店地域配本システムである。地方における従来型の客注システムは、通信費コストを解決できず、無書店地域が拡大している。書店での客注の代注業務をおこなう宅配便業者の配達システムは、書店が書籍の受注を宅急便取次業者に知らせ、後工程は全て宅配業者が処理する。書店は、現行の宅急便取次料と同じ100円/件を受け取る。さらに、僻地の公立図書館・役場・公的機関を対象とした一括図書購入の無料配達サービス・システムがある(1994年稼働)*1。書籍以外の商品とセットにした書籍の配本システムは、地方の無書籍地域をカバーする可能性を拓いている。
第2に、公的セクターまたは第3セクターによる無書店地域配本システムである。出版社・取次・書店組合の共同出資でつくられた第3セクターである出版文化産業振興事業団(JPIC)は、町村営書店の開設に対する支援事業として、無書店地域の配本システムを構築し、「わかば書店」(大分県耶馬溪町*2)・「ブックワールド椿」(岩手県三陸町)・「BOOK愛ランドれぶん」・「本の森いいたて」(福島県飯舘村)等が開設されている。
第3は、行政施策による無書店地域配本システムである。行政による「文化」支援政策であり、新刊書の一定割合を地方小書店に振り向ける制度や、コスト割れする注文本の即時配達システムなどが検討されている。
第4章 出版流通情報ネットワーク・システムの論理構造
第1節 流通システム最適化理論としての取引費用アプローチ
社会的分業システムが高度化すると、生産と消費の場所と時期が分離し、企業の生産単位と家計の消費単位が乖離する。さらに、商品の品質・デザイン・価格をめぐるサプライヤーとユーザーの志向が異なり、生産と消費のミスマッチを調整する流通の最適化が求められる。商品毎の多様な最適流通システムの構築を実現する流通における法則性の解明が、流通経済学の課題となる。この流通最適化の最も有力な理論として、取引費用アプローチ(R.H.Coase,O.E.Williamson)がある。
或る商品に品質・デザイン・価格の異なるG1〜5の5種類の製品があり、それを生産者M1〜5の5企業が小規模生産を行ない、消費者C1〜10が所得と嗜好によって購買すると仮定する。しかも、両者の距離が10と極めて遠いとする。この商品の流通総コストは、売り手(生産者)と買い手(消費者)
の取引相手探索コストと取引に伴う商品輸送コストからなり、それは取引回数(直線の数)×距離(直線の長さ)の合計値に比例するとする。
@は売り手・買い手が直接に取引相手を探索し、小口の製品を多数個輸送する場合であり、Aは単一の流通業者Dが介在して業務を代替する場合であり、それらを比較すると明らかにAの流通総コストが少ない。
次いでBのように、流通業者を2段階にして卸売業Wと小売業Rに分離した場合は、2段階の流通業者が存在したほうが流通総コストが安くなる。
こうして流通の多段階性は、商品の流通総コストを抑制する合理的を持っている。
[流通総コスト=取引相手探索コスト+商品輸送コスト]という数式において、なぜ流通が介在すると右辺のコストが低下するのであろうか? 取引相手探索コストの場合、買い手(消費者C1)がM1〜5を訪問して5種類の製品を比較して購入するに要するコストと、買い手が近接の小売商R1を訪問して単一場所で5種類の製品を比較・購入するコストを較べるとはるかに後者が安い。製品の比較検討の機会を単一の場所で保障する品揃え機能は、小売商Rではなく、産地問屋WTと集散地問屋WUが担っている。
次に商品輸送コストについてみれば、同量を小口・多数個輸送する場合と、大口・少数個輸送する場合は明らかに大口・少数個輸送がコストが安く、生産地と消費地の距離に比例してさらに低減効果は大きくなる。こうして、品揃え機能とともに、商品の集荷機能と中継機能が必要となる。集荷機能を担っているのが産地問屋W1・集散地問屋WUであり、中継機能を担っているのが集散地問屋WUと地方問屋WVである。
次に、集荷・中継されて消費地に移動した大量の商品を品揃えを保持しつつ、地域内の消費者に近接して小口・多数個に分けて消費者の利益を最大化する分散機能が求められる。この分散機能を担うのが主として小売商Rである(地方問屋WVの場合もある)。
|
|
@
A
B
2 6 2 | M1 c1
2
2 3
4
3 W1 R 5
6
4 7
8
5 9
10
|
|
しかし、[多段階流通=流通コスト低減]が、必ずしも実現しない場合もある。生産者と消費者がともに空間的に分散している場合は、小売店1店当たりの商圏が小規模になり、集散地問屋WUと地方問屋WVの介在によって流通総コストが低減するが(C)、生産者が零細であっても空間的に集積し、かつ消費者が都市に集中して小売店1店当たりの商圏が大規模になっている場合は、むしろ集散地問屋WUと地方問屋WVを省略したほうがコストを低減させる(D)。 しかも生産の集積が進展し、商品の品質・デザイン・ブランド・価格の差別化が少ない少品種大量生産の場合は、品揃えと集荷機能が不要となり、産地問屋WTも不要となる。 さらに、大量生産・大量消費の生産財は、品揃え・集荷・中継・分散機能の必要が皆無で、流通の介在は不要となる(D)。つまり、流通は、生産と消費がともに多品種少量であればあるほど多段階となり、少品種多量であればあるほど省略されることになる。
結論的にいうと、流通の段階性は、商品の生産と消費の構造によって規定され、また一端成立した流通システムが生産と消費の構造を逆に規定する。例えば、流通の多段階性と産地問屋の存在が、小規模零細・分業生産システムを固定化したり、地域密着型の小規模小売店が消費者需要を底辺から掘り起こす場合もある。
|
|
C
D 2 6 2 | M1 C1
2
2 R 3
W1 4
3 5
R 6
4 W1 7
8
5 9
E(点線) 10
|
|
*流通総コストP1=取引相手探索コストP2+商品輸送コストP3
=f(取引回数×距離)
小売業では、販売機会の喪失と在庫負担を極小化するために、オンライン発注で納入業者から商品を短時間で荷受けしたり、指定時間通りに納入してもらうことが必要となり、納入企業は小口化・高頻度化する受注に対応した小分けシステムと物流の自動化を実現する効率的な配送システムが求められる。
これらの課題に対応するシステムが、POS(販売時点管理システム)とEOS(オンライン発注システム)とオンライン物流システムである。オンライン化によって従来の物流は右図のように変容する(図54参照)。
|
|
【図54 物流オンラインシステムによる変化】
|
| 迅速な納品体制 |
| | | | | 新物流システム | | 課 題 | |
| | 小分けシステム
自動化
効率的配送 | | 受注小口化
受注高頻度化
緊急配送
在庫常備率向上要請 |
| |
| | | | EOS(オンライン発注) |
| 小売業利益確保 |
| | | | | 売上増大 | | 経費削減 | |
| | 売場拡大
新規事業 | | 人件費削減
支払利息減少 | | | | | | 品揃改善 | | | 在庫軽減 | |
| |
| | | POS | | | | | | | 発注小ロット化 | | | | | | | リードタイム短縮 | | | |
|
第2節 出版流通チャネルの既成システム分析
前節でみたように、出版産業の生産は基本的に出版消費に規定される。つまり、1単位当たりの消費が、零細で散発的な書籍から大規模・集中的な雑誌に至る多様な形態に対応して、出版生産も零細・散発型から、大規模・集中型となる。地域的には、出版産業の生産・消費は都市集積・集中型であり、地方出版は小規模・零細となる。 しかし、出版物の公共財としての商品特性によって、市場システムになじまない経済外的強制(再販売価格維持制度)によって、商品輸送コストを越えた全国一律定価制が採用されている。このような外部経済の効果によって、出版産業独自の流通システムが形成されてきた。
つまり出版における再販制度によって、
流通総コストP1=取引相手探索コストP2
| +商品輸送コストp3=f(取引回数 | ↓ |
×全国平均距離)となり、距離変数
は固定化されて常数となる。
|
供給構造
| |
流通構造
| |
需要構造
|
|
| | → | ← | |
| | |
| 右図にあるように一般的には、流通 a | |
システムと需要・供給構造は、相互依
| 存関係にあり、それらを囲む外部環境 | |
| | |
| の影響を受けるが、流通システムは基 | 注:実線が太いほど影響 |
本的に需要・供給構造に規定される。
ところが出版産業においては、経済
外的な外部環境によって価格決定権 |
外部環境
| 強く、破線は影響弱い
|
が制約を受けている。 (公共料金・再販制度等)
出版産業の基本的な流通システムは、次のように極めて単純なものとなっている。
| 前節で解明した取引費用アプローチに従えば、零細生産者(出版社)と消費者(読者)の地域集積(いずれも大都市集積)によって、小売店1店当たりの商圏が大規模化し、地方問屋・集散地問屋が省略されるが(D参照)、出版産業においては集散地問屋(取次店)のガリバー型独占(東販・日販)が成立しており、事実上東京圏に集中している。つまり出版業界では、流通の多段階性が形成されず、極めて単層的な垂直型の流通チャネルが形成されているのである。 |
| |
出版取次機能は、第1に小売書店の仕入れと出版社の販売機能を果たし、第2に小売書店から商品代金を請求・回収し、出版社に支払う金融機能、第3に商品の搬入・梱包・仕分け・配送・在庫管理・返品処理をおこなう物流機能、第4に市場調査と分析・PR・店舗設計相談などの情報機能を担っている。一方出版取次業は、私企業ではあるが、『出版物取次倫理綱領』(P3参照)に規定された公共財の流通を担う性格をもっている。このよな取次会社の特殊な性格が、寡占化への過程を歩ませることとなった。
第3節 出版流通におけるネットワーク・エコノミックス分析
既成の流通チャネルの論理を整合的に説明し得るモデルであった取引費用アプローチは、新たな出版産業の業態の説明モデルとしては適用しがたいものとなった。つまり、情報ネットワークは、取引相手探索コストを無限に零点に接近させ、商品輸送コスト≒流通総コストとなる新たな流通チャネルを形成したからである(図55参照)。
【図55 新たな書籍出版流通チャネル】(注:点線内は既成流通チャネルとその革新、点線外は新たな流通チャネル)
| | ブックオンデマンド | |
|
| |
| | サイバー書店 | |
|
| |
| | ブックサービス | |
|
| |
| | 宅配サービス | |
|
| | |
| | | | 無店舗販売 | | |
| | | | | | | | | | | | | |
|
|
出版社
| | |
取次会社
| |
書 店
a
大型化
多店舗
郊外型
CVS
複合化
異業種参入 | |
読 者
|
|
|
|
|
|
|
| |
しかし、日本の出版流通情報ネットワーク・チャネルは、寡占的な特定取次店を中核とする垂直的な系列の枠内にあり、特約小売書店との間に取次店の指定する通信プロトコルを強制し、伝票様式などのビジネスプロトコルのレベルに留まっている。このような垂直的な関係は、系列取引の強化と取引先との連携を強化するが、系列外企業との自由取引の障壁となり、複数の取次店と取り引きする小売書店は特定オンライン端末を指定され、多種のプロトコルの運用によって、取引コストを増大させざるを得ない。この問題を解決するのがEDI(Electronic Data Interchange)による水平提携型ネットワークへの再編成である(図56参照)。
EDIでは一般に4レベルの合意が必要になる。第1レベ 【図56 EDI基本4レベル】
ルは通信プロトコルの統一と種を越えた接続であり*1、第2レベルはビジネスプロトコルの共通項目に関する標準コードの設定であり、第3レベルは業務運用契約であり、第4レベルは電子データによる契約と履行の保証契約である。
出版データベースにおいても、階層型とネットワーク型があるが、階層型は、項目間が親子の垂直関係でつながり、ネットワーク型は、親子関係の項目において複数の親を可能にし、自由度が高い構造を持つ。階層型は、データ構造と操作言語への高度な知識が必要で、構造変換の柔軟性がなく、設計期間が長くなる(図57・58参照)。
つまり、出版流通チャネルと出版データベースの共通 |
| |
性は、垂直的系列階層型の「硬い」構造に対するフレクシブルなネットワーク型水平連携型、或いはクローズドネットワークに対するオープンネットワークの比較優位性にある。
【図57 階層型データベース】 【図58 ネットワーク型データベース】
顧客受注セット 顧客受注セット 商品受注セット
A社 B社 C社 A社 B社 C社 TV ラジオ スタンド
10台 20台 10台 5台 10台 20台 10台 5台
出版情報ネットワークにおける水平型連携は、第1に取次の共同化と協業化をともなう効率的なネットワークを求め、第2に市場対応型マーケットインを求める。このような取次の情報ネットワークは、データベースを成熟させ、物流のトータル・システムを確立して、小売書店支援システムを含む戦略的な情報センターとして、取次業を情報発信産業に再編成する(図59参照)。
【図59 出版取次業の情報システム概念図】(出所:筆者作成)
| | | | 【データベースの確立】 | | | | 【戦略的情報センター】 | | | | 【物流トータルシステム】 | |
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小売業POS展開とメーカーのリージョナプロモーション支援
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自社 |
| ・小売業発想システム企画
小売業、メーカー情報発信
情報の商品化と戦略的活用 |
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外部 |
| ・小売対応物流システム
と競争優位の確立
■発注・仕入・販売・物流
の一貫システム
■流通センターと連動
■在庫管理によるオンラ
イン発注
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| | | |
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| | 情報ネットワーク | |
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■EOS・POSデータ
■アイテム・商品情報
■販売予測と在庫調整
| | |
| | 【小売業支援システムRSS】 | |
|
売場活性化・売場開発
■小売発注システム(EOS)
■小売支援POSシステム
■小売支援棚割システム
|
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|
こうした出版産業におけるSIS(Strategic Information System戦略的情報システム)は、戦略レベル→戦術レベル→戦闘レベルの3段階階層に構造化される(事例1・2参照)。
| | | 戦略レベル | | ●KSF(Key Success Factor)
に向けた経営理念・業態の明確化
|
| | | | 戦術レベル | | ●戦略実現のためのシステム機能の最適化→ネットワーク組織とDB階層の一致→物流最適化
|
| | | | 戦闘レベル | | ●システム運用環境とシステムを担うヒューマンウエアー
|
| |
出版業界におけるSIS(戦略的情報システム)の登場には、読者ニーズの多様化・個別化・高速化があり、再販制度によって価格差別化ができない出版社が多種少量生産体制と少種大量生産へ両極化し、小売書店の販売機会喪失を防止するといった背景がある。つまり、既成の出版産業を支えたプロダクト・アウトの労働集約的な業態から、マーケット・インの情報集約的な業態への再編成がある。SISが最も進んでいる出版取次業は、第1に書店系列化や有力書店のチェーン展開によって寡占化を進行させ、第2に書店系列化によって売上げ・仕入れの主導権を取次に移行させ、第3に書店の品揃えが画一化・マニュアル化し、書店員のパートを進め、労働コストを削減し、第4に情報化コストに対応する書店の選別化を進め、第5に書店ルート以外の無店舗販売・ホーム・ショッピングなどの多様化した非書店ルートの販売形態を進展させている。大手取次業のSISは、出版取次業への特化戦略をめざす「東販」に対して、日販は「総合文化商社化」による出版以外の分野への進出に分化しつつある(図60参照)。
【図60 日販の主な関連企業】
お茶の水商事(各種保険・書店用品販売)、日販興業(不動産)、第一図書販売(セット本割賦販売)、日販運 輸(集品配送・書籍返品改装)、日販ブックサービス(書籍返品処理)、ニッパンポニー(カセット・ビデオ販売)
日販製函(書籍用ボール箱)、出版パッケージ(週刊誌・計画誌梱包発送)、みずうみ書房(学参教育図書)、
日販建物(ビル管理運営)、日本アイ・ピー・エス(海外在住日本人への出版物・教育用品配送)、日販ビーエ
ステイ(書店への割賦販売会社設立援助)、日本図書館サービス(図書整理・目録カード作成)、ジャパンコン
ピュータテクノロジー(コンピュータ開発販売)
|
第4節 オンライン書店とアナログ書店をめぐるシステム間闘争
オンライン書店は、アマゾン・コム(米国)の成功によって、出版における1つの電子商取引モデルが創り出されたが、これによって誘発される出版流通システムの再編成と、読書文化の新たな形態については未だ未知数であり、オンライン書店をめぐる或る種のステム間闘争ともいえる鋭い評価の分岐が派生している。
