地域経済・中小企業情報01 (〜2004年12月22日)
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◆まちづくり3法は見直されるか
大規模小売店舗法(大店法)を廃止して、商業調整からまちづくりに政策転換した3つの法体系が、1998年大規模小売店舗立地法(大店立地法 周辺住民の生活環境規制)と中心市街地活性化法(まちづくり機構による活性化計画作成)、都市計画法改訂。改訂後6年、制度施行4年を経て逆に街は疲弊の極に達した。3法活用による大型店出店調整と中心市街地活性化は失敗した。
@大型店郊外立地による中心市街地の衰退と生活環境悪化A中心市街地空洞化による公共投資効果減退B歴史的町並みと伝統・文化を体現する中心市街地の機能喪失とコミュニテイ破壊C地方都市の中心市街地の激しい衰弱D郊外型SCに買い物に行けない高齢者生活の破壊E地域内経済循環の遮断などなど問題が噴出してきた(以上中小企業4団体 日本商工会議所・全国商工会・全国中小企業中央会・全国商店街組合の4団体要望書 04年7月)。
◆05年度政府予算財務省原案
○中小企業 自助努力支援型重点配分=ベンチャー挑戦支援事業を増額し、地域産業集積中小企業等活性化補助金と小規模企業等活性化補助金を減額、担保・個人保証非依存型融資推進=中小企業向け貸付債権の証券化支援事業増額
○農林水産 家族経営零細農家支援から大規模経営支援集中=強い農業づくり交付金新設
○ODA 全体縮小=無償資金援助の途上国自治体・NGO(草の根・人間の安全保障)減額 イラク復興資金増額 円借款は減額したが事業規模は現状維持
○社会保障関係 国民年金・厚生年金保険料引き上げ、介護保険ホテルコスト徴収、生活保護老齢加算と母子加算廃止、基礎年金老年者控除廃止・公的年金等控除縮小
○防衛関係 海外派兵型予算への転換=ミサイル防衛・SM3発射試験費初めて計上、国際活動教育隊新設準備費、空中給油機、時期輸送機開発費
○公共事業 大規模事業重点型=大都市拠点空港、三大都市圏環状道路、スーパー中枢港湾、整備新幹線、諫早湾干拓、川辺川土地改良、まちづくり交付金増額
○大企業 科学技術創造立国研究開発新型=人間支援型ロボット実用化プロジェクト、次世代ロボット共通基盤開発プロジェクト、情報家電活用基盤整備事業、東アジア経済提携をまざす知的財産・認証制度・貿易管理制度の共通基盤構築
○雇用 民間重視若年者雇用重点型=働く意欲の涵養向上事業、ワンストップサービスセンター事業、新たな市場・就業機会の創出事業
総括的評価:生活関連から経済基盤重視、公的保障から民間重視、平和構築から軍事主導型へ
◆韓国労働市場の男女格差現況
○韓国中央雇用情報院03年度調査
政府運営再就職訓練参加失業者で何らかの資格取得者 男性23.1% 女性28.5%
その再就職率 男性44.1% 女性31.1%
○韓国女性省(女性専門職業訓練所運営)
女性就職率 39.5%
○全国民主労総
非正規労働者割合 男性46.7% 女性70,7%
賃金水準 男性正社員=100 女性正社員72 男性非正規社員52 女性非正規社員38
問題状況の推定:資格と求人のミスマッチ、女性雇用を忌避する採用慣行、政府部門の就業支援機関の予算不足、同一労働のい雇用形態の格差、男女間雇用暴動義務化制度の未確立、業務評価制度の男女平等原則の未確立
◆FAO(国連食糧農業機関)『2004年世界食糧不安の現状』
飢餓人口は00−02年で8億5200万人。うち開発途上国8億1500万人。90−982年基準でその後の5年間に2700万人の減少があったが、95年ー97年基準では1800万人増大。95年WTO農業協定の発効により、途上国作物が穀物・野菜の自給作物栽培からバナナ・ゴム・茶・海老などの輸出向け商品作物栽培へ特化する栽培形態の変化が原因であり、途上国食糧生産支援の減少傾向も原因となっている。
◆フリーターへの個人住民税所得割課税強化
05年度税制改正大綱に個人住民税のうち所得に応じて課税される所得割課税がフリーターに課せられる。個人住民税は給与収入から給与所得控除65万円・基礎控除33万円・社会保険料控除を差し引いた額が課税対象となる。課税所得が200万円未満は5%。独身者は年収108万8千円未満で課税所得がゼロとなり所得割は非課税である。
市町村は毎年1月に企業から提出される給与支払い報告書をもとに税額を算出し、6月から翌5月までを年間サイクルとして給与から天引きする。すると1月2日から就労し年内に離職する者は市町村に報告されない(地方税法では1月1日現在を報告義務としている)ので、多くのフリーターの所得が把握できない。大綱は、1年以内の短期就労者についても退職時の居住市町村に支払報告義務を課すとしている(30万円以下は提出義務なし)。
この政策の問題点は、若者が短期で複数の職場を渡り歩いた場合に、源泉徴収で税金を引かれたまま確定申告せず過払いになっている現状を放置して導入することだ。徴収と還付の非対称性の説明責任を果たさず、一方的な徴収義務を課すところに最大の問題がある。
◆法務省 入獄管理・難民認定法の外国人上陸許可基準省令改正
現行法令は興行目的外国人の入国は、@専門教育を2年以上受けた者A外国での活動実績がある者のいずれかを条件としているが、自国公共機関の証明書があればこの条件は免除している。実態は、興行目的フィリピン人入国者の大半がこの証明書の保持者で、興行ビザ入国外国人13万人のうち80%を占め、人身売買の被害を受ける歌手やダンサーが増加し、国連の警告を受けてつくられた人身取引対策行動計画に背反していた。この改訂によって外国公共機関発行の証明書による入国規定は削除される。
◆厚労省・労働政策審議会 時短促進法改訂意見(12月17日)
国際社会から日本の異常な長時間労働を批判された政府は、87年「新前川レポート」で年間総実労働時間1800時間を国際公約とした時短促進法を制定した(1992年制定 06年3月末時限)。しかし03年度の年間労働時間は1853時間で、短時間労働者を除いた一般労働者は2016時間(3年前比17時間増)と逆進し(ている(しかもサービス残業と裁量労働時間は統計には反映していない)。労働時間の二極化が進行し多様な働き方が普及したことを改正理由とするが、短縮はパート急増による平均時間短縮である。ILO調査では週50時間以上働く人の比率は、日本が28,1%と工業国最高値を示す。労働省調査による不払い残業を含む労働時間は、年2200時間であり時短の課題は依然として残っている。
審議会はこの実態を打開するのではなく逆に時短目標そのものを廃止するという提案をしている。労働時間の一律規制を廃止し、個別労使の自主的取り組みを促進し、@多様な働き方A時間ではなく成果によって評価される仕事の拡大B効率的な事業運営
に対応するとする。労働時間改善の指針を定め、@残業が多い労働者A育児・介護・自己啓発・地域活動を行う労働者B年次有給休暇取得促進について参考事項を盛り込み、実質的に労働時間短縮の強制措置は廃止する。ホワイトカラー・エグゼンプション制度(労働時間規制の適用除外)は、労働時間を個別に選択できる柔軟な働き方と称して無制限労働時間を導入する。
なぜいま時短促進の廃止なのか。@サービス残業の是正額がこの3年間で427億円に達し経営コストに負担が生じていることA成果主義評価制度にとって時短が障害物になっていることB家庭や地域・自己啓発などの必要時間が上昇していることがある。Bの問題は適切に対処する必要があるが、@・Aは経営の論理でしかない。むしろ成果主義賃金は、無制限の長時間労働と深夜・休日労働を激増させ、年休取得日数と率47,7%の8年連続低下、過去最高の労災申請件数、年間労働時間3100時間以上も働く正社員が6人に1人に上り過労死申請件数年間310件の高止まりを誘発し、精神障害も激増している。
数値目標をはるかに超えて働いている労働者にとっては、この改訂はより深刻な事態を誘発し、国際公約自体を蹂躙する奴隷労働を結果するだろう。労災が爆発的に増え、少子化は拡大していくだろう。一方厚労省の過重労働規制、不払い残業解消という背反し政府労働政策は迷走状態にある。
◆厚生労働省・毎月勤労統計特別調査結果(12月15日)
従業員1−4人規模の零細企業対象の7月時点調査。
毎月支給給与額(基本給・家族手当・残業代)19万2588円(従業員5人以上の事業所支給額の70% 前年比ー0.5%)
男性26万0356円 女性13万8302円(男性の半分)
年齢格差 20−24歳を100とすると35−39歳150.9
勤続年数格差 勤続ゼロ年を100とすると20−29年169.6
年間一時金 22万5303円(基本給の1,17ヶ月分 前年比ー6,7%) 男性30万8021円 女性15万6034円
労働時間 1ヶ月出勤日数21,4日(従業員5人以上事業所は20,2日) 1日実労働時間7,2時間(5人以上事業所7,7時間)
◆ベトナム労働傷兵社会省の貧困基準改定
従来の貧困基準は、都市部で月収20万ドン(1400円)・農村部で10万ドン(700円)・山岳部8万ドン(560円)であり、この基準での貧困世帯率は17,2%(2000年)が9%(2004年)に下降する。新基準は都市部24万ドン(1680円)・農村部10万ドン(700円)・」山岳部8万ドン(560円)となり、9%(140万世帯)が26%(400万世帯)に上昇する。貧困基準は、食糧ベースで1日1人2100キロカロリーを採用する場合もあり、食糧以外のニーズも加えた物価調整と所得で算出する場合もある。
従来ベトナムの貧困基準は国際基準より低く、国際基準では03年11%は26%に相当するとみられていたが、90年70%からみるとベトナムの貧困世帯率は驚異的に低下し、貧困対策が進んだことを示している。しかし新基準で改訂されたのが、都市部のみであり、ドイモイ政策で進む市場経済化の進展は都市部での生活水準上昇に留まっていることが分かる。以上・ベトナム政府2006−10経済社会発展5カ年計画策定資料より。
◆日本経団連・経営労働政策委員会報告「労使自治の精神によるさらなる改革を」(12月14日)
従来の正社員と非正社員という区別管理は適さない。労働市場規制緩和推進が必要。裁量労働制の大幅見直し、ホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入、労働者派遣法の派遣先雇用契約申し込み義務の撤廃、製造業派遣期間制限(1年)延長を提言。
労使協議と職場慣行による長時間残業に対する労働監督行政の在り方を適正化。非正規雇用と成果主義賃金の無理な格差主義、不明確な基準による格差、評価基準の合理性と客観性の設定。現場力の低下、現場人材力低下による技術継承の失敗を指摘。
◆内閣府統括官レポート「今週の指標」(12月13日)
15−34歳の若年層での派遣労働者の増大は、事業主の人件費節約と労働者の正規雇用がないことがマッチして起こっている。正規から非正規への移行確率が上昇傾向にあり、その逆は低下傾向にある。男性の非正規化がすすみ、正規への転換が困難でキャリアの浅い若年層の非正規化は職業能力の形成を阻害し雇用の二極化をもたらす。月額平均賃金は、一般労働者33,1万円、パート9,0万円、派遣20,0万円で派遣は正規の3分の2であり、派遣労働者が増加しても一人当たり賃金の押し上げ効果は限定的である。
◆ILO若年失業問題シンポジウム(東京12月)
03年度世界失業者数1億8590万人、青年失業者数8800万人、若年失業率は平均失業率の2倍に上る。就業若年の多くが非正規雇用形態であり、グローバル化による経済成長と失業者増大がパラレルである。公正なグローバル化のための規制が必要で、今のままでは持続可能でない。市場は万能ではなく強力な政策介入が求まられ、労働者の発言機会の増大と非排他的なグローバル化が必要だ。インドは6%の経済成長で1%しか雇用を創出していない。政策決定者の頭脳がグローバル化に追いつかず、若年層の不安定化が助長され若者の未来が開けない。国際的な教育などの情報共有システムがなく、政策決定への若者の参加ができない。
◆東北の農業改革・岩手県集落ビジョンその他(10月末現在)
農水省・米政策改革大綱は従来の転作助成を産地づくり交付金に変え、担い手・農地集積・米や大豆などの栽培を内容とする地域水田農業ビジョン(集落ビジョン)を作成することを条件に交付金を支給する制度へ切り替えた。岩手県は県内全集落92%が参加する1556の集落ビジョンが策定された。産地づくりの目標達成年度は2010年でありそれに向けた営農計画が具体化されている。
県内有数の米作り産地である胆沢町では81の全集落でビジョンがつくられた。国と県による画一的な構造改革に対する生産性の高い地域農業の構築を求め、兼業を含む集落農業を存続させる方針を採る。特定農業団体・アグリ笹森営農組合(03年12月設立)は全農家40戸・経営面積50ヘクタールである。ビジョン作成に共済組合、土地改良区、農協との連携が不充分で混乱が生じている。各農家ごとに行ってきた共済掛金・農業資材購入・税金申告の事務処理を組合が一括して行うことになり、事務処理ソフトが未開発で営農計画まで描けない。集落営農は、集落を単位として機械の利用や耕作などを共同で行う農業生産形態であり、担い手の一つとなる条件は農地面積20ヘクタール以上で経理の一体化と法人化が必要となる。
集落営農が成り立つ基礎条件は生産費がペイできる米価の維持であり、米価下落は営農地の賃料、生産資材費、機械油代の支払が困難となる。農水省の所得モデルは、年間所得530万円で経営規模40ヘクタール(個別経営は14ヘクタール)、ベースとなる米価は1俵(60キロ)1万6445円である。しかし米価の変動は予想を超えて下落し、04年度JA出荷仮渡金は1等米で1俵1万円を切っている。輸入米を下回る8000円台の銘柄もあり生産費の6割程度しか回収できない実態となっている。米価下落の現任は、米流通の完全自由化と、本年度米不作に便乗した政府在庫米100万トンの放出にある。
農水省所得モデルでは、米価12000円の場合個別経営の年間所得は166万円減少し、集落営農は米価10000円で担い手農家以外の配当金は1戸当たり30000円にしかならない。集落営農構成員は自家飯米もなくなり、担い手に貸した賃料もほとんど入らなくなる。
事例)宮守村」(遠野市隣接)
宮守川上流生産組合(190戸 農業法人) 法人設立前からほ場整備事業を契機に土地利用調整、機械共同利用、低コスト稲生産、大豆生産、02年より地域農業構造改善モデル事業を導入。生産組合の営農は米を中心に大豆、ブルーベリー、ワラビ、雑穀類の生産、、畜産、農産物加工、直売所の農産物販売、畦草刈り、植栽の環境保全など多彩に展開。保有機械はコンバイン、田植機、トラクターなど10数台、薬剤散布の無人ヘリ。機械を操作する年間雇用のオペレーター4人、臨時雇用2人。これらの営農条件は、中山間地域等直接支払制度(2000−04年度 集団営農に対する交付金交付制度)と一定水準の米価にある。直接支払制度と米価が1万円を切ると経営は危機となる。
遠野市綾織集落営農組合(36戸 農業法人) 全農家参加の営農、農機具の集団保有と免税軽油使用など効率的営農を展開。高齢化、後継者不足の課題。
WTO農業協定・FTA締結による農産物貿易自由化への政府戦略は、価格保証から大規模農家と法人による従来の家族型中小営農形態の廃棄にある。国土の70%を占める森林に隣接した中山間地の家族経営なしに日本の営農は存続しなかった。各地の自主的に策定された地域水田農業ビジョンは、政府戦略の下での内発的な農業保全の模索であり、それを支える価格保証と直接支払制度の維持なくして存続はない。
◆中小企業融資政策の大転換
経済産業省中小企業政策審議会は、政府による中小企業の借り入れ全額保証制度を05年6月に廃止する方向を出そうとしている。金融機関の中小企業融資が焦げ付いた場合、都道府県信用保証協会が全額を肩代わりする制度によって、保証協会の債務肩代わりを穴埋めする中小企業金融公庫の信用保証財政が悪化し、03年度4324億円の赤字となった。金融危機とデフレの98年から政府は中小企業向け緊急資金繰り対策として、ほぼ無審査で全額保証する特別保証制度を導入し、保証総額29兆円に膨らみ、信用保険の赤字の半額がこの特別保証で発生している。
政府は、日銀短観・9月調査で中小企業資金繰りDIがマイナス6と97年水準以前に回復したとし、全額保証しなくても融資が受けられるようになったという。景気要因で倒産寸前に到った優良企業の事業再生支援策はもはやその使命を終えたのであろうか。むしろ挑戦的な画期ある中小企業の自立と自己責任原理による政策転換の質が強い。むしろ中小企業の連鎖倒産を誘発する可能性が高い。以上・日本経済新聞12月14日付け参照。
◆改正育児・介護休業法
来年4月から施行される改正法のポイントは以下の通り。
@対象者:現行は有期雇用者は対象外→1年以上の雇用実績がありこどもが1歳になった以降も雇用の継続が見込まれる者
A期間:現行1歳まで→1歳6ヶ月まで
B介護休業取得回数:家族1人につき1回連続3ヶ月まで→通算93日
C看護休暇:事業主の努力義務→年5日まで
改正法の問題点は、雇用契約の更新を見込まないことを理由に排除する危険性があり、すでにイトーヨーカ堂や生協で導入されている「本人の働く意志」を重視する基準より対象者を限定している点だ。企業の就業規則改訂時に歯止めが求められる。この改訂は、育児休業規定を持つ企業が60%に達し、うち20%が有期雇用者を対象としている現状を追認したもので、日本の企業経営が有期雇用者なしには崩壊することを示している。しかし最大の問題は制度の利用状況が、育児休業取得女性54%、男性0.3%に過ぎず、権利としてあっても実態としては取りにくい企業風土があることだ。それ以前に出産退職女性が70%を超えていることだ(人口動態特殊調査01年 出産後1年半後に働き続けている女性は30%弱)。とも働き家庭の保育条件が劣悪で、女性の育児の自己責任論が蔓延している中で自ら望んで離職した人よりもやむえず離職した人が増えているからだ。
◆ドイツ・フォルクスワーゲン社の労使協議制
ドイツでは企業と職場の労働者の共通の問題を労働者を代表して経営者と交渉する組織である事業所評議会が法律によって設置されている。労働時間・技能教育・労働規律は経営者との共同決定、採用と解雇は労使協議となる。産業別に組織された労働組合とは別組織であり、労組代表が評議会委員を兼任している場合が多い。
フォルクスワーゲン社の労働者の95%は金属産業労働組合(IGメタル)に加盟している。ウオルフスブルグ工場だけでIGメタルの代表が2000人おり、全労働者5万1000人のうち25人に1人の割合で労組職場代表がいる。フォルクスワーゲン社は、かってヒトラーが労組を解体してその労組の資金を元に国策としてつくった自動車会社であり、その体験から労組の強力な交渉力が形成され戦後最も早く経営共同参加権が保障され、高い賃金労働条件を構築してきた。
しかし景気後退と国際競争下の他社との競争力強化に向けた経営戦略によるコスト削減圧力が強まってきた。11月初めに妥結した新たな労働協約の内容は以下のような内容だ。
@雇用確保 旧西独地域6工場の具体的生産計画決定(ウオルフォスは4輪駆動車、ハノーバーはマイクロバスなどすべての工場での新車生産)による2011年までの雇用確保の実現。外国への工場移転はしないことの確認。
A労働時間 週28・8時間労働制維持し、労働時間貯蓄制度の継続。フォルクスワーゲン社の旧西独部工場では、ドイツ金属機械産業の労働協約である週35時間労働を下回る週28・8時間(週4日制勤務)が適用され、これを超える労働は労働時間貯蓄口座に貯蓄され、労働者はそれを使って休暇を取ることができ、一部は早期退職制度にも適用されている。
B賃金 労組と事業所評議会は4%の賃上げを求めたが、2年間の凍結という結果となった(雇用優先妥結)。05年からの新入社員は、これまでの労働協約を適用せずドイツの他社並みの週35時間労働、月給2562ユーロ(36万円)という水準にすることで妥結した。
◆介護保険給付額地域間格差について
健康保険組合連合会によると都道府県別の高齢者一人当たり給付額(03年10月分)は沖縄県から茨城県まで1.7倍の開きがある。市町村別だと沖縄県粟国村は5万3千円で、和歌山県花園村は6千600円で開きは8倍に達する。最大の要因は特養・老人保健施設・介護療養型医療施設の施設整備率にある。高齢人口に対する定員でみた施設整備率は(02年10月現在)、沖縄県は全国平均の1.56倍で徳島に次ぐ第2位だが特養は全国第1位だ。施設はデイサービス・デイケアを併設しているから在宅利用者増にも連動する。
サービス利用度の基準になる介護認定も地域格差がある。茨城県岩井市は、高齢人口5千人以上の市町村で高齢者1人当たり給付額が8400円で全国最低だ。生涯現役の農業が主産業で元気高齢者が多い。茨城県はまた祖父母・親子の3世代同居率が全国トップでもある。介護サービスに依存しない家族介護が多い。だか介護認定申請者自体が少なく、認定率は8,9%と低水準で特養は人口4万3000人の市ににしては少ない。全国認定度を見ると、要支援・要介護Tの軽度の格差が目立つ。
給付額の水準の背景には、居住地域の産業構成や親子同居率、地域の風土性などの地域特性によって生まれる施設整備率の違いがあるが、大事なことはサービスの水平的衡平が維持できているかどうかだ。岩井市をみると、実は150人の特養入所希望者が待機状態にあり、保険料は安いが介護サービスの水準も低いという福祉行政に問題があることが分かる。
厚労省は施設数が多くて給付負担が高い地域に対する抑制政策を導入しようとしている。特養の入居者からホテルコストという居住費、食費を徴収することを検討している。現行制度では、ホテルコストは保険でカバーされ本人負担は1割で、全額自己負担の在宅看護よりも割安である。この施設メリットをなくせば入居希望者が減るだろうということだ。また家事サービスに代わって介護予防を強化する方向が検討されている。利用者が炊事・洗濯の家事サービスに依存して逆に身体を老化させるということから、筋力トレーニングなどの予防に重点を移すということだ(先進例・高浜市)。市町村への権限移譲も考えている。現行制度では、介護サービス事業者の指定や立ち入り権限は都道府県にあるが、介護報酬などの不正受給が多い。最適サービスの提供度のチェックを市町村に移譲し、より現場からチャックしようということだ。
厚労省の方向が基本的に間違いだということはすぐお分かりであろう。なぜなぜ低い水準に合わせて有料制を導入するのか、それによって入居希望者を減らすなどというのは社会福祉の本質から背反している。予防介護という名の下に、現に必要としている家事サービス水準を低下させるということも同様だ。不正受給のチェックを市町村に委ねれば、受給者が受給者をチェックするというまるでチャックの本質が失われる。以上・日本経済新聞12月5日付け参照。
◆ILO・世界2003年度末失業レポート(12月7日)
全世界就労者数 28億人
貧困ライン以下の就労者数 14億人(1日2ドル・206円)
絶対的貧困ライン以下の就労者数 5億5千万人(1日1ドル以下)
全世界失業者数 1億8千590万人(6,2% 前年比0,1ポイント改善)
地域別失業者数 東南アジア6,3%(0.8ポイント改善) 中東・北アフリカ12,2%(0,3ポイント悪化)
◆ユニセフ・世界こども白書2005年版「脅かされるこども時代」(12月9日)
○エイズ
エイズ感染こども数 200万人
18歳未満でエイズで親を失った子供 1500万人
○武力紛争
90−03年の世界武力紛争 59(うち国内紛争55)
90年以降の戦争の死亡者360万人(うちこども180万人)
○貧困
適切な住居を持たないこども数 6億4000万人
安全な飲料水が得られないこども数 4億人
医療サービスが受けられないこども数 5億人
こどもの権利条約の権利を否定されているこども数 10億人以上
◆FAO(国連食糧農業機関)「世界の食糧不安の現状 2004」(12月8日)
飢餓と栄養失調による毎年死亡こども数 500万人
体重不足新生児毎年誕生数 2000万人(この子らは低年齢で死亡するか生涯の障害を背負う)
世界栄養不良数(00−02年) 8億52000万人(うち先進経済国900万人)
5歳以下で死亡するこども数 1000万人(うち半数は栄養不足)
飢餓による死亡と障害の経済的損失 年5000億ドル
国連ミレニアム目標・2015年までに飢餓人口の半減 途上国30ヶ国で90年代に25%削減成功
◆GDP(実質国内総生産)の算定方式変更
GDPは一定期間内に生産した最終生産物の付加価値を同一国内の経済主体について算出し、GNPはその国に1年以上居住する経済主体について海外生産も含んで算出する。だからGDP=GNP-海外からの純所得で示され、03年度は実質554兆円、名目は501兆円であった。実質とは名目から価格変動分を引いたものである。
内閣府は実質GDPの算出方式を変更する。従来はある歳を基準年として定め、それに較べて現在の価格がどう変化しているかを比較する固定基準年方式を採用してきた(基準年は5年ごとに見直し、現在は1995年を基準としている)。この方式は基準年から離れるほど価格下落を適切に反映しにくいとして、基準年を毎年更新する連鎖方式に切り替える(この方式はすでに米国が96年、カナダが01年、英国が03年に導入し国際基準になりつつある)。具体的にはPCの機能は毎年性能が向上しているが、価格が同じでも性能が2倍になれば価格は半値になったとまなす。現行方式では価格の下落を過剰に大きくする欠点があり、実質GDPを高めてしまい実態を反映しない経済成長を生んでしまう。
新方式では、内閣府発表04年度7−9月期実質GDOP成長率は年率換算で前期比0,3%のプラスであるが新方式ではー0,1%に転落する(ただしデフレで名目成長率は変化なし。冷厳に見れば日本の経済はマイナス成長であることが示され、一般投資家や消費者心理に与える影響は強く、来年前半の景気失速という観測を生む。定率減税廃止や消費税率引き上げによるふたたびの金融危機が誘発される可能性もある。以上中日新聞12月7日付け参照。
◆独占禁止法改正(案)の怪奇
企業犯罪の抑止効果の向上をめざす公正取引委員会の改正案は、経団連の強い反対を受けて骨抜きにされたうえに継続審議となった。公取委原案は課徴金の2倍引き上げ(大企業製造業12%)と算定期間現行3年の4年延長というものであったが、経団連は強硬に反対し12%→10%、算定期間は現行3年据置と後退した原案となり、通常国会提出も見送られた。公取委事務総長は経団連を批判して「天下の大企業が一方でコンプライアンスを叫んで他方で談合を行うのはまったく解せない。利益になれば談合も辞さないという企業行動だ」と云う(『時評』6月号)。驚くことに経団連は政党第2次政策評価(9月22日)に「独禁法の改正案の通常国会提出見送り」を政党通信簿に特記している。
民主党案は、課徴金の政府案が課徴金から罰金の半額を差し引くのに対し、全額を控除し、法人に対する制裁を課徴金に一本化して刑事罰は個人に限定する経団連案に接近し、また企業内法令遵守システムがあれば課徴金の30%減額を提案するという驚くべき内容となっている。
1991年から2004年にかけて経団連役員企業のカルテル・談合事件は、新日鐵、東芝、住友商事、日立製作所、三菱重工、ソニー、武田薬品、住友化学、日本郵船、東京海上、松下電器、三井物産、三菱電機、日本電気、伊藤忠、味の素、トヨタ、小松製作所、日産自動車の20社に上っている。武田薬品、三菱商事、味の素は2回に亘る国際カルテル違反で日本よりはるかに高い課徴金を欧米諸国に支払っている。
市場原理は企業行動の逸脱は市場が駆逐し違法企業は市場から撤退すると主張するが、この日本では逆だ。粉飾決算を行ったエンロン社と監査法人アンダーセンはすでに倒産したが、日本では逆に反映していく。米国での課徴金のトップ企業は570億円で日本はわずか16億円だ。企業の不正経理を知り尽くしているはずの公認会計士は日本では摘発をしない。金融庁の支援を受けてやっとメスが入ったのがUFJだ。日本で不正経理を摘発すれば、公認会計士は命が危ないという末期的な症状にある。もしくは契約を拒否されて監査法人会社の経営が危なくなるからだ。(2004/12/5
22:20)
◆京都経済活性化戦略(日本経済新聞11月22日付け特集記事から)
@京都ブランド
・京都商工会議所「京都創造者憲章」(04年9月) 京都の良さに磨きをかける運動理念
→「京都ブランド推進計画」(シンボルマーク作成、伝統工芸・先端産業のワークショップによる担い手づくり)
・京都市「歴史都市・京都創成策」(京都の景観、文化・伝統の保護を国家戦略として推進→歴史的町並み・景観保存・電線地中化))
・京都府食品産業協議会 第1回京ブランド食品認定(12月)京菓子、漬け物、湯葉、豆腐 認定基準は本社を京都府内に置き、府内事業所で製造、製造基準による品質保証 05年1月に大丸で展示会
・西陣織工業組合 手織り帯専用証紙添付認証制度(7月)生産情報、トレーサビリテイ(海外生産との差別化)
・西陣織物産地問屋協同組合 着物で集う園遊会(11月)
・京の伝統産業体験観光推進委員会(17伝統工芸関連組合参加)ホームページによる工房検索、製作体験予約、イベント紹介
・小倉百人一首文化財団 時雨殿建設(嵐山)、歌碑100基設置
A京都観光産業 京都観光客3年連続で過去最高更新中
・共同出資による温泉堀削 嵐山、大原
・シテイホテル、ビジネスホテル建設ラッシュ
B中心市街地活性化
・集客施設進出ラッシュ 商業施設、シネコン、家電量販店、ルイビトン、ザサードプラネット、ビッグカメラ
・飲食業新規参入 中華料理、トンカツ店、HUB
C企業再生(倒産企業の再建)
・スイートガーデン(洋菓子の旧タカラブネ)、フーズネット(回転寿司にぎり長次郎、バーと寿司みやこびと)、都人(宅配寿司)
DVB育成
・京都府 ハイテク分野とともに繊維産業VB育成政策
→府内製造業向けファンド(投資組合)京都銀行と提携し、府内製造中小企業23億円(その後滋賀銀行、南都銀行参入)
新風館(京都市 複合商業施設 インキュベション施設にVB15社出店)
KYOTO STYLE(府のインキュベーション施設 京都の伝統技術を生かした衣料品店に若手デザイナーに低コストで出店機会)
KYOTO COLLECTION BOX(新風館内 屋台式店舗で雑貨など小売分野の起業家支援 月額利用料5千円 VB5社出店)
地域ものづくり産業育成ファンド 府内VBに対し1億円上限に投資 3年間で8社以上予定
E産学連携
・京都信用金庫
近畿26大学との産学連携フォーラム(5月 参加317企業のうち143社が大学に相談うち18社共同事業に着手)
京都府・滋賀県内11大学と産学連携覚書調印(9月 守秘義務協定による連携円滑化による実績積み上げをめざす)
京都ロボットフォーラム〔10月 取引先企業と研究者との連携促進)
取引先企業が相互に情報交換できるネット掲示板開設(企業情報発信による商機拡大)
・京都銀行
法人金融部に産学連携チーム設置して本格化
京都府立医大と産学連携協定(10月 医療・看護・介護分野での取引先企業との共同研究促進、府立医大発のVB支援)
京都府立大学など6大学と協定締結交渉開始
・京都中央信用金庫
産学連携プレゼンテーション(10月 取引先企業200社が出店した商談会で3千人中小企業経営者対象にノウハウ提供)
取引先企業のホームページを画像付きで提供するサイト(大学情報の企業への提供から企業情報の発信へ)
F環境ビジネスー京都議定書05年2月発効をにらんで
・堀場製作所 エンジン排ガス計測装置、車載型排ガス計測装置、焼却場向け排ガス計測装置
・島津製作所 蛍光エックス線分析装置
・オムロン、ワコール グリーン調達基準に「京都・環境マネイジメントシステム・スタンダード(KES)」(京都市が独自に設定した基準)採用→取引先中小企業にCO2削減求める(コスト削減の合理化要求) KES基準現在300社採用
・NPO・気候ネットワーク「市民が進める温暖化防止2004」会議(12月4〜5日) 米国の議定書参加、炭素税、市民共同発電、自然エネルギー普及、脱フロンなどに向けた取り組み協議開始
*コメント
歴史的伝統を踏まえた産業集積の現代的活性化をめざす勢いがある。注意すべきは、外部資本の進出による地域内経済循環の衰弱を誘発し、大型店進出による地域商店街衰退を防止する内発的な活性化戦略,市民主体による市民参加型活性化を重視するならば、京都の将来は明るいと云えよう。さらに中小業者の水平的なネットワーク形成と連動するならばより確実な再生を実現するだろう。日経の記事にはそのあたりの評価はない。