最初に地域経済循環システムに与えるオンライン書店の波及効果をみる。街区商業地区における中小商店の集積は、街区文化の基礎的な条件であり、街区中小商店の集積から生まれる地域経済の循環は、街区のコミュニテーを活性化する重要なインフラであった。こうした街区コミュニテーの共同と、カテゴリー・キラー(価格破壊者)と呼ばれる最近の巨大チェーン店(ビッグ・ボックス*1)の進出は必ずしも調和的ではない。巨大チェーン店は、消費税を徴収し、所得税を支払い、一定の地域住民を雇用はするが、その収益の大部分は経営本部に吸収されるメカニズムになっている。オンライン・ビジネスは、このカテゴリー・キラーの電子的な形態として、個人単位の電子商取引によって、地域経済と無関係に取引をおこなうから、地域資源は全面的に企業に吸収され、地域経済への還元は一切ない。オンライン書店のアマゾン・コム・ビジネスモデルは、先行投資による将来の寡占化利益を期待されるニュービジネスの象徴であり、地域書店への巨大な変容が予測される。
このようなオンライン書店批判に対し、逆にオンライン書店を地域再生の契機として評価する発想もある。自動車交通の普遍化とバブル景気による土地騰貴は、地域の中小街区書店を駆逐し、残った中小街区書店は売れ筋商品に傾斜して知的な情報発信基地としての機能を喪失し、読者は品揃え豊富な巨大書店と郊外大型店に向かっている。このような状況に対し、オンライン書店は、文化データベースとして、街区書店が果たしてきた文化の発信機能と出版へのアクセス機能を再生する潜在的な可能性を秘めている。再販制が機能している日本では*2、書籍購入に[定価+送料]が掛かり、流通マージンが低く、サービス水準に限界があり、出版流通を支配している2大取次の寡占によって、オンライン書店の効果は現れていない。従ってオンライン書店のデータベースで検索し、地域書店で購入するという共存的な関係が形成される可能性が高い。また日本のオンライン書店は、出版流通と街区書店の地域的な不均衡と言語的障壁を克服し、空間限界を越えたコミュニケーションを形成する可能性がある。。
例えば、共存型事例として往来堂(東京千駄木)の店頭販売は、街区特性に合った品揃え・ニュース性・季節の定番性・ジャンルやテーマ別棚構成など知的インセンテイブに特化した書棚構成を差別化し、独自のデータベースを構築して、街区特性にマッチしたオンライン書店の経営戦略を展開している。ナショナルチェーンによる大型データベースや納期・送料・会員特典による差別化が可能な大型サイトに対し、往来堂は独自の個性的なカテゴリーによるデータベースで対抗している。共存型事例の恭文堂(東京目黒)の場合は、新刊書店でタブーであったポイントカード・バーゲンブックコーナーを導入し、新刊からバーゲン本・古本まであらゆる形態の本を供給し、顧客の滞留時間を伸ばす独自の経営展開をしている。
次に中小企業の共同化からオンライン書店をみる。巨大オンライン書店に対抗する独立系書店の共同化は、中小書店の共同化戦略の新たな可能性を秘めている。中小の独立系書店の比較優位性である書店数とデータベースの量的な優位を、共同化することによって、地域拠点を形成することができる。中小書店のオンライン共同化によって、「クイック&モルタル(オンライン書店で注文し、街区書店で注文する」モデルの可能性が拓かれる。
さらに出版流通チャネル論からオンライン書店の可能性を、中央統制型システムの場合でみる。中央統制型計画経済システムの出版流通システムは、単一の国営出版企業の独占的経営によって対費用効果の非効率性を露呈した。中国の場合、唯一の国営企業(新華書店)が出版流通チャネルを統制し、各地の新華書店の支店は、書籍選択権がなく、配本された書籍を販売するに過ぎなかった。出版産業は、国家統制され、市場原理は排除されていた。ところが改革・開放政策後、中国の出版流通チャネルに巨大な変容がもたらされた。
○第1段階(1982〜1988年):経営形態と流通チャネルの多様化導入期であり、国有書店を主要チャネルとしつつ、多様な流通チャネルを認め、国営・民営の企業体が導入され、出版社の80%が自主流通を開始し、28、000店を超える集団所有・個人所有の書店が出現していった1977年時点の書店数は、新華書店1、10、33店・農村部複合型書店2、37、92店・出版社直営書店861店・その他1、11、97店であり、都市部に集中している(全出版社500社のうち300社が北京立地)。。
○第2段階(1988〜1996年):国営書店の経営自主権を承認した時期であり、新華書店の支店が、卸売チャネル・仕入れ・値引き販売の自由を含む経営の選択権を承認された。
○第3段階(1996年〜):出版流通の自由化・市場化の時期であり、1996年に新聞出版署は、出版流通を全国一斉に自由化し、競争原理による秩序ある出版市場の創出を決定した。従来の流通システムと内部システムの改革段階から、出版市場創出へと踏み出した結果、流通チャネルは3層化された。第1チャネルは、新華書店チャネルで出版総量の半分以上を占めているが、かっての一元的チャネルではなく、省単位のチャネルとなった。第2チャネルは、出版社の自主流通チャネルで、郵送による販売である。第3チャネルがオンライン書店である。現在中国で稼働中のオンライン書店・出版社は約50企業(サーチエンジン「捜狐」で検索)、3グループ゚に類型化される。第1は、新華書店直営の「全国出版物発行信息網絡」で、このウエブ・サイトを媒介に各地の新華書店支店の発注がおこなわれるが、一般読者への販売はおこなっていない。第2は、省単位の出版グループが運営するウエブサイトであり、第3は出版社が自ら運営するオンライン販売であり、ネット上にURLを持つ180出版社の幾つかがオンライン販売をおこなっている。中国のオンライン書店は、統制型の出版流通チャネルを水平ネットワーク化し、書店の地域的な偏在を均質化する有力な手段となりつつある。ただし国内ユーザーの大部分は、電子商取引の条件が成熟しておらず、セキュリテー・システムも整備されていない。
|
オンライン書店の効率性は、出版流通チャネルが均質である米国型に適合するが、複雑多段階な中間流通業が介在しているシステムでは実現しない。例えば、ラテン系諸国では出版流通チャネルが多様で、地域的に限定され、流通コストのによるサービス水準の低下がある。ここからグローバルに散在するスペイン語読者を対象としたオンライン書店の可能性が生まれている。
最後に、再販制廃止による出版文化の変容からオンライン書店をみる。再販制度廃止後の大手出版社の大量生産・大量販売戦略の結果、街区書店の衰退が予想され、オンライン書店の可能性が浮上する。同時に再版廃止後の出版市場は、Eービジネスの進展とグローバリゼーションによって、公共性が疎外される可能性がある。オンライン書店は、一方で公共的書誌データベースを構築し*1、街区書店でアクセスできない情報への選択機会を提供する。日本の出版市場のヘビーユーザーの書籍動機は、オンラインとアナログ書店を問わず、多様なアクセス方法をとると予測される。オンライン書店は、街区書店による出版物の実体的な提供という公共性を喪失させるが、他面において電子上での公共性を回復する。
第5章 出版産業における再販売価格維持制度の論理分析
第1節 再販売価格維持制度における垂直的制限(vertical restraints)・準統合*1
再販売価格維持(resale price maintenance)は、生産者が取引業者に転売価格(再販売価格)をあらかじめ決定・指示・遵守させる垂直的制限vertical priceーfixing(「タテの価格拘束」・「タテの結合」・「垂直的カルテル」)をいい、優越的位置にあるメーカーの寡占化を推進する。
メーカーによる制限的な取引は、多様な垂直的・水平的結合の形態があり、大手メーカーの寡占システムの維持・強化による利益極大化を実現する。注意すべきは、垂直的制限は、販売者(川下)が一致して生産者(川上)に要求する逆の場合もあるという点にある。
[タテの結合・垂直的制限] [タテの結合・垂直的制限] [タテの結合・垂直的制限]
| | | 垂直的制限の諸形態 | |
a
| | 違反者への制裁 | |
| ○再販売維持・特約店制
○1店1帳合制・リベート制
○テリトリー制・専売制
○店合制・委託販売制
○払込制・派遣社員制
○資本参加制・役員派遣制
| ○出荷調整
○リベート削減
○出荷停止
○取引停止
| | |
|
ここでは、垂直的制限の主要な方法である再販制による下限価格の設定がどのような経済効果を持つかを検討する。再販制による下限価格の設定によって、価格競争は排除され、流通戦略はサービス競争へシフトする結果、サービスの過小供給が解決され、価格上昇を上回るサービス供給があれば、消費者利益となる。もしサービス供給が消費者にとって不要であれば、流通コストの低減につながり、メーカー・消費者ともに便益を高める。こうした下限価格の設定は、垂直的外部性の二重の限界がもたらす非効率を解決する効果を持つ。もし下限価格の設定がなければ、メーカー(川上企業)は価格(Pw)を生産限界費用(c)より高く設定し(Pw−c>0)、同時に流通企業も価格(Pr)を調達費用(Pw)より高く設定する(Pr−Pw>0)から、原価からの二重の乖離が生まれ、これは消費者の便益を低下させる。こうして再販制による下限価格の設定は、外部不経済の二重の限界性を排除する役割を果た
している。
| ある製品の生産者が独占であり、その製品の流通が競争的であるとすると、需要曲線D、c=流通業者の販売価格(卸売価格+販売費用)で規模の経済はないとすると、流通業者間競争により市場価格はcに等しくなる。 次に生産者が、再販価格の下限(P’>c)を指定すると、流通業者はP’−cの追加費用をサービスに費やす。さらにサービス競争によって、需要曲線がD’にシフトし、流通業者のコストがP’に上昇したとすると、生産者の販売数量は再販価格を指定しないときと同じで、消費者余剰も変化しない。さらに、消費者がサービス向上を価格上昇以上に期待すれば、販売数量は拡大し消費者余剰も上昇する。従って、生産者は消費者余剰が増大する場合のみに、再販価格を維持する。以上は、生産者が独占で流通が競争的な場合であるが、逆に生産者が競争的で流通が寡占である日本型出版産業の場合は、どうなるであろうか? ここでは、出版社が定価をしているから、現象的には生産者支配であるかのようにみえる |
| |
が、実質的には2大取次が市場を支配し、取次マージンが高額に設定され、委託販売(返品制)によってリスクは書店と出版社に分散するシステムとなっている。
次に再版制度下における定価は、同時に最終消費者に売り渡される商品の生産者決定小売価格である。出版社のマーケッテイング・ミックスは、精密な市場分析に基づく書籍の内容・造本・定価・印刷部数からなるが、極く少数の学術・芸術系出版物は文化的公共性にもとづいている。従って書籍の定価の決定変数は、[費用・需要・競争]であり、このどれに比重を置くかは、他の多様な従属変数を考慮して選択される。戦前期は、[直接費×3]の概算
|
決定変数 |
従属変数 |
●発行部数
●直接原価
●販売条件
●見込み利潤
|
●内容・読者層・購買力・類書の有無・売行き
●組版・製版・印刷・用紙・製本の直接費、印税・一般経費
●委託制による出し正味・予想返品率など
|
| | (初版部数の直接費を基準とした粗利益=間接費+利潤)で決定したが、戦後は類書との比較・在庫経費など需要の弾力性要素による制約が大きくなった。費用志向型の出版は、コストプラス方式(費用積み上げ方式)による直接費用から出版の規模(刊行総額) |
|
を単純に決め、その結果として間接費用・流通費用・利益を自動的に決まり、コスト計算によって価格は単純に決まる。こうした一般的な定価決定方式は、定価の類似性を誘発し、価格競争のリスクを極小化する。これに対し、ベイリー方式は、重版固定費・年間販売率・在庫保管率によって印刷部数を決定するが、需要予測率の精度が低く、コストプラス方式に比較して相対的に高価格の設定となる。
【表47 主要国の書籍定価決定法】(出所:中陣隆夫「学術出版の経済性」(日本出版学会『出版研究』22 P29)
出版産業は、委託販売制のもとで、需要弾力性に対応したフレクシブルな見込み生産であり*1、返品リスクを計測して定価の設定をおこなう。出版産業の損益分岐点は、正味売上高と総原価(返品を含む原価)が一致する点で決まり、この点が同時に返品許容限度(採算点)である。この返品許容点は次のように計算される。
定価×発行部数×正味率=総売上高・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・@
総売上高ー総原価=総利益・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・A
(総利益÷総売上高)×100=返品許容(採算)率・・・・・・・・・・・・・・・・B
@とA式は、出版物は全て売り切れたと仮定した場合であり、従ってB点において収支はゼロであり、Bを越えれば赤字、下回れば利益となる。従って純益は、@とBに実質返品率を挿入した次式によって算出される。
総売上高×(返品許容率ー実質返品率)=純損益額・・・・・・・・・・・・・・C
C式から、実質返品率>返品許容率の場合は純損の発生、逆は純益の発生を意味し、また返品許容率が高いほど収益率が高くなり、出版リスクは減少する。従って定価と発行部数の決定にとって、返品許容率の設定は決定的な意味を持ってくる。返品許容率は、発行部数・定価・コスト・(正味)掛率・入り広告等を人為的に操作することによって変動するが、その絶対的な限界は”限界利益率Marginal Profit Ratio”(限界利益額をMP、総売上に対する限界利益率をMP%とする)にある。この場合の限界利益率とは次のような意味である。ある出版物の原価計算で、変動費90万円・固定費30万円であり、定価200円・部数1万部・7半掛の設定では、総売上150万円・総利益30万円、損益分岐点20%・変動比率60%・固定比率20%となる。従って限界利益率は40%であり、発行部数を増やして総売上を増大させても損益分岐点は限界利益率40%を上回ることはできない。
S150=V90+F30+P30 (但しS1=V60%+F20%+B20%)
MP=F30+P30=60
MP%=MP60/S150=40%
|
| S(TS Total amount of Sales)総売上
C(TC Total Cost)総原価
P(TP Total Profit)総利益
B%(Break even point)損益分岐点(採算点)
R%(Remainder)返品率
NS(Net Sales)正味売上げ
F(Fixed Expense)固定費 F%固定比率
V(Variable Expense)変動費 V%変動比率
NP(Net Poofit)純益 ーNP純損 |
|
| 総売上線
S150=V90+F30+P30 ↑
S1=V60%+F20%+B20% 純利益
1.5万部の ↓ 総原価線
採算限界点 ↑ | | | (26.66%)
|
|
1万部
採算限界点 |
P
90
V
60
|
| (20%)
| | 変動費 |
|
|
| (損益分岐点)
| | ↓ |
|
|
|
F
20
| | 固定費線 |
| | | 発行部数 |
|
50,00部 80,00部 1,00,00部 11,00,00部(最低必要発行部数)
限界利益率が所与である場合、利益最大化をもたらす最適定価と最適出版部数は次のようになる。最初に、定価と需要の関係を示す需要関数demand equationは以下のようになる。
N=b−aP (但しa>0)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・@ P:定価 N:需要数
b:洗剤需要数
| 需要曲線 a:係数(一般書a>専門書b)
|
ΔN
| 左図で安価なら需要が増え、高価なら需要が減ると一般的に
考えられる。一般書と専門書では定価に対する反応行動が異な
り、一般書は需要弾力性が高く、専門書は需要弾力性が低いと |
|
ΔP | 考えられ(一般書a>専門書b)、需要曲線の斜度が異なる。
|
|
P2 P1 P
次に費用関数cost equationは次のようになる。
C=F+cN・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・A C=総費用
F=固定費総額
c=単位変動費
次に総収入関数revenue equationは次のようになる。
bーN
R=NP=P(b−aP)=×N・・・・・・・・・・B
a
すると総利益関数profit equationは次のようになる。
Z=RーC=NPーC=(bc+F)+(ac+b)PーaP2 ・・・・・C
ZをPについて微分すれば Z’=(ac+b)ー2aP・・・・・・・・・・D
ここでZ’=0とするPの値を求めれば最大利益関数maximum profit equationが導かれる。利益極大化を実現する最適定価Pmと利益最大値Zmは、
ac+b (b−ac)2
Pm=のとき最大値Zm=ーF・・・・・E
2a 4a
さて最適定価の設定には固定費Fが関与しないが、利益極大化には関与するから、
b−ac 1
Z=ーF×Nー ×N2 ・・・・・・・・・・・・・・F
a a
となり、ZをNについて微分し、Z’=0とすれば、利益極大化を実現する最適出版部数Nmと利益最大値Zm は、
b−ac (b−ac)2
Nm=のとき最大値Zm =ーF・・・・・・・・G
2 4a
となる。
【事例 専門書の場合ー少部数・小マージン】
翻訳企画として、A5版・424頁・発行部数2000部・定価4500円の配置は正しいか?
(1)2年間の販売部数・定価設定をおこなう。この企画は、大学院以上の研究書で同著者第2作目、組版に数 式・図版多数で、定価4800円以内・販売速度から初版1500部・刊行規模720万円と設定する。
(2)@式N=b−aPからa=0,83、b=5,665を求め、
(3)A式C=F+cNから単位変動費c=487円
(4)以上からa=0,83、b=5,665、c=487をE・G式に代入し、最適価格Pm=3,644円、最適出版部数 Nm=2,630部を求めると、最大利益約400万円を得ることになる(図61参照)。
【図61 専門書の場合】
円 総費用
Nm N’ N
このように最適定価は、需要関数・費用関数に基づいた利益極大化または損失極小化を実現する価格であり、最適定価と最適出版部数は変動費の影響を受けるが、固定費の影響を受けることはない。但し、定価決定において、類書との競合や独占要素が考慮される。
次に販売速度(初版部数に対する3年間の販売率度数分布)は、次のようにパターン化される(図62)。
@は新刊時は売れ行き伸びるが約1年間で積算曲線が水平に寝る最も一般的なタイプであり、Aは平均的売れ行きで全国紙の書評欄で紹介され、常備書籍として投資に適する堅実タイプであり、B高速型と堅実型を兼ねた出版社の重要な管理的商品であり、Cは学校用図書に多く年数回の需要で階段状の積算曲線を示すが、改訂版や新企画が必要とされる。Dはシリーズ型で刊行開始時から後半に初速が低下する傾向があり、定期購読者の確保と完結期を早めることが必要となる。重版は、初版に対比して利潤が大きくなる傾向があり、初版定価は重版の有無を予測して設定する必要がある。
【図62 販売速度類型】
@一般的タイプ Aロングセラー型 Bベストセラー型 Cテキスト型 Dシリーズ型
日本の書籍定価は、流通マージンの圧縮によって相対的に低価であり、上昇率も低い。その理由は、基本的に日本の出版市場は、日本語表示による国内市場完結型で、国際価格の影響を受けない。書籍の平均定価を、1970年を100とした場合の相対平均推移をみると、石油ショックによる影響を除いて漸増傾向であり、欧米のような急速な上昇はない(図63参照)。
【図63 書籍平均定価推移国際比較】(出所:中陣隆夫「学術出版の経済性」(日本出版学会『出版研究』1991年)p60)
日本の書籍価格は、一般的に先進国比較で最も低価であり、その理由は低流通マージン率と出版社間の価格競争にある。基本的な適性原価率は定価の30%であるが、零細版元の少部数出版物は、印刷代・紙代・人件費などの間接費用も相対的に割高となり、直接原価(編集費用を除いた製作経費)が30%を越え、編集費を加えると40%を越え、卸価格(卸正味70%)比率で原価率は50%を越えている。出版社費用は、製造費用に販売費・管理費が掛かり、原価率50%では発刷りで利益を出すことは不可能となっている。このようなコスト負担は、書籍定価相場から逸脱した価格設定ができないことに起因する。従って、原価率30%から設定される定価設定は市場性を持たず、定価を先に決定してから原価を強引に30%に押し込める方法を採用する場合もある。製作過程の削減が不可能であれば、予想販売部数の見積もりを増やして刷り部数を増大して原価率を下げるしかない。しかし、結果的には大量の返品率と不良在庫率を抱える悪循環を誘発させる。これに対し、書籍定価のプライスリーダーである大手出版社は高正味・販売力・販売部数によって、安価な定価設定を行い、また書籍部門の赤字を雑誌部門で補填することができる。
【新刊書籍・雑誌新刊平均定価推移】(出所:出版ニュース社『出版年鑑2000度版』を参照して筆者作成)
次に、日本の出版流通市場における書店経営が直面している幾つかの課題について考察する。見込出版と委託販売制下において、粗利益率は返品率の関数であるが、書店からみた取引状況は、受品量・販売量・返品率の相対関係で示される。ここで、粗利益率20%・返品率35%の場合の取引状況を表示すると、次のようになる。
見掛け粗利益量=販売量×粗利益率=販売量×0,20・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・@
実粗利益量 =(受品量ー返品量)×粗利益率
=(受品量ー受品量×返品率)×粗利益率
=受品量(1ー返品率)×粗利益率
=受品量(1ー0.35)×0,25=受品量×0,13・・・・・・・・・・・・・・・・・・A
@式とA式を比較すると、返品労働が加算された場合に、粗利益率が0,20→0,13に下降している。販売過程における返品労働費は、その時点の平均賃金と返品率に規定されるから、実粗利益量が返品率の関数となり、書店の実体的な取引状況は以下のようになる(図64参照)。
【図64 受品量・販売量・返品率・返品量の相対関係】
図64で、Bが書籍受品量、Mが雑誌受品量を
示し、B+Mが送受品量を示す。直線Bの傾きで
あるθBが書籍返品率、θMが雑誌返品率を示
し、θB+Mが総返品率を示す。傾きθが大きいほど返品率が高くなることが分かる。
正味をめぐる書店と取次・出版社の矛盾が激
化した昭和40年代に、出版販売合理化推進協
議会が纏めた『書籍返品減少対策報告書』にお
ける送品占有率と返品率の実態は以下のように
図式化されるが、返品率減少が書店経営にとっ
て重要・至難であることが分かる。 |
|
| |
|
B
B+M
M
|
|
取 引 口 座 別
返 品 率
↓
|
10,4% |
47,0% |
| | | | |
| 総合返品率31.71% |
雑誌販売量
|
|
|
|
| | |
| |
|
|
注文買切品
52,8%
|
|
78.6%
|
65,9 | | |
| |
委託品
30,9%
|
| 雑誌受品量 | |
長期委託
8,8
| | | | 書籍販売量 | | | 書籍返品量 |
|
常備寄託
7.5%
|
| ← | | 書籍受 | | |
| 総返品量
→ |
←
← | | 総販売 | | → |
| | 総受品量 | | |
→送品率(占有)
下図の書店業務フローにおいて、従業員1分当たり経費(賃金その他一切)を仮に15円とし、全工程を終えるに必要な書籍1冊当たりの時間を2分とすると、取り扱い可能な定価の採算点は次のようになる(返品率・粗利益率は前頁のもの)。
15円×2(分)=定価×0,13
30円=定価×0,13
30
∴限界定価=≒230円
0,13
従って短冊扱の出版物は、230円が限界定価であり(実際には書店粗利益高に占める人件費率は50%であるから2倍の460円となる)、多品種少量の低価格品は、基本的に書店の犠牲で販売されていることがわかる。
| | (倉庫作業) | |
| | (店頭作業) | |
|
| |
運搬
搬入
| |
荷解き
| |
検品
| | |
展示
| |
精算
| |
包装
| |
補充
| |
注文
|
|
|
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|
|
| | |
|
|
|
|
|
| |
| |
ストック
| |
|
|
|
|
| | |
| | | |
|
|
荷造り
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返品
|
|
| | |
| | |
取次
| |
出版社
|
|
| | |
|
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第2節 戦後日本における再販売価格維持制度の展開過程
公正取引委員会が、再販売価格維持制度によるサービス低下を警告し、政府規制等と競争政策に関する研究会再販問題検討小委員会の「再版適用除外が認められる著作物の取り扱いについて(政府規制等と競争政策に関する研究会・再販問題検討小委員会「中間報告」1995年7月25日)」は、書籍価格決定の硬直化と返品・廃棄率の上昇を指摘し、再販制の本格的な再検討を提起した(下記中間報告概要参照)。
| | | [公取委中間報告概要] | | @寡占的市場構造の下での強調的企業行動がみられることから、再販制度がブランド内競争を制限しているだけでなく、市場全体にその影響力を及ぼし、ブランド間競争まで抑制される恐れがある・・・・再販契約の実施は本来出版業者の自由であるのに、実際には取次主導によって運営されている傾向があること、小売業者が団体として出版業者に取引条件の変更を要請するといった協調的行動があることなどが、その例。
A流通システムが固定化し、事業者が多様なニーズに対応することを怠りがちになりやすい・・・・消費者からの注文を処理する時間が長く、店頭での説明も不充分であることなどが、その例。
B長期間にわたる再販制度の硬直化等による弊害を助長している・・・・・・団体・取次の主導で再販制度が運用されているため、部分・時限再販がほとんど効果をあげていないこと、出版・取次業者間、取次・小売業者間の取引条件が画一的、固定的であることが、その例。
C非効率的取引慣行が生じている・・・・返品・再出荷を経た売残りの廃棄率が相当の水準に上っていることが、その例。
|
|
公正取引委員会は、7つの選択肢を挙げ、再販制を部分的に再編し(@〜D)、その後全面的に廃止する(E)方向を提起した。
@発行日から一定期間経過したものの適用除外
A学術・専門書のみに再販制適用
B雑誌のみに再販制適用
C定価から一定値幅範囲の自由価格制による再販制継続
D出版社在庫本の特定期間特価販売承認
E全面的再販制廃止
F現状維持
次に廃止論の強力な根拠となっている返品断裁処分の評価をめぐって、以下のような論点を提示した。
@断裁処分継続による再販制維持
A断裁処分継続による企業信用維持
B再販制廃止による返本・断裁減少
C再販制の弾力的運用(返品本の第2市場創設)による返品・断裁減少
公取委中間報告は、再販制継続論の根拠として、@定価販売の慣行・非代替性、A文化普及牲・機会均等性、B店頭陳列・品揃えを挙げ、定価販売の慣行は、指定再販商品の承認時に許容されたに過ぎないとし、非代替性論については、ブランド間価格競争が制約される非代替的商品では逆に価格競争を誘発させる必要があるとし、文化普及性については、文化普及性のある商品は書籍のみではなく、基本的には消費者の選択にあるとしている。また、全国同一価格による機会均等性に対しては、ロジステックスの高度化によって伝達手段の地域格差は解消していること、高コスト地域の供給コストを低コスト地域の消費者に転嫁することになると批判している。店頭陳列・品揃えについては、他の商品との本質的な差異はなく、再販制と直接の関連はないとし、硬直的な流通チャネルや返品制や書店スペースの問題であるとしている。
これに対し、日本新聞協会・日本書籍出版協会・日本雑誌協会は、強硬な反対声明を出し、再販制をめぐる鋭いシステム間闘争が展開されつつある。こうして再販制は、産業構造におけるシステム間闘争の典型的なモデルとして、緊急の政策的な判断を求められる優れてポリテイカルな性格をはらむ問題となった。
再販行為は、市場の価格競争を抑圧する不公正な取引方法(独禁法一般指定12項)として、独占禁止法第19条によって禁止されてきた。ところが、1953年の改正独占禁止法第24条の2項で、「著作物」及び「公正取引委員会が指定する」商品は適用除外され、前者の「著作物*1」のみが再販行為を認められた。いわゆる法定再販であり、公取委による再販指定手続き・届出手続きを要件としない独禁法適用除外となり、1956年から実施された。法定再販では、非契約者条項がなく、非契約者の非再販価格は法的制裁の対象とはならない。 1960年代以降の再販行為摘発*2によって、出版再販制廃止への流れが急速に強まっている背景には、「著作物」規定の混乱がある。再販制度が導入された段階では、「著作物」は、書籍・雑誌・新聞・レコードの4品目とされ、その後音楽用テープ・音楽用CDがレコード盤に準じて6品目となった。ところが、「著作物」は、著作権法と独占禁止法で規定され、法定再販は独占禁止法によっているが、独占禁止法自体に「著作物」の範囲規定はなく、6品目やコンピュータプログラム・データベース・ビデオテープ・レーザーデスク等は再販対象とならない等は公取委の解釈規定に過ぎず、「著作物」の多様化に伴うゆらぎと混乱が発生している。従って、著作権法上の「著作物」と独占禁止法上の「著作物」は、下記のように著作権法上の「複製物」を6品目指定していることになる(図65参照)。
【図65 著作物の法規的概念規定】
| | | 著作権法第2条第1項 | | 「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文
芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」
(著作権法第2条第1項)
|
| |
a
| |
| | 著作権法第10条第1項 | |
| | 著作権法第10条第2項 | |
|
1号 小説・脚本・論文・講演その他言語の著作物
第2号 音楽の著作物
第3号 舞踏又は無言劇の著作物
第4号 絵画・版画・彫刻その他の美術の著作物
第5号 建築の著作物
第6号 地図又は学術的な性質を有する図面・図表
・模型その他の図形の著作物
第7号 映画の著作物
第8号 写真の著作物
第9号 プログラムの著作物
| 事実の伝達に過ぎない雑報及び時事
の報道は、前項第1号に掲げる著作物に
該当しない
|
| | 著作権法第12条第1項 | |
編集物(データベースに該当するものを
のぞく)でその素材の選択又は配列によっ
て創作性を有するものは、著作物として保
護する
|
| |
| |
a
| | | 著作権法第2条15項[複製物] | | 印刷・写真・録音・録画その他の方法により
有形的に再生されたもの
|
| |
a
| | | 独占禁止法上の「著作物」6品目 | | 書籍・雑誌・新聞・レコード・音楽用テープ・音楽用CD
|
| |
著作定価制の起源は、「出版条例」改正(1875年 明治8年)の「奥付に定価の印を押すべし」との規定にあるが、現実には1892年(明治25年)の医書組合の定価販売が開始され、同年「東京雑誌売捌営業者組合」(東京堂 大橋省吾主唱)が設立され、売価協定による定価販売と監視員制度による罰則規定(5円以上の違約金徴収)を定めた「雑誌協定売価表」が配布されたが、実績は上がらず解散した。1919年(大正8年)に、東京書籍組合の書籍定価販売制、東京雑誌販売業組合の雑誌定価販売制実施によって、定価販売が全国的に励行された。岩波書店の単独再販宣言もこの傾向を定着させた(1915年)。戦後の原始独占禁止法(1947年)から1953年(昭和28年)の改正による著作物の再販維持行為承認まで定価販売制が踏襲されてきた理由には、以下の諸説がある。
@大正期以降の定価販売制の定着している(商慣行追認説)
A書籍・雑誌の定価販売は必ずしも市場原理を阻害しない(弊害希薄説)
B定価販売制によって書籍の文化水準を確保できる(文化的配慮説)
C西独競争制限禁止政策法の出版物再販除外規定をモデル化した(西独模倣説)
D化粧品の再販制に追随的に連動させ、出版物の定価をメーカー希望小売価格とみなした(化粧品主導説)
E戦後一時期の地方定価の1割増・奥付地方定価併記などの二重価格制に対する公取委の批判