◆地方地場銀行の倒産と地域経済ー足利銀行一時国有化にみる
政府の圧力で債務超過に追いこまれ一時国有化された足利銀行(本店・宇都宮市)は、12月上旬に産業再生機構による融資先企業の処理方針が決まる。足利銀行は県南西部・足利市の繊維産業や温泉観光業を基盤に1895年に設立された典型的な地場地方銀行だ。市内業者の圧倒的多数を取引先とし、企業も足利を支えるために優先株を無理して購入してきたが、その株は国有化でゼロ価値となった。いよいよ不良債権処理方針が決定され、倒産に置き込まれる企業が続出することが予測される。
最も深刻な被害を受けているのは旅館・ホテル・建設業であり、その実態は次のようになっている。
足利銀行破綻による今後の影響(04年10月調査 栃木県土木部・県内建設業回答者数621業者)
大きな影響を受けると思う 13%
それなりの影響を受けると思う 62%
影響はないと思う 25%
足利銀行破綻後の影響(複数回答)(04年3月調査 野村総研・温泉地再生に向けて)
地域のイメージ悪化 90%
客足の減少 31%
融資打ちきり、条件見直し 23%
従業員の不安増大 19%
仕入れ先支払条件変更 18%
旅行代理店の紹介減少 6%
多銀行からの融資打ちきり、条件見直し 6%
金融庁主導で策定された新経営計画は、店舗網の見直し・保有財産の売却があり、旧本店(足利市)は足利商工会議所に売却される。足利がらみで破綻した中堅企業は、政府保証を背景に産業再生機構が銀行から債権を買い取って救済するが(ホテル・四季彩、栃木皮革、関東自動車)、中小業者は自己破産に到る可能性が高い。栃木県は緊急セイフテイネット資金などの制度融資を拡大し、中小企業再生ファンド(基金)を立ち上げたが利用率は少ない。足利の受け皿が明確でなく融資が継続されるかどうか不安だからだ。地域経済と連動しない米・ハゲタカファンドが買収に到ればおそらく一揆の勃発に到るだろう。
○鬼怒川・川治温泉(藤原町 日光国立公園)の現況と課題
旅館ホテル数100軒、最大収容人数2万人(ケガは川治、やけどは鬼怒川) 年間入浴客 93年・341万人 03年238万人
近年は個人・家族客中心で団体客主流経営からの脱皮が課題、宿泊業は季節による変動と定期的改装が必要な装置産業、閑散期をしのぎ新たな集客戦略をめざす資金調達が不可欠である。リーズナブルな宿から高級宿までそろっているのが魅力だ。どの宿が産業再生機構・債権回収機構(RCC)送りかが問われる。藤原町の地域再生計画は以下のようになっているが、11月に実施された近隣4市町村合併の住民投票では賛成が多数となり、独自の地域再生が推進できるかどうか未確定だ。その背景には足利銀行問題がある。
藤原町・地域再生計画(04年6月策定)の概要
現在の問題点 @バブル期の過剰投資A顧客ニーズに合わない運営B景気低迷C閉塞感の蔓延D旅行の施設内完結
鬼怒川・川路地区の特性@首都圏に近い(東京との直通電車)A主要観光資源に隣接(世界文化遺産・日光など)B美しい自然Cテーマパークの存在
鬼怒川・川路地区の再生 既成の特性を生かしつつ、新たな観光と産業の主軸として、福祉観光・ヒーリング観光をテーマに、顧客の人間性回復の場として心と体のやすらぎを提供し、自分らしさを取り戻していただく
@観光資源を最大限にいかす
A従来の団体宴会型からの脱皮
B楽しみながら健康になる(美しくなる)機会委提供の場
介護が必要な人が気軽に訪れる温泉地をめざす介護保険適用特区(宿泊容量の大きさを生かす)
足利銀行の04年度9月中間決算は以下の通り(12月1日発表)。
不良債権残高(リスク管理債権ベース) 6258億円(3月末より1059億円減少)
金融庁指揮による不良債権処理推進 @整理回収機構(RCC)への売却による不良債権のオフバランス化(銀行帳簿からの切り離し)Aその他償却や債権放棄処理によって不良債権残高圧縮 RCCへは簿価360億円の債権が51億円で売却
不良債権比率は19,29%(3月末20,62%)へ微減→計画では来年3月末までに不良債権2000億円処理し12%にする
収益(単体ベース) 最終損益512億円黒字(前年同期1862億円赤字) 不良債権の引当金取り崩しに伴う特別利益の影響
人員削減 行員数2468人(3月末比160人減)→来年3月にさらに170人減
◆全国商工団体連合会ー自営業者自殺者調査
全商連共済会(会員数33万5千人)が支払った死亡弔慰金のうち自殺を理由とした人数は、右肩上がりに上昇し96年・80人→98年・130人→03年・151人でありいずれも40−60歳代の中堅層だ。警視庁調べによる03年度全国自殺者数は統計を取り始めた1978年以降最高の34427人となり、98年以降6年連続で3万人を超えた。98年は橋本内閣による消費税3%→5%と増税した翌年だ。全商連共済会は、売上が落ち込み病気で国民健康保険料が支払えず、病院にもかかれない場合や、新たな融資を断られて事業の再構築ができず自ら生命保険をかけて自殺する例が最も多いという。
大銀行と大企業への債権放棄と引き替えに、中小業者への貸し渋りと貸しはがしがすすみ、不況対策と仕事の確保がなされず追い詰められていく。この瞬間にも100人近くの人たちが日本のどこかで自ら命を絶っているのである。バブル崩壊後の滑り落ちるばかりの滑り台に上らせたのは誰か!と悲痛な声を60歳で命を絶った建築業者の息子が漏らしている。小泉首相は相次ぐ自殺に対して、「どういう事情か分からないが、あまり悲観的にならないように」とまるで他人事のように述べている。国民の命と安全に最高の責任を持つ人がこのような冷酷な感性の持ち主であることを忘れてはなるまい。それを選んだのが誰かと云うことも考えねばなるまい。
日本経済研究センター予測では、年金保険料引き上げ・配偶者特別控除・給与の定率減税廃止そして07年の消費税10%アップによって、個人の可処分所得が減退し景気後退は不回避としている。こうした机上での経済成長率予測(04年・4,3%→05年・2,7%)の冷徹な客観的データは、実は生活の生々しい困難の諸事象を裏に抱え、自殺率水準は毎年天井知らずの昂進を続けるであろう。そして国民は永遠に「どういう事情かわからないが、あまり悲観的にならないように」して必死に苦闘しながら、最後には自らの手で自らの命を絶って生命保険の受取金を妻子に残すのである。
◆日本経済短期予測・2005年度見通し(日本経済研究センター 11月18日)
@海外経済の減速とともに輸出の伸びは一段と低下する:米国は減税による消費効果の剥落と利上げの影響による景気減速と緩やかな成長率低下が続く(04年4,3%→05年2,7%)。中国は、金融引き締め効果による固定資産投資減速で次第に成長率は低下し、貸出基準金利引き上げ効果が加わって成長率は目標値7%に向かって徐々に低下する。こうした海外経済動向を反映して日本の輸出の伸びは低下していく。
A設備投資は一段の減速に向かい輸出・設備投資主導型回復メカニズムの力は弱まる:輸出の減速は生産と企業収益の伸びを抑え設備投資を減速させる。
B税と社会保険負担の増加によって個人消費は減速に向かう:デフレ下で企業の雇用スタンスは慎重であり、名目賃金は減少し、年金保険料引き上げと配偶者特別控除の上乗せ廃止によって可処分所得は一段と減速する。最近の消費の伸びは雇用者報酬の伸びを伴わない貯蓄率低下による消費性向である。個人消費の本格的な回復は期待できない。
C台風と地震災害による一時的・特殊的な公共投資は解消し、当面は景気をした支えする:夏以降の台風・地震災害による災害復旧事業を中心とする公共投資の増加によって、公的固定資本形成はプラス寄与に転じ、一時的に成長率を押し上げるが、05年半ば以降この特殊要因はなくなり成長率は減速する。
以上からGDP成長率は、04年度後半は設備投資と公共投資のプラス寄与度主体に堅調に伸びるが、輸出・設備投資主導型回復メカニズム自体は一段と弱まる。個人消費の減退で景気の拡大はない。05年度後半以降の押し上げ要因の剥落とともに05年度後半にモメンタムを失う。05年度後期に景気後退局面を迎える可能性が高く、デフレ脱却の展望もない。金融緩和政策とデフレ脱却の財政政策のサポートが必要だ。景気回復の鍵は個人消費の動向を踏まえ、可処分所得の減少をもたらす定率減税廃止は時期尚早だ。
◆市場化テスト・第1回公募締切(規制改革・民間開放推進会議)
市場化テストの流れは、官製業務の公募を競争入札でおこない、第3者機関が評価して民間が落札すれば、一定期間民間がサービスを実施してその成果を判断して民間への本格的な業務委託や民営化への移行を行うというもので06年度から本格導入される。17日に締め切られた第1回のモデル事業入札には、100以上の提案があった。
注目業務は、社会保険庁とハローワーク事業。社会保険庁業務は、国民年金保険料未納率が36%に達してその非効率性への批判が高まった。民間企業は、債権回収のノウハウを生かした保険料徴収と社会保険労務士による年金相談と窓口サービスをコスト削減すると提案している(東京リーガルマインド、山田債権回収管理総合事務所など)。窓口業務の時間延長、未納者の情報管理による戦略的徴収方法、管理部門の効率化と職員の窓口業務への重点化などで人件費を3分の2へ圧縮するとしている。ハローワークへの参入希望は、就職相談・求人開拓のノウハウを持つ人材派遣会社からの応募が多く、集まった求人情報による従来の職業紹介から求職者のニーズに見合った企業への雇用の働きかけなど踏み込んだサービスを強調している(パソナなど)。その他図面・文書の保管と検索(新日鐵)、公金のカード決済と収納代行(富士通総研)、国立大と病院の保全管理(新日鐵)などが目立つ。刑務所の運営業務を希望している会社もある。
厚労省はハローワークの全国ネットが維持できないと批判し、法務省も刑務所運営は民間になじまないと消極的だ。つまるところ公共性原理を基本的に問いかける流れが始まっている。これらの市場化の帰趨は郵政民営化の内容に収斂される。職業の斡旋や社会保険、刑務所管理などは絶対に利潤の対象としてはならない社会公共の業務とされてきた。公共財と私財の関係を本質的に問い直すことなしに安易な市場化は許されないだろう。国民年金未納は制度問題であって徴収技術の問題ではなく、刑務所は国家権力そのものであって私的な介入が許されるものではない。
結果的にハローワークの職業紹介は対象外となり、キャリア交流プラザ(中高年の再就職支援)の運営と求人開拓事業のみがモデル事業となり、交流プラザは公設民営方式で、市場化テストの競争入札は実施せず企業に業務の一部を委託する。@雇用能力開発機構の生涯職業能力開発センターの職業訓練A若者向け就職支援事業B就職支援アドヴァイザーの3事業であり、ハローワーク事業に参入する希望を提出した民間18業者は肩すかしを食った。ハローワークの中核事業である職業紹介は従来の公営が維持された。
◆労働審判制度とは何かー06年4月スタート
4月に成立した労働審判法は、行政機関による斡旋とは別に裁判所の管轄の元で労働者の訴えを短期に解決することをめざしている。構成は職業裁判官(労働審判官1)・労働者側と使用者側推薦の労働審判員(各1)の3人からなる労働審判委員会が解決案を決定する。委員会は全国50カ所の地裁本庁に置かれ、原則として3回以内で審理を終えて長くても3,4ヶ月で結論を出す。審判の決定は2週間以内に当事者の異議申し立てがないときには確定し、いずれかが不服であれば強制執行することができ、都道府県労働局の斡旋とは基本的に異なる。申立書も簡潔で労働者側の費用負担を少なくする。審判の具体的な流れは以下の通り。
@申し立て:労使紛争について労使いずれかが申し立てて審理が開始される。
A審理から調停へ:手続きの指揮は労働審判官(判事)がおこない、審理は3回以内。その間に調停(和解)が成立すれば、決定には到らず終了し、調停は裁判の和解と同じく強制力を持つ。
B労働審判での解決:審理によって審判を決定する。審判は法規上の権利・義務関係による事件解決案であり、2週間以内に当事者からの異議申し立てがなければ確定する。
C訴訟への移行:異議申し立てがあれば地裁での通常裁判手続きに移行し、最初に労働審判を申し立てた書面が裁判訴状となる。争点が多い複雑な事件は3回の審理になじまないので、裁判が妥当と労働審判委員会が判断すれば労働審判を出さないで終了し、訴訟に移行する。
なぜこうした仕組みが導入されたのであろうか。雇用や労働条件をめぐる労働相談件数が激増しているからだ。厚生労働省都道府県労働局に寄せられた総合労働相談件数と個別労働紛争相談件数(括弧内)は、01年251545件(41284)→02年625571件(103194)→734257件(140822)と爆発的に増えている。個別労働紛争相談の内訳は、解雇29,8%、労働条件引き下げ15,8%、いじめ・嫌がらせ7,4%、退職勧奨6,8%であり、その他民間の110番相談などを加えると膨大な紛争が起こっている。
これまでは不当労働行為と集団的労使関係を扱う地方・中央労働委員会があり、個別労働紛争は都道府県労働局の斡旋申請か民事訴訟の道しかなかった。都道府県労働局の斡旋は無料で利用件数も増加しているが、相手企業が応じなければ打ち切りとなって解決しない。東京労働局04年度上半期の個別労働紛争相談は7647件、斡旋申請受理数は395件、同時期に打ちきりになった
のは212件に及ぶ。最後の手段としての民事訴訟は、多額の費用もかかり、労力と時間を費やすので日本の労働裁判は年間3000件しかない(ドイツ60万件、英国10万件)。日本では個別労働紛争を専門に扱う裁判制度がないので、裁判は早くて7〜8回の審理で半年から1年かかり、請求金額が20〜30万円程度だと弁護士費用の方が上回ってしまう。
労働審判制は従来の労使紛争で一方的に泣き寝入りしてきた労働者側に救済の道を開いた点で画期的な意味があるが、欧州型の労使の専門家が判事として参加する労働参審制への発展が期待される。そこに到るまでに、この労働審判制度を多くの労働者が利用し、審判の信頼性を高めて定着させる必要がある。
◆経済産業省青年雇用問題報告書ー人材・雇用をめぐる神話と真実
神話1:人材投資を削減すると企業利益は拡大する(リストラ効果)
アメリカ経営協会が95年に1003社対象に人材開発部門のマネージャーに実施したアンケートでは、教育訓練費の額と利益・生産性の関係を問うている。教育訓練費を増加させると、短期的にも長期的にも利益と生産性は上昇するという結果を示した。企業の能力開発姿勢と雇用変化の関係では、能力開発に積極的な企業ほど雇用を増大させ、消極的な企業ほど減らしている。(出典:「成長と人材」佐藤博樹・玄田有司)
神話2:フリーターは自由を求めて好きで定職に就かない
求人広告会社調査では、定職に就きたい64,7%、フリーターを続けたい7%で大半は定職を希望している。
経済産業省は、貴重な若年人材が有効活用されない状況が続けば、@産業競争力に支障A社会保障制度も含めた経済社会基盤の崩壊を招く恐れがあるとし、企業の人材要求がパートと高度知識層に二極化していることがフリーター促進の要因としている。対応の方向として、教育段階からの職業意識の向上、産業のニーズにあった能力の向上をあげ、若年者トライアル雇用(6万6千人)とデユアルシステム(実務・教育連結人材育成 6万人)を推進するとしている。
*コメント:大企業のリストラ戦略に補助金を出して支援したのは経済産業省であり、労働者派遣法と労基法改正によって非正規雇用を拡大した厚生労働省の基本政策が失敗していることを証明している。企業の新規採用抑制を規制し、人材育成への本格投資を促進し、非正規の不安定雇用をやめさせる方向へ切り替えなければならない。経産省の人材育成支援計画の12万6千人は、417万人のフリーター問題を解決することはできない。
◆日本のODA(政府開発援助)世界最下位へ
91年ー00年まで世界1位の実績を示した日本のODA実績は、01年に米国に抜かれこの3年間で30%もダウンして、来年には欧州にも抜かれて第5位に転落する。02年の国連ミレニアム開発目標((絶対貧困を2015年に半減する)に向けて米国と欧州は一斉にODAを増額した。GDP比引き上げ目標(2006−7年) フランス0,5% 英独0,33% 米国50%増額
日本のODAは、借款(政府貸与)の割合が高く、ODA実績は貸出分から返済分を差し引いた実績額で算出するから、90年代に中国へおこなった借款の償還がはじまった現在は、ネット額がより小さくなる。GNI(国民総所得)に占める額は主要援助国中の最下位に転落する。最高だった99年は0,34%であり、経済協力開発機構(OECD)の主要援助国が集まる開発援助委員会(DAC)加盟国の真ん中当たりだったが、03年0,20%と22ヶ国中の20位に後退した。なぜこのようなODA削減が進んだのであろうか。
借款というブーメラン型援助で現地政権と日本企業の癒着による不正、大型公共事業による環境破壊などの援助形態に対する批判が相次いだなかで無償援助への転換を進めなかったところにある。人間の安全保障や平和構築戦略を主軸に置くグローバルな国際開発戦略に日本は消極的な姿勢を示し、もっぱら米国の軍事戦略に協力してきたからだ。日本が国連安保常任理事国に参加する資格はないのだ。
ODA援助の絶対的削減はODAの民営化ともいうべき方向をめざしていることと連動している。NGOや企業協力による民間援助資金に傾斜する傾向だ。さらに無償援助への転換をめざすのではなく、相変わらず京都議定書に定められたクリーン開発メカニズム(登場国の温暖化防止対策強力)や自由貿易協定(FTA)とODAを連動させる戦略をめざそうとしている。以上・日本経済新聞参照。
◆日高教・全国私教連「高校生の就職実態調査のまとめ」(24日)
10月現在来春卒業予定高校生の就職希望者内定状況調査。27道府県423校、77000人対象。
就職希望者数 22824人
内定生徒数 13954人
内定率 61,1%(昨年同期53,4%)
内定者に占める不安定雇用数 0,7%
就職・進学以外の進路選択数 3483人(4,5%)
(分析)
@求人の絶対数が減少しやむなくパートや派遣を選ぶ生徒が増えている。求人に占める不安定雇用数が増えている。
A就職・進学以外の進路を選ぶ生徒が増えている。その多くは、就職難を目前に就職を諦めて、フリーターやニートになる可能性が高い。
B就職希望者数の減少によって内定率が上昇している
C法定最低賃金が求人票に記載されている例が多い
D求人の主流であった製造業、大規模誘致企業の派遣・請負導入によって新卒採用の縮小(地方)
E募集人員に満たないのに不合格となり、即戦力による選別傾向が強い(都市部)
◆農村の再生か荒廃かー農政審企画部会・農政改革案策定(12月)について
日本農政の基本方針である「食料・農業・農村基本計画」を改訂する食料・農業・農村政策審議会(農政審)企画部会が12月に農政改革案の全体像を策定する。現行の基本計画(00年策定)カローリー食料自給率を2010年に40%→45%に引き上げる目標を掲げたが、03年自給率は四捨五入して40%と実質的に下降するという結果に終わり、農政審企画部会は「2010年までの45%達成は困難」とし2015年までに達成年次を引き延ばすという事態に陥っている。
基本計画見直しの背景には、投資と貿易の自由化を推進するWO(世界貿易機関)とFTA(自由貿易協定)によって農業と食料の保護政策が障害になったことにある。審議会「中間論点整理」(8月10日)は「国境措置に過度に依存しない政策体系を構築する。関税引き下げによる輸入の低価格に耐えられる大規模低コスト農業構造」への転換を提起した。その内容は以下の通りである。
○全農家対象・農産物品目単位の助成制度廃止と担い手への直接支払制度への転換(農家選別政策 2007年より実施)
・外国産との価格差補填交付金(麦作経営安定資金、大豆交付金、テン菜調整交付金)廃止
・担い手経営安定対策直接支払制度導入(海外との生産コストの差額を補填する助成金 07年実施)
○担い手基準(大規模農家と法人集落経営組織)
他産業並み所得(年間1人530万円以上)実現する規模 都道府県水田経営10−14f、北海道畑作25−26f、水田集落営農40f以上
コメント:麦や大豆の交付金廃止により、担い手指定以外の農家は赤字で撤退し、作付け面積減少による自給率低下の可能性が高い。担い手基準をクリアーできる個別経営は北海道に一定存在するが、都道府県全体の全農家の3,3%に過ぎない。担い手の経営は農産物価格依存度が高い。農政審案は、530万円年間所得実現担い手モデルを現行コメ販売価格60kg=16445円がそのまま続くことを前提に試算している。ところが販売価格が下落したときはどうなるか。
農水省モデル経営・都道府県水田14fで稲9,3f、裏作小麦4,7f、豆類4,7f作付けの場合で試算する。米価ー2000円で所得は530万円→336万円、ー4000円で所得は166万円にダウンする。農水省の直接支払助成水準は現行制度並みとしているから、米価下落の場合に再生産は不可能となる。なぜなら過去の作付け面積に応じて支払う面積支払と品質格差を設けて毎年の生産量に応じて支払う数量払いの2段階を想定しているからだ。
小規模分散型日本農地を大規模集約型に再編する基盤整備コストに耐えられる農家は少なく、またたとえそれを実現したとしても米価変動によって経営が不安定になる投資インセンテイブは喚起されない。あらゆる点で農水省プランは農村の混乱と荒廃を誘発する危険性がある。
JA全中(全国農協中央会)は「政府の示す極端な規模要件の設定などでの担い手の絞り込みは地域の混乱と反発が生じかねない」とし、地域で特定・明確さされた意欲ある者や育成すべき者、法人化前の集落営農、受託組織への参画など地域の実態を踏まえた多様且つ幅広い担い手を位置づける必要があると指摘している。島根県議会は、傾斜地が多い中山間地の中小農家への配慮、農業の持つ多面的機能を考慮した経営規模の大小に関わらない農業者支援政策への転換を求める意見書を採択した。全国食糧連グリーンウエイブは、担い手選別反対・地産地消・学校給食自校方式と地場産品利用による農業再生をめざしている。
日本のカロリー自給率40%、穀物自給率28%はすでに北朝鮮やアフガニスタンの水準を下回り、農薬残留違反・遺伝子組み換え・BSE・鳥インフルエンザなどの汚染外国産の脅威におののく食生活に追いこまれている。逆に産地直送の新鮮野菜を供給する農業は、多品種・少量生産システムでこそ成立する。このシステムは高齢農家や中小農家が担い手となって、農村の活性化をもたらしている。市街化区域内にある農地の農地並み課税となる生産緑地指定、中山間地直接支払制度、地産地消システムの助成制度、産地直送システム助成制度等の農家経営を安定させるなどきめ細かな中小分散農家による集落経営の全国ネットにこそ日本農業の再生のモデルがある。(2004/11/22
8:35)
◆新紙幣発行について
11月1日から始まった20年ぶりの新札、最新の偽造防止技術を採用し、世界で最も偽造が困難な紙幣だ。しかし偽造技術も開発されていくからすぐに偽造紙幣が発行されるだろう。なぜならこの本来は紙切れに過ぎない日本銀行券の原価は、1万円札28円、5千円札26円、千円札18円であり新紙幣はこれより少し高い程度だ。10月31日深夜12時までは数十円程度の紙切れが一夜明けた瞬間から何百倍もの価値を持って世界に流通するのだから偽造犯の誘惑を招くのは防ぎがたい。新札発行によって全国の読み取り機や自販機やコピー機の切り替え需要によって一部のメーカーは潤った。。
しかし急激なインフレが起きたり、国の信用がゆらぐと国債の暴落から始まって経済は混乱状態となり、国民生活は破壊される。日本円は世界で最もドルとの連動性が強いので、ドルの変動がそのまま日本円の変動に波及する。いま米国ドルは実は双子の赤字を抱えて膨張する軍事費を支える国債を過剰発行し、それを必至で買い支えないとドルと円は崩壊するという「危険な綱渡りをやっている。米国が全世界で戦争を求めて必死になっているのも、実は自国通貨の暴落をくい止める最後のあがきに過ぎない。日本銀行券の向こうにドル危機が透けて見える。その円も返せる見込みのない膨大な国債返還の時期を迎えてのたうち回っている現状だ。
◆名古屋市・新南陽工場住民訴訟 鹿島建設12億円損害賠償金を振り込む
94年に元公明党市議や元建築局次長、鹿島建設などゼネコン5社がおこなった談合汚職事件が名古屋市に損害を与えたとして、被告らに賠償を求めていた判決が確定した。ゼネコン5社に9億円の損害賠償を命じた2審判決が最高裁で確定し、被告・鹿島建設は損害賠償金9億円と遅延損害金3億4千万円、合計12億4千720万円を名古屋市に支払った。
◆名古屋市における大型店の進出と営業
地下鉄自由が丘駅の上に04年2月に開店したマックスバリュ自由が丘店が営業時間変更届を提出した。変更内容は現行営業時間午前10時ー午後5時半を11月27日(土)から午前9時ー深夜24時までに延長するというものだ。大店立地法では届け出によって変更はすぐに実施できる。説明会は21日(日)午後1時と3時30分に城山病院北の自由が丘会館で開催され誰でも参加できる。千種区吹上のサッポロビール工場跡地に大型スーパー「イオン」が11月5日に出店届を提出した。今後は届出書の閲覧、説明会の開催を経て8ヶ月以内に名古屋市の意見の有無が決定される。
マックス・バリュー住民説明会は市都市計画課3名と環境測定企業2名、住民出席者は私を含めて3名であった。冒頭に都市計画課課長から10分程度の経過説明があり質疑応答が交わされた。要するに市の立場は、都市活性化と地下鉄利用者の買い物の利便性を認めて深夜営業を認めるというものだ。学区やPTA,学校への説明は複数回おこなわれ事前の了解は取ってあるという。公式の住民説明会以前に地元関係者への事前了解は得ており、この説明会は開催自体を目的にした形式的なものに過ぎなかった。マックス・バリュウー自由が丘店の本質は、名古屋市の賃貸住宅の1階を賃貸して経営している市民の財産での深夜営業を店の要望を受けて認めるというものであり、他の大型店が私有財産施設での営業をおこなっているのとは基本的に異なるという点にある。市の公共施設での深夜営業というまちづくりに対する市の基本姿勢が問われているのも関わらず、そのような問題意識はなかった。ハバーマスのいう公共性の構造転換を身近な地域で実感した1日であった。大組織に吸収された市民の民主主義の質的な頽廃という問題が地域自治の中で問い直されている。今日はそうした意味で貴重な体験をした。
大店立地法は、大型店の設置者が周辺住民の生活環境の保持に「配慮」する義務を課し、その具体的な内容を「指針」で規定したが、04年度中に見直しが行われる。産業構造審議会流通部会と中小企業政策審議会商業部会の合同会議で論議が進行中だ。商工会議所、全国商店街連合会など中小企業4団体が7月に要望書を公表。「まちづくり3法制定当時に期待された効果は得られず、全国の中心市街地は3法制定時よりさらにさびれている。大型店出店に関わる現行制度の総合的・抜本的な見直し」が必要とした。全国商店街振興組合連合会調査では、繁栄している商店街2,3%、停滞・衰退している商店街96%という実態だ。全国商工会連合会が大型店問題が発生している575商工会対象の調査で大店立地法の欠点は以下の通り(複数回答 回答数400)。
地域商業との調整機能が不充分 70%
環境配慮に加え経済的規制が必要 57%
郊外店舗対応などの広域調整機能が欠ける 46%
同法自体の認知度・関心が低い 32%
行政サイドの認知度・関心が低い 32%
出店時に偏り退店規制がない 28%
結論的に云えば都市計画による大型店誘導によって中心市街地は活性化するという戦略自体がすでに破産したのだ。(2004/11/21
19:13)
◆中小企業家同友会全国協議会景況調査 04年7−9月期オプション調査(回答908社)
○素材価格 今も上昇している36,4% 上昇したが一段落して横ばい34,2%(合計70,6%)
製造業 素材価格上昇80% 仕入困難33,1%
金属・機械関連 仕入困難60%
○素材価格上昇の販売価格転嫁
全業種平均 完全に転嫁5,3% 部分的に転嫁44,9% まったく転嫁できず43,7%
運輸業 転嫁できず93,8%
○経営圧迫
全業種平均57,4%
製造業69,5%
経営圧迫企業は売上高増加企業より減少企業に多く、価格転嫁ができない企業は業況の良い企業26,5%に対し悪い企業57,7%であり、業況の悪い業種と企業ほどダメージが大きい。
◆公営住宅廃止論
従来型住宅政策の公営住宅や公団・公社の借家は非効率で公平性を損なうから廃止し、供給中心の住宅政策を需要側低所得者に対する家賃補助へ切り替え、居住先を自ら選択できる住宅切符制を導入すべきであるとする山崎福寿氏(上智大)の新自由主義型住宅政策について検討する。日本経済新聞11月16日参照。以下は彼の主張の概要。( )内赤字部が筆者のコメント。
資源配分の効率性から住宅市場に於ける市場の失敗を証明する証拠はない。日本の借家市場は借地借家法によって実質的な家賃統制下にあり、借家市場の超過需要が解消せず借家不足の状態が続く。住宅市場が機能するのを法規制が疎外しているからだ。そこへ政府が住宅を供給すればより大きなムダが発生し効率性を損なう。需要が供給を上回っておれば価格の上昇を通じて超過需要は解消される。(要するに価格規制を全廃すれば超過需要状態にある住宅の価格が上昇し、住宅を諦めることによって需給バランスが実現すると言っているに過ぎない)
再配分政策としての住宅政策は、公的住宅供給から借家建設補助、持ち家促進税制があるが再分配は失敗している。家賃の一部を補助する住宅補助制度は、家賃の実質的低下によってより高い家賃の借家への移住を誘発している。合理的な判断ができないホームレスの人には、家賃補助や住宅切符で民間簡易宿泊施設やアパートをに住まわせる。再分配政策として機能しているのは、持ち家が持てない弱者であり、持ち家促進税制や低利公庫融資は正当化できない。所得水準が低い人の保護は、所得自体の再分配によるのが望ましく、「石から人へ」と住宅補助をシフトする必要がある。政府の住宅直接供給は、入札制度によって効率的な業者選択がなされず税金のコストを上昇させている。ここでは政府の失敗が誘発され巨額の不良債権を抱えることとなった。(ここで最低指摘しておきたいことは、入札制度の欠陥自体を問わないで非効率性を指摘したり、公社・公団の不良債権の要因がバブル期に於ける土地の先行取得によって生まれたという経営の失敗を無視していることである。公共住宅の供給自体の問題ではなく、その経営手法に致命的な問題があったのだ)
家賃補助制度は、家賃の一定割合を補助する方法は高家賃住宅への移住を誘発するので失敗する。所得と生活水準の基準に該当する貧困者へ住宅切符を配布して、この切符を家主に渡し、家主は自治体で切符と交換に現金を入手する住宅切符制が望ましい。より低家賃の住宅への入居はさらに現金給付がおこなわれるようにすればよい。住宅切符は住宅に限定され流用はできない。特に震災時の仮設住宅に家賃を設定して切符を配布すれば住宅の自由選択が実現する。公団住宅は所得制限がなくほんらいの弱者以外の者が居座り再分配機能を失っている。公営住宅の所得制限のチェックも不充分であり、資格が所得だけで高額資産保有者が入居している不公平性がある。所得制限は自治体格差があり水平的均衡を欠いている。国民総背番号制による各人の資産と所得を充分に捕捉し所得再分配機能を強化する必要がある。(公団・公社の部分的な機能不全をあげて全否定する論法は同じである。部分的な不公平性は運用上の厳格さで解決できるのであり、公共住宅自体の廃止論の根拠とはならない。要するに氏の主張は、公共住宅を全否定し、民間事業者の住宅供給に委ねよと言うことだ。とうぜん民間住宅事業者は利益極大化をめざした中・高レベルの住宅供給を都市部では優先するから、貧困層の借家住宅は姿を消すか劣悪な住宅のみが残る。つまり氏の最大の目的である住宅選択の自由はごく一部の富裕層のみが実現し、公平性は失われる。さらに所得再分配の最適化は、氏の主張によれば、国民総背番号制で実現するという原理的な矛盾をはらんでいる。なぜなら完全な市場原理は政府の介入を全て許さないはずだから、国民総背番号制等という究極の政府介入によってしか市場原理を実現できないという混乱に陥っている)。(2004/11/17 20:16)
◆日本医労連「退勤時間全国調査」(10月12日ー22日 48組合8446人回答サンプル集計 16日発表)
平均1日残業時間 70分
始業前時間外労働 平均15.8分
就業時間後時間外労働 平均46,8分
時間外労働手当支給分 35,8%
不払い分賃金推計 1人当たり年間42万円 全国病院職員165万5千人では年間総額7千億円→12万人雇用分
◆群馬県 甘楽・富岡地区地域活性化農業の現況