1956年(昭和31年)には、出版・取次・書店3者による「再販売価格維持契約励行委員会」が発足し、本格的な書籍再販がスタートし、契約違反行為の摘発と制裁がおこなわれた。1976年(昭和51年)に、公取委は再販制の実施状況の実態調査を行い、1977年(昭和52年)の独占禁止懇話会で「出版物の再販契約は、対象たる出版物を特定せず、1社単位で包括的に再販契約が締結されている。再販契約を締結していない出版社もあるが、流通段階においては、その出版社の出版物も再販契約の対象商品と明確に区別されていない」と報告し、1979年(昭和54年)に、新再販制によって、従来の包括販売・永久販売・義務販売・共同実施の原則を否定し、部分再販(出版社の意志による)・時限再販(期限を設定した再販)・任意再販・単独再販制の新再販制の行政指導を行った。 1981年(昭和56年)に再販制と非再販制の共存をめざした定価販売と値引き販売き販売の両建をめざす新再販契約書が作成され、再販売価格維持契約励行委員会は「再販売価格維持契約委員会」に改称されたが、実態としては、部分再販・時限再販ともに行われず、実質的に再販制が継承されてきた。その背景には、寡占率の高い取次と書店組合との協調的な戦略があった。1981年(昭和56年)の公正取引委員会「出版物小売業の景品類の提供に関する公正競争規約」では、懸賞付き景品・ベタ付景品の金額・期間の制限が規定された。
1990年代の規制緩和政策のなかで、公正取引委員会は同委「政府規制等と競争政策研究会」の提言を受けて、1998年に@競争政策の観点から現時点で同制度を維持すべき理由は乏しく、基本的には廃止の方向で検討すべきである、A他方、本来的な対応とはいえないが文化・公共的な観点から配慮する必要があり、同制度を直ちに廃止することには問題がある、B廃止した場合の影響について配慮しつつ引き続き検討をおこない一定期間(概ね3年)経過後に制度自体の存続についての結論を得るーという方針を発表し、次の是正措置を求めた。
○時限再販・部分再販制など弾力的運用
○再販制運用・態様に関する発行者の自主性確保
○各種割引制導入による価格設定の多様化
○サービス券提供など販促手段の確保
○通販・直販」など流通チャネルの多様化と価格設定の多様化
○取引関係の明確化・透明化
こうした公正取引委員会の要求に対し、出版業界は多様な再販制の弾力的運用を実施してきた。日本書籍出版協会・日本雑誌協会・日本出版取次協会・日本書店商業組合連合会の4団体が設置している流通改善・再販運用推進委員会が作成した『出版流通改善 再販制度の弾力運用レポートU』(1999年10月)及び東京都書店商業組合青年部の実施した『客注品流通実態調査報告書』(1999年4月7日付)から、再販制の弾力的運用の取組状況を整理すると以下のようになる(『実態調査報告書』より筆写作成)。
出版社名 |
雑 誌 |
書 籍 |
東京大学出版会
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@直販送料を実費的なものから、1回何冊でも380円(代引き、前金のみ)、A一部書店での期間限定自由価格本セール実施予定 |
偕成社
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@自由価格本の出品、A対書店で一括購入・名入れ送料等サービスはケースバイケース |
学習研究社
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@書店不便の購読者サービスとしての通販実施(送料自社負担)、A週刊誌を除く全誌過去3号分在庫し注文に対応
|
@取次・書店への自由価格本販売、A時限再販等の謝恩価格本販売、B通販、C一括購入者割引(名入れ・送料サービス等)、D大量一括注文対応としての特装本提供 |
角川書店
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@全ての既存ルートを使用したTokyoWalkerの時限再販実施(発売から45日経過のもので機関は1年)、A期間限定でELLE DECOのバックナンバーの拘束を解き、自由価格本 |
@取次・書店において謝恩価格本・自由価格本フェアーに出品、A通販実施(注文200円・ミニ文庫100円で前金制)、B書籍の名入れサービス(50冊以上)、C部分再販の実施 |
工業調査会
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@TIBF他年間30にのぼる各専門分野の展示会で処置対策品のバーゲン・資料の無料配布実施、Aセミナー・講義に利用するテキストの一部割引・送料負担 |
講談社
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@定期購読者への年間購読前払特別定価設定(12冊→11冊・対象4誌)、A通販実施、Bバックナンバー販売(対象4誌・1年間) |
謝恩価格本フェアー実施
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光文社 |
@年間定期購読(月刊誌数誌対象)、Aバックナンバーサービス(月刊3ヶ月分週刊90日在庫) |
謝恩価格本フェアー参加
|
集英社
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@書店不便読者への年間定期購入者直送サービス(対象3誌)、Aバックナンバー直送販売サービス(対象7誌)。送料・手数料自社負担 |
@謝恩価格・自由価格本フェアー参加(期間・書目限定非再販)A一括購入割引(購入者との交渉)B一括購入者名入サービス(辞典類20部以上)C時限再販 |
主婦の友社 |
@定期購読サービス(6ヶ月・12ヶ月直接申し込み購読者への送料負担)、Aバックナンバー(直近3ヶ月対応・送料一律300円読者負担) |
@謝恩価格本・自由価格本フェアー参加、A通販(送料1カ所1回一律300円で1万円以上無料)、A一括購入(希望者名入れ・書店の要望で送料無料の直送) |
小学館
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@時限再販雑誌(週刊ポスト・ポタ)の流通、Aバックナンバー・通販送料無料、B年間定期購読者(対象2誌)へのクラブ入会・500円図書券贈呈・情報提供・クリスマスカード郵送、C年間予約購読者へ通販(希望者)、D部分再販試行 |
@謝恩価格本フェアー実施、A自由価格本フェアー参加、B部分再販実施(しかけ絵本で<価格>と表示)、C一括大量購入割引(30部以上名入れサービス)
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新潮社
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長期購読者割引(12ヶ月→11ヶ月)
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年1回のリスト落しの時にB本として第2市場へ
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筑摩書房
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@謝恩価格本フェアー参加、AB本は八木書店をメインに神保町・TIBFに出品、A1回の購入額5000円以上送料無料 |
日経BP社
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@直販誌の年間予約購読者割引、A通販定期購読者割引・優待入場料、Bバックナンバー提供 |
@Webサイト「日経BP書店」による通販(直送料負担はケースバイケース、A一括購入者割引・名入れ(高額商品でギフト需要あるもの) |
文藝春秋
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@バックナンバー提供(1年間在庫保有)、A年間購読者サービス(年間購読料=通常定価+送料)特別号自社負担・プレゼント不定期実施 |
@自由価格本・謝恩価格本フェアーへの参加、A直接注文読者へ送料300円で直送
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森北出版 |
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IBFでのバーゲンブック販売実施 |
河出書房新社・マガジンハウス
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謝恩価格フェアー
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出版社による再販制の弾力化は、自由価格本・再販価格本フェアーへの出品や通販、バックナンバーの直送及び定期予約ユーザーへの付加価値サービスなどあるが、時限再販・部分再販を実施している出版社は少ない。対象となる出版物は、著者の了解を得て一般市場で流通させ、取扱方法は自由価格本特別シールを貼付し(バーコード・ISBNは抹消しない)、セット出荷による特別報償スリップを導入しているところが多い。買切制と返品条件付はほぼ半ばであり、完全買切5掛・特別正味25%・書店マージン35%など半値販売が多く、支払は3ヶ月延勘が一般的である。実施方法は、秋の読書週間やTIBFなどの限定された時期での、書店申込制による店頭(コーナー)販売となっている。出版社は、再販制維持志向が強く、公取委の弾力的運用に対して消極的に対応している。
次に取次業の再販制の弾力的運用をみると、読書週間に開催される自由価格本フェアーはトーハンと日販による運営、TIBFは八木書店・第二出版販売による運営、出版物共同流通センターは独自のフェアーを開催している(同上書P82参照して筆者作成)。何れも書店申込制による店頭販売・リストによる受注、何らかのシール貼付、5
割引の完全買切制であり、出版社の再販制の弾力的運営とほぼ同じ形態となっている。
主 催 者 |
弾力運用の名称 |
取扱方法 |
仕入・販売条件 |
出版物共同流通センター(栗田・大阪屋・協和・日教販・中央社)
|
・自由価格本フェアー ・書店申込制による店頭販売
|
・リストによる受注
・単品受注セット出荷
・自作自由価格本シール貼付(作成費出版社負担) |
・特別正味
・完全買切
・5割引
|
トーハン
| ・自由価格本フェアー
・書店申込制による店頭販売 | ・リストによる単品受注
・自主基準による自由価格本シール貼付 | ・特別正味
・完全買切
・5〜4割引 |
日本出版販売
| ・自由価格本フェアー
・書店申込制による店頭販売 | ・リストによる単品受注
・自主基準による自由価格本シール貼付 | ・特別正味
・完全買切
・5割引 |
八木書店・第二出版販売
| ・バーゲンブックフェアー
・書店申込による店頭販売、デパート・スーパーの特設会場 | ・自主基準による非再販本処理
・Bの押印措置
| ・特別正味
・買切
・仕入部数は原則全量
・第二出版販売は委託販売 |
書店の再販制度の弾力的運用は、出版社との直取引や非大手取次を経由して、特別正味又は定価の30〜50%引或いは買切制によって、特定の時期に店頭又は特別会場で販売する形態が多い。これらは、大手書店・ターミナル書店が主流で、15主催者のうち、出版社との直取引をおこなうものが2社、取次と直取引の2重ルートを用いているものが6社、取り次経由のみのものが5社ある。対象取次も大手ではなく中小の取次に限定されている。
主催者 |
弾力運用の名称 |
取り扱方法 |
仕入・販売条件 |
ダイヤ書房
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バーゲンブック
|
・出版社直取引 ・第2出版販売
・スーパーワゴン販売 |
・特別正味
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ジュンク堂
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自由価格本特設コーナー
|
・出版社直取引
・出版物共同流通センター |
|
SPK(出版流通改革懇談会)
|
バーゲンブック・フェステイバル |
・栗田出版販売
・第2出版販売 |
・特別正味
|
NET21 |
|
|
・特別正味 |
オリオン書房
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バーゲンブックフェアー
|
・八木書店
・第2出版販売 |
・特別正味
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ブックスページワン
|
バーゲンコーナー
|
・八木書店
・出版社直取引 |
・特別正味 |
アシーネ |
|
・八木書店 |
|
有隣堂 |
バーゲンブックフェアー |
・第2出版販売 |
|
新星堂チェーン
|
|
・出版社直取引
・単品毎独自シール貼付 |
|
八重洲ブックセンター |
自由価格本フェアー |
|
・定価の30〜50%で販売 |
丸 善
|
自由価格本フェアー
|
・八木書店
・値引率30〜70%割引 |
・特別正味
|
東京都書店商業組合
|
自由価格本フェアー
|
・自主基準に基づく非再販処理
・Bの押印
|
・委託2〜3掛
・買切1掛
|
大坂組合・中央本部 |
自由価格本フェアー |
|
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紀伊国屋書店
|
自由価格本セール
|
・出版社直取引、取次ルート
・八木書店
・専用シール貼付 |
・買切20〜25%
|
サンジョルデイーの日実 行委員会
|
読者謝恩セール
|
・出版社直取引
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・買切3掛以下
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以上にみるようにバーゲンブックフェアーの売価は、一般的に定価の半額かそれ以下であり、そのため版元出し正味は買切り品22%・委託品25%(1994年)、日販児童書フェアー・トーハン自由価格本フェアーは買切り15〜25%であり、取次・書店は従来のマージンを確保した上で、出版社が製作原価(約35,7%)を下回る正味で出品
している*1。
再販制をめぐる弾力的運用は、基本的に再販制を維持しつつ、公取委主導の自由化政策に部分的に対応しているに過ぎない。つまり、流通機構のなかでこぼれ落ちている書籍と雑誌の再供給・顧客囲い込みのための付加価値サービスとして導入し、戦略商品には消極的で、個別出版社の雑誌非再販への取り組みに過ぎない。
【再販制の弾力的運用の諸形態】(出所:筆者作成)
|
(1)時限再販(発行後一定期間経過した書籍・雑誌の非再販化)
大手出版社(小学館・集英社)の在庫書籍の一部再販化、中堅取次(大阪屋・栗田出版販売・中央社・日 教販・協和出版販売)の非再販書籍の共同販売、大手取次(トーハン・日販)の単品受注による非再販本取 扱、専門取次(八木書店・第2出版販売)は継続取扱、書店の非再販本セール・書店団体(東京都書店商業 組合・大阪府書店商業組合)のバーゲン、雑誌時限再販開始(小学館次号発売時点・角川書店45日経過 時点)
(2)期間限定書籍非再販化 書店事前申込制による初版発行から2・3年経過後の書籍を読書週間等の特定期間に非再販化(講談社 ・小学館・集英社・学習研究社・角川書店・河出書房新社・光文社)
(3)非再販書籍発行 一部文庫の非再販化発行(角川書店)
(4)雑誌長期購読割引(講談社・小学館・集英社)
(5)再販契約書・自主基準見直し・弾力運用
従来の非再販流通の業界基準は、再販契約書(昭和55年見直し)と「出版物の価格表示に関する自主基 準」であったが、必ずしもこの基準に依らない流通が出現してきた
(6)取次における非再販本取扱の再販本との差異なき取扱
(7)ポイント・カード制実施 (8)通販の拡大 (9)雑誌バックナンバー確保 (10)注文品供給・情報提供迅速化
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次に出版流通チャネルの取引関係と書店の自律性の国際比較から,日本的型出版流通チャネルの特質を考察する。
(1)「書籍」と「雑誌」流通チャネルの分離と統合
出版取次業(卸)は、欧米では書籍専業であり、雑誌は各地域の雑誌・新聞卸売業者が担っているが、日本では、トーハン・日販・大阪屋・栗田等の寡占取次業者が、書籍と雑誌を統合した総合取次として扱うシステムであり、現在は、雑誌取次量が書籍取次量を凌駕している。欧米においては、 「書店」は同時に「書籍店」であり、雑誌は扱わないのに対し(部分的にジャーナルという専門定期雑誌を扱う)、日本の書店は総合して取り扱い、雑誌のウエートが高くなる傾向にある。
(2)買切・返品をめぐる書店の自立性比較
欧米においては出版社と書店の直接取引率が高く、卸業者との取引比率は低い。フランスのみが卸業者との取引比率が高いのは、卸業が出版社のアウトソーシングであり、書店の注文仕入システムが構築されているからである。日本の場合は、明治期以来形成された[出版社ー取次ー書店]チャネルが支配的で、しかも取次に対する依存度が強い。西欧の書籍仕入正味は標準6掛、カバー・プライス販売の書店標準マージンは30〜40%であり*2、雑誌マージン率は低い。日本の書店マージン率は、一般書標準22%・専門書18〜20%で、中小零細書店の専門書取扱率は低くなる。欧米においては、一般的に返品制と買切制の融合形態となっている。独は全面的買切制であり、仏は新刊配本についてのみ変則的委託制であり(代金決済2ヶ月、返品期限3ヶ月)、英国は追加注文の買切制、伊国は返品制である。雑誌は全て返品制である。日本は、書籍・雑誌とも書店配本分は、出版社ー取次間の委託販売制(書籍6ヶ月・月刊4ヶ月)で、代金決済は委託期限後である。追加注文は、委託期間内返品も無条件の引取となる。
(3)欧米における再販売価格制度比較(大陸型とアングロサクソン型の分岐)
ドイツでは、出版ー書店の直取引が70%である。直取引書店代金決済組合(BAG 1922年)と、出版社の共同倉庫や出版社系専門物流会社のレベルアップにより、コッホネフ&エッチンガー社(KNO)とリンゲンブリンク社(リブリ)の2大卸売会社は、注文後12時間の即時物流を実現し、物流短縮による差別化を図っている。
ドイツは、1832年に値引き防止監視の地域組合が設立されたが、実効性がなく、1852年に書籍商組合規約改正による値引き禁止規定も効果がなく、価格競争が激化した。1878年の値引き防止出版業者のアイゼナハ会議を経て、1887年に「書籍商取引規約」の廉売防止規定によって、全面的な定価販売制に移行した。戦後は、競争制限禁止法(1957年)の再販行為禁止は、商標品と出版物について除外されて、定価販売制を施行している。再販制は、複数出版社が同一委任内容の再販契約書を代理人を媒介として書店と締結する集団契約形態である。ただし、価格拘束の濫用禁止規定によって、ノー・カバープライス制を採用し(出版社の定価表示がなく、書店が定価を張る)、非再販本への移行やバーゲンに即応できるシステムをとっている(価格変更は、書籍組合の定期刊行物イエロー・ページへの掲載後3週間後に有効となる)。この価格割引制度により、予約注文は最大20%の値引き、大量購入や公的図書館は最大5%の割引販売となり、聴講生割引も導入されている。時限再販制はないが、版型の使い切り本は、別の出版社から再刊されると自由価格となり、新刊本をブック・クラブへ装丁を変えて出版すると20%安くなる。部分再販制は、デイスカウント用の自由価格本があり、売り上げの15%程度を占めている。
ドイツの1998年度の書籍総出版点数は、78,042点で(初版57,678点・重版20,364点)で過去最高を記録した。ドイツ図書館での集計方法が1997年から変更され、地域別・分野別統計は初版のみとなった。旧東独地域の初版出版点数は2,416点で前年比9,5%減少し、全独に占める旧東独地域シェアーは4,2%となった。
【ドイツ出版点数推移1989年ー1998年】
ドイツ連邦統計局が発表する民間所帯の生計価格指数によれば、書籍価格指数は1997年に2,8%上昇したのに続いて1998年にさらに2,0%上昇したが、定価の単純平均(発行部数・販売部数で加重平均しない)は1,5%下降している。初版本の単純平均価格は、41,79マルクで3,35%上昇している。
【ドイツ市販本の価格上昇率(1992〜1998年)・新刊書分野別平均単価】(出所:出版ニュース社『出版年鑑2000 年度版』P381参照)
フランスの取次会社は、出版社が独自の自社物流センターをアウトソーシングで独立させ、出版社ー取次系列が強く、1出版社1帳合というシステムであるが、注文品の48時間即納体制を実現している(図66参照)。日本の出版物流は、書籍取引マージン率8〜9%(返品分を引くと6%、中に全国配送平均運賃2%を含む)と安価で、回転率の高い雑誌に依存する傾向を生んでいる*1。
【図66 独・仏書籍・物流取引フロー】
フランスは、1892年の書籍定価販売協定によって定価販売が実施されてきたが、1953年の独占禁止法によって再販行為は原則的に禁止され、推奨価格(メーカー希望価格)で販売されてきた。1974年以降の大手書店の値引を契機として論争が起こり、1977年の全仏出版社組合(SNE)の固定価格制要請と全仏書店組合(FFSL)のオープン価格制要請のなか、1979年に自由価格制(オープンプライス モノリー布告施行)が導入され、出版社のカバープライスは禁止されて書店は価格決定権を獲得した。ところが、都市部と地方における価格差を受けて、1982年の書籍定価法による書籍再販制度導入に再転換した。ただし、値幅再販(定価の5%値引可)と時限再販(発行後2年経過し、最終仕入後6ヶ月経過の値引可)、文芸書は通常よりも高いマージン率を設定できる弾力的規定がある。仏出版組合(SNE)調査による書籍価格・消費者物価年間上昇率は、以下のようになっている。
|
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1978年 |
1979年 |
1980年 |
1981年 |
1982年 |
1983年 |
1984年 |
書籍価格
消費者物価
|
7,8%
8,9%
|
8,9%
10,7%
|
11,9%
13,3%
|
15,4%
13,2%
|
16,3%
11,3%
|
10,9%
9,6%
|
7,6%
7,6%
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1979年7月10日に自由価格制へのモノリー(経済相)条例が施行された以降、書籍価格は急上昇し、また1982年の書籍定価法(ラング法)施行後の1982年の16,3%という上昇率は前年までの自由価格制の上昇率のタイムラグであり、その後急速に下降に向かった*2。出版業界誌「エブド」に毎号集約する新刊所目録「エレクトル・ビブリオ」によれば、1998年の総出版点数は33,658点(前年比15,2%増)で著しい増加傾向を示している。流通経路別にみると、マルテイメデイア店+4,5%、スーパー+3%、一般書店+2%であるが、これまで好調であった兼業書店は−5%と売り上げを減少させている。
【フランス分野別出版点数(エブド誌/エレクトル・ビブリオ)】(出所:出版ニュース社『出版年鑑2000年度版』P391)
イタリアは、出版協会と書籍組合の協定(1926年)による定価販売がおこなわれてきたが、法的強制力はなく、馴染みの顧客に5〜10%の値引きサービスやバーゲンをおこない、断裁処分を避けている。出版業界誌「ジオナーレ・デラ・リブレリア」(1998年調査 出版社2,242社71,6%対象)でみると、価格の段階別出版点数・部数は、、5千リラ以下の低価格帯と2万リラ以上の高価格帯の出版部数が減少し、中価格帯の出版部数が伸びている。出版業界誌「ジオナーレ・デラ・リブレリア」(1998年調査 出版社2,242社71,6%対象)でみると、1998年の総出版点数は44,964点(+1,5%)、総出版部数2億4,124万部(−11,8%)で出版不況下にある。
【イタリア分野別出版点数・部数】(出所:出版ニュース社『出版年鑑2000年度版』P397参照)
【イタリア製作高一覧表】(出所:出版ニュース社『出版年鑑2000年度版』P395参照)
以上の大陸型再販制に対し、アングロサクソン型は再販制を採らない市場型自由価格制である。
イギリスは、1829年にロンドンの出版業と書店間の値引き販売防止規約が作られ、1930年から共同実施が行われたが、1845年にグラスゴー書籍同業組合の定価販売制が独占・共同謀議として解散され、その後自由営業期に入った。1852年には、ロンドン図書販売人協会の再販規定が不法共同実施の裁定で解散し、1890年のマクミランによる特定書籍の定価販売の成功を経て、1899年のイギリス出版協会(1896年設立)のNBA制定(Net Agreement=正価本協定)*1によって定価販売制が復活した。戦後は、制限的取引慣行法*2(1956年)によってカルテル・共同再販が禁止されたが、1962年に制限的慣行裁判所が「書籍の再販売価格維持に関する協定Net Book Agreement(以下NBA)」の適用除外を認め、1968年にも追認された。この判決では、@品揃えのよい書店が質量ともに減少する、A書籍価格が上昇する、B出版タイトル数が減少するとされた。1962年段階では活版印刷が主流で初版印刷部数が書店の予約注文量によって決定されていたが、オフセット印刷と電子印刷によって、低コストの迅速な再印刷が可能となり、出版社と書店のリスクか軽減され、返品条件付売買や卸業取引による翌日の配達サービスが可能となり、1995年に有力出版業者が定価販売強制を廃止し、出版協会はNBA支持派と反対派に分裂して実質的に再販制は崩壊した。1995年に、公正取引庁は書籍再販適用除外の廃止を申請し、1997年に制限的取引慣行裁判所が定価本協定の違法判決をくだし、100年間の歴史を持つ再販制は廃止された。NBA(正価本協定)崩壊後の出版状況について、英国出版業界紙「ブックセラー」(1996年7月26日号)は、NBA崩壊後の書籍出版総点数(初版+改訂新版)は、「ウイットカー社(ブックセラー誌発行社)の出版統計によると、1990年の63,960点から増大し、1996年には101,504点でピークに達したが、1997年に減少したが、1998年に104,634点(前年比4,6%)で記録を更新した。1997年の減少の要因は、出版社の合併・統合や企画合理化・電子出版への移行、教育のカリキュラム変更や需要予測による新刊抑制にある。
さらにNBA崩壊後の本の価格は、物価上昇率(’96年1月から6月期2,8%:HMSO調べ)の2倍を越えたことが明らかとなった。激しい値引き競争による市場刺激の反面、利益確保のためにカバープライスが一斉に値上げされたことによる。1996年1月から6月までに発行された書籍の平均価格は、24,71ポンドで、’95年同期の6,7%の上昇となった。とりわけ学術・専門書、科学・技術書、教科書の値上がりが大きく、それぞれ9,9%、7%、6,7%とかなりの上昇となった。ノンフィクションも全点数平均価格で5,8%上昇だが、ハードカバーだけでみると、実に9,9%と高い上昇率となっている」と述べている。さらに利益幅の増大をはかるため、1000部以下の少部数の学術出版が困難となり、大部数の少品目で英語国で受入可能なものに制約されるという傾向が出てきている。
【英国書籍平均単価推移】(出所:出版ニュース社『出版年鑑2000年度版』P375参照)
【英国分野別出版点数】(出所:出版ニュース社『出版年鑑2000年度版』P374参照)
アメリカは、建国以来の分権・拡散システムによって、[産業システムも本社の全米拡散→安価で 均等輸送可能な配送センターの地方立地→郵便・通信によるカタログ・マーケッテイングの発達→倉庫機能とカスタマーサービス水準の高度化]という産業システムを形成し、アメリカ型ビジネスの能動性と多様性を構築し、出版ビジネスにおいても出版社のカタログとセールスマンによる外注営業が中心で、独自の卸価格設定権を駆使し、書籍制作の厳密な進捗管理と効率的な運営と予算管理が要求される。
【米国の新刊販売ルート】
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出 版 社
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ホールセラー(問屋)
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書 店
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消 費 者
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| 総合
出版
営業
代行
業者
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| コミッション制による販売員による営業(カタログ)
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一般小売店
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オンラインショップ・DM業者
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ブッククラブ
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自由競争による多様な流通チャネルを形成したアメリカでは、オンライン書店は脅威ではなく、刺激となって市場全体を押し上げる効果を持つ。特にブッククラブは、流通の全米チャネルを構築し、ブッククラブとオンライン書店の連携による相乗効果が誘発される。こうしたアメリカ型出版ビジネスの能動性と多様性は、編集業務と著者と出版社に緊張関係を創り出す。ブッククラブ・ビジネスでは、販売方法による多様な印税率の設定や原稿完成などの厳密な契約関係が求められるから、リテラリー・エージェント(著者代理人)による版元交渉と、出版企画を支援するアクイジションacquisition、著者の原稿を支援する編集者であるコンセプチュアル・エデイターが制度化されている。
【米国書籍市場の多様性】
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オ リ ジ ナ ル 出 版 社
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海外出版社への版権販売
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読 者
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リメインダー業者
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マスマーケット
ペーパーバック出版社
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ブッククラブ
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電子ブック
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大型非書店系小売店への