甘楽富岡農協を中心に専業農家と女性、高齢農家、兼業農家が一体となった地域活性化農業を展開。少量多品種の野菜栽培を拡大し、農協直売店・都内量販店内の販売コーナー(インショップ)で新鮮な野菜と農産加工品を販売し作り手を増やしている。NHK・農協中央会第30回日本農業賞受賞。主力製品であった養蚕とコンニャクの輸入自由化で大打撃を受け、大規模産地づくりにも失敗し、地域の条件に適合した農業へ転換。自給的農家、女性、高齢者が積極的に農産に参加する基本路線を1997年に確立し、地域全体で農業生産を活性化した。政府主導の大規模農家による担い手戦略ではなく、小農が協同して生産するシステム。高齢者の健康維持の効果も生み老人医療費削減につながっている。
◆日本リサーチ総合研究所「消費者心理調査(隔月実施)」(16日発表 全国2200人対象 回答率57,5%)
生活不安度指数(今後1年間の暮らし向きへの見通し) 143(前回8月調査比+3ポイント)
同研究所コメント:原油高、米国経済の減速懸念による景況感悪化、所得と雇用への見方慎重、ガソリン・野菜の値上がりなど。
◆新潟中越地震被害状況
○小千谷市塩谷地区:49世帯130人全員が小千谷高校体育館で避難生活。3人の小学生死亡。49戸中40戸全壊。同地区は棚田を利用したコイ養殖産地。養殖池は全滅し50歳を過ぎた人がほとんどで転職は難しく養殖再開困難。
○長岡、小千谷市内高校生就職内定取り消し1人、採用延期2人、求人取り消し(長岡25 小千谷47うち高校生は長岡5件19人、小千谷2件2人)等相次ぐ。経済的理由で進学を就職に切り替えたり、逆に自宅の被害で就職を進学に切り替える生徒発生。
○中越地区障害者施設被害状況
98施設中60施設で建物と敷地の被害。人的被害はなく体調不良で2人入院。全壊施設4,余震による避難移設9.NPO法人作業所「あんしん」は建物損壊で立て替え必要だが2000万円必要、福祉法人は公的助成があるがNPO法人にはない、現在は託老所を借りて作業中だが見通しはない。小千谷市の知的障害者授産施設「ひかり工房」は被害少なく再開したが、精神的トラウマが深い。身体障害者授産施設「小千谷さくら」は車椅子の人が作業再開。長岡市・知的障害児施設「柿が岡学園」は損壊激しく保育園の開き部屋の仮施設で活動。行政による実情確認と支援と相談体制、復旧支援措置が緊急に求められる。義捐金連絡先:新潟県中蒲原郡横越町上町1の2の16 のぎくの家内 電話025-385-3920 郵便口座00580-4-57300(きょうされん新潟)
○新潟観光産業大打撃:新潟県旅館組合によれば10月23日の地震から11月10日までに31万人がキャンセル、被害額は40億ー50億円。湯沢温泉観光組合によれば、地震後の1週間で宿泊キャンセル18000人、11月30000人のキャンセル、被害額10億円。四国・九州からのスキー修学旅行のキャンセルが起これば影響は数年先まで及ぶ。被災地がある中で観光を呼びかけることには抵抗感がある。災害復旧貸付制度の融資枠拡大・条件緩和、融資の返済猶予、長期低利融資制度など緊急対策が求められている。被害は宿泊・飲食業、季節労働者雇用にも波及している。
○新潟県酒造組合被害状況((99社加盟):生産ラインなど操業停止した酒蔵は中越中心に25社、うち16日現在製造再開は9社、12社は年内製造再開予定、出荷体制は全社復旧。同組合03年度出荷量は6万4百キロリットルで来年は1割減産見通し。小千谷市の新潟銘醸(社員50人 1938年創業 越の寒中梅)は、蔵が崩壊したがタンク19本、60万gの酒は無事だった。3万6千gのタンク1本は穴が開き出荷前の4千本が割れた。道路復旧後の15日に出荷再開。精米所の修復は終わり、12月には仕込み蔵での仕込みを再開。新潟県内99社の酒造会社のうち40社が被害を受けたが17日までに全て出荷再開。
○魚沼産コシヒカリ:最大産地小千谷市(作付け面積2千f)藤田沢集落は31戸が兼業農家。棚田崩壊、陥没、液状化農道の寸断で復旧に1年、耕作放棄の危険。長岡市南部・越路町は陥没、液状化、砂の噴出で60−80%が被害。降雪前の復旧が勝負。新潟県農林水産業の推定被害総額1300億円(阪神大震災912億円)、農地被害は1500f、156億円。目に見える被害以上に地殻変動による湧き水の変化、降雪と融雪による地滑りと崩壊など数年を経過して表面化する被害が重大。中山間地は高齢者が多く、耕作放棄の引き金となる。農地復旧補助金を得ても自己負担に耐えられる高齢農家は少ない。家屋、農舎、農機具等の被害を総合すると、田の復旧だけでなく総合的できめの細かい支援が必要。
○救援復興被災地労働者センター「被災者アンケート」(長岡市・小千谷市ハローワーク来訪者対象 11・12日実施 285人回答)
小千谷市回答者22人うち9人(40%)ハローワークに来たのは今回の地震と関係がある、うつい5人(22,7%)が地震の影響で解雇になった
○川口町小高地区 集団移転決定:20日夜の住民総会(20世帯出席)で同地区の復興を断念し全世帯の集団移転を決定した。今回の地震で初めて一つの集落が姿を消す。9割の家が全壊し、25世帯中22世帯が避難所で生活し、3世帯が町外の家族の家に移っている。土砂ダムによる土石流と道路と水道の切断でライフラインの復旧見通しはない。全壊・半壊を判定した罹災証明書で義援金の配分額と生活再建支援法の支援額が決まり、再調査申し立てが相次いでいる。罹災証明書は市町村担当者が建物の外観を見て判定し、不服がある場合は内部に立ち入って再調査する。第1次義援金は、全壊世帯200万円、半壊世帯25万円で8倍の開きがある。
○要介護弱者 介護保険法は災害時特例として特養ホームなどが定員を超えて要介護高齢者を受け容れることを認めている。学校や体育館では食事や排泄が困難だからだ。今次地震で特養など介護施設に一時避難した高齢者は850人。受け入れ態勢がパンクし、食堂・布団・トイレが飽和状態で人手も不足しケアができない。在宅介護の自宅が全半壊したときには、短期入所は30日までで路頭に迷う。介護保険制度では在宅介護への復帰と短期入所の期限切れに対する対応は決めていない。長期避難を強いられる高齢者を介護保険制度で解決するのは困難だ。早急なケア付き仮設住宅と避難所の設置と、緊急時ベッド介護と職員の配置などを自治体が災害前に決めておくことが求められる。
◆2014年度消費税21%!?
財政制度審議会(財務相諮問機関)は10年後の財政試算を公表した(8日)。
○現行財政構造を維持した場合 一般会計歳出総額14年度119兆円(04年82,1兆円) 歳入56,4兆円と10.9兆円しか伸びないため財政赤字(公債金収入)62,9兆円(04年36,6兆円)に膨張。プライマリーバランスは14年度27,8兆円の赤字(04年度19兆円の赤字)となる。
○プライマリーバランスを黒字にする方法は
@歳出削減33%(04年度割合を比例的に削減すれば社会保障費-10,9兆円、公共事業費-2,8兆円)又は
A歳入増50%増収(消費税収のみの場合は21%↑)の何れかの選択を迫られる。
*プライマリーバランスとは:基礎的財政収支といい、国債発行を除いた歳入と過去の借金の元利支払を除く歳出の差額。赤字は税収のみによって歳出をまかなえず財政赤字が膨張する状態にある。政府は2010年に黒字実現を目標としている。
驚くべき試算だ。財政赤字の要因分析(ゼネコン型公共事業、企業法人税減税、高額所得者減税など)を回避し、財政構造自体の内容検討を行うことなく、現行構造を自動的に存続させるという前提で議論するなど財政学者はいったい何を考えているのだろうか。
◆新潟中越地震からリスクマネイジメントを考えるー集中と分散
松下電子新井工場(新潟県新井市)や新潟三洋電子(小千谷市)、日本精機(長岡市)などが直撃を受け、IC製造や自動車速度計の調達が不可能となって生産の停滞が誘発されている。大工業地帯ではないが、拠点分散した部品工場が壊滅したり、物流網の破断で全国に波及した。卵を一つの籠に盛るなーの喩えによって企業立地の分散が進み、リスク回避を求める立地戦略に再検討が求められている。リスク要因は、自然災害から環境問題、人的資源の制約、貿易摩擦、為替変動など外部要因を含む多様な要因がある。
規模の利益を超えて平均コストが反転上昇する点までは、生産拠点の集中が経営効率を実現するが、災害などの予測不能なリスク要因はその点に到達する以前にリスク分散を求める。しかし無定見な拠点の分散は量産効果を衰弱させ人材を散逸させる。業界首位であったNECウエハー処理工場は、熊本・山口・広島・滋賀から英国、米国、中国と分散しているが、日本企業の海外半導体拠点は今や壊滅状態だ。逆にサムスン電子の器興(キーフン)に集積している要塞化した工場や、台湾の新竹工業団地、中国の上海に蝟集している集中は驚異的な躍進を遂げている。ただし日本独自の集積形態である企業城下町がグローバル化と水平分業によって衰退している現状は集中の負の側面を表している。自然災害をも視野に入れた新たな分散と集中の最適化戦略が求められている。
集積に於ける垂直(タテ 製品の生産工程の流れを自社内の同一拠点に統合する)と水平(ヨコ 関連企業が同一地域に終結して強力な外部効果を生む)の関係をどう位置づけるかだ。注文製生産によって業績を拡大しているデルは垂直統合型生産システムを再構築しているが、部品から完成品に到る垂直一貫生産ではなく、戦略的な部品と生産設備を内製化して独自の製品を製造する部分垂直である。電子製品のコモデテイ化(一般商品化)に抵抗する松下電器、キャノン、シャープも同様の部分垂直を採用している。
水平型集積のモデルはシリコンバレーに代表されるネットワーク型クラスターであるが、シャープの大型液晶TVの拠点である三重県亀山市には、カラーフィルムの凸版印刷や偏光フィルムの日東電工をはじめとする液晶関連企業が集積し、経営スピードと協業化・技術共有化の外部効果を挙げている。成熟産業である繊維でも東レが合繊の川中分野の企業を集積する戦略を打ち出している。クラスターの代表例は、九州のシリコンアイランドといわれる半導体関連集積がある。従来は生産拠点が熊本、大分・長崎・鹿児島に点在していたが、大学の半導体研究と連携して設計や製造装置メーカーが参入し、さらにソニーの半導体部門の本社機能が福岡に移転し一大集積地になりつつある。トヨタのような特定企業の系列ネットワークも依然として協力であるが、むしろトレンドは競合企業も含めた集積による技術と人材の厚みや、コスト削減と同時にシナジー効果が生まれ、スピンオフ企業が誕生するクラスター型に可能性がある。
さてこうした集積は予期せぬ自然災害のリスクをどのようにマネイジメントできるか。破綻企業の主要な原因は天災ではなく経営戦略の失敗にある。従って災害リスクのの極小化は優先課題ではなく、むしろイノベーションを生む経営戦略の創出にある。安易な分散は経営資源を希薄化し、安易な集中はイノベーションを衰弱させる。結論的に言うと、イノベーションの加速を生む可能性があれば分散を、なければみずから集積を創り出すと言うことになる。以上・日本経済新聞11月1日朝刊参照。(2004/11/10
20:38)
◆間接差別の実態ー連合調査から
連合加盟1900組合対象(民間802,公務員249合計151組合回答)2−4月実施
○住宅手当支給要件
世帯主であること 35,9%
主たる生計維持者であること 31,3%
既婚者であること 7,5%
要件なし 25,3%
○家族手当、社宅利用要件
世帯主、主たる生計維持者 20−40%
○職場内結婚で女性が退職する 4,3%
○夫が管理職昇進時に妻が退職する 2,7%
連合加盟組合員男女各2500人対象 3141人回答
民間企業税込賃金(残業手当除く)平均月額 男性29万9000円 女性22万1000円
規定や慣行が外見上中立的な基準であっても性差別につながる間接差別が残存している。
◆ライブドアの経営戦略
堀江貴文社長が東大在学中の96年4月オン・ザ・エッジを設立した時の主要な事業は企業向けウエッブサイト制作であったが、02年2月にネット接続会社のライブドアを買収し知名度のあるこの会社名に変更し、事業も社名も次々と脱皮する行動力で躍進する。00年4月の東証マザーズ上場以来同社が公募増資で市場から吸い上げた資金は500億円に達し、これを元手に新たな買収を繰り返し事業規模を拡大した。04年9月営業利益は前期比4倍の60億円弱(国内最大手のヤフーの05年3月期予想営業利益は520億円)。現在の成長分野を軸に拡大するのではなく、証券子会社やベンチャー投資事業などで利益の70%が上がっている状況は金融・投資会社に近い。
携帯電話販売10%、ソフト開発・販売6%で、ポータルサイト事業は03年11月に開始したばかりで、DVDレンタルや短編映画提供を含むポータルの利益貢献率は7%に過ぎない。ポータルの競争力の源泉は集客力にあり、プロ野球球団経営参入表明効果は絶大で、同社の1ヶ月の閲覧件数は6月・1億件→9月・3億1千万件と爆発的に増大し、広告収入を拡大した。しかしヤフーの80分の1であり、1強のみが成長するポータル事業は不安要素を抱えている。ヤフーに較べてコンテンツが貧しく、オークション・人材仲介などが決定的に不足している。堀江社長は、ポータルでヤフーを超えるとか連結営業利益を1千億円(17倍)にするなど天文学的な目標を打ち出しているが、果たしてうまくいくか。
◆改悪年金法の実施プログラムは生活危機を誘発する
保険料が10数年に渡り毎年上昇し給付水準は20年後に85%以下に転落する改悪年金法のプログラムが実施に移される。同年金法は基礎年金の国庫負担率を1/3→1/2に引き上げるが、その財源は何か。所得税・住民税の定率減税の縮小・廃止であり、定率減税廃止に伴う国民負担は、年収500万ー700万で35000円ー82000円の増税となる(妻は専業主婦、子ども2人の標準世帯)。定率減税が企業減税と高所得者減税とのセットで実施されて4年が過ぎたが、企業収益+9兆円=家計所得-19兆円という挟状現象が起こっている。さらに定率減税廃止の後に消費税増税が迫っている。厚生年金保険料は労使折半で13,58%から毎年0,354%ずつ上昇し08年9月から15,35%となり、この負担を嫌悪する日本経団連が年金保険料は15%で固定せよと主張していることが背景にある。
すでに改悪年金法は提案時の基礎データである出生率と保険料納付率が机上の数字であることが明らかとなり、制度自体の存続が問われている。政府が約束した給付水準すら実現不可能となり、制度自体が虚構で崩壊の危機がある。急増する国民負担と年金危機は、国民購買力指数を決定的に衰弱させ日本経済の存続は工業製品輸出にしかないという極めて奇形化した構造となり、そのような経済システムが存続するはずがないことも明かである。高齢者は早くこの世を去れーというのがネオリベラリストの理念であり、もはや人間的な基礎条件を喪失しているといえよう。
◆介護保険制度05年2月見直しに向けて
寝たきりなどで24時間介護が必要な高齢者が入居する介護施設である特別養護老人ホームは、利用者が施設事業者と直接契約するシステムに変わってから、厚労省は全国待機者集計作業を廃止した。独自集計によると、介護保険前の10万人→32万人に3倍化している。介護施設の中核となる特養ホーム整備の抑制は介護保険制度自体への不信を誘発している。
厚労省が推進する介護予防の新規予防給付として老人向け筋トレ、転倒骨折予防訓練が始まるが、対象者は介護必要度で要介護・要介護1と認定された軽度サービス利用であり、これまで軽度利用者が使用していた調理、掃除の家事支援サービスを廃止する。軽度者への介護サービスは効果がないというのが厚労省の理由だが、西宮市のアンケート調査では81,9%が在宅サービスの利用で心身の状態に効果があったと答え、軽度利用者では98,5%が効果があったと答えている。
障害者福祉制度と介護保険制度の統合が検討され、20歳からの介護保険料徴収と障害者福祉の応益負担原則が導入されようとしている。身体・知的障害者への福祉サービスは昨年から支援費制度として利用されているが、利用者負担は所得に応じて負担を軽減する応能負担となっている。これを介護保険と同じサービス費用の一定部分を一律に負担する応益負担に切り替える。介護保険の10%負担を20−30%負担に引き上げる方向も打ち出されている。障害者の所得保障が実態として存在しないのに、なぜ応益負担を求める根拠があるのか。手話通訳やガイドヘルパーを『私益』とみなす発想は社会福祉の基本理念を逸脱している。
児童相談所の03年度処理件数は、10年前に較べて26569件(16,5倍)に激増しているが、児童福祉司は1732人で1,6倍に増加しているに過ぎない。人口10万ー13万人に一人という厚労省基準が40年間にわたって放置されてきた結果であり、全国児童相談所長会が5万人に1人という要望は無視され、その他の児童相談員と心理判定員の配置基準がないまま放置されてきた。
以上の社会福祉の実態をめぐる最悪の実態は、ネオリベラリズムの行き着く先が地獄にあることを明示している。
◆ドン・キホーテは風車に向かって突進したが
日用品安売り大手量販店「ドン・キホーテ」が独占禁止法違反(不公正取引)で公正取引委員会の立入検査を受けた(5日)。決算期に目標を達成するために、取引上の優越的地位を濫用して、日用品雑貨や衣料品などの納入業者jから事前協議なく過去にさかのぼって協賛金を要求したり、商品の種類と数量を確認する棚卸しの時に納入業者の従業員を無償で売場に派遣するよう強要した。納入業者にとっては重要な取引先でこの要請に従わざるを得なかった。協賛金は小売店の販促のための経費を納入業者が一部負担する協力金で、公取委は優越的地位を利用して負担を求めることは独禁法違反の警告を出していたが(91年)、三越(79年)とローソン(98年)が排除勧告を受けている。
ドン・キホーテは激安の殿堂を看板に首都圏中心に98店舗を展開し、00年に東証1部に上場した。商品を密集させて天上まで積んだ陳列や深夜営業が特徴でTV電話による医薬品販売も行い、年間売上高約1900億円。セルバンテスの「ドン・キホーテ」は風車に向かって突進したが、決して弱い者いじめはしなかった。同社は彼の名前を使用する資格はない。
防衛庁は三菱重工の指名停止処分を検討している。同社は防衛庁の昨年度契約高2800億円で企業別受注高第1位であり、防衛産業国内最大手である。今年8月に陸上自衛隊の88式地対艦誘導弾の改良型開発で、試作品の強度試験にほんらいかけるべき負荷をかけず、名古屋誘導推進システム製作所は4月に試験の不備を認識していながら社内と防衛庁へ報告せず、防衛庁技術研究本部も試験の不備の情報を把握していながら庁内へ報告していなかった。戦車と支援戦闘機は同社しか製造できないため契約は続けるがその他は指名停止となる可能性が高い。防衛産業の信頼度は地に堕ちることとなる。
三菱重工の虚偽製品納入は、三菱自工のハブ破損殺人事故での実験データ隠しと本質的に同じだ。三菱グループのコンプライアンスに原理的な欠陥があることがまたしても白日の下に曝された。軍需企業の存在自体が否定されなければならないが、それを前提としても欠陥武器で武装した自衛隊の自衛力は根底から崩壊している。防衛庁技術部が事前に知っていながら三菱重工の偽装工作に加担している実態は産官癒着の行き着くところを示している。三菱重工は幾多の防衛官僚の天下りポストを用意しているからだ。三菱重工製の武器は、まさに風車に向かって突進するドン・キホーテの槍ではないか。
04年4月に下請代金支払遅延防止法が改正されて物品製造・修理に加えてサービス分野も規制対象となり禁止行為も追加された。しかし公取委が今年度上半期に違反行為として是正勧告と警告を出した処理件数は811件に達している。前年同期43件上回る深刻な事態だ。下請法は、親企業による下請代金減額・買い叩き・支払遅延・物品不当返品・受領拒否などを禁止しているが優越的地位を利用する不公正取引が続発している。中小企業庁は公取委と連携してサービス分野の取引適正化特別対策を実施しているが、ソフト製作や運送取引の違反が横行している。全国下請中小企業団体中央会の調査によれば、コストダウンと低単価(産業用機械)・短納期受注(輸送用機械)が増大し、利益極大化を狙う大企業戦略が下請選別・集約化、海外部品調達、部品共通化、モジュール化によってアジア並みコスト削減を要求している。松下電器は4300億円の資材調達費削減、日産自動車は4年間で総額1兆円の調達コストを削減し、この負担はすべて下請に集中している。下請中小企業振興法による進行基準は、「対等なパートナーシップ」による「共存共栄」をめざす「下請の適正な利益を含み、労働時間短縮等労働条件の改善が可能となる」ように単価は「協議して決定すること」を規定している。この規定が遵守されない背景には、行政の系統的な立入検査を実現する下請検査官の増員と違反に対する罰則強化が遅れているところにある。
◆日銀・国庫納付金の激減
日銀の利益(剰余金)から国庫に納付される国庫納付金が、03目年度472億円(2年間で-1兆3400億円)に急減した。日銀はその理由を、@資産運用の利回り減A円高による外為差損B国債下落など剰余金自体の減少を挙げるが、与党による国債購入圧力への譲歩(97年・55兆円→04年10月・94兆円)と、日銀自己資本率維持のための法定準備金積立率引き上げ(5%→15%)が真の理由だ。背景には、ゼロ金利によるたんす預金の増加など自己資本率の分母となる銀行券発行残高膨張があり、日銀の量的緩和政策で分母が膨張していることがある。犠牲は民間一般庶民に集中している。
◆野村総研「ニート意識調査」(インターネットによるアンケート 10月実施 回答数1000 1日発表)
○ニート増加減少について 非常に問題がある50% 問題がある42,6%
○増加の原因はどこにあるか(複数回答可)
不況などの経済状況 64.9%
社会の変化 59,4%
家庭 55,5%
学校教育 38,6%
政府・自治体の取り組み 36,0%
地域コミュニテイ 15,1%
その他 4,8%
わからない 2,3%
○ニート増加が及ぼす影響
社会保障制度の崩壊 71,6%
経済成長の鈍化 59,4%
○身近にニートがいる場合の対応
本人と充分話し合う 62,5%
本人の意思に任せる 30,1%(若年層では40−50%)
○ニート増加に対する最も重要な取り組み
家庭教育の見直しや家庭内でのコミュニケーションの充実 38,6%
職業訓練や自立支援などの政策強化 24,7%
○ニートは今後増加するか
増加する 86,8%(19歳以下では94,3%)
◆帝国データバンク・ベンチャー企業倒産状況
同社のベンチャー定義は@他にない独自のビジネスモデルA株式公開を計画B経済産業省または自治体などから認定を受けているCベンチャー投資機関から出資を受けているの何れかに該当するもの
04年1月ー9月 65件 全国倒産数に占める割合0,61%(02年の0,60%を上回る過去最高)
設立から5年未満の倒産25%
原因別 経営計画の失敗18,5% 設備投資の失敗4,6% 新商品開発の失敗3,1%など内部環境要因が主原因
当初のビジネスモデルが挫折し業態転換で延命している倒産予備軍多数
◆トヨタ自動車の労働力構造
トヨタの04年10月現在の期間従業員は9200人であり、今年度から製造現場での受入が可能となった派遣社員1000人を合わせると12000人であり、04年3月末日20%増となった。トヨタは04年に国内生産を368万台(前年比5%増)とする生産計画だ。ハイブリッド車・プリウスを生産する提工場(豊田市)や高級車を生産する田原工場(田原市)は軒並みフル稼働で99年比56万台増産している。昨春までは国内生産300万ー330万台が最も効率的としていたが、北米市場の好調を受けて国内生産を拡大している。
生産拡大に対応する生産人員増は期間従業員((非正規労働者)が当てられ、正規社員の採用は抑制している。ここから純利益1兆円を超える天文学的な利益がもたらされている。日本経済新聞11月2日付け。
◆東アジアに於ける自由貿易協定(FTA)の協議
○看護師・介護士
フィリピン国内で看護師や介護士の資格を持つ人から両政府が候補者を選抜し、日本語の研修を受けた後特例的に入国を認めるビザを発給する。看護師は来日1年目から、介護士は3年間の実務研修後に日本で国家試験を受験できる。資格取得後の在留期間は上限3年とするが、更新を可能として在留制限を事実上廃止する。介護士は、フィリピン国内の資格がなくても、4年生大学卒業者を対象に2−4年間日本の養成施設で受講して資格を取得できるようにする。受入可能数は日本政府が年数百人程度を主張しているが合意はない。
○農業
フィリピン政府は、砂糖・鶏肉・マグロ・パイナップル・バナナの主要5品目の関税撤廃を要求し、日本政府は砂糖以外の4品目の低関税枠設定(メキシコ方式)を提案したが決裂。タイはコメの関税撤廃を要求を取り下げる見返りに、日本が鶏肉・砂糖・ぜんぷんの関税引き下げを検討することで協議中。
○鉱工業品
自動車産業の強化をめざすタイは、関税撤廃の例外扱いを主張。マレーシアは、自動車は日本のコメと同じように重要としてプロトンなど国民車メーカーへの保護政策継続を主張して、関税撤廃を求める日本と決裂。マレーシアは合板の自由化を求めて妥協案を模索中。韓国とは、自動車・エレクトロニクス製品の関税撤廃をめぐり慎重であり、日韓FTAで対日赤字の拡大と中小企業への打撃を警戒する産業界の声が強い。目標合意時期は、05年度中。以上日本経済新聞10月31日付け。
以上のFTA交渉をめぐる最大の問題点は、交渉過程が非公開で説明責任が果たされていないことにあり、特に労働関係の交渉がまったく掴めないことである。この点でUEと南ア間で締結されたFTAは、その交渉過程から労働条件に到る包括的な内容ととなっており世界に一つのモデルを提供している。逆に日本・メキシコ経済連携協定(EPA)による農産品等関税軽減・撤廃暫定措置は、農産品2340品目のうち1080品目の関税撤廃をおこない、これによって工業製品中心に日本の輸出は4000億円の利益を挙げるという試算があるが、打撃を受ける日本農業の試算はされていない。
◆デイーセントワーク(労働の人間化)の日本的実態
大企業労働の現場を民法625条・労働契約承継法・労働基準法第2条・第37条・労働安全衛生法・下請2法・整理解雇4要件最高裁判決等の観点から点検してみよう。
標準作業の決定要素は(1)物理的標準(作業の数値目標化)、(2)行動的標準(作業方法の内容)、(3)哲学的基準(人間的労働)の3つで規定されるが、日本では(3)の要素は組み入れられていない。例えば、トイレに行くための職場離脱は不可避的な遅れ時間として計上されるが日本ではない(特に自動車、電機産業などのベルトコンベア作業)。日本企業の生産計画や要員計画は、有給休暇取得率100%を前提に策定されず、逆に残業を前提に策定されている。
雇用契約形態に於けるパート、契約、派遣、請負などのい非正規雇用が激増している。雇用労働者数5300万人のうち1500万人(30%)が非正規雇用となっている。非正規雇用の形態は、(a)親企業が直接雇用するパート、(b)親企業が100%出資している子会社からの派遣、(c)一般の派遣会社から尚派遣、(d)職場全体が子会社化するなどであり、賃金は正規社員の50−60%。非正規労働者の大半は、未組織で労組組織率は遂に20%を切った。非人間的と言える労働条件が跋扈し始めた。通勤費が支給されない、一時金がゼロ、4ヶ月以内雇用による社会保険加入免除、個人請負の個人事業主扱い、等々。非正規労働者の組織化形態は、工場単位、職場単位、地域単位、既存労組加入など条件に応じた形態で追求されるが、ポイントは団体交渉権の確立にある。派遣・請負労働者の直接雇用、正規労働者との均等待遇、個人請負の就労実態に応じた労働者性の明確化等が緊急の課題となっている。
大企業は年功序列型賃金に代えて成果主義による個別管理を導入している。賃金総額の抑制と労働者間競争による生産性向上をめざす。目標の自主申告制度と成果による5段階評価が主流となっているが、技術革新のもとでの研究開発や技術部門など個人成果を測定することは至難であり、一部の販売営業の請負システム分野でしか個人成果は測れない。例えばコンベアーシステムでは、仕事は機械に従属する流れ作業だから、誰が成果を上げて誰が上げていないか測定できないから申告制度はない。従って5段階評価は、残業時間や年休取得率、勤怠(出勤欠勤)という成果以外の指標にならざるを得ない(城繁幸『内側から見た富士通』)。逆に成果主義は、労働者の生産意欲を奪い職場が荒廃するという実態を誘発し、年功を加味する給与体系に戻すという企業も増えている。特に学校教育に導入された場合は、学校教育法で規定されている校長の任務である@校務をつかさどるA教職員を管理するのうち、管理者業務のみを強調し校務者の面が奪われてしまう。およそ人格形成を追求する世界には適合しないものだ。成果主義賃金と人事考課制度は原則的に否定されるが、導入されている場合には@評価の開示原則の確立A賃金、昇給と連動しないという実質的な空洞化を実現する必要がある。
教員の1週間の労働時間は71時間(92年)→83時間26分(03年)と急増し、帰宅後の授業準備で1−2時間を使っている。60%が過労死不安を抱え、精神疾患が増大している。定年退職者数と中途退職者数はが小中学校で13862人と6963人(00年)→16967人と8089人(03年)と激増し、中途退職者数が定年退職者数の2倍になっている。学級定員、週当たり単位時間数、専科教員問題が緊急且つ切実な問題として浮上している。
三菱自動車のリコール隠し以来企業統治(CG)とコンプライアンスが重視されている。経営の失敗で赤字転落した場合に、株主重視の安定配当に固執して合理化に偏重することは許されなくなってきた。合理化にによる技術継承の衰弱が技術水準の低下を誘発して逆に経営悪化を招くという悪循環が起こる。人と技術を大切にするという企業の社会的責任が問われる。過密労働による労働災害の激増、災害補償コストの増大は企業経営を圧迫し、生産計画に見合う要因見直しが求められる。
◆厚労省「毎月勤労統計調査」(1日 速報値 従業員5人以上事業所)
9月所定内賃金(基本給・諸手当) 25万3110円(前年同月比-0,8% 16ヶ月連続マイナス)
所定外給与 +2,7%
現金給与総額 27万5373円(-0,3%) 実質賃金-0,4%
総実労働時間 151,4時間
所定外労働時間 +2,0%(27ヶ月連続増) 運輸・通信21,2時間 製造業16,1時間
常用労働者 +0,5% うち一般労働者-0,1% 短時間労働者+3,3%
夏期賞与(確報値) 40万5462円(-1,2% 2年ぶり減少) 製造業+4,3% 卸小売業-11,5% サービス業-4,4%
◆公正取引委員会「独占禁止法改正案」
○当初案 談合企業課徴金を現行の2倍化、違反行為の自主申告企業への課徴金減免制度、公取委調査権限強化
○最終案 大企業製造業違反対象商品売上高課徴金12%→10%へ削減、違反行為早期廃止(2年未満)課徴金20%削減、減免制度適用範囲拡大(2人目=50%削減→3人目=30%削減)、談合早期廃止企業は自主申告軽減措置を同時適用(談合早期廃止企業が2番目に自主申告した場合には、20%カットに加え50%軽減が追加される。すると課徴金10%の大企業製造業は10%→8%→4%となり現行の6%より2%削減される)。公取委は市場の番人・談合ハンターであるが、吠えない番人といわれ、今では犯人が番犬にかみついたといわれる。
課徴金軽減では、ある事情で違反ができなくなった場合やいったんは2年以内に止め半年ほどして再び違反に加わる場合も規定上は減額を維持することができ、単独ではなく共同して違反行為を止める組織的濫用が起こる。もともと減額案は、立入検査前に違反行為を止めていた事業者に取りやめた期間を算定対象から除外する(独占禁止法研究会報告書)というものであったが、最終案では立ち入り後もなしくずしに拡大している。
民主党案は、現行の課徴金制度を改め、事業者の違反度合いに応じた制裁金を増減する行政制裁金を導入するが、算定率は政府案と同じ10%であり、個別事例での加減は日本経団連提案と同じで、政府案より後退している。
◆厚労省調査・03年度有給休暇取得率(本社の正社員30人以上の4192社対象)
正社員平均 8.5日(取得可能日比47,4% 80年以来最低)
社員1000人以上は53,9% 300−1000人未満42,3% 300人未満43%
特別休暇制度設置企業 03年・57,6%→01年・61,4%、02年・59,3%
◆災害救済制度一覧
・被災者生活再建支援法 住宅全壊・半壊で居住不可能な者 最高300万円(生活関連100万円、居住関連200万円)
(問題点)