特別大量販売
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『ボウカー・アニュアル』(R.R.ボウカー社刊の統計年鑑)・出版業界紙「パブリッシャーズ・ウイークリー」・業界情報誌「ブック・パブリッシング・レポート」等から米国出版統計をみると、出版点数は1996年に68,175点と過去最高を記録して、その後横ばいを続けている。マスマーケットの売り上げは減少しているが、ハードカバーは微増の傾向にあり、児童書・ビジネス書の減少に対し、社会科学・経済学やフィクション・歴史関係が増大している。売上高は、1992年から98年までの平均年間成長率は5,3%で、1998年は前年比6,4%と高い成長を示した。
価格は、主要出版社25社が出版した一般書ハードカバーは、25,36$が24,49%と3,4%と下落し、中堅独立出版社の安価なペーパーカバー戦略(9,95〜14,95$)に対抗して、ハードカバー価格を20〜25$に設定するようになっている(「ブック・パブリッシング・レポトート」誌参照)。
【米国書籍売上高推移(1997ー1998年)】
【米国分野別出版点数 1995〜1996】(出所:出版ニュース社『出版年鑑2000年度版』P363参照)
アメリカ型書店は、第1に大手書店チェーン(ボーダーズ、バーンズ&ノーブルなど)がメガショップといわれる超大型店(300〜1300坪 在庫点数6万〜17万5千点)を展開し、トップ4大書店チェーンの総売上高は対前年比
17,4%増の42億4000万ドルで全書店の44%を占め(「パブリッシャーズ・ウイークリー」1996年4月1日号)、書店の寡占状況が急速に進んでいる。在庫点数は、日本の大型書店1000坪で約30万点であり、米国大型書店の売れ筋中心の品揃え傾向がうかがわれる(1995年書協調査)。欧米における出版産業の寡占化は著しく、書籍価格の上昇と会員制の会費の上昇が進んでいる*1(下記参照)。
Reed Elsvier社(1993年設立):「所有すべき」情報に集中し、有機的成長と吸収の国際企業戦略
すでにBowker/Saur、Butterworth's、Shepard's、Lexis-Nekis、Congressinal Information Serviceな どの出版社を所有し、1997年にIippincott/Ravenを所有するWoters Kluwerと合併し、Elsevier Wolters Kiuwerと改称、専門家・ビジネス向け雑誌の世界最大出版社で80億ドル年間売上げ。
Elsevier Scienceは独の非営利機関Beilstein Instituteのデータベース・ハンドブックの独占販売権取得
Elsevier Engineering InformationがEngineer Information ,Incの名称含む全資産を買収。
Thomson Corporation社(カナダ):法律・ビジネス分野の統合推進
すでにInstitute for Scientific Information、Gale Research、West、Warren Gorham Lamont等を所 有し、West Publishing買収の際に規制当局から所有する法律雑誌の売却を指導された(1996年)。これ らの雑誌は、Reed Elsevier所有のlexis-Nexisが購入した。Thomsonの専門家向け情報・出版会社の収 益は7.47億ドルで営業収益の19%を占めている(1996年実績)。
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アメリカの中小書店は、個性化や読者ケア・ML作成による差別化と囲い込みを図り、ニッチ市場の顧客直結力のある経営戦略を展開して大型店に対抗している。つまりここでは、コ・オペレーション(協力)とコンペテイション(競争)の相乗効果をねらうコ・オペテイション戦略を指向している*2。良書幻想と取次依存の日本型システムが学ぶべきコ・オペテイッション戦略がある。
第3節 再販売価格維持制度をめぐるシステム間闘争
再販売価格維持制度に対する存続論・廃止論の論点を整理すると、以下のようになる(表48参照)。
【表48 再販売価格維持制度をめぐる存続・廃止論の諸形態】(出所:筆者作成)
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論 点 |
再販制度存続論 |
再販制度廃止論 |
権力論 |
・出版に対する国家の保護規制は、表現の自由・公共の福祉の実現にある(憲法21条規定) |
・出版行為は、国家権力によるいかなる規制からも自立すべきだ |
定価販売論
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・全国同一価格によって文化の公平な享受が保障される
・安定的販売による価格抑制がすすみ、値引き販売は利益を減少させ、値引率の高い買取制が主流となる
・自由価格制は、見せかけ価格(カバープライス)を上昇させ、スケールメリットの大型書店が伸び、中小書店は淘汰される
・書籍の価格は安価性以外に、情報の多様性・伝達の広範囲性が重要 |
・定価販売制は消費者優位の価格決定を排除する
・全国同一価格による地域コストが都市部に転化される ・大量仕入れによるデイスカウントを不可能とする ・非代替的商品である書籍は価格競争が制約されるので、異なる流通業者間の価格競争が必要とされるが、再販制は新たな流通形態の出現を妨げ、ユーザー利益を損なう
・自由価格制によって書店の差別化・特化が進む
・有害コミックまで保護する必要はない |
文化普及の特 殊商品論 |
・非代替的な多様な書籍、高品質の小部数出版が維持され、ユーザーの選択機会が保障される提供
・大部数、安全、確実性に企画が集中する |
・文化の普及とは、購入機会と便益確保の観点からなされなければなrない
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委託返品制
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・返品制は豊富な品揃えと店頭陳列制を可能とし、ユーザーは直接見聞でき、文化普及に効果をもつが、買取制はリスクの書店転嫁により中小書店の営業困難を生み、製販3層で集中・寡占化が進む
・再販制廃止は、大口需要の場合、出版・書店の直接取引が進み、採算性の低い地域への少部数配本が省略される。書店のチェーン化が進行し、小規模書店の廃業が進み、地方での選択購入機会が減少する
・再販制廃止は、同一地域・同一輸送システムが崩壊し、発売日に格差を発生させる |
・実態的に消費者のニーズに応えていない
・入手時間による大型店購入依存を生む
・マージン率一定のため売れ筋商品依存となる
・早期返品による購入機会減少 ・断裁処分増加による環境負荷増大環境負荷増大
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消費者利益論
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・再販制によって、書籍発行や書店経営が安定し、消費者選択肢が保障される
・再販制によって、価格競争ではなく品質競争へ競争を転化させる
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・書店規模の地域間格差や、出版情報、陳列期間、注文リードタイムに問題があり、消費者選択肢に問題がある
・再販制は、闇カルテルや非価格競争のコストを増大させ、価格上昇や超過利潤を生み、・生協や共済組合員と一般顧客の間に価格の不公正が生じる |
中小企業政策
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・再販制により、中小零細出版社は、取次との再販契約により価格競争から逃れ、経営の安定と多様なアイテムを供給できる
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・再販制により、取引関係が固定化し、既得権益を持つ先発と後発の格差が拡大し、新規参入が阻止される
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最初に出版物が持っている商品特性に関する古典的な定義*1として、@創作物であること(オリジナリテイー)、A多様な価値評価を受ける、B影響力測定が不明確、C定量性よりも質が問われること、D文化性と商品性を併せ持つこと、Eメデイアとしての特性を持つこと、F多品種少量生産、G反復購入が希少であること、H企画力が優先すること−等があるが、この定義は「新聞」と対比された古典的な定義であり、現在の出版流通の主流となっている雑誌・広告媒体・マルチメデイア等の特質は、範疇に含まれていない。このような定義の対極にあるのが、出版の社会的機能を、「文化的側面を一切捨象」した印刷媒体による情報伝達に限定した消費物とする商品論的規定であり*2、この規定では、現代の出版現象の変容を以下のように説明する(表49参照)。
【表49 出版開発の進展と読者空間の変貌】(出所:筆者作成)
こうして再販制存続・廃止論の基本には、出版財を主として経済財とみる立場から廃止論が、公共財とみる立場からは存続論が主張される。その幾つかの論点を整理し、検討する。
1)文化配慮説、文化維持・普及説(規模の経済)
文化配慮説は、出版財を文化財または公共財とみなし、経済財の市場メカニズムに対する規制によって、出版文化を保護する文化政策の一環として、再販制を位置づける。この発想は、大陸経験論の伝統を持つフランス・ドイツに強固であり、例えば、「多様な書籍の出版により国民に読書の機会を抱負かつ平等に提供し、それによって文化水準の維持向上を図る」(ドイツ競争制限禁止法 目的)とか「創作活動における多様性を維持する」(フランス書籍定価法 目的)などと規定されている。システムとしては、売れ筋本の利益によって売れ行きの遅い本の仕入れを促進する「内部補助システム」(ドイツでは最大30%の品揃えを期待されている)の理念が、文化配慮説である。書籍を市場メカニズムに任せれば、規模の経済性が働いて売れ筋が制覇するから、「内部補助システム」によって、少部数の学術的著作物の出版を保障することが必要となる。これは、売れ筋中心に陳列する大手量販書店の商業主義的傾向に対抗して、中小零細書店を保護する中小企業政策の側面をも併せ持っている。
このうような文化配慮説の論理として、以下に述べるような諸説がある。
(1)公共財(社会的欲求財)説(W.ボーモル・A.ピーコック・池上淳)
完全競争市場において、価格決定が効用とコストによってなされ、消費によって効用が消失する一般財(私財)と異なり、出版財は、非消費的で排除性・競合性に乏しく、効用の外部性が非常に大きい「公共財」という側面が大きい。公共財は、完全競争市場では必ず過小供給となり、資源の合理的配分を阻害されるから、私的な供給に全てを委ねるのではなく、公共セクターが設定するルールに載せて、供給のインセンテイブを高めるy必要がある。この具体的形態としての出版物再販制は、出版産業における供給者の参入と商品供給の最適化を実現する。
公共財(社会的欲求財)説に対して、廃止論は次のように主張する。
著作物における共同消費の性格は、自然独占(電力・エネルギー)や国防にみられる公的供給を正当化するフリーライダーを発生させるものではなく、市場で支払い意志を表明する充分な機会を保障されている。また著作物における規模の経済性は、市場介入を正当化するほどではない。
地域格差は、通常商品についても全国同一価格が設定されているから、著作物のみに価格地域差が極大化することはない。再販制下においても、実態として地方における出版書籍市場の展開は困難であり、再販制によって地域格差を極小化していない。売れない著作物は、価格拘束しても売れない。従って再販制は、価格引き下げとマーケッテイングによって市場を活性化する本来的なインセンテイブを阻害し、また「内部補助システム」も、非再販の一般商品では、売れ筋商品による超過利潤の実現の機能を果たしているに過ぎない。製品差別化の効果が大きい著作物の場合は、再販制廃止後の超過利潤効果が働く。従って、学術的価値が高く赤字でも提供する必要がある著作物は、再販制ではなく公的補助の形態をとるべきである。
(2)所得再分配機能説(W.ボーモン・池上淳)
再販制は、公共財である出版物を、所得格差や地域格差に左右されないで公平に分配し、文化と知識の継承・発展を実現する効果をもち、出版産業の取引費用が軽減され、且つ消費者の学習コスト負担を極小化することによって、消費者の享受能力を上昇させる一種の社会権的な機能を持つ。
(3)人的生産要素依存説(W.ボーモン)
人的生産要素の供給力が決定的な意味を持っている出版生産は、生産性と技術革新の効率原理によって、製品の差別化は実現されない。完全競争市場においては、キャリア・リスクが拡大して他産業への移動のインセンテイブが働き、外部性の大きいサービスは供給できない。再販制による独占的市場価格の設定は、企業間競争から人的生産要素を保護し、資本の参入にインセンテイブを高めることができる。
(4)文化経済学(民族文化保護)説(池上淳)
出版産業においては、1次的な創造的市場は不完全市場として規制し、2次的な情報メデイアは完全競争市場として発展させることによって、国際化する2次市場によって誘発される1次市場の創造活動を実現することができる。例えば、新聞メデイアにおける日本型宅配制度は、実質的に1次市場の創造活動の誘発効果をもっている。
(5)所有権不確定説
出版における著作所有権の帰属が不明確であれば、著作者の創造活動のリスクが大きくなり、生産インセンテイブが下降する。再販制による安定的供給と著作権制度により、正統な著作権料の供給が可能となる*1。廃止論は、所有権不確定説に対して、著作権と再販制は本来無関係であり、再販廃止国では出荷価格に基づいた正統な著作権料支払いがなされており、著作権料が再販制の「定価」によって支払わねばならない根拠はないと主張する。
これらの(1)〜(5)の諸説は、出版物の商品特性を強調する点で共通している。1996年の公取委規制緩和小委員会の「論点公開」を批判した日本書籍出版協会と日本雑誌協会の声明では、以下のように商品特性論と委託販売制に関する擁護論を展開している。
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受の権利)
A出版物は内容を吸収することが目的である(物体を形態的に使用するのではなく、知識を吸収する超時代
的な商品である)
B非代替性(形態的に同一目的であっても、複数種類購入することがない)
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| | | [再販制・委託販売制] | | @委託販売制は、書店の品揃えと陳列の普遍性を保障し、読者の選択機会を実現し、少量生産を保護する
A読者の最寄り買いを保障する
B展示効果と読者の商品選択を極大化する
C再販制下でも旺盛な流通販売形態が展開している
D街頭中小書店は、再販制下で児童や弱者へのアクセスポイントであり、地域文化の担い手となっている
E再販制廃止による価格競争は、少品種多量販売を優先し、品揃え戦略は後退する
F再販制廃止は、マージン率の低い専門書を駆逐する
G再販制下で、書籍定価は消費者物価指数上昇率を下回る出版社の価格設定が行われている
H価格競争のによる値引きメリットを享受できるのは、大都市消費者のみである(吉本隆明『学校・宗教・家族
の病理』、希望小売価格1,400円は、1,400円から980円の範囲で販売された)
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これに対し、再販制廃止派は次のように主張する。再販廃止によって淘汰されるのは中小書店ではなく、非効率経営の書店であり、「淘汰される敗者を需給調整によって救済する」既成の伝統的供給システムは、逆に非効率を惹起してきた。再販制によって、むしろ書店の営業努力が減殺され、商品の画一化をもたらしている。また価格競争は、反復消費される量販品や安価な供給源による輸入品・PBの場合に誘発され、新刊本の価格競争は超売れ筋本・雑誌に限定される。
2)経済システム維持・商慣行追認・弊害希薄説
(1)経済システム維持説
再販制の経済誘発効果を比較衡量して、その効果の大きい方を採用すべきであり、再販制によって維持されてきた出版システムと、再販廃止によって誘発されるシステム変容の効果を比較すれば、明らかに維持の効果が高いとする。比較衡量説による再販制の評価は、実際に英国制限的取引慣行裁判所判決(1997年)で行使され、「公衆の利益にとって、再販制度による内部補助システムと、自由取引制度において、出版点数・書籍価格・物流サービス・書店サービスの点で何れが大きいかを判断」した結果、再販制廃止論が採用された。
廃止論は、再販制によって流通は寡占化し、出版社に対する寡占的市場支配力が行使され、出版社の意志に反する再販契約締結・新規出版社に対する正統な事由なき取引拒絶・非再販本の取扱拒否・出版社の出版活動(価格・内容)への介入がみられ、正味の書店規模による差別(パターン配本・委託本の一方的配本・委託期間内書籍の月末決済)などのシステム矛盾が誘発されているとする。
(2)商慣行追認・弊害希薄説
出版物再販制は、1919年(大正8年)以来出版業界が実施してきた定価販売を、1953年(昭和28年)の独占禁止法改正で適用除外再販を認めて、実態を法的に追認したに過ぎない。自動車・家電・化粧品・医薬品業界のメーカー寡占、流通系列化、価格の下方硬直性等の再販制による弊害は、出版業では見られず、逆にメーカー多様化、ブランド間競争が活発となり、価格設定はむしろ低い。
3)展示効果説
再販制による委託販売と返品制によって、書店の販売リスクが減少し、売れ筋本以外の店頭陳列を可能とする展示効果が誘発される。展示効果説に対して廃止論は、再販制廃止により、大型店の多品種・多在庫戦略に対して、中小書店の専門化による差別化戦略が誘発される。例えばフランスでは、再販廃止後中小書店の専門化戦略による展示効果によって急成長が見られたが、再販制再導入後全ての書店は画一化して展示効果を喪失した。また、音楽用CDはほとんど展示効果がない(「購入CD決定後に店に行く」84%ー公正取引委員会調査から)。
第4節 再販制のシステム間闘争と選択モデル
1)再販制システムの欧米モデル比較
英国制限的取引慣行裁判所の定価本協定(NBA)に対する公共の利益違反判決による書籍再販制の終焉の背景には、印刷技術革新による出版リスク低減・書店の在庫リスクを低減させた書籍取次業者の成長・返品付き売買の拡大・非伝統的書店の発展(ブッククラブ・バーゲンブック専門店)・書店チェーン化などの書籍市場「状況の実質的変化」(判決)が生じ、資本の参入・退出が容易となり、再販制廃止によっても内部補助システムの機能可能性が保障されたからである。日本においても英国と同様の取引構造の変容が進行している現状から、再販制度の再検討が俎上に上っているが、基本的には書籍出版産業における、情報ネットワークによる垂直的産業構造から水平的ネットワーク産業構造への再編成をめぐるシステム間闘争闘争である。このシステム間闘争の帰結は、下記に挙げる「市場型」・「改良型」・「迂回型」の諸モデルの選択又は複合という形態を採ることが予測される。
[改良型] 書籍再販制の弾力的運用(ドイツ型)
ドイツにおいては先記したように、出版社による価格改定・価格割引制度・実質的時限再販・部分再犯・値引き販売・取次の自由選択などの再販制の弾力的運用が広範に導入されている。
日本における再販制の弾力的運用は、(1)出版社と書店間の再販契約・直接取引の導入などの多様化推進、(2)出版社の価格改定による販促活動の導入、(3)出版社の時限再販・非再販の本格的導入、(4)書店の割引・値引販売制の導入などが、現行再販制度の「競争秩序のもとでの書籍再販制度」規定によって可能である。こうした新再販制度(昭和55年)の新たな規定である部分・時限・任意・単独の再販原則を実質的に機能させることによって、内部補助のメカニズムを作動させることができる。
公正取引委員会の『論点提示』では、@発行日から一定期間経過したものの適用除外、A学術・専門書のみ適用除外、B雑誌のみ再販適用、C定価から一定値幅の自由価格制による再販制継続、D出版社在庫本の特定期間特化販売承認などの弾力的運用の選択肢を提示している。
[迂回型@] 非営利組織(NPO)形態と営利形態の共存
出版産業を、公共セクターの支援対象とする非営利組織形態と、営利形態との複合的な業態として再編することによって、価格引下げのインセンテイブを高める。前者には、学術的文化価値の高い著作物の出版流通に対して、直接的な公的補助をおこなう形態である。
[迂回型A] 事業法制定による書籍再販制継続
広範な国民の再販制度の論議を保障するために、現行独禁法から独立させた特別事業法(出版業法・新聞業法)を制定し、再販制に対する国民的合意を制度的に実現する。
[市場型] 書籍自由取引販売制度への転換(英米型)
出版産業を再販制度から解放し、市場感応型のフレクシブルな生産・流通チャネルを創出する。書籍出版産業の経営戦略として、差別化・流通効率化・書店多様化によって、参入・退出が自由な競争市場として創造的で活力あるビジネスとして活性化し、消費者の利益極大化が実現する。
2)再販制をめぐるシステム間闘争のネットワークエ・コノミックス分析
以上のような出版産業の再販制度をめぐるシステム間闘争を、産業組織の変革過程におけるネットワーク・エコノミックス論として考察する。伝統的産業組織論(Old Industrial Theory)では、市場構造(S)→市場行動(C)→市場成果(P)によって、集中市場での超過利潤を説明する潮流と、市場淘汰→適者生存による自由放任を主張する潮流が対抗してきたが*1、日本では前者のSCPアプローチによる書籍市場への政府介入(再販制)を選択してきた。この場合、政府介入は、「市場の失敗」(公共財・技術的外部性・自然独占・情報の不完全性)の場合にのみ許されとされ、書籍再販制の根拠もここにあった。ところが、1980年代に登場した新しい産業組織論としての「コンテスタビリテイーContestability理論」は、参入退出が自由なコンテスタブル市場では、潜在的参入企業のヒット・エンド・ラン戦略により、平均費用と等しい価格を設定せざるを得ず、超過利潤の獲得はできないとして、政府規制を廃止し市場の自動調整機能に委ねるべきだとする。この場合既存産業は、熾烈な価格競争による「脅迫の信憑性」による「戦略的参入阻止価格」を設定し、新規参入を防止しようとする。ここから消費者利益の最大化が誘発され、書籍再販制廃止の有力な論拠となった。1990年代に入ると、新しい産業組織論の発展形態であるネットワーク産業組織論によるネットワーク外部性理論とボトルネック独占理論が登場する。一般的なネットワークは、基本的には、スター型ネットワークとローカルロンデイング型ネットワークの2形態からなるが(図67参照)、電話通信を例にとれば、加入者数と通信数は、逓増的な相関関係が成立するネットワーク外部性が働く。
【図67 ネットワークの2形態】 加入者数 1 2 3 4 5・・・・・n n+1
| 通信数 0 2 6 12 20・・・・・n(n-1) n(n+1)
ネットワーク外部性は、技術的外部性なので私的便益と社会的便益が乖離する「市場の失敗」が発生する。これを書籍出版産業のネットワークでみると、スイッチSにあたる取次業の寡占が進行するに比例して、増大する通信数は2大取次であるトーハン・日販の私的便益を増大させ、業界全体の社会的便益は低下する。ネットワーク外部性は、或る1時点間の消費者相互を結ぶ「横断的ネットワーク外部性」と或る1消費者の異時転換を結ぶ「縦断的ネットワーク」があるが、前者の場合分権的市場メカニズムのもとでのシステム互換性の水準は低く、標準化が進まない。後者の場合、互換性が存在しなければ、企業の「略奪的価格」によるシステム間競争が誘発され、消費者は低価格便益を享受できる。この場合は、企業側が標準化を追求する。 |
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ネットワーク外部性を供給側からみれば、或る企業がローカルネットワークBjを独占的に所有する産業構造は(図68参照)、規模と範囲の経済性を利用するから費用節約的であるが、他の企業は自分のサービスを提供するときに必ずボトルネック企業を媒介しなければならず、競争効果が減退する。
3)再販制廃止と取次・出版社・書店の市場行動予測
日本の場合、英米型の再販制撤廃によって、誘発される寡占取次の市場行動は、どのように予測されるであろうか。第1に、再販制廃止による委託比率の下降と買取比率の上昇によって、取次の主要な機能が変容すると考えられる。特に、仕入機能・適性配本能力・注文処理能力が問われることとなる。第2に、取次経営の効率化が重視され、従来の伝統的な取引刊行である正味体系・輸送費・配本方法などが、再編成されると予測される。第3に、従来の取り次採り主導型見計らい配本・押し込み配本・データ配本が再検討され、数量割引の増大・配本最適化と効率化及び返品制の制限が進み、返品枠の設定や注文品と返品制限が進展すると予測される。第4に、経営戦略が、市場占拠率(売上高)から収益率重視戦略へと転換し、書店の選別化がすすむ。第5に、取次の優越的地位の濫用である商品買い叩き・出荷調整・取引停止・新規参入阻止・ヤミ再販が多発する可能性がある。第6に、大手取次による出版社の買収や、書店・出版社の直営化が進展し、一方では大手書店・大手出版社の製販直結と直販・訪販の再編成とともに、遠隔地流通コストを精確に反映したコスト分担が進む。
次に出版社の再販制廃止によって誘発される市場行動は、第1は、既得権益を持つ出版社の既得権が縮小し、特に出版社の無体財産(信用・暖簾)の権益低下が進む。第2は、製品の価格競争と品質競争の両極化が誘発され、品質競争に勝利した出版社製品の高価格化(例 医学書など)が進む。第3に、完全買切制の導入によって、大型書店の数量割引と正味再編要求が強まる。第4に、完全買切制によって、仕入部数の減少を見越した初版発行部数の抑制と高価格設定が誘発される。第5に、完全買切制によって、店頭の陳列機会が低下し、ユーザーの購買機会が減少する。第6に、売れ筋・回転率主義によって軽薄短小出版が増大し、専門書及び良書が駆逐される。第7に、中小零細資本の製品差別化戦略に特化した新規参入出版社が出現する。
再販制廃止により誘発される書店の市場行動は、第1は、従来の書店の固定マージン率が、変動マージン率に移行し、さらに支払準備率による入金報償制(リベート制)・スリップ報償・重点商品販売報償制が一層強まり、特に変動マージン率によって、個別の書店マージン率の格差が生じ、書店の階層分化が強まる。第2に、大規模・チェーン書店の「規模の利益」による大量買い付けと数量割引によって、さらに書店の階層分化が誘発される。第3に、再販廃止によって、商品所有権が書店側に移行するなかで、返品条件付買切制から完全買切制の取引形態に再編され、責任販売制による売れ残りリスクを警戒する書店は、仕入部数・店頭陳列期間を調整する。書店の仕入担当者の商品知識・仕入責任が問われるようになり、書店のマネイジメント能力が問われる。価格決定権が書店に移行する結果、書店間の価格競争が激化し、価格決定の判断力が問われる。初期の価格競争は、重点商品限定値引き・クーポン割引制・リメインダー(特価本)のデイスカウント形態から始まると推定される。第4に、情報化によるQR供給が問われ、情報投資による書店の階層分化が誘発される。第5に中小零細書店の帰趨は、商圏立地・専門化・個性化・情報武装化・教科書販売などの差別化戦略によって規定される。
4)再販制問題への基本的視角
再販売価格維持制度が成立する一般的な要件として、第1に生産者が市場において優越的地位を持っていること、第2に販売業者が受け入れに積極的であること、第3に流通チャネルが整備され、違反者への制裁措置が容易であること等がある。日本型出版産業においては、出版社約6000社に対し、取次は2大寡占であり、価格決定権は形式的には生産者にあるが、取次寡占によって市場での優越的地位は生産者が把握していない。流通段階での価格競争以前に生産者段階での実質的な価格競争がある。現状では定価1000円の70%掛で出荷している書籍が、非販売・買切で50%掛となると、出版社の希望小売価格は1400円に上昇する。流通マージンが取次15%・書店35%とすると、書店経営によって現行マージン15%を維持したとしても、大都市実勢価格は1190円(15%オフ)となり、バーゲンでも現行再販制より高くなる。地方ユーザーは、1300〜1400円で購入することになる。また、違反者への制裁措置手段としての出荷停止は、書籍流通点数が約50万点で1点当たりの市場占拠率は無視され、出荷停止が制裁措置の意味を持たない。再販制廃止による取次・出版社・書店の市場行動を想定すると、再販制廃止によって、2大取次企業との取引系列化がより進展し、他の取次との自由取引を許さないような状況が出現すると予測され、またボトルネック企業がローカルネットワークの一部に支配力を持つ場合は、支配的ボトルネック企業である大手取次にとって、他の出版社はライバルであると同時に得意先でもあるあるから、「公正取引条件」のための「イコール・フィッテイング」が阻害される。このようなボトルネック独占による矛盾は、政府による公正な「アクセス・チャージ」(出版産業にあっては委託販売制)と、再販制によって解決してきたが、再販制廃止による完全競争市場化によって誘発される[低所得・高費用地域]と[高所得・低費用地域]の格差を是正するユニバーサル・サービス*1が浮上する。ユニバーサル・サービスの理念的な次元は、領域的拡張(電気通信)→人口的拡張(年齢)→階層的拡張(所得・地理)へと展開してきたが、再販制廃止後の出版サービスも同様な展開をたどると予測される。従って、再販制存続・廃止論の根拠は、消費者利益極大化では共通しているが、消費者利益が経済の論理と文化の論理の異なる次元で主張され、経済の論理派は流通における価格拘束を問題とし、文化の論理派は著作物文化財性による特殊商品説を重視する。従って問題はの解決は、両者を比較衡量したうえで、消費者自身が何れを選択するかにある。
終章 結語
出版産業における情報通信革命の進展は、出版の多様化や流通の効率化、再販制を中心とする出版産業の基本的な制度的諸条件を変革するドラステイックな変容を誘発していることが明らかとなった。問題の焦点は、情報(経験知・暗黙知)の内容の問題と無関係に、インフォメーション・テクノロジーを自己目的しているかのような変革ではなく、情報内容の生産過程の情報化が問われてくると考えられる(傍点筆者)。情報(知)の伝達過程の変革と、流通過程の情報ネットワーク化が先行的に進むことによって、出版産業のガリバー型独占が一層強化され、知的且つ文化的な公共財の生産とその最適配分の乖離が誘発される。この象徴的な事例として、出版産業のネットワーク外部性の典型である再販制をめぐるシステム間闘争が問われている。