@居住関係経費として認められているのは、住宅の解体・除去、住宅の建設・購入・補修のための借入金利息に限られ、住宅本体の建設費・補習費が対象となっていない(個人財産は補償しない)。財産権と生存権保障から早く生活再建できる自宅修理・生業再建の公的補償が求められる。
A一部破損の世帯が対象とならない。現行支援対象は、▽全壊世帯▽半壊して倒壊防止の理由で解体した世帯▽災害が継続し長期にわたる居住不能状態が見込まれる世帯▽半壊して大規模補修なしに居住困難な世帯となっている。新潟中越地震の全壊は817世帯、半壊世帯は1839世帯、一部破損は16000世帯を超える(12日現在)。外観は保たれても土台が破損したりして豪雪に耐えられない住宅は対象外となる。
B世帯所得制限。全壊世帯で年収500万円以下は居住関係経費として200万円、必需品・医療費の生活関係経費100万円が支給されるが、同じ全壊でも500万ー700万円は各100万円、50万円と半減する。さらに500万円超で世帯主が45歳未満は支援されない。大規模半壊世帯の居住関連経費は100万円で生活関係経費は支給されない。
(課題)
@住宅本体再建への公的支援A支給額の増額B一部損壊を対象に入れるC所得制限規定を廃止するなど
(福井県7月豪雨の場合)
福井県は支援法の基準を上回る一部損壊と床上浸水、家財道具にも支援し所得制限を撤廃した。支援を制限するとコミュニテイーが壊れ、復旧に時間がかかると集落を放棄して街へ出てますます過疎化が進むからだ。零細企業が多い伝統工芸(鯖江市の越前漆器、今立町の越前和紙など)では、漆器の被害8億円、和紙は2億円の被害を受けた。都道府県で初めて生産施設の修繕と道具の買い換えに上限300万円の補助をおこなう。個人財産は支援しないという国の考えは間違いで、個人の責任で被災したのではないから現状復帰の支援対策は当然だとする県の考えがある。
・災害弔意金支給法 災害弔慰金 最高500万円 災害障害見舞金 最高250万円
・生活福祉資金 低所得者対象 災害援護基金(150万円 利率3%) 厚生資金(280万円 利率3%)
・災害減免法 住宅の1/2以上破損 所得税減免 雑損控除(資産災害に伴うやむを得ない支出)
・途方税減免 住民税・固定資産税・自動車税の減免は自治体条例による
・納税猶予 所得税は期限から1年以内 地方税は自治体条例による
・国保税 医療費支払い困難な場合の保険料減免
・授業料減免・補助 公立高校は自治体条例、私立高校は各学校
・修学費・就学支度金貸し付け 生活福祉資金貸付制度のひとつ 高校・高専・短大・大学対象無利子貸し付け
・日本学生支援機構災害採用 災害など緊急時の適時採用の学力・家計基準緩和 大学学生課問い合わせ
・災害救助法 日常生活最低限必要部分の1世帯51万9千円以内応急修理(期間1月以内)
・住宅金融公庫 5割以上被害を受けた住宅 建設は木造1100万円、補修は木造590万円 新たな宅地取得770万円 整地融資380万円 利率1,9%償還35年 宅地防災資金(災害防止の改善勧告)必要経費の90%又は1030万円 利子2,7%15年償還
・災害援護資金 住居の減失は所得1270万円未満(被害は730万円未満) 350万円貸し付け利率3%据置3年 償還10年
・中小企業金融公庫 別枠直接貸し付け1億5千万円 利子1,7%据置2年償還10年
・国民生活金融公庫 別枠直接貸し付け3千万円 利子1,7%据置2年償還10年
・商工組合中央金庫 別枠直接貸し付け組合に200億円 組合員に20億円 利子1,7%据置3年償還10年
・天災融資法 肥料・種籾購入など経営生活資金融資 天災融資 減収量30%以上・損失額1割以上 限度額200万円 利率は被害程度に応じる
・農業経営維持安定資金・林業経営安定資金 災害に伴う必要資金貸し付け 限度額200万円 利率0,8〜1,8%(償還期間に対応) 所得制限なし
*その他 都道府県市町村独自支援策は各自治体へ
・KDDI 小千谷、長岡、南魚沼市など24市町村の被災者10月分携帯電話au基本料免除
・厚労省 雇用調整助成金特例処置実施
来春入社予定の新規学卒者を対象に加える支給要件の緩和、中越地域の事業者の他交通途絶の被害が出ている周辺地域の事業主にも適用。同助成金は災害による休業や出向させる企業に休業手当・出向先賃金の1/2(中小企業は2/3)を一定期間補助する制度。
・新潟県被災者住宅応急修理制度:国基準への100万円上乗せ補助。高齢者で仮設住宅建設を待てない人、市町村が仮設住宅を造らない場合、民間賃貸住宅の借り上げ入居をおこなわない市町村向けの制度運用改善が求められる。
・新潟県・日本赤十字義援金第1次配分:死亡遺族20万円、重傷者10万円、住宅全壊200万円、大規模半壊100万円、半壊25万円、一部損壊5万円の一律支給。1次配分から一部損壊を含めたのは初めて。山古志村690世帯には当面一時金5万円を配分し被害確定後差額を追加する。全国義援金は142億円。現時点で判明している配分総額は88億円。
(混乱する避難者への緊急措置)
新潟県川口町・要介護1認定の小川マツさん(89)の場合。東京・国分寺に住む次男の元へ緊急避難し、立川市地域福祉サービス協会のコスモスは緊急プランを立てデイケアの入浴、ポータブルトイレ、レンタルベッドを提供したが、介護保険給付審査と支払業務をする国民健康保険団体連合会は、正式な手続きがないので介護保険の適用はできないとして全額自己負担とした。被災・川口町の行政が壊滅しケアマネージャー変更の手続きができない状況では緊急措置を執るべきではないか。
(京都府独自の住宅再建補助制度)
台風23号の被災住宅の建て替え・購入・補修に補助する府独自の制度スタート。被災住宅の補修などが終わっている場合でも証拠書類に基づいて助成する。対象者が広がる被災状況の柔軟な認定、自己資金調達アドバイスなどの運用が必要であり、国の半壊応急措置支給(51万9千円の現物支給)は宮津市1件のみで運用に問題がある。その他商工業者の機械設備・農家や漁船の被害助成・林道の作業道復旧・風倒木処理助成などが追加される必要がある。
◆総務省労働力調査(29日)
9月完全失業率(季節調整値)4,6%(前月比-0,2ポイント) 24歳以下男性 11,2%(同+0,5ポイント)
完全失業者数 309万人(前年同月比-37万人)
就業者数 6369万人
雇用者数 5353万人(前年同月比+25万人)
産業別 医療福祉+28万人 サービス業+29万人 製造業-18万人 卸小売業-12万人
雇用形態別 臨時雇い(1ヶ月以上1年未満)+24万人 常雇(1年以上)+18万人
◆厚生労働省一般職業紹介状況(29日)
9月有効求人倍率(季節調整値) 0,84倍(前月比+0,01ポイント)
有効求人数 -1,1%
有効求職者数 -2,4%
新規求人 前年同月比+11,6% 情報通信+26,8% サービス業+22,6%
◆国税庁の消費税徴収攻勢
03年に改正された消費税法によって、消費税の免税点は年間売上高3000万円から1千万円に引き下げられ、新たな課税対象業者数は個人が151満員、法人が53万社に上ると推定される(国税庁推計)。一般的に売上高が低くなるほど消費税を支払えない業者数が増える(経済産業省02年8−9月実態調査)。なぜなら大手製造業者や量販店は、消費税分を価格ぬ含めたり下請先に消費税分の値下げを強要して消費税分を確保することが可能だが、中小零細業者は価格競争によって消費税を転嫁できず、赤字であっても自己負担しなければならないからだ。消費税を転嫁するのが困難な企業は、売上高2500万円以上で50%だが、1000万円以下の企業では70%を超える(「中小企業庁02年調査)。すると生活費を切りつめるか借金する以外にない。
ところが国税庁ホームページを見ると、「新たに課税事業者となる方へ」と題するリーフで、「消費税納税資金の積立を」として積立額の基準を示し、「赤字申告でも納税する場合がある」とし「期限内納税がないと、延滞税や財産の差し押さえなどの滞納処分を受ける」と脅迫まがいの説明を行っている。
◆生活保護制度母子加算廃止と検証制度導入について
父母の一方又は両方がいない世帯で子どもを養育するために、子どもが18歳になった年の年度末まで生活保護の上乗せ支給する制度。適用件数は8万9294件(03年7月現在)で、加算額は東京23区(1級地)で在宅、子ども一人の場合月額2万3260円。小泉「骨太方針2004」で生活保護の加算・扶助基準・国庫負担率の見直しをうちだし、厚労省社会援護局は母子加算廃止を提案した。その理由はいかの3つ。
@加算による生活保護費上昇で就労・自立意欲が疎外される
A生活保護受給母子世帯が、一般母子世帯より平均所得・消費支出が高くなる(均衡論)
B母子世帯(一人親)というだけで一律支給は問題がある
@について。一般母子家庭の80%、生活保護受給母子世帯の40%が就労している実態は世界的に異常な水準である就労実態の調査なしに自立意欲の減退の結論は出せない。
A均衡論について。均衡が取れていないと云うことで所得の極めて低い母子世帯に合わせる理由はない。低すぎる母子世帯の支援責任が政府にある。均衡論の根拠となる資料は、母子加算を受給する母子家庭以外に父子家庭・祖父母養育家庭など多様であり、それを低所得の一般母子家庭と単純に比較して高低をいうことはできない。
生活保護見直しの第1弾として04年度から実施された老齢加算廃止は、廃止後の高齢者の必要経費への配慮義務が盛り込まれたが、実際には廃止のみが先行し配慮施策はおこなわれていない。不況下の国庫支出の削減は社会的弱者に集中している。
厚労省は生活保護給付水準を5年ごとに全面改定する検証制度の導入を05年度から導入する。一般世帯の支出額と較べて給付が適正かどうか地域・家族構成別に洗い直す。すでに公的年金の給付の自動調整制度が05年度から実施されて社会保障制度の再構築が本格化する。生活保護給付額は地域・家族構成で異なり、東京23区と大阪市の夫婦・子1人の標準世帯で月18万円であり今年度の総給付額は2兆3千億円。現行制度は家計消費と物価見通しと実績に応じた給付の若干の増減はあるが大幅見直しはなく、1%削減される程度であり、デフレ期でも据え置いた結果一般世帯より優遇されているという批判があるという。
検証制度の基礎データは、総務省・全国消費実態調査(5年ごとに家計の消費目的と消費額を地域と家族形態別に6万世帯対象に)を使い、主に低所得者層の食費を分析し最低限の生活水準の再定義をおこなう。現行給付額は6段階で同じ家族構成で30%程度の差が付いているが、物価地域差の縮小による給付額地域差の縮小をめざし、家族構成と年齢に応じた給付の廃止も検討する。厚労省推計では、社会保障給付は2025年度に現在の1,8倍の152億兆円に膨張し、社会保障給付伸び率を経済成長伸び率以下に抑制する主張が台頭している。
不況による経済成長率の鈍化+高齢化社会の進展→国家税収の減退→国家財政の支出の抑制→社会保障給付額抑制という単純且つ素朴な論理の具体化である。財政支出全体のフレームを原理的に再編成するという視点がなく、特にGDP成長率に対比して公共事業費と防衛庁予算の占拠率、歳入に占める法人税減税の聖域の再検討なくして、日本の国家財政の再建はあり得ない。公共事業+法人税減税→→民間企業活動活性化→歳入増大というプロジェクト型ケインズ政策が破綻しているのも関わらず、国民購買力を衰弱させる戦略から日本経済の再生はもたらされない。
◆野菜高騰は天災だからやむを得ないのか
○現在の野菜生産の実態は野菜生産構造改革によって特定主産地に生産が集中する状況となっている。レタスは長野・茨城で47%、白菜は長野・茨城で42%、キャベツは愛知・群馬・千葉・神奈川・茨城で52%を占め、これらの産地が被災すると出荷量が激減して価格が高騰するシステムとなっている。ここからレタス1個700円という暴騰が生まれる。鮮度が求められる野菜は地産地消システムが必要で特定産地育成政策はなじまない。
○大手スーパーによる先取り
大手スーパーは卸売市場のせりでは店頭陳列が間に合わないとして、産地から直接野菜を確保する先取りを行う。その結果卸市場を通過する野菜量が減少しセリ価格が高騰する。農水省はこのシステムを容認して制度的に定着している。
○農水省の緊急野菜供給対策事業廃止
契約野菜の緊急放出を行う従来の政策が、事業主体の野菜供給安定基金が農畜産業振興機構に統合されたのを契機に2003年に廃止された。
○農業災害補償制度の欠陥
損害保険に該当する農業災害補償は、露地野菜を対象としない(スイートコーン、タマネギ、カボチャを除く)ので、台風・長雨による被害は野菜生産者には一切保障はない。苗代、肥料代、農業機械のローンはそのまままで農家は無収入となる。必然的に農家は野菜生産から撤退して国内生産は縮小した。
○安易な自由化による海外野菜輸入
国内大手商社が主として中国と契約栽培し大量に安価な野菜を供給し、日本の国内生産システムを攪乱して、担い手が減少した。
◆小売商業調整特別措置法(商調法)による大型店出店調整
商調法は1978年の改正で商店街振興組合など商店街組織が活用・申請可能となり、大店立地法施行後の大型店新規出店に対する調整を求める事例が増加している。大型店新規出店届は、00年・193→01年・449→02年・638→03年・782→04年287(4−8月)と激増している。
○西新道錦会商店街振興組合(京都市中京区) 食品スーパーを核とする大型店に商調法による調査を京都府に申請
○彦根市 カインズとベイシアが入るスーパーモール(2万6千平方b)出店に自治体が仲介しはなしあい
○東京と書店商業組合 東京都産業労働局に商調法積極活用申し入れ(10月18日)
○東京都中野区・大谷書店(JR中野駅前) カルチャ・コンビニエンス・クラブの100%子会社シー・シー・シーエステートが、レンタルチェーン店TSUTAYA出店計画。100坪の書籍売場を1・2Fに設ける予定。書店商業組合による調整を東京都に申請し、都の仲介で書籍売場は3・4・5Fに変更することで合意。商調法申請によって会社の態度は一変し協議に応じた。1997年。
◆新潟中越地震による地域産業の影響
○日本精機(本社 長岡市 自動車用計器大手)
部品成形の製造子会社(小千谷)の建物設備被害で操業再開困難、本体工場で31日から計器生産再開
高見工場(長岡市 4輪社向けメーター類)は被害少なく26日操業再開、停電による生産管理システムが稼働せず本格生産は不可
○富士重工矢島工場(群馬県太田市)
日本精機からの速度計調達が不可能でレガシイ・インプレッサ・フォレスターの生産が27日以降影響を受ける(広報部)。その他ホンダ、三菱自工、スズキ、ヤマハなどが同様の影響。
○ホンダ 埼玉製作所(狭山市)・鈴鹿製作所(鈴鹿市)・八千代工業四日市製作所(四日市市)・熊本製作所(大津町)の軽自動車エンジン生産部門を11月8,9日の2日間休止。。影響は10200台で12月4,18日両土曜日の稼働で回復させる。二輪車生産は3日から休止している。
○スズキ 二輪車生産ラインの調整検討
○新潟三洋電子(小千谷市 三洋電機の半導体製造子会社)
操業再開不可能。工場への立入危険、設備点検遅れ、他工場での代替生産へ切り替え。
○ジャスコ小千谷(小千谷市)
営業再開メド立たず。
○松下電器産業・新井工場(新井市)
26日本格的操業再開、ファックス・複写機の子会社パナソニックコミュニケーションズ(小千谷市)は29日から部分再開
○川崎重工
二輪車製造明石工場の速度計在庫なくなり操業停止(100%日本精機から供給)
○石油資源開発
小千谷市などの公営都市ガス事業者向けのガス供給復活、操業を停止していたガス田「片貝工場」(小千谷市)が2日に操業再開。
現地パイプラインの破損を迂回ルートでガス配送再開。
○アルプス電気・長岡工場(長岡市)、小出工場(小出市)
操業停止、工場立入検査実施、29日に操業再開見通し
○ヤマト運輸、日本通運
宅配便集配不能地域縮小に向けて活動正常化開始
○ヤマハ発動機
日本精機からの部品納入一時停止に伴い本社工場(磐田市)の2輪車を29日と11月1日の2日間生産停止、28日は10%減産、減産規模は3700台、11月2日以降操業再開
○米価格センター
2004年度産米の入札取引実施、新潟産米に対する引き合いが強く魚沼産コシヒカリの申し込み倍率は3,4倍、価格は魚沼コシ60キロ当たり2万6442円と前月比1,6%(417円)上昇、岩舟コシ0,’%(129円)高の1万9333円、新潟一般コシ0,4%(72円)高の1万8772円と軒並み上昇。魚沼コシは地震の影響、他の銘柄は作況悪化への懸念。
○厚労省新潟管内労働局、労働基準局、公共職業安定所に相談窓口設置 労災保険・雇用保険・被害事業所の雇用維持相談受付
○損保各社対策本部設置 被災地契約者からの問い合わせ、現地調査、被害額見積もり、30−100人規模の要員派遣 地震保険は一般家庭向けの場合国と民間が共同運営し、保険料はすべて将来の保険金支払いに備えて積み立てられ、業界負担の上限があり業界への影響は軽微。家事や台風被害の火災保険とは別に加入する必要がある(加入率17,2%)。企業向けの地震保険は国の支援制度はなく契約件数が少ないので業績への影響は少ない。
◆東アジア共同体構想
欧州地域統合の流れは、1952年・欧州石炭鉄鋼共同体→1958年・欧州経済共同体(EEC)→1967年・欧州共同体(EC)→1993年・欧州連合→1999年・単一通貨統合(ユーロ)と飛躍的な進展を遂げたのに対し、アジアの地域統合は大きく遅れている。1985年以降のNIES(新興工業国群)の高度成長→1990年代のASEAN(東南アジア諸連合)と中国の経済発展を経て、東アジアの域内貿易と投資は相互依存構造を強め、1997年の東アジア経済危機を契機としたネットワークが形成されある経済圏を構築しつつある。政府ベースではASEAN+3(日中韓)首脳会議のもとに東アジア共同体構想を模索することが合意された。金融協力っと自由貿易協定(FTA)等の経済協力が推進されつつある。
(地理的区分としてのアジア)
・東アジア(北東アジア+東南アジア)
・南アジア
・中央アジア
・西アジア
*アジア太平洋(アジアの一部+太平洋州)、ユーラシア(アジア+ヨーロッパ)
(文明圏としてのアジア)
・中華帝国を中核とする朝貢関係
・大陸アジアと海洋アジアの交易関係
・北東アジア儒教文化圏
・東南アジア仏教・イスラム教・ヒンズー教交流圏
(ネーションとしてのアジア) *ベネデクト・アンダーソン『想像の共同体』
・19−20世紀前半 西欧植民地
・第2次大戦後 帝国の解体と国民国家建設→近代化(産業化)による華僑ネットワーク形成
東アジアの貿易・直接投資の急速な拡大は@域内経済の相互依存をもたらし、A電子・電気を中心とする機械産業の拡大をもたらした。貿易は、1980年ー2003年にかけ東アジアの対世界貿易が7倍に増えたが域内貿易は11倍に増えた。域内依存度は輸出より輸入で高いが、これは電子・電気の部品や中間財を調達して域外に輸出するシステムが構築されたことによる。経済地域化は@市場誘導型地域化(貿易・投資の自由化で経済が活性化しヒト・モノカネ・情報が集中するA制度誘導型地域化(FTAを通じて域内優遇措置を講じる)の2つがあるが、EUの地域化は制度誘導型であち、NAFTA市場誘導型から制度誘導型へ移行し、東アジアは20世紀まで市場誘導型であり21世紀に入って制度誘導型の要素が現れている。
東アジアは欧州に較べてFTAの動きが遅く、92年のASEANが合意したASEANFTAだけであったが、中国・韓国・日本を含めたFTA締結の合意がなされ、シンガポールやタイを中心に非アセアン諸国との2国間FATが締結された。北東アジアの日中韓と台湾のFTAは遅れ、02年日本・シンガポール協定が発効するまでは世界でFTAがない唯一の地域であった。背景にはWTOの多角的自由貿易交渉が遅れ、東アジアが輸出市場確保の手段として又経済危機の再発を防ぐ域内協力の重要性を認識し始めたからである。東アジアのFTAは、貿易自由化のみでなく直接投資の自由化、手続きの簡素化と共通化、人材、中小企業育成などの包括的な内容である。その背景には、域内諸国に発展レベルが異なり参加国が共通の利益を享受するためには貿易自由化だけでは不充分だとする認識がある。
◆地場農産物のアジア輸出ー愛知東三河IT農業研究会
愛知県東三河農業関連企業とJAでつくるIT農業研究会は、東三河農産物出研究会(JA,物流専門家)をつくり2005年1月からのサンプル輸出をめざし、海外市場と地域農業の活性化につなげる。輸出先は消費者の所得水準と輸送時間を考慮して、香港・上海・台湾を想定、豊橋産柿や渥美半島の菊。輸出手続き、検疫制度、採算性、現地流通チャネル、味の好みの現地調査→05年1月試験輸出→7月本格輸出の判断をおこなう。国内ではすでに鳥取梨や青森リンゴが積極的に輸出に取り組んでいる。
◆学生起業家への親の支援
○企画会社「キャンパスシテイー」
浜田優貴さん(21 東京理科大3年)が仲間4人と創業。家庭教師アルバイトをしたい学生が複数の家庭教師派遣会社に一括登録できるサービスや二次元バーコードをプリントしたTシャツ「Qシャツ」の開発・製造など。
○コーヒー移動販売店「ベネトウット」
植村彰文さん(22 大阪経済大)04年1月創業 本格コーヒーを100円からワゴン車で提供する。年商1億円。開業資金200万円は親から借りた。
○娯楽情報誌「ぴあ」
矢内広が父親が卒業旅行費用を流用して創業
○ライブドア
堀江貴文が大学在学中に手書きの事業計画書を友人の父親に見せて600万円の資金を引き出すことに成功
日本商工会議所主催「創業塾」受講者数は年400人ほどで学生を含めた20歳代の起業意欲が高まっている。1円起業制度の導入や支援する大学が増えている。終身雇用制度が崩れ親の世代が大企業への就職を進めにくくなっている。基本は本人の力であり自分の力であり、安易に親や周囲に頼るのは失敗する。
◆世界経済フォーラム「2004世界経済競争力報告」(13日)
世界経済フォーラムは各国政治指導者と企業経営者のダボス会議の主催団体で、経済指標と経営者アンケートによって国際経済競争力を評価する。
1)フィンランド2)アメリカ3)スウエーデン4)台湾5)デンマーク6)ノルウエー7)シンガポール8)スイス9)日本10)アイスランド
経済成長競争力指数を構成する要素は@技術力Aマクロ経済環境B公的制度の効率性の3つである。
日本は技術力5位、マクロ経済環境29位、公的制度の効率性16位であり、細分化した指標では企業研究開発支出・技術吸収力が1位、金利水準4位、物価安定6位、特許制度19位、司法独立性22位、官僚意思決定18位、農業政策コスト103位、銀行健全性101位等となっている。
ネオ・リベラリズムの市場原理の効率性基準による評価で、社会的厚生関数や経済生活の階層性や社会的経済の水準などはまったく無視されているのは団体の性格による。しかし北欧系が上位にあるのはなぜだろうか。電子技術産業とマクロ経済環境にあるのだろうか。世界経済フォーラムは世界の民衆運動から抗議を受けており、対抗運動として世界社会フォーラムが開催されている。
◆ある派遣労働者の実態ー福島県・Kさん(32 独身)の場合
県立高校を卒業後サービス業で働いたが倒産し失業状態となる。両親の年金で生活していたが、新聞の折り込み広告で派遣社員募集をみて決断、そこには次のような求人広告があった。
充実感を味わいたい方、スキルを生かしたい方、プライベートを満喫したい方 将来正社員も可能
機械設備保全業務、車両部品組立、パソコン部品の製造オペレーター
入社祝い金 5万円 赴任手当全額支給 諸設備付き寮完備 月収32万円以上可 日給8,500円以上
遠方の方は出張面接もおこないます 人気の信州大自然満喫で休日もリフレッシュ
労働条件の説明なしに長野工場へ赴任。現地で見せられた雇用契約書と服務規定は次の通り。
(雇用契約書)
勤務は昼夜2交代制 時給1000円
欠勤1回・遅刻1分で時給は830円
欠勤・勤務中の私用外出3回で時給776円
作業服・安全靴・帽子貸与料 5000円
家賃 5万円
(服務規程)
無届け欠勤3日は自己都合退職扱い
長髪・染髪厳禁 違反は減給・出勤停止・自己都合退職とする
Kさんの仕事は電子部品のハンダ付けでノルマ220〜270台(現実は150台が限界)
タイムレコーダーが15分進ませてあり定刻出勤しても遅刻扱いとなった 棍棒を持った正社員が労働を監視
残業1日3〜4時間 1日労働時間14〜15時間
手取り給与12〜13万円 残業と休日出勤で月22万円程度
長野工場 全従業員300人 正社員30人 派遣270人
◆クロネコヤマトの残業時間はなぜ半分に計算されるか
ヤマト運輸が開発したポータブルポス(PP)というドライバーが持つ携帯端末は、集荷から配達完了までを中央コンピュータが管理し、荷物がどこにあるかを瞬時に把握するシステムだ。携帯電話のような機器で伝票のバーコードを読み取りながら、ドライバーの労働時間の管理もおこなわれる。PPを起動させた時が始業時刻、終了させたときが終業時刻とされる。
PP起動は朝7時以降にと命令されているが、6時30分から荷物の仕分けをしないと配達が間に合わないが会社は許さない。仕事を終えて営業所に戻るとPPを切らないと業務内容を記録したレシートが出てこない仕組みなっている。そこから売上計算・日報・入金・業務日誌作成などの仕事が1時間から1時間30分かかる。しかも休憩時間を入力しないとPPの終了はできず、休憩は1時間と2時間の2種類しかなく、休憩なしでも1時間と入力せざるを得ない。人事部は入力終了後の修正を保障していると云うが、実際にはできない雰囲気だ。
残業手当は40時間分しか支払われない。40時間を超える部分は、基本給の一部と出来高払い部分の一部で支払い済みであるとする就業規則がある。あらかじめ毎月15時間30分(準社員は月7時間50分)の残業代を組み入れてある。基準賃金と残業手当の境界が不明で明らかな労基法違反の行為であり、労使協定で決めているとしても有効性はない。
(あるセールスドライバーの1日)
6:30 仕分け作業開始(配達順序に沿って) 荷物のバーコードをPPに読み込み
8:00 営業所出発(荷物100個程度)
10:00 タイムサービス付き荷物配達完了(特別料金)・通常荷物配達
(途中で地図を見るために車を止めたときにおにぎりを食べる)
14:00 営業所帰着 午後の二便の荷物仕分け・積み込み・配達
15:00 集荷作業開始(コンビニ、会社、個人)、不在者への再配達〜夕方まで
夜 事務処理(約一時間) 会議、夜間持ち込み荷物受付処理
22:00〜23:00 月2〜3回カギ当番(2人ペアで伝票控えと領収書の袋入れ、センター収支のプリントアウト、金庫とドアのカギ締め)
ヤマト運輸労組が会社と結んだ労働協約の年間総労働時間2650時間を超えない。この時間内に納めるために、PPの稼働時間を短縮する裏技が使われる。休憩しなくても2時間休憩と打ち込んだり、配達終了時点でPPを終了させて営業所に蹴る。さらには配達中途でPPを終了させて、配達語伝票を受け取り翌日に配達完了するなど。集配地域は5〜6人編成であるドライバーのPP稼働時間が長くなると、それ以上その人が働くことができないので他のドライバーにしわ寄せが行ってサービス残業が増えるからである。ドライバーの責任感を利用した連帯責任で残業時間をごまかすのである。Kさんの場合、2003年4月ー04年1月までの1ヶ月の労働時間はすべて200時間を超えたが、翌2月は200時間を切り、3月はわずか130時間で年間総労働時間は26501時間と歯止め時間にほぼ重なる。PPを起動させない労働がある。Kさんの場合は、1日5時間、6500円分(単価1300円として)がサービス残業となっている。ヤマト運輸のドライバー数4万5000人(パートを除く)が月20日出勤として毎日3万人が勤務しているから、全体で1日1億9500万円の残業代を会社は支払っていないと云うことになる。1919年創業のヤマト運輸は1976年に宅配便を日本で初めて開始し、04年3月期連結決算で営業収入1兆113億円、経常利益485億円となっている。
建交労ヤマト運輸支部の運動によって、PP始動前作業のサービス残業は減少し、有給休暇については今までの年間3日を自由に取ることが認められ、過労死したKさんの遺族は労基署に告発をおこなった。Tさんは、入社以来の出勤退勤時刻、休憩時間記録、賃金明細、雇用契約書を証拠資料としてサービス残業代の支払いを求める小額裁判の提起を準備している。
ヤマト運輸は、利用者とドライバーが直接連絡を取る「ドライバーダイレクト」サービスを11月1日から開始する。利用者が集荷や配達の希望を直接ドライバーの携帯にかけてやりとりできるシステムだ。地域担当ドライバー名と携帯電話番号を名刺やビラで地域の顧客に広く知らせる。運転中の携帯が鳴りやまぬようになると、運転中の携帯電話は道交法違反であるからその都度車を止めなければならない。広報課は、止められない場合は何回かの呼び出しに出なければ留守電に録音され、セールスドライバーがかけ直す。手を空けたまま会話できるハンズフリー機器を導入するという。タイムサービスでは、午前10時までに届けるサービスを9時までに早めるサービスを開始している。顧客満足がここまでくると異常な過重労働の負担を強いる。ヤマト運輸の企業理念は「常に働く喜びに満ちあふれ、社員と家族が夢と誇りの持てる企業をめざす」となっており、社長は「社員は人材だ、宝だ」と繰り返し訓示している。
◆緊急地域雇用創出特別交付金制度廃止
地方自治体が地域の実態にあった緊急事業を起こして失業者を採用する施策に国が交付金を出す制度で2000年にスタート。これまで3回にわたって6300億円が交付され、教育・文化、、福祉・保育、環境、地域振興など住民生活に役立つ各種事業を自治体で実施。今年度も事業額1200億円で約13万人の雇用効果を見込んでいる。雪かきや森林間伐、海岸や河川の美化、公園清掃などで全国83万人の雇用を創出し、次の就職先の決定に繋げる効果を持つ。政府は失業率改善を理由に来年度からの打ち切りを計画しているが、32都道府県536市町村と都道府県議長会が制度存続を要望。8月失業率4,8%(314万人)で、50歳以上の潜在失業者が増大している中でむしろ拡充強化すべきだという意見が強い。3分の1以上は1年以上の長期失業。完全失業者のうち失業給付を受給している人は20%で半数近くは無収入である。短期のつなぎ就労であっても緊急雇用対策として有効な制度である。
来年度予算概算要求では、コンテスト方式による雇用創造効果の高い事業に取り組む市町村等への支援が70億円となって交付金事業とはとてもいえない。03年度に実施された地域雇用受け皿事業特別奨励金は、3人以上の離職者を受け容れた場合に奨励金を支給する制度で予算額1千億円で23万人の雇用創出効果を見込んでいたが、サービス分野で新しく設立された会社に限定する等要件が厳しく9月までの実績は1700万円でわずか15人の雇用に過ぎない。
◆Jリーグのマネイジメント戦略ー広瀬一郎『Jリーグのマネイジメント』(東洋経済新報社)
Jリーグがスタートして10年の間で年商500億円のマーケットに成長した成功要因は何であったか。
(1)全体を一つの組織としてネットワークで結ぶ
個々のチームは個別法人であるが、単独では成立しない特異な商品として、観客を惹きつける魅力を創造する。
(2)トップダウン経営
リーグ全体をあたかも一つの会社のように想定し、参加スペック(放送権、チーム命名権、ユニフォームデザイン、会場照明度に到る等の条件を受け容れる参加要件。旧JSL(日本サッカーリーグ)の親会社主体の合議制からの訣別。コミッショナー権限の独立性。
(3)創設者たちの革新的企業家精神
(4)サッカー・スポーツの歴史的、国際的環境要因
(5)ステイクホルダーの三位一体性(参加企業・自治体・市民サポーター)とネットワーク型支援
◆西武鉄道持ち株比率虚偽報告・・・民法上の詐欺罪に該当
西武鉄道関東財務局提出有価証券報告書(04年3月期 6月末提出)
上位10社持ち株比率63,68%記載→実際は88,57%
筆頭株主 コクド 43,16%記載→実際は64,83% プリンスホテル0,98%記載→実際は4,2%
コクドの実質保有株9400万株を1100人の個人名義記載
提義明コクド会長 非上場会社コクド株40%所有(西武グループ100社支配)、8月17日ー9月29日に7000万株(1株1260円)売却、10月13日虚偽記載公表後株価548円に急落、サントリー・キリンビール・サッポロビールなど10数社購入、インサイダー取引疑惑と購入企業の損害賠償席有請求、サントリー260万株(30億円)、小田急260万株(30億円)、三菱電機20万株(2億2千万円)
東京証券取引所 上場廃止基準の虚偽記載として西武鉄道の上場廃止審査開始(10位までの大株主と役員の待ち株を合わせた比率が80%を超えると上場廃止となる)