言い換えれば、再販制問題は、情報ネットワークの技術革新が誘発した、伝統的な産業構造の維持と新たな産業構造の創出をめぐる深刻なシステム間闘争の発現であり、この解は出版という個別市場の問題として限定的に分析することはできない。なぜなら出版市場は、国民諸階層の文化生産のあり方を規定するすぐれて総合政策科学的な問題を持っているからである。こうして、再販制のパラダイムは、総合政策科学における社会的制御の有効性と限界の問題として浮上している。
(2000年12月10日脱稿)
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[135]公正取引委員会事務総局『再販問題検討のための政府規制等と競争政策に関する研究会・資料編第2部』(1998年) [136]鈴木満・新島純一・山岸壯吾「書籍の再販制度と書籍の店頭陳列に関する調査」〔『RIRI流通産業』1997年12月号) [137]村上信明「日本との比較で見る西欧の出版流通」(『経済セミナー』1997年10月号) [138]木下 修「書籍流通の改善問題」(『新文化』1999年5月24日付け特集) [139]金子晃・村上信明・高橋岩和・佐藤潤『英国書籍再販崩壊の記録』(文化通信社 1998年) [140]津野梅太郎『「オンライン書店」の誘惑』(昌文社 1998年) [141]星野渉・河上進「オンライン書店の衝撃」(『季刊 本とコンピュータ』1998年夏号) [142]公正取引委員会「著作物再販制度の取り扱いについて」(1998年) [143]政府規制等と競争政策に関する研究会「再販適用除外が認められる著作物の取扱いについて(中間報告」(1995年) [144]小池唯夫「日本新聞協会会長談話」(『日本経済新聞』1995年12月8日) [145]小池唯夫・渡邊恒雄「著作物出版に関する現況報告ならびに再販維持のための紙面活動についてのお願いの件」(1995 年11月27日) [146]古尾陽子「オンライン書店の日米比較」(平成11年度慶應義塾大学文学部図書館・情報学科卒業論文) [147]日本書籍出版協会・日本雑誌協会「「論点公開」に対する意見 出版物再販制度の果たす役割」(1996年9月30日) [148]経済企画庁物価局「再販制度対象商品に関する物価モニターに対する意識調査結果」(平成8年6月18日) [149]出版流通対策協議会「金子論文に反論する」(1996年2月21日) [150]松本 正「日本のオンライン書店事情」(1999年12月3日) [151]公正取引委員会経済取引部取引企画課「「政府規制等と競争政策に関する研究会」の論点概要(書籍・雑誌について)」 (1997年2月25日) [152]Business Communications Copany、Inc『Electronic Publishing in the Internet Era』(1999年6月) [153]松浦康彦「著作物再販問題、2001年の展望 デジタル化時代にどう対応すべきか」(『朝日総研リポート』第134号 199 8年10月) [154]出版流通対策協議会「行政改革委員会規制緩和小委員会、規制緩和に関する「論点公開」の「規制緩和意見」に反論す る」(1996年10月31日) [155]出版流通対策協議会「「再販制適用除外が認められる著作物の取扱いについて」(中間報告)を批判する」(1995年10月 5日) [156]木下 修「市場経済と出版流通ー日本の出版流通の現状と問題」(『出版研究』第26号 1995年) [157]中川政直「出版物の流通と再販制度 米・英・スウエーデンの実態」(『公正取引』342号 1979年) [157]水谷百合子「シリーズ 出版物の再販制度を考える(4)諸外国における著作物の再販制度ー英米独仏を中心に」(『びぶろ す』47巻4号) [158]能勢 仁「書店業の「いま」を読む」(実務教育出版 1994年) [159]出版文化産業振興事業団「出版文化産業ビジョン21 21世紀に向けて産業をどう変えるか」(出版文化産業事業団 199 5年) [160]John Feather『THE INFORMATION SOCIETY a Study of Continuity and Change』(高山正也・古賀節子訳『情報 社会をひらく 歴史・経済・社会』勁草書房 1997年) [161]大平号声・栗山規矩『情報経済論入門』(福村出版 1995年)
荒木國臣
(あらきくにおみ)
【略歴】
1943年 岡山県生まれ
1967年 東京教育大学文学部哲学科卒業
1996年 名古屋市立大学経済学部大学院前期課程卒業(日本経済・経営) 現 在 東海デジタルアーカイブ研究センター主任研究員
東海地域経済研究センター研究員
名古屋市立大学経済学部研究員
【主な著作】
『人格の危機と地域認識の形成』(篠田出版 1985年)
『有松町町並み保存にみる歴史的環境保存運動の形成と展開』(赤磐出版 1987年)
『日本絞り染織産業の研究』(同時代社 1997年)
『発見・探求 地域経済』(東海地域経済研究センター 1998年)
『東アジア繊維経済圏ネットワークの論理解析』(日本流通学会『流通』12号 1998年)
『クラフト産業におけるデジタル・アーカイブの現状と課題』(日本流通学会『流通』13号 1999年)
『デジタル・アーカイブのマネイジメント分析』(東海デジタルアーカイブ研究センター 1999年)
『経営情報ネントワーク戦略をめぐるシステム間闘争』(東海デジタルアーカイブ研究センター 2000年)
デジタル情報ネットワーク戦略と産業構造の変容
ー出版産業における再販売価格維持制度をめぐる競争と協調
2000年12月10日 初版第1刷 発行
著者 荒木 國臣
発行者 東海デジタルアーカイブ研究センター
*1 1994年に「リブロ」が27出版社参加・337点出展で開始したのが、出版社主導によるバーゲンの開始であり、これを契機に1995年以降、 「アシーネ」がダイエー店舗10店に非再販本コーナーを設置し、 「ブックオフ」が新大久保に非再販本取り扱い書店を開店、 「トーハン」・「日販」が非再販本フェアーを開始した。その他のバーゲンブックフェアーは、1995年に始まった東京国際ブックフェアー・情報流通研究会(IDI)等がある。
*1『現代用語の基礎知識』(2000年度版)の「文化・芸術」・「現代文学」の項目に初めて掲載された語句は、「古書ネット通販」であり、そこでは紫式部が次のように紹介されている。「インターネットを介しての古書通信販売。1995(平成7年)年、インターネット情報サービス会社・紫式部によって開始された。開設当初紫式部に加入した古書店は24店、2000年(平成12年)現在では150店を越える。消費者が古書検索サイト「スーパー源氏」(インターネット古書店案内)で検索できる古書点数は100万。これまで古書店の客は男性中心だったが、ネット通販ではOLや主婦など女性が4割を占め、高齢者も増えている。海外からアクセスもあるという。潜在需要者のニーズにあった新しい販売方法は、いまや古書ネット販売市場を形成する勢いだ」。
*1 小野耕三「流通情報システム化25年の歩み」(『流通とシステム』No.92 p3〜11 1997年)参照
*1 或る商品のコードが流通業のどこでも唯一の識別コードであれば、その商品の流通情報をどこでも最も容易に収集・分析することが出来る。この共通商品コードとしてJANが制定され、またEAN加盟により国際的な互換性を有することとなった
*1 書店は客注本に限って、一般短冊伝票(白色)とは別の短冊伝票(クリーム色)に記入して取次に発注すると、この伝票は一般補充伝票より優先させて配本するシステムであるが、この伝票の高速性から書店は一般補充注文もこの伝票を使用するようになり、実質的に区別が付かなくなって有名無実となった
*2 バーコードは最初米国でレジ係店員のミスタッチと不正防止を目的に開発され、日本では通産省の外郭団体である流通システム開発センターとセブンイレブン・ジャパンとの共同研究によって、1982年に導入された
*1 VANは、Value Added Reseller付加価値通信網で、NTTなどの通信回線でデジタル通信機能などを付加して販売するもので、ネットには高効率伝送機能を付けている
*2 (財)流通システム開発センターが開発した地域流通VANの共同利用型EOSのシステム標準化モデルで、標準化の内容は、@EOSと商品マスター運用システム、A機能分担の標準化、B3層の基本機能のソフトの標準パッケージである
*1 物流では、集合包装単位で入出庫・仕分け・検品作業が行われるから、箱の表面に内容物のJANコードと、入数・包装形式などの物流識別情報をソースマーキングして物流活動効率化を実現する物流商品コード用バーコードシンボル(標準物流シンボルITF)が,昭和62年にJIS企画化された
*2 すでに出版業界では、競争優位の営業戦略として、トーハン「TONETS」(1984年)・日販「NOCS」(1984年)・大阪屋「OPAS」(1985年)・栗田「KINS」(1985年)等の個別取次社の独自VANが稼働し、取引書店とのオンライン化が進められ、1990年には「書店による書店のためのSA(Store Automation)」を掲げて日書連の「BIRD-NET」が起動した
*1 出版流通対策協議会(中小出版社82社)は、「OCR用書体による機械化で機能しており、バーコード転換に見合う投資効率は期待できない」と主張し、日本図書設計家協会は、本の美観を損なう観点から単行本への導入に反対し、新聞社は「販売堂個の管理とCVSによる注文や販売部数の把握」の観点から導入を拒否している
*2 『MEN'S NON-NO』という男性向け雑誌の購入者の40%が実は女性であり、『MORE』という女性雑誌のみがなぜ夕方に売れるか(グラビア主体で重く帰途に購入と分析)、返本率が低い『週刊少年ジャンプ』がある時に返本率が上昇したのは、「29」キイー(19〜29歳)の売れ行きが落ちたことにあり、それはある連載漫画が終了したことにあると分析するなど、読者像のリアルな実態を把握できる
*1 各社出版目録一括配布→所定申込用紙でFAX一括発注→配送週2回→一括購入→代金一括銀行振り込みというシステム。現在、岩手県田野畑村教育委員会・茨城県波崎町役場・京都府網野町視力障害者福祉センター・沖縄県具志川市立図書館など25機関が利用している。宅急便業者の利益は、書籍の販売マージンのみである。
*2 大分県耶馬溪町は観光地として有名であるが、過疎化の進行で人口約6000人、65歳以上人口25%の高齢化地域となり、小学校7校(2分校)・中学校2校・高校1校があるが、書店がある中津市まで20kmある。わかば書店は町産業経済課所管であり、地域経済振興の一環として書店をとらえている
*1 ISOによるOSI(Open Systems Interconnection)製品がこれを実現しつつある
*1 米国において1980年代以降街区に進出した全国的巨大チェーン店であるウオルマート・ターゲット・トイザラス・ホームデボ・バーンズ&ノーブルなどの呼称
*2 日本のオンライン書店は、アマゾンコムのような大量仕入れによる値引き販売は出来ない
*1 日本書籍出版協会『日本書籍総目録』(1999年版)では、日本で現在入手可能な書籍は、約56万点でありこの目録はインターネット上の「Books」という書誌データベースサービスで公開されているが、管理が不十分で在庫・絶版状況は必ずしも正確ではない
*1 流通市場の垂直統合には、@新たな垂直的な組織創設型(メーカーが独自の販売会社を設立する)、A垂直合併型(メーカーが流通業者を合併する)、B準統合型(垂直的制限取引といわれる企業間の契約関係)
*1 発注に対応して同数を印刷・出版するオンデマンド出版の将来予測をここでは排除している
*1 「著作物」とは、書籍・雑誌・新聞・レコード盤・音楽用テープ・音楽用CDを指し、ビデオ・レーザーデイスク・プログラム・データベース等は含まれない
*2 化粧品・大衆薬・合成洗剤・粉ミルクなどの摘発から、流通分野における競争制限的行為への独禁法適用改訂がなされ(1982年)、1995年の「再販適用除外の著作物の範囲の限定・明確化を図る」政府確認に至った
*1 吉本隆明『学校・宗教・家族の病理』(希望小売価格1400円)は、書店段階で最大30%の値引きがみられたが、版元出し正味は50%程度であり、20%の引き下げとなっている
*2 専門書では標準25%であり、逆に雑誌販売マージンは低く、標準10%(独)である
*1 独は買切制で平均12%で配送運賃は書店負担であり、仏は標準8〜10%で運賃は書店負担
*2 英国出版業界紙「ブック・セラー」(1981年8月15日付け)は、「モノリー条例は書店の役割を弱体化させてしまい、代わって割り引き店の売上高を伸ばす結果をもたらした。書店経営の上で不可欠とも云うべきベストセラーは、書店ではなく割り引き店で大量販売されるようになってしまい、書店では市場が限られた専門的な内容の書籍しか売れなくなりつつあり、しかもその在庫期間はわずか6ヶ月にどまり程度までに短縮されただけでなく、出版社側がこの種の売れ足の鈍い書籍の出版を逡巡する傾向が著しくなりつつある」という文化庁長官ロドルフ・ペヤのル・モンド紙の記事を紹介している
*1 NBA正価本協定は、@加盟事業者の定価販売、A最終仕入日から12ヶ月経過した在庫本の返本を拒否され場合は、定価を下回る価格で販売できる(時限再販)、B出版協会理事会承認の図書館・大量購入者には値引き販売ができるなどの内容であったが、1990年代以降大手出版社が相次いでNBAを脱退し、再販維持は事実上困難となった。
*2 制限的取引慣行法改正は、EC競争法の基本規則の1つであるローマ条約第85条(競争制限行為の禁止)のルテル原則禁止によって、違反業者に対する35万ポンドまたは年間総売上の10%何れかの高い方の金額を限度とする罰金を科す権限を公正取引庁長官に与え、独自の判断で強力な排除命令が出せるようにした
*1 ARL会員図書館のLexis-nexiービス料金は、従来の3.5倍になり、年間購読価格は従来の2.52万ドルが8.7万ドルに上昇し、Journal of Supercritikal Fluidsの年間購読料は275ドルが657ドルに上昇した(1998年)
*2 競合関係にあるブッククラブと書店は書籍プロモーションで協力し、オンライン書店と街頭書店、電子ブックと書籍、出版界とIT業界の競合と協力が、情報とノウハウの多彩な拡大を展開しようとしている
*1 清水英夫『出版業界』(教育社)P83参照
*2 箕輪成男『消費としての出版』(弓立社)
*1 著作物は、複製する権利を占有する著作者(複製権者)から「著作物又は図画として出版することを引き受ける者に対し出版権を設定することができる」(著作権法第79条)という規定にもとづき、出版権の許諾を受けた出版社によって発行されているものであり、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする」(著作権法第1条)著作権法によって保護を受けている特別な文化商品という点に根拠を置いている。しかし公取委は、「立法趣旨も違うので、独禁法の著作物と著作権法上の著作物は同じ物である必要はない」との立場をとっている
*1 前者が1930年代のチェンバリン・メイスンを経て、1950年代のベイン・ケイブスからケイセン・ターナー・シェラーに至るハーバード学派であり、後者がステイグラー・デムゼッツ・ブローゼン・デイレクター・ポズナーなどのシカゴ学派である
*1 1996年の米国電気通信法のユニバーサル・サービス規定は、@公正・妥当・支払可能な料金A全地域からのアクセス可能B過疎・高費用地域の同一サービスC平等・非差別的サービスD明確・予測可能・充分な基金制度E学校・医療機関・図書館へのサービスの6原則を規定している