証券取引等監視委員会 証券取引法違反容疑の調査開始
国土交通省 鉄道事業法による調査開始
◆第1生命経済研究所報告書「NEET人口の将来予測とマクロ経済への影響」(10月21日)
総務省国勢調査をもとに15−34歳の非労働力人口のうち通学と家事手伝いを除いた人をニートして算出。将来予測の前提として@各年齢層の人口が国立社会保障・人口問題研究所の推計値で推移するAニート人口が90−00年までの長期的動向と同様に推移するB政策的対応がとられないとして算出。
15−24歳のニート増加速度は速く、ニート人口全体に占める割合は05年・42,6%から10年・46,8%に上昇する。ニート人口全体は、00年・75万1000人→10年・98万4000人→15年・109万人→20年・120万2000人と急増する。15−34歳のニートの同年齢層に占める割合は、95年・0,8%→00年・2,2%→05年・2,7%→10年・3,4%→15年・4,1%→20年・4,8%と絶対比も上昇する。
ニート人口増大による経済への影響は、ニート期間5年の場合、生涯賃金は標準労働者に較べ25%以上少ない74,4%で10年の場合は50%になり、個人消費は03年で0,26%下押しされ、就業活動を行わないことで00−05年の潜在成長率は0,25%下押しされる。後数年で労働力不足の問題が誘発される。
◆米国型プライベイトバンキングの崩壊ーシテイバンク日本撤退
プライベイトバンキングは富裕層向けの資産運用サービスで、もともとは欧州で続発する戦争から資産を守るために、地政学的に安全だったスイスを拠点に発達し、堅実な運用活動を展開してきた。顧客とバンクの利益が相反しないことが大前提で、プライベイトバンカーは年功序列の固定給制を採用している。ところが米国のプライベイトバンクの経営は、手数料収入目当ての営業に積極的でリスクの説明には消極的で、顧客利益よりも企業利益を優先し、顧客に商品を売るほど自分の収入も増える給与体系を採っている。ここからシテイバンクの株価操作事件の被告人への融資やマネーロンダリング(資金洗浄)疑惑の不正口座開設などの違法行為が行われた。シテイバンクは、資産3億円以上の顧客には専属担当者を付け、きめ細かいサービスを提供するワンランク上のサービスというイメージを浸透させて顧客獲得に成功したが、顧客に複雑なハイリスク・デリバテイブ(金融派生商品)を売りつけるトラブルを誘発させた。担当者は過酷なノルマによる成果主義の査定を受け、不正操作に走った。
◆世界汚職番付 日本24位
世界の汚職の実態を監視するNGO・トランスペアレンシーインターナショナル(本部 ベルリン)は、04年度の世界146ヶ国・地域の18種類の調査を元に、公務員と政治家の清潔度を10点満点で指数化した(20日)。1位フィンランド、2位ニュージーランド、3位デンマーク、アイスランド、5位シンガポールであり、香港は16位、米国17位で日本は24位である。中国は71位で、最下位はハイチとバングラデイシュである。ベルリン発=AFP時事。
◆2020年までに森林8%が焼失
国連食糧農業機関(FAO)は、地球の酸素の30%をつくっているアマゾン熱帯雨林を含む中南米地域の森林が、2020年までに8%失われるという予測を発表した。減少分は日本の森林面積の2倍に相当する。中南米地域には02年現在で964平方キロのの森林があるが、20年には887万平方キロとなる。世界的な牛肉需要の高まりによって、ブラジルなどの農牧地が急拡大していることが原因という。サンパウロ発=時事。
◆投機資金がNY原油急騰をもたらしたー内閣府「今週の指標」(10月18日分)
日本が主に輸入している中東産ドバイ原油は、国際原油市場の指標となっているNY先物市場に連動して上昇しているが、価格差が以上に拡大している。NY・WTI(米国産標準油種)52,5ドル(10/12)に対しドバイ(東京)39,00ドル。NY先物市場の投機筋に占めるッシェアは25%(04年)である。米国の株式市場と国債市場の値動きが縮小傾向にあるのと比例して、NY原油先物市場の価格が上昇しているのは、投機資金が原油先物市場にシフトしていることを示す。原油市場の取引高は株式・国債市場に較べて小さく、投機資金の流入は原油価格高騰に直接的な影響を与える。
原油市場は米中を中心に需要が急増し、需要増に占める割合は中国33%、米国15%であり、1980年代以降の供給過剰の中で、メジャーによる投資不足が生産能力の鈍化を招き、原油価格は長期的に高止まり傾向で、投機資金が流入しやすく価格の乱高下を招いている。原油価格高騰の世界景気への影響が懸念される。
◆UNCTAD(国連貿易開発会議)「後発開発途上国(LDC)に関する報告書」
LDCとは、所得・教育・医療などの生活条件や農業生産の不安定性から見た世界で最も貧しい国50ヶ国を指す(国連加盟国191ヶ国の4分の一)。平均所得は、先進30ヶ国2万8388ドル、途上国全体1195ドルに対しわずか281ドルで、先進国の100分の1、途上国全体の4分の1にすぎない(02年度)。かって市場開放による輸出指向工業化を説いた開発経済学のパラダイムが失敗し、教育・熟練労働・法的制度などの内省的な諸要因を重視するものに転換してきた(アマルテイア・セン)。1990年代に市場開放政策は、LDCにとって貧困の解消には有効ではなかった。貿易依存度を高め、輸出を増やしたとしても、それは輸出部門を超えて国内開発と資本形成に結びつかず、自由化開始直後の援助も開放後には打ち切られる傾向がある。途上国開発アプローチが、内政要因を省みない輸出指向型から、途上国の独自の環境に適応した教育と資本形成をターゲットにすることが急務だ。
◆介護保険実施後の特別養護老人ホーム(東京都)
○介護保険実施後の施設運営状況
たいへんよくなった 0%
どちらかといえばよくなった 4,7%
どちらとも云えない 18,8%
どちらかといえば苦しくなった 39,1%
大変苦しくなった 31,3%
その他 6,3%
○特養ホームへの経営支援事業について
大幅に増額・拡充して欲しい 18,0%
増額・拡充して欲しい 49,2%
増額・拡充の必要はない 4,9%
その他 27,9%
利用者の重度化、高齢化による手厚い介護に対応する常勤職員の減少で、介護の質が低下している。東京都独自補助は、重度痴呆介護、寝たきり予防、生きがいなど生活全体を支援する予算は31億円に急減された(99年度は235億円)。政府による介護報酬充実と独自支援事業小規模施設への重点支援、特養ホームの対象者を重度者に限定しない、来年3月で特養対象外となる要支援利用者への支援が求められる。
◆精神障害など労災補償請求件数過去最大となる(04年度上半期4−9月 厚労省調査)
精神障害労災補償請求件数 246件(前年同期比+33件 過去最多)
精神障害労災補償認定件数 47件(比較可能な02年度以降最多)
自殺による労災補償請求件数 56件
自殺による労災補償認定件数 22件
脳・心臓疾患労災補償請求件数 394件(前年同期比+23件)
脳・心臓疾患労災補償認定件数 116件(前年同期比-20件)
精神障害患者数 (02年度)52万9000人(3年前より4万人増)
◆ボーダーライン層における福祉の陥穽
公営住宅の入居基準は、住宅に困窮する低所得者の下層25%となっており、その根拠は4人家族で約50平方bの最低居住水準を収入の15−18%以内で確保できない層が貧困下位層25%と一致したところにある。そこで給与所得者1人の3人家族で463万円以下という入居収入基準が規定された。収入基準は絶対基準だが、ベースにあるのは貧困全層の相対基準という矛盾は、世の中全体の収入が下降すれば収入基準自体を下げるということにならないところにある。厚労省国民生活基本調査では、日本の全世帯の2000年平均収入は96年から11%も下降しているのも関わらず、下層25%の相対基準は維持しているから収入基準は据え置かれる。
入居後に収入基準を超えても下層60%以内なら住み続けることができ、都営住宅の退去するまでの平均年数は19年で、入居者の10%が収入超過者となっている(「東京都2003年度調査」)。この収入基準は全国一律で、地域格差がある賃金では地域によって応募の資格者数が大幅に異なる。地域物価水準に連動した地域別基準の設定は、あまり気味の地域にとっては不利だから見送られた。
都営住宅基準は収入基準で資格がないが、母子家庭向けの児童扶養手当を打ち切られ(年収制限365万円)、水道料金の減免・都営バスの無料乗車券の打ち切りに連動し、下層25を少し超えたボーダーライン層は逆に困窮に陥っている。
自力で生活できなくなった人のための生活保護は、家族人数・年齢に応じた最低生活費に相当する保護基準額を算出し、不足額を支給する。食費などの日常生活費にあたる生活扶助と住宅扶助が含まれる。基準は市町村で異なり、住宅扶助が高い東京都では、2人以上の世帯に月6万9800円の住宅扶助が支給される。ここで生活保護の受給資格を少し超えている貧困世帯との貧富の逆転が生じる。丸裸になって扶助を受けるか、頑張って扶助はゼロか、その中間層の扶助システムが日本にはない。生活保護のうちの住宅扶助を部分支給にする等の検討が求められる。
最低賃金でフルタイムで働いても標準世帯の最低生活費は稼げない、課税最低限も生活保護基準より低い場合もある。生活保護基準を満たしていても、自助努力が足りないとして生活保護申請を却下される人もいる。その場合は、最低生活費以下の人が納税義務があるという矛盾が生じる。努力しても収入が増えない、リストラされるという過酷な現状で最低賃金水準そのものを再検討する必要がある。以上・日本経済新聞10月18日朝刊参照。
(標準3人世帯 夫33歳 妻29歳 子4歳 夫は給与所得者 妻は専業主婦 週40時間・52週の福祉基準)
○最低賃金 138万円(東京710円 沖縄606円 全国平均665円)
○生活保護基準 166万円(3級地ー2=2051市町村)
○住民税課税最低限 195万円
○生活保護基準 216万円(1級地ー1=57市町) 内訳:生活扶助月額16万2170円+住宅扶助1万3000円+児童養育加算5000円
○所得税の課税最低限 220万円
○生活保護基準 284万円(東京都特別区)
○公営住宅 453万円
(2004/10/20
18:32)
◆スギヤマ薬品の過労死認定
大手薬局チェーン「スギヤマ薬品」(本社・名古屋市)の薬剤師である杉山貴紀さん(24)は、豊田市内支店勤務中00年6月に就寝中突然死した。遺族が申請した労災認定に豊田労働基準監督署は過労死を認定し遺族補償一時金1677万円の支払を命じた。死亡前1カ月の残業時間が最低103時間に及び過労に伴う不整脈による心停止の可能性が高いと認定。貴紀さんは00年に同社に就職し、死亡前1ヶ月の残業は143時間、交代要員のいない一人体制で通し勤務(午前10時ー午後9時)が続いて、休憩・休息がとれない状態が続き、死因は当初嘔吐物を誤飲し気道閉塞とされたが、別の診断で慢性疲労に伴う脳・心臓疾患が原因とする意見書を提出し、同労基署が5人の医師団で判断した。
◆野村證券コース別人事制度の破綻
コース別人事制度は1999年の改正男女雇用機会均等法施行後に男女差別を実質的に温存する制度として機能してきた。男女別賃金表を廃止し、企業の努力義務であった募集・採用、配置・昇進の差別が禁止されるなかで、「仕事の違い」を理由に総合職と一般職に分けて管理するが、総合職に占める女性の割合は導入企業でわずか3%にすぎない。野村證券は1986年にこの制度を導入。男性は高卒13年で自動的に課長代理に昇進し、女性は昇格から除外された。総合職は部長への道があるが一般職の昇格は主任相当職までで課長代理にはなれない。年収で300万ー400万円の格差が生まれ、女性の研修もなく退職後の年金にも差が付く。1970年代までは結婚届には「妻」の名を書く欄しかなく、女性社員は「夫」と書き直して提出し、社内広報に結婚の案内が載ることはなく、課長が連日呼び出して退職を迫り、産休中はボーナスカット、育児時間の賃金カットが横行した。
2001年の国連・人権規約委員会最終見解は「多くの企業で女性には専門的な仕事に昇進する機会がほとんどないという雇用管理が続いていることに深い懸念を表明する」とし、2003年の国連・女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、コース別人事制度の一般職に圧倒的に女性が多く総合職に3%しかいない実態は間接差別にあたるとし、ILOは日本政府にコース別人事制度が女性差別に使われないよう必要な措置を執ることを強く勧告した。欧州の投資評価会社GESは、「野村證券の雇用と昇格に於ける女性差別問題でILOが調査し、裁判所が女性差別を認め賠償金の支払いを命じたこと」を理由に、野村ホールデイングスを「投資不適格会社」と同社のコンプライアンスを非難した。
国際的非難の中で野村證券は04年4月に倫理規程を公表し、人権尊重と性別による差別を一切行わないと表明した。同社の従業員1万1千人中で女性管理職は27人、男性一般職は一人もいない(!)。同社の女性社員13人が、労組に是正を求めてから30年、提訴から11年、すでに10人が定年を迎え一人はこの世を去った。改正雇用機会均等法6条と民法90条(公序良俗)違反とした02年の一審判決に次いで、04年10月15日の東京高裁和解勧告は、一審で退けた昇格を認める画期的な内容となった。原告に和解金を支払い、全員を一般職から総合職へ転換させ課長代理に昇格させるというものだ。改正均等法以前の差別についても是正に踏み込んだもので、同様の裁判を提起している兼松・岡谷精機・住友金属などに影響を与え日本の女性労働史上に巨大な足跡が残ることとなった。(2004/10/19
8:20)
◆生産者米価の暴落と産地崩壊の危機
コメの店頭価格は変わっていないのに生産者価格が昨年比40−50%暴落しているのはなぜだろうか。農協が事実上の農家手取り価格となる「仮渡し価格」表をみると、軒並み1万円(60kg)を切っている。米生産原価費用は、60kg当たり1万9千円、農機具と肥料の物財費だけで9206円(埼玉県平均)、それに借地料と金利負担を参入すると1万円の手取り価格では労賃が出ない。農水省は「政府の需給調整が廃止されると、生産者米価は輸入米価基準の60kg・8千円まで低下し、生産から撤退する稲作農家が出現して1万2千円程度に落ち着く」と試算したが、すでにこの水準に近い。
なぜ生産者米価は暴落しているのであろうか。全農と卸売り会社が03年度米を高く買ったが(一時2万3千円)、売れ残って億単位の赤字となり、それを04年度米で回復させようとしている。かっては食管法の下で、国が生産コストに見合う価格で買い入れ、消費者米価を安価に設定し、入札制度も一定の幅でしか入札できない「値幅制限」を実施したが、現行・食糧法と米政策改革大綱(03年)で米は野菜と同じ普通の商品となった。業者の安定的仕入を保障する計画流通制度も04年から廃止となり、米相場は市場に委ねられて大手卸売会社数社が買い占めを行い、同時に中小商店が高価格でも仕入れざるを得なくなって昨年の暴騰が誘発された。
農水省は03年度から超古米(7−8年前の家畜のエサやプラステック原料用)を1万円で大量放出したが、この超低価格米は外食と給食に流れ、スーパーには古米臭を消す炊飯用添加剤を添付した複数原料米表示の米が流れた。政府在庫米は、100万トンが適正備蓄であるのも関わらず、放出によって60万トンに激減し、農水省自体が最大の卸売り会社となって市場に翻弄されている。04年産米は同期落札価格として過去最低レベルに暴落しているが、売り手は値崩れ防止で価格を高くし売れ残りが多数発生している。
ではどうしたらいいのか。いま緊急に実施して経営破綻と農村経済の崩壊を食い止める緊急措置を早急に執らなければならない。
@超古米の主食用売却を中止して市場隔離を行う
A03,04年産米の政府買い上げを実施する(現在は40万トンに過ぎない)
B買入入札制度を中止し適正価格で実施する
C輸入米(ミニマムアクセス)を一時中止する
D米穀価格形成センターでの入札に値幅制限制度を導入する
E先物取引導入を再考する
(補足資料)
○農水省「農業経営部門別統計調査」(10月15日)
稲作を主とする農家の農業所得(2003年) 平均248万円 稲作収入156万円
10ha以上の農家(全農家の3%)稲作所得755万円 米価20%下落で373万円減収
水稲作付け農家160万7千戸(04年1月時点 前年比-3万戸)
○農水省「農業・食料関連産業経済計算速報」(10月15日)
食品・非食品合計国内生産額103兆7千13億円(前年比-1,9%)
農業国内生産額9兆8234億円(前年比-0,6%)
食料関連産業に占める農業生産者所得割合9,6%(農家による直売、産直、食品加工、農村レストラン、民宿経営増大)
○農水省「農業総生産額」(10月15日)
03年度農業総生産額 8兆9011億円(前年比-0,3% ピークは1984年11兆7千億円)
畜産部門がBSEの影響で前年比-7,4%、その他果実・野菜・花卉は輸入増による価格低下で減少
米は冷害で生産量減少したが、価格が大手卸の買い占めで上昇し産出額7,9%増大
◆日本経団連「2004年版経営労働政策委員会報告」にみる賃金政策
賃金国際比較
○為替レート基準(同報告) 日本100 米国101 ドイツ 85 イギリス 86 フランス 63
○購買力平価比較(厚労省) 日本100 米国133 ドイツ161 イギリス133 フランス124
日本経団連の為替レート基準の根拠:経済グローバル化→世界シェア競争→為替レートによるコスト競争
この主張の非整合性:賃金コスト=賃金水準+労働時間・・・・労働時間比較を排除して算出する
(その結果)
○営業利益率(=営業利益÷売上高×100) *賃金コストが高いと営業利益率↓ 低いと営業利益率↑
東芝有価証券報告書(03年4月1日ー04年3月31日)連結決算所在地セグメント情報(日本、アジア、北米、欧州、その他)
営業利益率 日本3,01% 北米0,96% 欧州0,77%
日本の賃金コストは世界で最も低位(利益率:北米は日本の3,14倍、欧州は3,91倍)
◆派遣・請負業務ーチラシ・テイッシュ配り労働の実態ーUさん(23)の場合
4:30起床・洗顔・朝食
6:00出勤
7:15新宿英会話学校前集合・準備
7:30英会話学校勧誘チラシ配布開始
9:00チラシ配布終了・後かたづけ
ファーストフード店で飲茶
10:45渋谷駅集合・準備
11:00コンタクト店の勧誘ビラ配布開始
(業務請負会社に連絡して途中トイレに行く)
13:00昼食休憩 着替えに30分、食事時間30分
14:00ビラ配布再開
17:00ビラ配布完了・片づけ
17:45新宿英会話学校前集合・準備
18:00英会話学校勧誘チラシ配布開始
20:00チラシ配布終了・片づけ
契約労働時間 9時間30分
実労働時間 13時間
往復労働時間含めて16時間拘束
手取り月収 16万円(土日入れて)
雇用契約書・給与明細書なし
有給休暇・残業手当なし
本業に付随する準備時間が労働時間に参入されていない
以上携帯サイト「派遣・請負のひろば」参照。
◆ドイツ・マイスター制度の崩壊
マイスター制度の原型は、手工的熟練を維持するためにつくられた近代的手工業にある。19世紀末から徐々に形成され、敗戦で廃止されたが、1953年の手工業秩序法によって復活した。125種の職種別に職業訓練と開業資格を結合し、企業実習と職業学校の教育訓練を一体にして、中学卒の見習いを教える。経験と試験を経て、職人→マイスターになる。マイスターになると、見習いの教育権と開業資格を得る。
多くの職種が技術進歩によってしだいに陳腐化し、技能の技術化と技術の複合化によって、手工業にゆらぎが生じた。さらにドイツ独自の制度はEUの他国からみれば規制にあたり、規制緩和の中で参入規制が問題となった。2004年1月に改正手工業秩序法が施行され、免許制は41種に限定され、他の職種は自由化された。41種の大半は、建設・サービス業であり必ずしもものづくり関連ではない。かってものづくりの根幹にあった工作機械製造職は手工業そのものから外れた。半世紀にわたるドイツ手工業の歴史は大きな転換期に直面している。以上は清成忠男氏のエッセイから(日本経済新聞10月12日号所収)。
◆高校生の最新就職情報(東北地方)
9月16日解禁された高校生の就職活動。
宮城県 高校生求人倍率 0,35倍(前年比+0,09ポイント 7月末現在厚労省調査)
青森県 同上 0,09倍(前年比-0,01ポイント 全国最低 下落したのは高知と青森のみ)
東北全体 同上 0,29倍
全国平均 0,69倍(前年比0,16ポイント)
青森県 今春高卒就職希望者の就職率 95,4%
但し当初就職希望者5514人 1年で3717人(-33%) 当初希望者で計算すると就職率 64,3%
就職諦めた層は大部分フリーター化(事務・販売部門が大卒に置換)
(対応)
岩手県大船渡市(人口45000人) 新高卒者常用採用企業事業主へ10万円交付(昨年23社)
山形県 トラアイアル雇用(30歳未満の若年者を試行的に採用した企業に最大3ヶ月・1人1ヶ月5万円支給する国の制度)した企業に1人当たり10万円支給(昨年880人分支給)
◆アジア欧州首脳会議(ASEM)「東アジア債券市場」提案(10月8日)
ASEMは、13ヶ国が新規参加してアジア欧州38ヶ国の機構(世界人口の40%、GDP50%、貿易総額44%)に発展している。米国に対抗する多国間主義と国連重視戦略を打ち出したが、対米自立の新たなモデルとなるかは不明だ。しかし東アジア債券市場構想は、円(Y)・ユーロ(E)・米ドル(S)からなるバスケット通貨を使用する「ASEM/YESボンド」と呼び、アジア通貨危機の再発を防止し、アジア地域での貯蓄と投資を効果的に結合し、ユーロの国際的使用と欧州金融機関と投資家ビジネスの機会を拡大し、事実上の米ドル一極体制を多様化する狙い。
◆文科省のデータ操作
OECD(経済協力開発機構 30ヶ国加盟)「図表でみる教育2004年版」
(学級規模)加盟国中日本は最下位から2番目
小学校(初等教育) 23ヶ国平均 21,8人 日本 28,8人
中学校(前期初等教育) 23ヶ国平均 23,7人 日本 34,3人 (*日本は国私立合計)
日本で30人学級を実現した場合 84000学級増 教員111000人雇用増
文部科学省「教育指標の国際比較」(01年度公立のみ)
小学校 26,8人
中学校 31,8人
文部科学省「学校基本調査報告書」(01年度国公私立合計)
小学校 26,9人
中学校 32,1人
OECD指標と文科省指標に2人程度の差異があるのはなぜか。OECDは特別学級を除いた通常学級で算出するが、文科省はすべて含めて算出する。特別学級は8人編成が基準であり、含めれば平均人数は低下する。文科省は国際比較に、OECDのデータを使わず特別学級を含めたデータを使い、表面上の糊塗を狙うが基礎統計の有効性がない。
◆パート・派遣実態調査アンケート結果(新日本婦人の会 04年3−4月 パート4294人 派遣547人回答)
(パート)
40歳以上70% 福祉・医療分野増大
1日労働時間 8時間以上 10,6%(99年比+8,9%)
労働時間帯 午前〜午後69,1%
残業あり 45,8%(99年34,9% 79年20,2%)
夜10時以降の残業あり 4,3%(前回2,9%)
残業手当あり 50%
平均時間給 889円 最低額(製造業)470円地域最低賃金を下回る1,2%
700円台28,4% 800円台26,0% 900円台11,3%
(派遣)
20−30歳 60%
派遣前は正社員 47,7%
労働時間 8時間 35,1% (7時間と合わせると70%)
賃金 月15万円未満40% 25万円以上3,5%
(社会保険加入状況)
加入 24,5%
非加入 71,8%
不明 2,1%
わからない 1,6%
(育児介護休業制度)
制度がない 40,7%
(生理休暇)
取れる 7,3%(前回14,4%)
(健康診断)
ない 38,6%
(年次有給休暇)
制度がない 30%
(今の職場での主な悩み、問題)
賃金が安い 39,1%
人間関係が難しい 24,1%
いつ解雇されるか分からない 19,9%(前回は5,3%)
正社員との差がある 19,7%
仕事がきつい 16,9%
休暇が取れない 13,3%
正社員になれない 12,4%
労働時間が短い 11,3%
労働時間が長い 4,5%
(労働条件の不利な変更)
あった 20% うち賃金カット 解雇14,9%
(労働組合)
ある 33,5% うち正社員とパートが同一 46,4%
(パートの労働条件交渉)
したことがある 16,7% 賃上げ、10分間のトイレ休憩、3級ヘルパーの契約更新、解雇通知取り消しなど
(派遣労働者の年齢)
19歳以下 0,4%
20歳代 27,6%
30歳代 33,1%
40歳代 20,1%
50歳代 13,7%
60歳以上 4,9%
不明 0,2%
(派遣労働者になる前は)
正社員として働いていた 47,7%
(契約形態)
登録型 54,3%(99年比+23,6ポイント)
常用型 40,4%(99年比-24,3ポイント)
(派遣元会社の派遣先会社の労働条件説明)
口頭説明 38,8%
(派遣先会社の契約内容の遵守)
されていない 9,5%
(派遣先会社が派遣元に支払う派遣料の認知)
知っている 10,2%
大体知っている 9,1%
知らない 74,8%
不明5,9%
(派遣料)
時給2800円(月額80万円 20歳後半 放送機器操作)→手取り月給20−25万円
月額65万円(50歳代前半 情報システム開発)→手取り月給15−20万円
(残業)
ある 50% 平均12,1時間 残業手当あり90% 法定25%以上13,7%
(派遣になった動機)
正社員に就職できなかったから 29,1%(89年比+15,8ポイント)
(今後も派遣を続けるか)
続ける 43,7%(99年比+7,5ポイント)
分からない40%
(職場での主な悩み)
収入が不安定で生活設計が立たない 34,4%
意見や苦情を持って行くところがない 25,4%
派遣先での人間関係 20,3%
社会保険が不備 17,4%
教育・研修の機会がない 13,9%
派遣先での差別待遇 13,7%
◆東芝にみる日独企業の差異
東芝は連結決算対象企業で国内235社、海外148社という典型的な多国籍企業だ。国内と海外の労働条件の差異をみる。対象はドイツ社(デンシデバイス事業部門の主力企業セミコンダクター(日本)の子会社でニーダーザクセン州ブラウンシュバイク市)。日本企業がUEに進出すると、EU労働関係法、EUEU指令、労働法制、労働協約によって子会社の労働条件が規定される。ドイツ社の労働条件は、金属電機産業の経営者団体とIGメタル(金属産業労働組合)が締結したニーダーザクセン地区労働協約で決まり、国内工場は東芝と東芝労組が結んだ労働協約で決まる。両者を比較してみよう(2002年末労働協約)。
日本東芝 東芝セミコンダクタ・ドイツ社
労働時間 所定 1日7時間45分(週38時間45分) 週35時間(日7時間)
年間1860,3時間 年間1449時間(資料なくドイツ平均とする)
所定外 月40時間 特例月60時間 週10時間、月20時間
連続3赤月で180時間を超えない
休日出勤規制月3回
年次有給休暇 勤続1年以上出勤率8割 24日 勤続6ヶ月以上 30日 6ヶ月未満は各月2,5日
1年未満は18日
(所定外労働時間)
東芝労働協約:業務上必要ある時は会社は支部との協定により、組合員に所定労働時間を超えて時間外労働をさせることができる
東芝セミコンダクタドイツ社労働協約:所定外労働を新規採用の代替として利用してはならない。所定外の量はできる限り短くする
→この協定の違いにより、ドイツ社の所定外労働時間は年間57時間。東芝の全体平均は年間302,4時間で245時間以上多い。
(年次有給休暇)
東芝労働協約:年休取得を申請しても会社の都合によって変更できる
東芝セミコンダクタドイツ社労働協約:15日以上の年休申請は、会社都合で分割しなければならないときも、最低連続する10週日を付与しなければならない(*週2日の休日を含めて16日の連続休暇が可能)
→東芝の平均取得日数20,2日(平均取得率84,2%) ドイツ社の年休取得は100%が常識
(年間総労働時間=所定+所定外-年休)
東芝:所定労働時間1860,3+所定外労働時間302,4-年休取得分156,6(=20,2×7,75=2006,1
東芝セミコンダクタドイツ社:所定労働時間1449+所定外57-年休取得分210(30×7)=1296
→ドイツ社-東芝=710、1 週35時間に置き換えると101,4日(東芝がドイツ社より多く働いている日数)
◆民主主義的規制緩和の探求ー16歳住民投票権と中学での中国・韓国語必修
神奈川県大和市は、常設住民投票条例での投票権を16歳以上に与える条例案を可決した(4日本会議)。16歳の高校生が投票権と請求権を認められる。請求は16歳以上の市民の3分の1以上または市議会の12分の1以上の賛成で議員提案ができ、市町は自ら発議できる。大和市の人口は22万人で16歳以上は18万4千人。住民投票の成立要件を1/3から1/5へ緩和する修正案は否定され、「子どもは年齢に応じて政策形成等の過程に参加することができる」とする原案は削除された。いままでは18歳以上の常設住民投票権を認めた広島市と高浜市の例がある。16歳で認めたのは特定の住民投票について特別に16歳まで引き下げた例があるが常設16歳は全国初めてだ。
京都府京丹後市は、市立中学で2005年度から中国語と韓国語を教える構造改革特区を申請する。認定されれば韓国語の導入は全国初めて。京丹後市は今年4月に丹後半島6町が合併して誕生、古代に丹後王国として大陸との交易で栄えた歴史があり、国際交流人材を育てる狙いだ。最初に市内9中学の4校で、総合学習の時間を利用し英語に次ぐ第2外国語として中国又は韓国語を導入し、順次全中学に広める。1年生は週1時間、2・3年生は週2時間、指導教員を新たに採用し会話中心の授業を行う。一般市民対象の会話教室の開催、有効姉妹都市提携、国際交流協会の設立も検討する。
規制緩和と構造改革に対する機械的否定論を超えた見事な試みだと思う。
◆中国製繊維・衣料をめぐる米国内の激闘
中国製繊維・衣料の輸入割当枠撤廃(2005年1月)による輸入急増を前に、繊維関連製造業団体が輸入急増による国内産業への打撃を受ける前でも、被害の恐れがあればセーフガード(緊急輸入制限措置)発動を求める権利があると主張し、商務省にSG措置発動を申請する。これに対し全米小売業業界は輸入規制で製品価格が高止まりし、消費者のコスト負担と雇用も守られないと主張して鋭く対立している。大統領選を控えて、民主党は輸入制限を主張している。ブッシュ政権は03年11月に中国製繊維製品のうちブラジャーなど3品目に関するSG措置発動を決めた。
日本は自由貿易をを大義名分に国内繊維産業の保護を野放しにし、ユニクロ戦略を先頭に中国からの開発輸入を推進しているが、自由貿易の本家本元であるアメリカで保護主義が強固に残っているのは奇妙だ。2004/10/5 日本経済新聞参照。
◆厚生労働省「毎月勤労統計調査・8月分結果速報(従業員5人以上)」
所定内給与(基本給・家族手当等) 25万2509円(前年同月比-0,6% 15ヶ月連続減)
所定外給与 前年同月比+3,4%
現金給与総額 28万8524円(前年同月比-0,2%)
物価変動分を除く実質賃金 前年同月比+-0
所定外労働時間 +2,1%(26ヶ月連続) 製造業+6,7%(前月比+季節調整値1,0%)
常用雇用(1ヶ月未満の雇用契約を除く) +0,6%
うち短時間労働者+3,7%
一般労働者-0,1%(81ヶ月連続減) 製造業-0,7%、卸・小売業-0,3%、飲食店-0,3、サービス業+2,6%
不払い残業 04年6月監督結果
違反 4292社中36%
違反行為
・成果主義でタイムカード廃止時間管理なし
・残業手当対象外管理職範囲拡大
・残業手当定額制、自己申告制
不払い残業是正総額 427億円、2200社(01−03年)、
*コメント 正規労働者の削減と非正規労働への転換が歯止めなく続く。不払い残業は、労基法37条違反の明白な企業犯罪であり、企業の社会的責任コンプライアンスに背反し、国際標準からも批判を浴びる。ただ働きによる競争力は近代社会原則の逸脱。違反が摘発されても過去2年分の不払い分を支払えばそれ以上制裁を受けない現行法規では再発防止装置の意味がない。違反者には割増賃金に制裁金を負荷する新たな制裁措置が必要。この制裁金を雇用創出基金に転用する(2004/10/5
8:31)
◆いまなぜ食料自給率向上か
日本の食料自給率は1970年度60%→2000年度40%(カロリーベース)、穀物自給率は03年度で前年度比-1ポイント低下し世界173ヶ国の130位。政府政策は、「食料・農業・農村基本法」による「基本計画」で2010年カロリー自給率45%目標である。基本計画みなおしで「担い手農家」を大規模農家と法人に絞る支援を発表し、株式会社の農業参入を図る。WTO(世界貿易機関)とFTA(自由貿易協定)で自由化を推進し、農業鎖国からの離脱をめざして国境措置を廃棄する方向を打ち出した。
いま日本の港には添加物にまみれた輸入農産物が野積みされている。1985年に通関業務が電算機処理となり、現物検査は建前となった。95年には農薬残留基準と食品添加物基準が大幅に緩和され、違反が分かってもすでにすでに流通させて食べさせている。検査人員が極端に不足しているからだ。
学校給食の民間委託は、手間をかけない加工食品が中心となり、食材として地域の農産物が使われない。民間委託をやめた学校は、地産地消に農業が根づいていく。学校給食は米国余剰小麦のはけ口としてパン食が始まったが、高度成長期に大型冷蔵庫に冷凍加工食品が入り、グレープフルーツやオレンジなどの輸入果物とあわせた洋風化の広がりでアレルギー症状や食生活の乱れが生まれ子どもの健康が深刻化した。2000年代には、学校給食用のパンに視神経が侵されるマラチオンなどの農薬が検出され、脳が冒される子どもが出現し、地産地消運動が進んだ。子どもには日本の伝統的な食文化が合う。安全で品質のよい学校給食改善が地産地消による食料自給率向上を求める。
地域農業の生産力を高めるのは、専業農家だけではない。むしろ専業は手一杯で限界があり、兼業農家や高齢者、退職労働者が農業に参入できる条件がある。農村と消費者の交流が進み、学校給食への地場産品供給と少量多品種の多様な流通システムの構築が迫られている。
日本が1970年代後半から世界1位の長寿国になったのは、和食中心の食事内容にその原点がある。米、野菜、大豆、海藻、根菜類などの食事は脂肪の過剰摂取につながらない。長寿県沖縄は、アメリカからの多脂肪コンビーフが家庭の常備食となり、いずれ短命県になるだろう。米の消費量が減り、油と肉が増えて日本の医療費負担は増加する。早い・安い・おいしい加工食を再検討し、料理時間を正当に評価する生活スタイルは、国産品の需要を高め自給率向上につながる。旬と季節感のある食べ物は精神生活を安定させる。
農業以外の仕事を辞めて新たに農業に就く新規就農青年(39歳以下)は、1990年・4300人→2002年・11900人と2,5倍に急増している。新規就農青年は、最初に農地の購入・トラクターなど農機具の購入・種苗・肥料・農薬購入などの起ち上がり資金と生活資金が必要だ。就農支援資金制度などの公的支援の活用など資金計画から始まる。青年の場合(18歳以上〜40歳未満)、経営開始初年度2800万円、次年度以降(2−5年度まで)900万円が都道府県青年農業者等育成センターが融資する。
<就農までのフローチャート>
●独立志向(自立農業)→全国新規就農相談センター(全国農業会議所内)・都道府県新規就農相談センターへ相談→技術習得(就農準備校、農業大学校、農家など)→就農前研修(農業公社、農協、農業法人、先進農家)・市町村農業委員会へ相談→自立して農業開始
●就職志向(農業法人)→インターネット検索・合同会社説明会、全国農業会議所無料紹介所、ハローワークで相談→農業法人の紹介、研修→農業法人へ就職・・・・・→(独立して自立農家)
◆愛知中小企業家同友会(約2500人)「8月景況調査報告」
8月25日ー27日実施。470社回答(平均従業員数31人)。
今月の業況判断DI 18ポイント(前回5月20ポイントより-2)
先行き見通し業況判断DI35ポイント(前回比+5)
業種別 建設業28(マンション、工場建設、学校耐震工事) 製造業21(前回比-6) 流通業12(前回比-12)
流通業10(前回比-2)
製造業は自動車の好調で当面の腰倒れはないとする指摘も多いが、リストラ経験から設備投資・人員増に消極的
小売など個人消費分野は過当競争と価格破壊が低迷
◆英国ジャガー・コベントリー工場閉鎖 英国政府介入
米フォードはジャガーの米国内販売不振による赤字増大でコベントリー工場のジャガー生産を打ち切り英国内の他工場への統合を発表(9月17日)。1500人が失職。労組の組合員投票でスト権確立。英政府は工場閉鎖による労働者と地域への打撃を認め初めて労使協議を呼びかけ工場閉鎖に介入。前回のフォード社によるダゲナム工場閉鎖(1500人失職)、ボクソール社のルートン工場閉鎖(1900人失職)には不介入であった。労働党支持の労組が、イラク戦争強行、公共サービスの民営化、反労組法規の維持等の新労働党路線を批判して財政的支援を撤回する動きへの対応。
◆パレスチナ・イスラエル経済の現状
ヨルダン川西岸とガザ地区の失業率は2002年末40%(人口360万人)。世界銀行は1929年世界恐慌以来の打撃と指摘。要因は、イスラエル分離壁によるパレスチナ人の出稼ぎ激減(約18万人)と、イスラエル軍による封鎖と検問による自由移動の制限。パレスチナ人口の半数が、1日250円程度で生活、栄養失調が激増している。外国からの支援10億ドル(03年度、04年度ともに)のほとんどは、パレスチナ自治政府財政に組み込まれている。
イスラエル経済は、00年度成長率7%をピークにおちこみ、現在の失業率11%。成長を支えた観光収入は、00年160万人→02年80万人ととい外国人観光客が激減したが、03年・04年ともに150万人に回復した。ガザ入植地撤退費用は、4千億ー8千億ドル、分離壁建設費10億ドルにのぼり、政府は90億ドルの銀行補償借款を米国に要請している。
◆直接支払制度助成対象農家の農水省案
農家に対する事実上の所得保障である直接支払制度の助成対象農家の基準案が提示される。年間所得530万円を農業専業で得る農家を「効率的且つ安定的経営」と定義し助成対象とする。北海道畑作農家で20−27ha、都道府県水田農家で10ー14haが必要となる。北海道・網走や十勝などの大規模経営地域では50%以上の農家が対象となるが、都道府県によっては2−3%しか対象とならない。この規模農家をめざして努力している農家を含めて「担い手農家」を助成対象とするが、本質的に大規模経営農家しか存続対象としないということだ。日本の農業の基本的特徴である家族中心の中規模農業へ助成対象を転換すべきだという意見も強い。以下続報。(2004/9/30
8:18)
○10月15日第21回食料・農業・農村政策審議会企画部会に提示された農水省案
・担い手農家基準 年間所得530万円、水田経営面積 北海道10ha 都府県4ha 集落型経営体20ha
・補填金 市場価格の下降に対応して自動的に下げる 毎年規模拡大ないと530万円は維持できない
15年度に北海道20ha 都府県10〜14ha 集落型経営体40ha
・麦、大豆の価格保障 従来通り規模に関係なく農協出荷分をすべて対象とする(2004/10/18
19:45)
◆「景気は堅調に回復している」(内閣府・月齢経済報告 9月9日)だろうか?
豊田自動車04年度3月期連結純利益 1兆500億円(前期比+40%)
カシオ計算機4−6月連結純利益 前年同期3,4倍(デジカメ、電波時計、電子辞書など)
松下電器産業 世界最大のプラズマ工場建設(薄型TV主導権にぎる)
財務省「法人企業統計季報」(資本金1千万円以上)
利益率推移 製造業・非製造業とも中小企業低位推移(04年1−3月期) バブル期水準を下回る
1人当たり人件費 1993年度:514万円→2003年度:489万円(-25万円)
総務省「7月労働力調査」 完全失業率4,9%(前月比+0,1%) 15−24歳:11,0%、25−34歳:6,1%
総務省「就業構造基本調査」 03年度までの5年間に正社員-399万人、非正社員+368万人(女性社員の53%占める)
内閣府「2002年度国民経済計算」(02年12月)
家計部門財産所得推移 1998年:25兆5千億円→2002年:14兆4千億円(-11兆円)
金融機関からの受けとり利子 1998年:13兆8千億円→2002年:4兆7千億円(! -9兆1千億円)
以上のランダムな統計から何が言えるだろうか。国民経済の経済部門を家計・企業・政府3部門であらわせば(近代経済学)、いま好調なのは企業の大企業部門だけだということが分かる。なぜ大企業が好調なのか。@雇用・設備・債務の3つの過剰を解消、A北米・中国への輸出と海外生産、Bデジタル家電分野の海外から国内回帰である。
なぜ大企業の好調がなぜ家計部門へ反映しないのか(かっては企業の好調→雇用増→賃金上昇→個人消費回復→国民経済回復という好循環であった)。@企業の総人件費抑制(特に中核年代労働力のリストラ、非正規雇用の拡大)、A低金利政策による家計ストック減少、B年金空洞化・保険料値上げによる社会不安が家計購買力を減退させ、消費抑制要因となっているからだ。(2004/9/29
11:12)
◆防衛庁05年度予算概算要求ー海外派兵型軍隊への転換
防衛庁防衛関係費総額4兆9601億円(前年比+571億円)
@統合司令部再編成 陸海空統合幕僚会議(調整機能)を統合幕僚監部(最高司令部機能)へ
・3自衛隊の一元化による海外派兵共同活動の円滑化
・米軍統合参謀本部(陸海空海兵4軍の一元化)との共同作戦円滑化
Aグローバル戦略機能強化
・陸上自衛隊 国際活動教育隊新設準備費 21億円(国際任務対応能力向上)
新鋭90式戦車 15両(119億円)
・海上自衛隊 衛星通信ネットワーク強化 Xバンド通信衛星(日本近海カバー)からKuバンド通信衛星
東南アジアから中東・アフリカ北東部カバー
Bミサイル防衛システム
・システム調達費 1442億円(前年度+374億円 +35%)
イージス艦搭載新型ミサイル(SM3)発射試験費 61億円(07年実験予定)
*戦車・火砲調達額は1986年以降最低額となったが、通常型地上戦から戦略型攻撃戦略へ転換する「防衛計画大綱」改訂が背景にある。(2004/9/28
9:55)
◆厚労省サービス残業是正指導結果発表(9月27日)
残業に対する手当を支払わないサービス残業への是正通達が01年4月に、要項・指針が03年5月に出されてからの実態の一部が反映しているが、じつはこれも氷山の一角にすぎない。
2003年4月〜04年3月
サービス残業是正指導を受けてから100万円以上の割増賃金を支払った企業数 1184社(前年508社)
対象従業員数 19万4653人
残業代支払総額 238億7466万円(前年 76億9000万円)
業種別 @製造業 A商業 B金融・広告業
◆厚労省通達「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」(9月24日)
厚生労働省は都道府県労働局長宛に、介護保険制度で働く登録ヘルパーの労働時間や賃金支払いをめぐる労基法違反の実態を是正する通達をやっと出した。介護保険法によるヘルパーは勤務形態にかかわらず、労基法第9条による労働者に該当すると明記した。特に自宅から利用者宅に直行して直帰する登録ヘルパーを「委託」「請負」として、労災保険を適用せず、労働時間も利用者宅で働いている時間に限定するといった誤りが改善される。移動・待機・研修が労働時間として賃金に算定され、休業手当も支払われることとなる。しかし労働内容に見合った介護報酬は今後の問題として残されている。(2004/9/27
10:08)
◆農水省05年度一般会計予算概算要求ー公共事業偏倚
要求総額 3兆4千212億円(前年比+12,1%)
公共投資関係費 1兆7451億円
義務的経費 8252億円
裁量的経費 8508億円
公共投資+施設費 51%
諫早湾干拓工事 105億円
広域農道 418億円
品目横断的政策調査・検討費(担い手支払制度 初めて導入)
中山間地直接支払制度は継続
間伐推進森林整備導入
離島漁業集落活動支援交付金導入
◆米国長者番付(『フォーブス』2004年版上位400人 9月23日号)
1位 ビルゲイツ(マイクロソフト会長) 資産総額推定480億ドル(5兆3千百億円 前年比+460億ドル)
2位 ウオ−レンバフェット(投資家) 410億ドル
3位 ポール・アレン(マイクロソフト共同創業者) 200億ドル
43位 ラリー・ページ、セルゲイ・ブリン(ともにグーグル共同創業者) 40億ドル
上位400人資産総額1兆億ドル(前年比+4,7%)
◆経済産業省05年度一般会計概算要求と中小企業政策の貧困
要求総額 9931億円(今年度+1279億円)
情報機器普及基盤整備 205億8千万円(2010年18兆円以上見込み)
ロボット分野基盤整備 62億9千万円
@人間支援型ロボット実用化技術開発・実証実験
A高度で開発困難なロボット部品技術開発・検証
開発途上国民活事業環境整備支援事業 7億4千万円(東アジアビジネス圏構築のための知的財産制度)
貿易投資環境整備実証事業 15億8千万円(同上貿易管理制度の共通基盤構築)
新エネの軸となる技術開発 354億6千万円(燃料電池の開発・普及)
(中小企業関連)
中小企業対策費 2058億円(前年度当初予算比+320億円 18,4% 一般会計比0,24% 一般歳出比0,43%)
経済産業省関係 1472億円
財務相関係 547億円
厚労省関係 39億3千万円
重点@市場挑戦型中小企業支援 現行中小企業経営革新法、中小企業創造法、新事業創出促進法の3法整理統合による新法 制定(仮称・中小企業経営革新等総合支援法)にもとづく新体制構築(新連携支援地域戦略会議) 60億2千万円
重点A中小企業金融円滑化促進 貸付債権の証券化支援40億円
重点B商店街対策 「戦略的中心市街地商業等活性化支援事業」(中心街進出大手スーパーの核施設建設直接補助金)49億5千万円
◆和製ヘッジファンド急増ーKBCアルファセットマネイジメント(英)
ロンドン拠点のファンド運営会社KBCによれば、1995年に1つだった和製ヘッジファンドが2002年23,2003年に40,現在は52に急増している。株式市場の回復による海外資金流入と、運用難に苦しむ国内年金基金が資金を振り向けはじめた。和製ヘッジファンドの60%近くは、割安国内株を探して買い、割高株を空売りして、相場全体が下がっても一定の利益確保を図る戦略を採っている。業績はファンドによって異なるが、中には年100%以上のリターンを挙げるとkろもある。ギャンブル経済が秘かに浸透している。
◆国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し(WEO)」(9月21日公表)
所収論文「人口構造の変化が及ぼす世界経済への影響」の日本関係部分抜粋。
高齢化は先進国1人当たり実質GDPを年率0,5%押し下げる。日本の影響が最も大きく、0,8%の低下要因となる。退職者の貯蓄取り崩しを反映して、日本の経常収支はGDPの2,5%相当の悪化要因となり、2020年頃に赤字転落する。2050年までに日本の労働力供給は、35%程度減少し、その現実的な特効薬はない。先進各国の年金制度改革は、高齢人口が有権者の過半数を占めれば一段と困難となり、最終列車はまもなく出発するから抜本改革のチャンスはいましかない。
◆コンテンツ・ビジネス戦略の展開
ソニーピクチャーズエンタテイメント(SPE)が米大手映画会社メトロ・ゴールドウイン・メイヤー(MGM)を50億ドル(5500億円)で買収した。例のライオンが吠えるトップ画面で有名だ。狙いは同社が保有するハリウッドの4割を占める映画ソフトにある。政府「知的財産戦略推進本部」は、科学技術の特許権から映像著作権までを知的財産とし、関連産業国家戦略として推進するコンテンツビジネス振興法の整備を急いでいる。アニメ産業や映像ソフトの生産と販売を視野に、基本的には文化・芸術を知的財産商品市場の拡大に置く。
最大の問題は、こうした地底財産関連産業の創造に係わる現場部門の劣悪な労働環境と制作者の著作権確保を無視していることだ。日本のアニメ産業の下請部門の劣悪な賃金と労働時間、企業の開発部門の担当者の特許権設定が一方的に企業に有利に設定されている。ここにメスを入れるかどうかが焦点だ。(2004/9/23
8:41)
◆2005年度所得税・個人住民税定率減税廃止・縮小
定率減税とは、所得税(国税)と個人住民税(地方税)の税額の一定割合を差し引く減税であり、所得税20%(25万上限)・個人住民税15%(4万円上限)を控除する制度だ。個人消費を回復する恒久減税として、所得税の最高税率引き下げ・法人税税率引き下げとともに1999年に導入された。定率減税廃止は、04年度与党税制改正大綱で基礎年金国庫負担(現行3分の1)を2分の1に引き上げる財源として打ち出された。定率減税の縮小・廃止は、子育て中年世帯を直撃する。定率減税が2分の1に縮小されt場合は、子ども2人・専業主婦の年収400万サラリーマン世帯では、年間8000円(10,8%)の増税となり、廃止の場合は16000円(21,5%)になる。共働き世帯では所得税が増税され、子どもが保育園に通う場合は保育料負担が増加する。
日本総合研究所調査では、2分の1縮小で年間個人消費を1,3兆円(0,45%)押し下げ、景気減速のタイミングと重なって景気後退をもたらすと警告している。現行の税額に対する定率減税の縮小・廃止による増税額の割合である増税率は、廃止時は年収400万円が21,5%、年収1億円は0,7%という鋏状格差を示す。つまり課税の方向が原理的に逆転しているのだ。輸出製造業を中心とする空前の利益を挙げている法人税率と所得税の最高税率に手を付けて所得再分配効果を作動させることによって、はじめて個人消費による景気回復が軌道に乗るのだ。(2004/9/21
11:02)
◆ステイグリッツ(コロンビア大教授 01年ノーベル経済学賞)の日本観(朝日新聞インタビューから)
(米国主導の経済グローバリゼーションについて)
@WTOルールの不公平性が怒りを呼び、途上国で問題を起こしている
A国際通貨の基軸通貨が米ドルなのに、米国の巨額の財政赤字など無責任な状態にある
B国際的な相互依存により米国経済の失敗が他地域に波及する
(日本の対米同盟は)
米政府を支持する多くの国で政府と国民の乖離が生まれ、自国民よりも米国の利益を優先する先進国クラブとなっている。各国の財政・金融責任者は、自国民よりもIMFと米国財務省の意向を気にする。
(日米経済一体化は)
日本は米国の云うことを聞きすぎだ。アジア通貨危機の際の「アジア通貨基金」は非常に優れた構想であったが、米国の反対でアジアを苦しめた。日本の分析が正しく、米財務省の分析は間違っていた。日本は米の圧力に屈するべきではなかった。
(日本政府が米国債を売れないのは)
日本政府は日本国民に責任を持つ。ユーロに投資していれば儲かっているのに、日本国民は数百億ドルの機会損失だ。米国債売却に対する米国の報復はWTOルールでできない。
(どのような日米関係が望ましいか)
最強の国に従うのではなく、チェックアンドバランスを機能させるべきだ。日本は自分の方向性に自信を持って米国をチェックすべきだ。京都議定書を証拠がないと向き合おうとしない人間(ブッシュ)がいるのは世界にとって非常に危険だ。ガンタナモ基地で起きていることは、米国的な行為ではなく、グローバルな民主主義と多国間主義を損なうものだ。日本は米国に云われた通りにするのではなく、自らが正しいと思うことを主張すべきだ。一極集中は、米国にとっても世界にとっても危険だ。以上朝日新聞9月19日朝刊。
*コメント)日本の対米屈従路線が世界の知性からどのように見られているかが率直に分かり、我がことながら恥ずかしくなる。ブッシュの異常性は際だっているのみならず、もはや地球惑星から見て排除すべき人間なのだ。
◆大潟村あきたこまち生産者協会(涌井徹社長)をどう評価すべきか
ヤミ米派と攻撃された農家が売上60億円を超える巨大農業企業へと変身した。540戸ある農家のうち、170戸と契約しあきたこまちや加工米を販売し、自らも30fを耕す。産直米の相手先は、全国個人会員5万人と法人7200社で、牛角、紅虎餃子房などの外食チェーンや東横インなどのホテル、大学病院、スーパーにまで顧客は拡がっている。無洗米や発芽玄米を開発し、無洗米の加工時のとぎ汁から飲料酢をつくり、腎臓病患者向けの低たんぱく低グルテリン米を販売する。残留農薬の分析装置を導入し、安全基準を数値で示し、化学肥料を使わず米ぬかを発酵させた肥料工場をつくった。
21歳で十日町市から家族とともに大潟村に入植し、減反政策に反抗してヤミ米販売農家の烙印を押され、99%実った稲を1週間かけて青刈りする屈辱を受ける。自殺する農家も出た。子供は学校で「ヤミ米」と呼ばれていじめられた。87年に仲間4人と自由米(ヤミ米)の産直をはじめ、農協の圧力で宅配用トラックを阻止された。宅配業者も圧力を受けて配送を拒否したので、自分でトラックを運転した。凶作の時に安売り王で有名な城南電気の宮路社長がやってきて、1表6万円で買うと云ったときに、4年間は3万円で買うと対抗し確保した。全国の会員は価格より安全を選んで、ここで企業の基礎が固まった。食管法が95年に廃止され遂に自由販売が実現し、逆に大潟村モデルと持て囃されるようになった。
「今一番農業の可能性が広がっている。今までの延長で行ったら誰もやらない滅亡産業になる。農作業と農業経営は別だ。単なる農作業は土地がいるが、経営者は土地は要らない、土地は生産手段であり道具であるという発想に立ったときに、農業は変わる。土地を財産と考える農業経営は成り立たない。農作業をする人はいるが、商品開発や加工と営業ができる人が少ない。」と涌井氏は語る。
農業にして初めて企業家精神の発露を見る。しかしこれは農水省の云う担い手農業のモデルであり、企業農業の先駆である。中小零細農家の集団農営に未来を見いだす私にはいささかの感はあるが、その挑戦的な姿勢そのものは汲むべきものがあると思う。以上朝日新聞9月4日付け日曜版参照。
◆厚生年金未加入事業所の急増は何を意味するか
厚生年金はすべての法人と常時5人以上の従業員を使用する事業にに加入を義務づけている。しかし保険料負担を回避するたまに加入しない事業所が激増し、02年度の新規法人の20%近くが未加入となっている。従来社会保険庁は、未加入事業所を選定し、文書指導→巡回説明をおこなったが効果がなく、今後は保険事務所への呼び出し→戸別訪問(20人以上)→強制加入(職種による)という方針に転じた。社会保険庁は加入事業所の保険料未納に厳格であったが、逆に未加入企業は放置されてきた。未加入はその働く従業員が将来甚大な影響を受け、年金の空洞化と崩壊を招くから、社会保険庁の強制手続きは当然の措置だが、年金システムの基本問題を放置してほんとうの解決になるだろうか。
年金法改正によりこの10月から厚生年金保険料は労使折半で0,354%引き上げとなり、現行13,58%は2017年度以降18,3%になる。長期不況により経営が悪化している中小零細企業にとって保険料負担は耐えられない限界に近づいている。さらに社会保険庁の保険料を香典代や公用車購入に使い、条文ミスの発覚や法審議後に少子化データを出すなどのモラルハザードである。社会保険庁は、強制加入を推進する最低の資格を喪失している自らの責任を回避してなんの信頼を得るだろうか。
厚生年金加入事業所数推移
97年170万2932→98年169万1358→99年168万2652→00年167万4165→01年165万1493→02年162万8841
しかしもっと悲惨なことは、厚生年金や健康保険、雇用保険の適用要件に該当しているのに加入していないパート労働者が70%に達していることだ。求人広告業大手・アイデムが昨年11月にインターネットによる2579人(うち男性4181人)が、週労働時間が正社員の4分の3以上(通常30時間以上)働いている人を対象に実施した。要件を満たしていた754人で健康保険加入者は34,1%にとどまり、主婦は269人だが被扶養者になっていた者が45,0%に及んでいる。厚生年金加入者は、31,7%、主婦の場合被扶養配偶者になっている者が36,4%、国民年金加入者が13,8%である(夫が自営業の場合、被扶養配偶者になれないため)。健康保険や厚生・共済年金は、被扶養者の妻は保険料払わずに給付を受けられるため、企業が保険料負担を逃れるために加入義務があっても加入しないということになる。事業主の社会的責任のモラルハザードは覆いがたく、政府も一切実態調査をしないという公共責任の放棄がある。
さらに驚いたことには、学生の無年金障害者の存在である。かって学生は20歳以上でも国民年金は任意加入で、未加入の間に怪我や重病で障害を負っても障害基礎年金が不支給であった。91年から学生も強制加入となり、00年から保険料支払いは社会に出てからという学生納付特例制度が発足した。こうして制度の谷間で無年金者が生まれるという立法不作為が放置されてきた。彼らの多数は高齢の親の扶助を受けて厳しい生活を強いられている。東京地裁は国家賠償責任を認めて500万円の支払を国に命ずる判決を言い渡したが、なんと国は控訴したのである。
◆もう一つの構造改革
自治体が業者と契約を結ぶ公契約は、一般競争入札を原則としている。これは業者間の談合による不公正な契約を避け、透明性と公平性を担保するためだ。ここで岐阜県が障害者が製作した商品や地元ベンチャーが開発したソフトウエアーの購入などで随意契約を認めるよう提案した。総務省が反対したが、構造改革特区推進本部で承認され政令改正がおこなわれることになった。従来は障害者を多数雇用する企業との随意契約は認められていたが、これからは障害者が福祉施設で製作した商品の購入を随意契約で全国的に認められることとなる。構造改革特区を逆手に採ったアファーマテイブ・アクションの一形態といえようか。
◆厚生労働省「今後の労働安全衛生対策のあり方にかかわる検討会報告書」(18日)
1度に3人以上の死傷・罹病が発生する重大災害が85年以降急増している。重大災害発生件数は以下の通り(括弧内は交通事故件数を除いたもの)。
98年201件(93)→99年214件(104)→00年230件(96)→01年225件(100)→02年231件(93)→03年249件(129)
リスク・アセスメント(危険・有害要因の特定によるリスク評価と低減措置を検討する手法)の実施を提唱。現場の危険予知・安全衛生活動を熟知しているベテラン労働者がリストラ・定年で職場を去り、今後団塊の世代が大量退職することによってリスクが増大する。事業所レベルでなく全社的取り組みが必要。アウトソーシングによる指揮命令系統の異なる労働者が混在して作業することによるリスク上昇。作業間連絡調整が不充分な場合、災害発生率が上昇するから、発注企業の一元的な連絡調整を統括的におこなう。
◆大手人材派遣「スタッフ・サービス」大阪本社の労働世界
オー人事、オー人事なるCMで知られている人材派遣最大手スタッフ・サービスが労基法違反容疑で家宅捜索を受けた。同社は1981年の創立以来急速に業務を拡大し、昨年3月期の売上高は前年比30%増の1877億円に達し、この4年間では3,6倍増。04年現在の派遣登録者数は105万人で売上高・登録者数とも派遣業界トップ。同社のグループ企業は13社、従業員は4200人である。ノルマに従って派遣先企業を開拓し、継続させることが社是であり、すべての割増賃金は支払われないサービス残業となっている。従業員指針である「マネージャー行動指針20訓」の一部を記す。
@仕事とは結果が出るまでやる行動のことだ。夜中になろうが結果を出すまでやめるな。
A朝が来たから出社し、云われたことだけを気力なくこなし、時間が来たから帰る、そんな生ける屍に、仕事は時間だけやれば良いというものではないことを教えよ。
支店長が「人格を持つな、俺が云った通りにやれば数字は上がる」という同社の労働実態の一部を記す。自殺した元副支店長(32)の場合。
就業規則 始業9:00 終業17:30
就業実態 朝礼8:30 外回り9:00 帰社18:00〜19:00 ミーテイング22:00 終業22:00過ぎ(通常) 土日休業返上しばしば勤務有り
勤務内容 営業職 標準営業職(新規企業担当、1日25〜30件訪問義務)とサポート営業職(派遣している派遣先企業訪問)
(元副支店長の場合)
サポート営業職で、派遣の開始・延長の契約、派遣先企業のクレーム、派遣労働者の苦情と退職希望などを対応、1人で派遣先企業40〜50社、派遣労働者120〜130人を抱える。営業から戻ると事務処理をおこない、派遣労働者を手当てする。午後10時のミーテングで営業目標の達成状況と支店長の指示を受ける。副支店長は、月2回の副支店長会議で、成績不振者は順番で全員の前で座り、不振の理由と今後の対策を発表し、それについて1〜2時間の追求を受ける。自殺する5ヶ月前から抑鬱症状を訴え、心療内科を受診するが4日間受診しただけで終わった。成績が落ち、全社員の前で「お前はダメだ」とののしられ、自殺前日にはヒラ社員に降格させられた。(2004/8/17
10:51)
◆ジャパニメーションの労働世界
世界水準を行く日本アニメの制作現場はどうなっているか。映演総連調べ。
アニメ製作労働者数 統計なし 推計4000〜6000人
セル画作業賃金 完全出来高払い 原画1枚3000円 動画1枚単価160〜200〜300円(ほとんど東アジアへ半分の単価)
1日収入 平均10時間で10枚程度 2000〜3000円(1ヶ月休日なしで数万円から10万円弱)
退職率 就業後1〜2年80%
撮影所アルバイト時間給 800〜850円 一時金3〜5万円5万円
アニメゲーム化権と商品化権はTV局と大手プロダクションが把握
02年度アニメ製作売上高2135億円
日本製アニメの米国市場規模 02年度 43億5911万ドル(5200億円)
◆非正規雇用の平均時給額810円
埼玉県労働組合連合が実施した県内に無料配布されている求人情報誌や新聞折込広告のパートや派遣、契約の募集時の時間給額調査から(04年5月〜6月 90市町村中78市町村 1451事業所対象に募集時時給額の下限を抽出)。
平均時給額 810円(前年比-71円)
(業種内訳)
専門職-350円 特に薬剤師2000円〜3500円が1850円へ下降
サービス業(スーパー等)-35円
事務職 -86円
販売職 -19円
製造業 -30円
運輸業 -71円
(事業所内訳)
1000円以上時給額 11,85%(前年比-50%) 大半の事業所が800円台以下へ移行
県内最低賃金額678円も事業所2カ所
(公民比較)自治体職員は平均40円〜50円民間を下回る
41市 民間募集時給額830円10銭に対し自治体非正規職員時給額790円50銭
49町村 同上 819円 同上
766円60銭
小括:正規労働者の賃下げが非正規労働者の時給額を下降させている。最低賃金額の引き上げと公契約締結(自治体発注事業に従事する非正規職員に対する適正賃金と労働条件の保障)の重要性が浮上している。(2004/8/16
11:56)
東京都産業労働局「派遣労働に関する実態調査2002」
(平均年収)10代・20代
100万円未満 10,8%
100−150万円 11,7%
150−200万円 16,4%
200−250万円 27,7%
250−300万円 16,9%
300−350万円 8,5%
350万円以上 3,2%
賞与・一時金が支給されない 74,8%
通勤手当が支給されない 40%
賃上げがなかった 66,7%
時給1400−1600円 44,8%
1400円以下 26,2%
全年齢平均時給 1432円(98年 1733円)
(2004/8/29 22:22)
労働政策研究・研修機構「第1回ビジネスレーバー・モニター調査」(03年11月 1000人以上大企業対象)
5年間の正規社員採用状況 増やした27,0% 減らした39,4%
採用減の理由
総額人件費比率抑制 70,7%
経営状態悪化・事業縮小 56,1%
臨時・パートなどへの代替 36,6%
中途採用の実施・拡大 22,0%
近年新卒採用多すぎた 17,1%
技術革新などによる省力化 12,2%
若年層が担当する仕事量が増大 50%
若年層の精神的負担が増大 60%
若年層の労働時間延長 40%
この統計の最大の問題は、若年層の仕事量が増大した企業の42,9%、労働時間が延長された企業の46,3%が新規採用を抑制したと答えている点にある。首都圏大企業34歳以下の社員を対象とする職場にいる平均時間は11時間16分で、回答者の50%が「将来の生活イメージが描けない」「今のままだと生活習慣病になる」と答えている(連合系・労働調査協議会 6月)。
厚労省調査「非正社員を雇用する理由」(7月)
賃金節約 51,7%
仕事の繁閑に対応 28,0%
景気変動に応じた調整 26,5% (2004/9/2
8:12)
◆奇形的な日本経済の成長はどこに向かうのか?
4−6月期GDP統計が実質成長率0,4%と減速しながら、5期連続のプラスになると言う奇妙なことが起こっている。名目GDP成長率が-0,3%と5期ぶりにマイナス成長を記録したことがより実態に近い。これは製造業の売り上げが伸びなくても利益があると言うことを意味している。その内実は、経営コスト削減(正社員減、非正社員増、賃金抑制、下請単価切り下げ)以外の何者でもない。
事例:トヨタ(連結)売上高+10%、営業利益+32% 電機大手9社従業員数-13万人 東証上場企業年間人件費500万円弱など
GDP雇用者報酬-0,9%
他の要因は外需依存である。実質GDP寄与度は外需が5期ぶりに内需を上回った。こうした成長の内実は実は危機の裏返しだ。米国経済依存型の成長は破産する。イラク戦費急増による財政赤字と貿易赤字の双子の赤字によるドル暴落の危険が迫り、原油高騰による米国経済の失墜が迫っている。第2にデジタル景気も一部に供給過剰が生まれ、価格下落圧力が強まり、設備投資は横ばい状態だ。基本的な打開の方向は、内需主導型回復軌道に乗せるための個人消費(民間最終消費支出 GDPの60%を占める)の回復にあることがますます明瞭になってきた。リストラと社会保障削減の構造改革を直ちに転換させることなしに、日本経済の再生はない。(2004/8/14 8:51)
◆ILO(国際労働機関)「デイーセント・ワーク(人間らしい尊厳ある働き方)」と日本の続発する労働災害
ILO03年度総会は、デイーセント・ワークに向けて「安全で健康な職場環境を求める権利」を実現する労災予防に最も高い優先度を与える予防的な安全衛生文化を決議した。ILO155条約は、労働者に重大な危険のある場合に、上司に報告し是正措置が執られるまで作業に戻らないとし、ガイドラインは労働者の意見聴取、危険有害要因の除去、記録を入手する権利を明記している。
ところが日本では、03年度に一度に3人以上の死傷事故が249件発生し、79年以降最悪となり、今年もすでに死傷者(休業4日以上)は昨年を上回る15000人に達し、1日平均127人に及んでいる。この猛暑が続けば熱中症などによる異常な被害が発生するだろう。利潤極大化による生産性至上主義が労働者の生存権を軽視する結果となり、過酷な残業とリストラの主要対象者である中高年の熟練労働者が会社から消えて労働の質が低下している。ここに最大の理由がある。三菱自工に象徴されるように、重大災害は長期的には企業の信頼を喪失させ、企業基盤を崩壊させる。(2004/8/14
00:14)
◆郵政民営化最終局面へ
経済財政諮問会議は、郵政3事業(郵便、貯金、簡保)のうち郵貯・簡保の民営化をめざす方針を決めたが、全国一律サービス義務(単一・安価・同質)について部分的な意見調整を行っている。廃止論は、すでにほとんどの地域で民間サービスが利用可能で、一律義務化はコスト高で経営上の問題があるという。それに対し維持派は、過疎地では金融機関の74%、生保機関の87%が郵便局で、農協は撤退している。支店やATM網の再編を進めている銀行が郵貯に替われるはずがないと主張する。
世論調査で郵政民営化推進論はわずか12,6%であり、国民の4分の3は郵便局の継続を望んでいる。郵政民営化の狙いは、227兆円という巨額の郵貯を市場に移し銀行預金化を推進するものだ。
郵政民営化を進めた英国では、民間銀行の支店閉鎖も伴って実に人口の6%(350万人)が預貯金口座を保有していない。60年代に郵貯が消えた米国では、口座なし人口が300万人に達している。郵貯が民営化されれば、不採算地域の郵便局網が閉鎖され、日本でも膨大な口座なし層が生まれる。世界ではじめて1987年に郵貯を民営化したニュージーランドは、手数料値上げと支店閉鎖に抗議する国民の声を受けて02年に国営金融機関(キウイバンク)を復活させた。フランスでも国営生命保険が始まった。(2004/8/13
23:55)
◆農水省審議会「食料・農業・農村基本計画」見直し中間争点まとめ(10日発表)
改革の柱は@経営安定A担い手B農地制度C環境・資源保護となっている。
経営対策は、「品目横断政策への転換」であり、豊作や輸入増で価格下落時に、農家に限定せず品目別に価格補てんを行ってきた価格安定政策を全廃し、認定農業人(自治体認定)・法人・法人化計画を持つ集落営農に限定した栽培面積や農家単位に助成金を支払う直接支払制度へ移行する。この制度で対象となるのは、認定農業者18万人、農業法人13000であり、個別農家298万戸の6%にしか過ぎない。非対象の農家には実質的な撤退を迫る効果を持つ。農地制度は、株式会社による農地取得の解禁だ。この問題では@地域に根ざさない株式会社は認めないA構造改革特区で農地の賃貸を行い全国展開するの両論併記であるが、もし施行すれば土地投機、産廃投棄など不耕作目的の取得が激増するだろう。認定農業者とは、農業経営基盤強化法による市町村の認定を受けた定理融資制度の適用を優先的に受ける農家。
「国境措置に過度に依存しない政策体系の構築」という輸入自由化は、市場原理主義の貫徹と政府財政コスト軽減、国際規律との整合性(WTO、FTA)が基調にある。東アジア自由貿易経済圏構想によるアグリビジネスの利潤最大化をめざす。食の安全と自給を基本とする食料主権との矛盾はどうなるか。大規模・専業化の構造改革を担い手への直接支払の対象は、稲作・麦・大豆であり(酪農と畜産・果樹はすでに専業化が進んでいる)、自治体が認定する大規模農家と集落営農を育成する。集落営農は積極的な意味があるが法人化と経理一元化という条件があるので13万5000集落の多くは脱落する。株式会社の農業参入の可能性はあるか。株式会社形態で、雇用者給与と社会保険料負担をクリアしてなお利潤を上げる農業経営は不可能だ。可能ならば現在でも農業生産法人の株式会社化は参入可能だがほとんんどない。つまり企業が農地を取得する最大のの狙いは産廃地獲得の危険がある。(2004/8/1
23:25)
◆英国の貧富の両極分解ー英国公共政策研究所(IPPR)報告から(2日)
最富裕層 全人口の1% GDP取り分99年13%(88年6%)
富裕層 全人口の10% GDP取り分00年54%(90年47%)
子どもの貧困率(平均収入の60%以下) EU中01年23%・11位(98年最下位) *デンマーク5% スウエーデン10%
子どものない労働年齢の貧困率 02−03年31%(94年25%)
賃金の男女格差 フルタイム雇用 03年82%(94年79,5%)
パート雇用 03年60,4%(94年59,1%)
英国では最富裕層が10%以上の富を、富裕層が50%以上の富を独占し、子どもの5人に1人が貧困に喘いでいる。英国労働党が94年に設置した社会政策委員会が提起した新社会政策から10年を経て、雇用率の上昇、こどもの貧困率の減少、犯罪率の低下など一定の公正性の回復はあるが、親の社会階層と人種がこどもの人生選択を規定する状況は依然として続き、貧富の両極分解が進んでいる。サッチャー型新自由主義による公正原理の侵犯からの回復は遠い。(2004/8/4
9:09)
◆ベトナム社会主義市場経済
社会・経済開発カ年計画(2001−05年)は貧困ラインを設定し脱出目標を掲げる。山岳地帯8万ドン(560円)、農村部10万ドン(700円)、都市部15万ドン(1050円)という基準による貧困世帯率は11%(03年)、しかし国際貧困基準では26%にはね上がる。農村部貧困脱出計画の事例をみる(ハノイ南方60km県)。
水田1サオ(360u)から収穫されるもみは200s。5サオの平均的農家で1年2毛作で収穫は2トン・200万ドン(14000円)、稲作だけでは貧困ラインをクリアできない。人民委員会は農業構造の転換(新品種導入・副業)をめざして、家畜・家禽・養魚・養蜂・籐製品加工の技術騒動をおこなう。
[貧困対策のフロー]
@実態調査→A貧困要因分析(土地、資金、技術、労働力、疾病など)→B要因別貧困一掃計画(重点貧困設定、支援対象世帯、所属団体援助)→C関係者協議(貧困世帯、行政、地域社会、所属団体)→D貧困世帯自身による貧困脱出目標設定
[事例ー43歳農民の場合]
ブオン・アオ・チュオン(VAC)多角経営戦略 *ブオン(農地)・アオ(養魚地)・チュオン(畜舎)
彼は家屋敷を売り、親戚から無利子融資を受け、社会政策銀行の低利融資によって、自己所有の水田を掘り起こし、養魚とアヒルの飼育と養豚事業を始めた(バン・ニャー・ザー・ドン家を売り野良に出た)。VACによって食糧の自給が実現し、所得増大で貧困脱出世帯と認定された。50歳の復員軍人は、復員軍人会からの無利子融資、社会政策銀行からの低利融資、4回の技術指導を受けて養蜂事業を開始した(ブオン農地・ドイ丘・ズン山)、適時融資・適格業種・適地自然という条件がマッチして貧困脱出世帯認定を受けた。
ハノイ西方40kmの村は貧困世帯率16,4%(全国平均11%)。この村の貧困対策は「牛銀行」。貧困対策基金が雌牛1頭につき150万ドン(15000円)の当初資金を融資し、貧困世帯は雌牛を買入れ(150万ドン以上の牛は不足分を自己負担)、その雌牛を飼育し子牛が生まれると子牛を貰って母牛を返し借金を返済するシステムだ。母牛はまた別の世帯へ融資される。この村で当初提供を受けた資金は30頭分で数年後に114頭に増えた。貧困世帯脱却の認定を受けたある農家は、元手なしに3年間で牛2頭を手に入れ、雌牛を借りすぐ生まれた雌牛がまた子牛を生んだ。農業機械化が遅れているベトナムでは牛は貴重な牽引力だ。牽引力だ。
◆BIMST経済協力機構
東南アジア・南アジアの経済協力を目指す自由貿易圏、バングラデイシュ・インド・ミャンマー・スリランカ・タイの頭文字を並べたもの。2017年までに7ヶ国のい自由貿易圏設立の合意が採択された(7月31日)。9月から域内関税撤廃の交渉を開始し、2012年までにタイ・インド・スリランカがまず自由貿易圏を創設し残る参加国が段階的に17年までに参加する。貿易と投資、技術ノウハウの交流、輸送、エネルギー、観光、漁業の6分野での協力を推進する。背景には、97年にタイで始まった国際通貨基金(IMF)の政策が実情にあっていなかった経験があり、複雑な相互依存の時代を自助と相互援助で協力する。
ちなみにIMFは、国際金融界を揺るがしたアルゼンチン経済危機への対応について、「意志決定場の弱点を露呈した」と自己批判する報告書を公表した(27日)。IMF独立評価室(IEO)によると、「2001年の危機発生前にアルゼンチン通貨ペソをドルと連動させるペッグ制や、急増する対外債務の維持が困難になっていたのに、IMFは適切な監視を怠った。IMFに的確な危機管理対策がないために、慟哭の経済状況が悪化しても追加融資を繰り返し、信用供与は220億ドルにまで拡大し、さらに01年半ばには当初の政策の破綻が明確になったにもかかわらず、アルゼンチン当局に抜本的な政策転換を求めなかった。結局、IMFが同年末に融資を凍結したためにデフォルト(債務不履行)状態に陥った」としている。(2004/8/2
19:20)
◆現代中国経済の最前線
中国国有企業は、本業以外に多方面の社会的機能(福祉、教育、医療、住宅、治安など)を持つ総合社会センターであった。国家計画による指令生産を遂行し、逆に経営は損益と効率性ではなく国家依存型経営であった。社会主義市場経済への転換で現代的企業システムへの再編成がめざされた。課題は@社会生活負担A余剰人員B債務返済である。中国経済成長の極は、長江デルタ(上海)・珠江デルタ(広州)・環渤海(北京・天津)の3極があるが、東北3省(黒竜江省・吉林省・遼寧省)は第4極を目指す。以下は吉林石油化学公司(第1次5カ年計画で設立)の例。
○企業改革の推移
1990年代半ば 企業改革開始(再編・株式制導入)
1998年 中国石油天然ガス集団(CNPC)傘下に編入
2000年 採算部門と非採算部門を分離→吉林石化・吉化集団
吉林石化→エチレン生産主体、年商200億元(2600億円) *中国大型工業企業番付1943社中35位
吉化集団→不良資産滞留、工場操業率60%、余剰人員50%
年間営業収入17億元(220億円)
年間社会負担
教育援助9000万元(12億円)小中高大23校、保育園24カ所、文化センター3カ所
文化技術支援1300万元(1億7千万円)技術学校、党学校、労働者大学、公衆浴場、芸術団体
維持補修費500万元(6500万円)道路、橋、堤防、山林
退職者年金1億5千万元(20億円)
2001年 CNPC吉化集団企業再建案提示
2002年 党会議、職員代表会議で再建案審議
アクリトニトリル生産に集中・先端技術導入・3年間で赤字脱却を決定、5万人従業員を2万人へ削減
2003年 吉化集団営業収入44億元(570億円)1億元(13億円)の黒字企業へ転換 *企業番付283位
(2004/7/26
8:31)
○工業改革
(ハルビン航空工業グループ)ブラジルのエンブラエル社との合弁で地方航空路線用小型ジェット機生産
○失業対策
(失業の現状)「失業の洪水」
職員・労働者数推移(96年→02年) 遼寧省1000万→500万人 吉林省500万→300万人 黒竜江省800万→500万人
都市部登録失業率 全国平均4,3% 遼寧省6%
遼寧省失業対策 05年までに380万人再就職(失業者・新卒者・退役軍人)→年100万人再就職計画
@職業安定所(99年設立) 求人案内・キャリアアップ活動
A女性職業訓練センター(98年婦女連合会設立) 24時間就職情報提供・法律相談・職業訓練
小企業家養成講座(開業女性に2万元の小額貸付制度)
B意識改革 「鐵の茶わん」(国有企業依存)から市場対応型職業観へ
○農業改革 WTO加盟後の輸入農産物に対抗する農産物加工戦略
(大成グループ・長春市)トウモロコシ加工食品メーカー 吉林省100万戸の農家から年間180万トンのトウモロコシ購入
(九三油脂・ハルビン市)年間200万トンの遺伝子操作をしていない国産大豆で「緑色食品」(自然食品)の食用油生産、他に食用油、飼料、ビタミン・健康食品の高付加価値食品生産、将来は薬品メーカー買収で医薬品製造参入構想
○中国企業による日本企業買収
中国大手電機メーカー・上海電気集団は、02年にアキヤマ印刷機製造(倒産)を買収したのに続き、日本工作機械メーカー・池貝(茨城県玉造町)に総額20億円の出資を2年間で行い、買収する。中国当局の認可を受けた上で、9月末に池貝の第3者割当増資を引き受け、発行済み株の75%を取得し、その後追加出資を行う。池貝現経営陣はそのまま残留する。池貝は1889年創業の老舗であり、経営不振から01年2月に民事再生法の申請を行い、04年6月に再生手続きが完了した。以上04年8月5日発表。
○中国出版分野への外資直接投資の条件整備(中国新聞出版総署副署長記者会見)
中国国内で発行された出版物は、新聞2119紙、383億1200万部、雑誌9074誌、29億4700万部。すでに11社の外資系企業の参入が認可されており、今年末までに書籍・新聞・雑誌の卸小売業を外資に開放する。中国の出版の経営主体は、政府傘下の「事業単位」であり、市場競争の条件には適合していない。中国の書籍取扱量の3分の2を独占する国営・新華書店に株式会社制度を導入し、外資を含む民間資本を利用する方向を模索している。WTO加盟後の出版産業の自由化の制度改革が進む。
◆米国ブランドの凋落
米国ユニラテラリズムに対する世界の嫌悪が蔓延し、米国のブランド・イメージが地に堕ちつつある。マグドナルド、ナイキ、マイクロソフト、リーバイスなどのメガ・ブランドが軒並み競争力を喪失しつつある。ドイツのレストランはコカ・コーラの販売を取りやめ、アメリカン・エキスプレスのクレジットカードは受け取りを拒否されるという事態が起こっている。高慢で無知な米国人の性格を「金持ちの親を持つ道楽息子」として軽蔑する。以下はマグドナルドを定期的に買う人の割合を02年と03年で比較したものだ(米RoperASW03年6月調査から)。以上朝日新聞25日朝刊参照。
香港68%→49% カナダ62%→52% エジプト57%→38% ベネズエラ57%→50% 英国54%→48%
スウエーデン53%→46% ドイツ45%→36% サウジアラビア44%→33% イタリア28%→20% タイ27%→19%
インド20%→10%
◆FRBはなぜFF金利を上げたのか
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利を、4年ぶりに0.25%引き上げて1,25%とした(6月30日)。超低金利政策による世界的物価下落減少が終焉し、持続的な経済成長に道を開くだろうか。
主要資本主義国の正常金利水準は4%前後と推定され、異常低金利は米国経済に歪みをもたらした。
@低金利で利益が上がらない健全な資金運用ではなく、投機的運用が拡大し、異常な富の偏在と貧富の両極分解をもたらした
Aゼロ金利による個人借金が増大し、自動車・住宅などの一時的な購買力上昇による景気回復をもたらしたが、同時に個人破産の増加を生んだ
B住宅資材などの素材価格の価格上昇と、イラク戦争による石油価格上昇を誘発した
C景気上昇による国内需要増が、輸入を拡大し経常収支の赤字を急増させた
こうして米国は、超低金利による財政赤字(イラク戦費調達)・経常収支(貿易、サービスの国際取引)・家計収支(ローン)という3つの赤字に陥っている。FF金利引き上げは世界経済に次のような影響を与える。
@金利が2%を上回るペースで進めば、米国の設備投資資金の借り控えがおこり景気を逆転させる。
A米国の輸入が減少し、対米輸出で景気回復を図ってきた日本、アジアは打撃を受ける
B米国金利上昇は、途上国株式市場に流れていた資金が米国に環流し、各国で株価の暴落が起こる。ドル環流に伴うドル相場の不安定と国際金融の混乱が誘発される。以上・今宮謙二氏論考参照。(2004/7/18
11:05)
◆小泉内閣・骨太方針第4弾は、日本をどこへ導くか
@雇用政策
[2025年目標]1000万人の解雇・転職→人材ビジネス(派遣・請負)の加速度的拡大→非正規社員率40%実現
[経済産業省・新産業創造戦略]企業業務のアウトソーシング→人員削減効果→受託対事業所サービス市場規模の加速度的拡大→労働者派遣法・民間職業紹介活動緩和・有期雇用期間延長(改革工程表)→ビジネス支援サービス産業市場規模107兆円・雇用規模750万人(うち派遣・請負業の対事業所サービスの全産業比率10,8%)→25年までに1000万人の労働移動・非正社員率40%
[業種別就業者数の展望(経済産業省「新産業創造戦略」04年5月)] 単位:万人
農林水産業-273
電気機器 -92
輸送機器 -19
建設 -253
商業 -327
通信 -42
公務 -155
サービス +242
社会保障医療
介護・保険 +631
以上が21世紀の前半の日本の雇用状況である。要するに半数弱の人がいつ失職するか分からない不安定雇用で、賃金は正社員の49,7%(04年)という劣悪な条件で働き、雇用責任が不明確ななかで働くというのが近未来日本のシナリオである。しかしかって華やかに戦略産業としてもてはやされた情報・通信産業はどこに消し飛んだのであろうか。
A郵政民営化
04年民営化基本方針決定→05年民営化法案提出→07年民営化開始
[預貯金総額に占める個人預貯金割合]
都市銀行54,8%
地方銀行71,2%
第2地銀74,0%
信用金庫79,2%
郵便貯金98,4%
◆米国標準への頽廃的追随ーBSE(牛海綿状脳症)全頭検査システムの崩壊
米国の03年BSE確認以降米国産牛肉輸入は緊急停止されたが、米国政府の輸入再開圧力に屈し国内検査システムをも改編しようとしている。米国の検査システムは歩行困難なへたり牛に限定され、検査数も年間2万頭(解体頭数の0,05%)に過ぎない。今年に入って、歩行困難な牛の食用禁止、病原が蓄積しやすい脳など特定部位除去を30ヶ月以上の牛に義務づけ、へたり牛20万ー27万頭を対象とするBSE検査の実施がスタートした。牛から牛に限定していた肉骨粉飼料禁止を鶏から牛へも拡大した。しかしこの新基準は、BSEの傾向を調べるのが目的で、食用にしない死亡牛と病気牛を調べるのであって人間への安全対策ではない。
米国では年間4千万頭が食肉処理され、うち生後30ヶ月未満は危険部位の除去なしに流通している。食肉処理はほとんど30ヶ月以下で食肉処理されるから、米国牛肉はすべて危険部位が含まれて市場に出ている。歩行困難なハイリスク牛の年間推定45万頭は、現在の検査システムでは危険部位の除去は不充分であり、世界に輸出されている。米農務省内部監査報告書(7月13日)は、02年10月からの2年半で中枢神経系障害を発症したBSE感染疑惑のある牛が680頭にのぼり、その4分の3はノーチェックであり
BSEが広がっていないとする米政府の主張の信頼性は低下した。歩行困難などの外見上の検査システムの見直しを提案している。
米国牛肉輸出国トップが日本であり(03年度 36,4%)、米国畜産業界の解禁圧力は強い。日本の検査システムは、全頭検査・危険部位除去・潜伏期間をカバーするダブルチェック・肉骨粉飼料使用禁止など徹底した安全性基準である。米国政府の圧力に屈した内閣府食品安全委員会は、国内全頭検査を高齢牛に限定する方向での検討に入り、。米国標準に合わせて米国産牛肉輸入を解禁しようとしている。米国に於ける安全性基準とガバナンスがいかに生産者優位と国益優先に偏向しているかを示している。米国型の自由と民主主義は、企業の利潤極大化原理の枠内でしか行使されてはならないのである。(2004/7/15
9:41)
内閣府食品安全衛生委員会プリオン尊門調査会報告書案(15日)は全頭検査の若牛除外を提案した。現行検査では若牛感染の発見は不可能であり、これらの牛が食用にまわったとしても全国で変異性クロイツフェルト・ヤコブ病患者の発生率は0.135から0.891人で1人未満であるとする。今後国内で28〜60頭の感染牛が発生する可能性があるが、これによる患者発生リスクは無視できるとする。特定危険部位の除去を全頭で進め、検出限界以下の若牛を検査対象からはずしても患者発生リスクは増大しない。
同専門調査会報告書(9月6日)は、全頭検査から生後20ヶ月以下の若い牛の場外を容認した。はじめて病原検出限界の月齢を30ヶ月以下と盛り込み、危険部位の除外をすればリスク増大はないとした。生後30ヶ月以上の牛しか検査しない米国基準への屈従に他ならない。ところが米国の研究グループはすでに、解体検査ではなく血液検査による若い牛の感染検出技術を開発している。危険部位の除去が100%完全におこなわれることはない。もし米国産牛肉が輸入されれば、牛エキス入りブイヨンや離乳食などの加工品にもBSE病原体が入り込む恐れがある。日本人の93%はBSEの病気に罹りやすい遺伝子タイプだという厚労省報告もある。これらの報告書を起草した科学者が良心を疑わざるを得ない。検査技術が開発されていないから、輸入して良いのだという破天荒な結論は目を覆いたくなる科学の堕落だ。(2004/9/7追加)
さてさて当該米国の食品肉牛業界の実態をみてみたい。世界最大の食肉加工企業タイソン食品は、牛肉・豚肉・鶏肉の売上高245億ドルを記録し、12肉牛処理工場で20万頭の肉牛を処理している。ワシントン州・ヤキマでBSE1頭が発見されるまで、タイソン社のパスコ肉牛処理工場は製品の40%を日本・韓国・メキシコに出荷した。パスコ工場は、安全基準違反で6万1500ドルの罰金を受け、非衛生的な肉処理により米政府監督官により食品安全基準に違反する汚染で警告を受けた。02年には500人以上の労働災害が発生し、パスコの罹災率は全国平均の2倍に上った(会社事故記録より)。牛がまだ生きているうちに屠殺処理をおこなって調査対象となった。タイソン社は、同じ肉牛製造業のクリークストーン社のBSE全頭検査に反対し、米農務省は同社の全頭検査を不許可とした。
パスコ工場の労働者は、BSE発見後の輸出制限で労働時間が短縮されるなかで、雇用不安の脅威を受け、チームスターローカル55(米食品肉業労組)を1500人の従業員で結成し、労働安全とBSE全頭検査を要求して運動している。米国の科学者と消費者団体は全頭検査を求め、米国消費者の88%が農務省による全頭検査を求めている中で、同労組は自社製品の信頼回復のために全頭検査を決議した。パスコ社経営陣は組合離脱攻撃をかけてが全員投票で否決された。タイソン社はBSE危機にもかかわらず利潤を上昇させている。以上の事実は米国政府の牛肉輸出再開の背景に、大手食肉企業の安全を犠牲にした利潤極大化要求と大統領選挙資金提供圧力があり、また企業内に於ける労働者搾取の実態があることを示している。(2004/7/16
7:11)
◆トービン=スパーン税導入の動きが加速されている
トービン税とは、ジェームズ・トービン(81年ノーベル経済学賞)が72年に提唱した国際金融取引に対する課税をいう。70年代の国際為替取引は180億ドル/日→86年0.2兆ドル→90年代1.3兆ドル→98年1.5兆ドルと急上昇し、モノとサービスの貿易取引額4.3兆ドル/年は為替取引のわずか3日分に過ぎず、しかも為替取引の85%が投機的な短期資本移動で為替市場を攪乱しはじめた。電子取引によって瞬時に世界を駆けめぐりバブルを煽るカジノ資本主義の元凶となった(97年アジア通貨危機)。トービンはすべての為替取引に低利の課税を課すことにより、短期資本移動は高税率となり、直接投資などの長期金融取引は低利となって、投機的取引は規制され為替市場の安定と国内政策の自立性が確保されるというものだ。為替取引の安全取引税はG10のうち6ヶ国で導入され、英国は印紙保留税(0.5%)の徴収で45億ポンドの収税を上げている。また株価急落時の売却一時停止措置は基本的に同じ考えだ。
スパーン(フランクフルト大)はトービン税の1段階課税を2段階課税に発展させ、通常取引時は低率の課税で、通貨価値の急激な変動が起こった場合は高率課税(最大80%程度)を適用するという懲罰的課税方式で為替売買を遮断し通貨暴落を阻止するというものだ。今までは理想主義的で技術的に不可能と揶揄されてきたが、ここにきて導入の動きが加速されている。
トービン(=スパーン税)は、99年にはじめてカナダ議会で決議され、01年フランス下院で導入を最高0.1%の課徴金を立法化し(EU諸国が揃うことを前提に)、そして04年にベルギー下院が為替取引税(CTT)を立法化した。
さてこのトービン税に注目したのが、グローバル経済に歯止めをかけ、税収を途上国の貧困と環境対策に充てようとNGOの主張だ。国連ミレニアム開発目標(15年までに貧困半減)と持続可能な開発資金としてトービン税を使うという発想である。従来の開発資金はIMF(国際通貨基金)の貸付金が主導してきたが、IMFや世界銀行の表決権は出資金に応じて票数が割り当てられ、規制緩和と民営化と引き替えにするG7主導型の運営で過重債務を抱え込んだ。トービン税は途上国の貧困、持続的開発、環境、安全保障を国際公共財という視点から富の移動をおこなうという開発戦略の転換につながる。すでに京都議定書は、途上国の温暖化ガス排出削減に協力する先進国に、その削減量をクレジットとして市場で売買するシステムを打ち出しているが、トービン税はそうした富の移転システムとして現実的な有効性を持ってきている。
最後にベルギー下院議会でおこなわれたスーザン・ジョージの参考人演説の一部を紹介する。
「欧州が不平等ではあっても良好な生活条件を維持しているのは、100年来の改革主義者による租税原理を導入した富の再配分の闘争であった。今日私たちは同じ戦いを南の国々のためにおこなわなければならない。彼らの弱い通貨は投機対象として攻撃され平価切り下げの悲劇に見舞われた。韓国は資本逃避を防ぐために金利を22%に上昇させ、メキシコでは100万人が失業し58%が貧困層であり、インドネシアでは3万人の銀行員が解雇され、タイでは飢えの恐怖に耐えるより多くの人が自殺を選んだ。中進国に集中したアジアの金融危機は、「IMF自殺」といわれる悲惨な実態を誘発した。
トービン税の目的は、投機的でない静かな取引は0,01%という税率、重大な投機に対しては20%に到る禁止的税率を適用する。ジョージ・ソロスはポンド危機で10億ドルも受けたとの報道があるが、こうしたことが貧困国で起こったらどうなるか。第2の目的はこの税収を開発援助に回すということだ。国連目標年度予算の0,7%を達成した国は、北欧とオランダだけだ。別の新しい援助原資として、トービン=スパーン税は理想的な解決である。極めて低い税率だから実体経済を犠牲にすることなく運営できる。原資の基金は国連が運営し、受益国の選択と援助の優先目標は当該国の市民参加で決定する(ポルト・アレグレ市モデルのように)。
2020年には欧米人口は世界の10〜12%にすぎず、南の貧困が放置されたらブーメラン効果で北に波及し、人類全体が貧困に向かうだろう。トービン税はユートピアだと云われるが、人間性とは寛大さを示すことだ。米国はマーシャル援助にGNPの3%を当てた(米国の貿易相手国という意味はあるが)。貧困と不平等、不正義は金持ちも貧しくさせる。グローバリゼーションは必然であるが、その性格は変えることができる。米国もこの国際的課税案に最後は賛成するだろうが、だが、欧州よ、ベルギーベルギーよ、パイオニアたれ。」(2004/7/13
9:15)
◆中国政府「中国自動車産業発展政策」(6月)
03年度の中国自動車生産は444万台で米、日、独に次いで世界第3位。04年は500万台に達して世界第3位に躍進する。外資系自動車メーカーとの提携をテコに10年には先進国水準の自動車生産国として、国内需要から海外輸出へ転換する。この政策は自動車産業構造の再編成をめざす。小規模メーカーの乱立を防止し、国際競争力を持つ大型自動車企業集団数社に再編成する。
この背景には世界の主要な自動車メーカーの対中戦略がある。独VWは160万台、米GMは130万台、フォード・トヨタ・日産・ホンダ・現代はそれぞれ50万台の中国事業計画を発表し、それを合計すれば800万台規模となる。外資系企業の自動車生産はすべて、中国企業との合弁で出資比率は50%上限となっている。自動車生産大国となる急成長の状況への移行を最適化する幾つかの政策が提案されている。規模の経済に向けた企業育成政策に留まらない品質管理と消費者主権の思想が制度化されてくる。
@ブランド専売制度 自動車メーカーは自社ブランドを登録し、商品に明示し、ブランド販売権を持たない、営業条件を備えていない販売店への製品供給は禁止される。
A消費者サービス制度 消費者権益を保護し、良好なサービスを受益する権利を規定。
B自動車リコール制度
C燃費公示制度
外資系メーカーの差別化戦略が有効性を構築するかどうかが問われる段階に入った。(2004/7/12
22:05)
◆地域経済共同体の潮流は、米国単独行動主義とWTO型グローバリゼーションに対抗できるか
南部共同市場(メルコスル)は、91年に南米のアルゼンチン・ブラジル・ウルグアイ・パラグアイ4ヶ国で設立に合意し、94年最終議定書を経て95年に、域内関税原則撤廃・対外共通関税を規定した共同市場として発足。その後、チリ・ボリビア・ペルーが準加盟し、04年にベネズエラ・メキシコが準加盟国となり、多国籍企業優先の貿易ルールに対抗する交渉ブロックとして強化されている。準加盟国は加盟国の輸出には特恵関税待遇を受けるが、域外諸国に対する共通関税設定の義務は免除される。中南米の地域経済共同体の流れが加速している。
EU通貨統合による欧州経済圏の成立はドルに対抗するユーロの意義を鮮明にしている。拡大欧州は市場統合を媒介とする欧州の平和構想にある。しかし市場の欧州は、市民主導型ではなくまた社会的な欧州の後退の危険がある。さらに共通防衛政策はNATOの枠内で規制され、また欧州の武装と武器輸出戦略から離脱できない限界がある。欧州非武装化と植民地主義の清算、米国予防戦争論と単独行動主義に対するオルタナテイブなどの課題がある。
さて東アジアではどうか。ASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会議・ASEAN外相会議・ASEAN+3外相会議の共同コミュニケは、「(東南アジア域外の)対話パートナー」との関係強化をすすめ「東アジアの協力のための東アジア共同体(EAC)」の創設を明記した。アジアの安全保障と経済協力に向けた東南アジアから北東アジアに到る仕組みの現実性が強まった。ASEANはASEAN共同体(安保・経済・社会文化)の短・中・長期行動計画を決定し、すでに動き始めている(97年「ASEAN2020年ビジョン」)。
グローバリゼーションに対抗するリージョナリズムが地域セクト主義に偏向せず、主権の平等と内部問題不干渉の原則で新たな地域連携を構築する地域共同体の進展は、帝国の覇権主義を地域から崩していく可能性をはらんでいる。こうした世界的潮流のなかで唯一孤立した道を歩んでいる日本は、円経済圏樹立に向けた独自の東アジア経済圏構想を提起している。これがかっての東亜共同体構想の再版になる可能性もある(中曽根康弘による東アジア共同体評議会の設立)。(2004/7/10
9:58))
◆生活・福祉・環境型公共事業の「小規模予算による経済効果」ー住宅改修資金助成制度
住民が住宅の改修を地元建設業者に依頼した場合、自治体が費用の一部を補助する制度で、1都1府10県57市区町が実施(04年3月現在)。
○埼玉県川口市 20万円以上の住宅改修は工事費の5%を助成(限度10万円)、03年度までの利用件数331件、1900万円の助成金を受けた総工事費は4億5600万円(助成額比24倍)。
○岩手県紫波町 上平沢小学校の木造校舎。製材・地元6業者、建築・15地元業者、大工延べ3200人、左官・塗装など総延べ6800人の職人就業。地元産木材使用は最高6万円助成。地元業者事業発注率53,6%(98年)→79,8%(02年)。(2004/7/8
9:16)
◆厚生労働省・男女雇用機会均等政策研究会報告書
男女雇用機会均等法にかかわる次の4点を検討し労働政策委員会を経て06年通常国会法案提出予定
@男女双方に対する差別禁止
A妊娠・出産を理由とする不利益待遇
B間接差別禁止
Cポジテイブアクションの効果的推進
女性差別禁止を基本とする現行均等法を男女双方差別禁止体系に改訂する。妊娠・出産による解雇・配転の急増を禁止する規定を新たに挿入、間接差別の概念規定を明確化する(例:募集・採用の身長・体重条件、全国転勤の要件など)。
*コメント:正社員賃金が男性の67%という実態に対する国連女性差別撤廃委員会からの再三にわたる改善勧告を受けたものであるが、上記4点以外に問題はないか。コース別雇用管理(全国転勤などを基準に女性を事実上昇進ルートから排除)は、業務上の必要であれば差別とは見なされず、差別認定に使用者の抗弁権を含む総合判断制としていることは、実質的な全国転勤制の容認ではないか。
妊娠・出産の不利益待遇禁止に、産休非取得者とのバランスに留意するという配慮事項を容認しているのも実効性に限界をもたらす。
男女双方差別禁止規定への転換は一見常識的に見えるが、実は原理的な転換を意味する。男女を一律に扱うことが差別撤廃と同義でないことは、労基法の保護規定撤廃による「女子保護規定」廃止が現実に女性差別を拡大したことを見れば明らかだ。形式的平等ではなく、現場の実態に対応した実効性ある差別禁止制をより深化させなければならない。英国では女性差別禁止を男性に準用する規定であり、スウエーデンは目的で「男女平等の推進であるが特に女性の諸条件改善をめざす」と明記している。つまり実態としての実質的差別が女性にあるというリアルな事実に、形式的な男女平等論による対応は有効ではないということだ。(2004/7/1
8:09)
◆生活・経済統計
○国際通貨基金(IMF)季刊報告書「国際金融の安定性」(9月15日発表)
04年度米国経常収支上半期赤字が3千億ドルを超え、通年で初めて6千億ドルを突破する危険性が出てきた。海外からの米国への資金流入は依然強いが、流入の持続性に限界があり、無秩序なドル急落が起きたときに、多数の海外投資家が深刻な損失を被る。米連邦準備制度理事会(FRB)の超低金利政策解除は市場との対話という点で評価される。原油価格の高騰にもかかわらずインフレが抑制されているが、予想以上のインフレ加速が生じた場合に市場追随型利上げを迫るリスクが生まれる。
米国商務省の発表より。
04年度第2・4半期経常赤字 1661億7700万ドル(前期1471億6400万ドル比+12,9%)
04年度上半期経常赤字 3133億4100万ドル(前年2720億8100万ドル比+15,2%
04年度第2・4半期貿易赤字 1502億8600万ドル(前期比+8,4%)
モノの赤字 1635億800万ドル(+8,5%)
サービス黒字 132億ドル(+9,3%)
資本収支 米国対外資産純増(資本流出) 1184億5000万ドル(前期比-61,4%)
外国の対米資産純増(資本流入) 2652億4600万ドル(同-40,4%)
外国民間投資家による米国債買越額 355億6000万ドル(-45,7%)
同・米国債以外の債権・株式買越額 886億1700万ドル(+42,85)
外国政府の米国債買越額 630億2700万ドル(-38,0%)
○日銀資金循環速報(9月15日発表)
04年度6月末家計部門金融資産残高 1426兆円(3月末比+10兆円)←株価上昇による保有株評価額上昇
内訳
現預金 785兆円
株式・出資金 122兆円
投資信託 35兆円
金融を除く民間企業の負債残高 819兆円(3月末比-13兆円)←企業が負債の圧縮を続けている
家計の資金過不足 2,3兆円余剰
○中国税関統計(1−8月 新華社通信9月14日報道))
8月単月貿易額 983億1千万ドル(前年同月比+36,6%)
うち輸出 514億ドル 輸入469億1千万ドル 貿易黒字 44億9千万ドル
1−8月貿易額 7221億ドル(同+38,2%)
うち原油輸入+39,3%
鋼材輸入-10,9%
貿易相手国 @欧州連合 A米国 B日本(はじめて3位に転落)
○三菱東京・UFJ合理化計画(9月14日発表)
店舗統廃合 銀行140店 信託銀行20店 証券会社40店 合計200店舗削減
○帝国データバンク「8月全国企業倒産」(負債額1千万円以上 9月14日発表))
件数 1080件(前年同月比-18,2%)
負債総額 5991億円(同-48,9%)
倒産内容
清算型法的処理(破産、特別清算)36,7%
不況型倒産 818件(75,7%)
老舗倒産 302件(28,0%)
上場企業倒産 1件
(評価)デジタル家電・エアコンを牽引役とする個人消費と設備投資、企業業績改善、銀行貸し出し減少・中小企業間信用縮小による不渡り倒産の減少や政府の中小企業支援による倒産の危機の先送り
○リクルート「03年度結婚トレンド調査」(『ゼクシイ』13日発表 9750組対象 4790組回答)
結婚式費用全国平均(挙式、披露宴) 283万円
地域別平均 東北354万円 北海道150万円
結婚関連総額費全国平均(新居購入・入居費用含む) 537万円(前年度比-15万円)
結婚に備えての貯蓄率 男性68% 女性74%
結婚に備えての貯蓄総額全国平均 337万円(夫婦合算)
仲人をたてたカップル5%(3年前の4分の1) 首都圏では1%
○厚生労働省「労働経済白書04年版」(9月10日)
派遣労働者 95年61万人→02年223万人
アウトソーシングによる事業所向けサービス業の急増
賃金97年から下落し、格差拡大傾向
労働時間 短い労働者と週60時間以上両極分解
仕事の疲れ・ストレス 雇用不安激増 仕事の満足感の長期低落
(課題)企業活動成果の適切な配分、成果配分の納得できる賃金制度
持続的な生産性の上昇は、人員削減ではなく経営効率改善・労働力の人的向上、即戦力志向転換、長期的な職業能力の形成、安易な外部人材投入効果なし、社会全体としての人材ストックの危機
非労働力人口で15ー34歳の卒業者・未婚で家事・通学をしていない者(仕事就かず職探しもしない)52満員(前年比+4万人)
フリーター(定職なくアルバイト、パートで働く)217万人(前年比+8万人)
(コメント)かってない日本の労働力市場の危機を反映した指摘が羅列されている。現在の企業の経営戦略による社会全体の衰弱を警告しているが、多様な労働による生産性向上と労働時間規制という基本問題については切り込んでいない。あくまで経営サイドによる部分的危機の枠内に留めている。
○財務省「法人企業統計調査」(9月6日発表 04年4−6月期金融・保険を除く資本金1千万円以上の全企業対象)
経常利益 前年同期比+34,3%(3年前同期実額比-2兆4700億円)@
人件費(役員給与、従業員給与、福利費) 同-0,2%(3年前同期実額比-2兆4100億円)A
福利費(法定福利費、福利施設負担額) 同-9,5%
経常利益に占める資本金10億円企業(26%)割合 54%
トヨタ自動車の場合
国内自動車販売台数 前年同期比-5000台
純利益 前年同期比+2866億円
コスト削減利益 +400億円(従業員16万4000人 臨時雇用1万人増による人件費削減)
(コメント)@とAの数字を見ればトヨタは車を売って儲けたのではなく、人を減らして儲けたのです。人材投資削減による企業利益効果は短期的には有効だが、教育訓練費増加による企業利益のほうが結果的には利益と雇用を増加させ経済を安定軌道に乗せる(経済産業省概算要求説明資料「若年者を中心とした産業人材育成について」)。
○国連児童基金(ユニセフ)・中国衛生省共同調査(9月5日発表)
中国の潜在的飢餓(ビタミンA、鉄分、ヨード不足) 2億5000万人
胎児段階でのヨード不足による大脳発育障害 200万人
6ヶ月から2歳の子供 鉄分不足20% ビタミンA不足12%
*年間新生児数 1900万人
○経済広報センター「外国人労働者受け入れに関する調査」(9月6日発表 3625人対象)
賛成18%
どちらかといえば賛成 41%
日本の資格が必要 77%
相手国の資格があればよい 20%
日本語の能力が必要 91%
看護・介護分野での受け入れ賛成 59%
(行政の課題)
不法就労・不法残留の防止 86%
○日本経団連「04年学卒者初任給調査結果」(9月1日 725社対象)
前年同水準に据え置き 88,3%
初任給見直した 11,7%
大卒事務系 20万3557円(前年比+0,15%)
院卒、短大卒、高卒いずれも+0,1%前後(*詳細は経団連HPへ)
○総務省「労働力調査 4−6月平均詳細結果」(8月27日)
正規社員 3433万人(前年同期比-12万人)
非正規社員 1554万人(31,2% 同+71万人+1,1ポイント))
就業者中過去1年間の離職経験者 325万人 うち25−34歳98万人
転職による収入減 39,4% 収入増33,2%
完全失業者失業期間別 1年以上105万人 3ヶ月未満121万人
仕事に就けない理由で最も多いもの 45歳以上 求人と年齢が合わない 44歳以下希望する職種と仕事がない
非労働力人口(非就業で求職活動していない)
就業希望者 551万人(前年同月比25万人)
求職活動をしない理由
適当な仕事がない190万人 うち仕事があればすぐつける71万人 過去1年間で求職活動の経験ある47万人
家事・育児で仕事が続けられそうにない 147万人(同+17万人)
○日本経団連「春闘調査」(545社労務担当役員対象 8月25日)
(賃金回答)ベア・定昇実施3,9% 定昇のみ54,3% 定昇縮減:時期先送り4,8% 一時金引き上げ23,9%
(今後の賃金決定)定昇廃止・成果業績給56,9%
(今後の雇用形態)長期雇用中心29,2% パート派遣比率拡大52,0%
(高齢者雇用)60歳以降継続雇用制度80%(但し3分の2は会社が認めた社員のみ適用)
○野村総研「オタク市場調査報告」(8月24日発表)
オタク定義「特定の趣味分野に生活の時間や所得の多くをかける人たち」で「アイドル、アニメ、コミック、ゲーム」の4分野約280万人で、年間市場規模約2600億円と推計。
アイドルはファンクラブ組織から中核的部分を抽出。コミックは、同人誌即売会参加者数と発行部数により愛好者人口析出。一人当たり年間消費額は業界団体アンケートと小売店への聴取調査で算定。
4分野合計市場規模 年間2兆3千億円
うちオタクの占有額 年間2600億円(11%)
アニメ 人口20万人 年間消費額10万円 市場占拠率13%(200億円)
アイドル 80万人 7,5万円 2%(600億円)
コミック 100万人 10万円 16%(1000億円)
ゲーム 80万人 10万円
5%(780億円)
オタク型消費行動は企業にとり無視できない存在に成長し、オタク市場はもはやニッチ市場ではない。オタク市場yはDVD1500億円、デジタルカメラ2500億円を上回るメジャー市場になった。
○若年雇用統計・厚労省就職状況調査
高卒就職内定率 90年99%→02年89,7%→04年92,1%(*大卒93,1%)
高卒求人倍率(企業採用予定数・就職希望者数) 92年3,43倍(大卒2,86倍)→01年1,21倍(大卒0,99倍)
○社会経済生産性本部「メンタルヘルスの取り組みに関するアンケート調査」(8月20日発表 上場企業2676社対象268社回答))
従業員の心の病増加 58,2%(02年48,9%)
1ヶ月以上心の病で休業している社員がいる 66,8%(前回58,5%)
うつ病 85%(前回72,3%)
○ジェトロ貿易投資白書(2004年版)
03年商品別輸入動向 対中機械機器伸び率+35,4%(280億ドル) *米国+1,4%(272億ドル)
IT関連の完成品輸入急増
日本の輸入額に占める中国構成比は02年に米国を上回り、中国が第1位となり、輸出は依然として米国がトップだが中国との差は接近している。
○農水省離農者調査(03年離農農家4万7000戸のうち662世帯の動向調査)
(離農理由)
高齢 44.0%
病気・介護 29,6%
農業外の仕事に専念 15,6%
十分な収入が得られない 14,8%
(離農した農家の農地処分方法)
貸し付け 59,6%
放置 37,9%
借入地返還 10,1%
売却 7,2%
農地以外へ転用 1,6%
*03年度農業就業人口368万人のうち、65歳以上56%で高齢化が進み、農水省が担い手と位置づける主業農家も危ないという実態がある
農水省農業構造動態調査(04年1月1日現在)
総農家戸数 293万4000戸(前年比 -47000戸)
主業農家 43万4000戸(-14000戸 -3,1% 農業所得が主で65歳未満の農業従事者がいる)
販売農家 216万1000戸(-44000戸 耕地面積30アール以上で販売額50万円以上)
自給的農家 77万3000戸(-3000戸 その基準に達しない))
農水省03年度農作物作付け面積調査
445万f(前年比-4万4000f(1%) 95年500まんf)
田-2万f 畑-2万4000f
稲-2万2000f(減反政策による)
飼料作物 -4500f(畜産・酪農戸数減による)
野菜 -1900f(輸入増による価格低下で生産意欲低下)
麦・豆・ソバは増加(水田作物転換と外国産の安全性不安)
耕地利用率(作付け面積÷耕地面積) 94%(-0,2ポイント)
○経済産業省「大学発ベンチャー企業実態調査」(04年3月実施 362社聴取調査)
経営黒字企業125社(34,5%) 赤字企業190社(52,5%) 旧科学技術庁調査00年技術系ベンチャー1300社赤字割合23,3%であり、企業後4年経過の一般製造業では90%が事業化しているが、大学発ベンチャーは50%に留まる。97年に国立大教員の兼業規制緩和後に大学発ベンチャーは急増し、03年までに799社に達した(業種別 IT関連40,9% バイオ・医療36,7%)
不振の主要な原因は、起業研究者のノウハウ不足と営業戦略人材の不足にある。
○帝国データバンク「7月全国企業倒産集計」(8月13日発表)
倒産件数 1151件(前年同月比-16,8% 前月比+2,2%) *東京商工リサーチでは1123件、5764億8200万円
負債総額 6053億3600万円(前月比+63,7%)
販売不振など不意教が他倒産75,5%
清算処理(破産・特別清算)453件(40%)
倒産件数は減少しているが、事業継続断念が増えむしろ自体は深刻、素材価格高騰による経営悪化など今後の倒産増加が予測される。
東京商工リサーチ名古屋支社「中部9県企業倒産状況」(8月20日発表)
7月企業倒産(負債総額1千万円以上) 139件(総額730億9600万円)
倒産件数(前月比-13 前年同月比-50件)
負債総額(前月比+185億4200万円 前年同月比-218億6500万円)
不況型倒産 105件(75,5%)
○厚生労働省「全国学童保育所実態調査」(8月13日)
全国13698カ所、利用学童565764人
独自設置基準設定自治体 東京都、埼玉県、43市区町村
クラブ室基準設定87% ロッカー62% トイレ60% 手洗い場45% 台所38% 静養室・遊び場20%、事務室9%
次世代育成支援対策推進法によって子育て計画を策定する義務があり、新・新エンゼルプラン策定の準備が進んでいる中で、学童保育の充実が望まれる。(2004/8/14 8:06)
○総務省「人口動態調査結果」(住民基本台帳による04年3月31日現在 5日発表)
総人口 1億26、824、166人(前年比+13万5802人 +0,11%)
出生者数 122万9239人(前年比-2万2258人)
死亡者数 101万1187人(前年比+3221人)
老年人口(65歳以上) 2440万3257人(総人口比19,24% 前年18,82%)
年少人口(15歳未満) 1778万9885人(総人口比14,03% 前年14,17%)
総人口の増加数・増加率ともに68年調査開始以来最低、出生者数と年少人口割合はそれぞれ79年度と094年度の調査開始以来最少・最低、志望者数・老年人口割合はそれぞれ最多・最高となり、少子・高齢化が更に進行。
○厚生労働省「03年度雇用動向調査」(2日発表)
主要産業で5人以上の常用労働者(含むパート)事業所対象。
離職者662万人
離職率662万人・16,1%(前年比-0,5ポイント)
入職者605万人・14,7%(前年比+0,2ポイント)
離職超過幅1,4ポイント(前縁2,1ポイント)
入職・離職に占めるパート割合 入職者37,2% 離職者34,2%(何れも調査開始91年以降最高値)
男性離職率13,1%(前年比-0,6ポイント)
女性入職率19,4%(前年比+0,7ポイント 主婦層がパート勤務に参入)
○農水省「2003年度農業経営動向統計調査」
販売農家(耕地30アール以上又は販売額50万円以上)農業所得 111万円(前年比+8,3% 天候不順による価格上昇)
農家総所得772万円(前年比-1,6%)
うち農外所得(給与など)432万円(前年比-4,5%)
年金被贈収入229万円(前年比-0,3%)
主業農家(65歳未満の専業的就農者がいて農業所得が農外所得より多い)農業所得474万円(前年比+1,0%)
養豚821万円
酪農809万円
肥育牛752万円
露地野菜462万円
稲作352万円
果樹336万円
農家総所得765万円(前年比+1,1%)
販売農家数230万戸うち主業農家数40万戸
○日本自動車工業会「04年度上半期自動車産業状況」(18日発表)
国内自動車生産台数 5、306、948台(前年同期比+3,4%)
乗用車 4、407、691台(+3,4%)
トラック 868、061台(+3,8%)
輸出 3、390、701台(+4,0%) 北米向け-6,1% アジア向け+7,4% 欧州向け+8,0%
海外生産実績(03年度) 8、880、083台(+12,6%)
○経済産業省「外資系企業動向調査」(27日発表)
外資比率30%超企業新規進出数 157社(前年比+22社 製薬業界の世界再編)
外資系撤退企業数 161社(前年比+61社 情報通信関連)
外資系企業売上高 27兆円(+5,1%)
外資系企業経常利益 1兆55147億円(+27,4%)
○ガゼッタ・メルカンチル(ブラジル経済紙 27日付)
海外ブラジル人労働者の本国送金額28億6760億ドル
国営ブラジル銀行経由18億ドル(1980億円 62% 2003年度)
1位日本在住ブラジル人8億ドル(27万人) 2位在米ブラジル人3億6千万ドル
2004年度上半期16億ドル(通年予測 30億ドル)
○経済産業省・6月商業販売統計(28日発表)
小売業販売額10兆1810億円(前年同月比-2,9% 衣料品日曜日が1日少なく、台風の影響で-6,5%、飲食料品は生鮮食品-2,8%、自動車+4,3%)
卸売業販売額34兆3430億円(前年同月比+4,6% 石油価格高騰、輸出向け加工機械)
商業全体販売額44兆5240億円(前年同月比+2,8%)
○日本フードサービス協会・04年度上半期外食産業市場動向調査(26日発表)
全店売上高前年同月比+1,9%
客数+1,3%(うるう年効果で営業日+1日費)
客単価+1,3%
(業態別)居酒屋+11,6% 洋風ファーストフード+1,9% 和風ファーストフード-14,2% 焼肉-0,3%
○日銀6月企業向けサービス価格指数(95年=100 27日発表)
93,7(前年同月比-0,4% 前年実績割れ75ヶ月連続)
業種別 金融・保険-2,2%(銀行振込手数料下落) 運輸+1,1%(円高で外洋貨物輸送費円高換算目減り) リース・レンタル-2,9%(業務用コンピュータ値下がり)
○日本リサーチ総合研究所「6月消費者心理調査」(隔月実施 全国2200人対象 回答率51,2% 26日発表)
生活不安度指数144(前回4月±0)
景気見通し指数81(同-4)
○労働政策研究・研修機構「労働者の働く意欲と雇用管理に関する調査」(20日 1616社 労働者7828人 1月調査)
成果主義賃金を導入している企業55.8%
3年以内に導入を予定している企業27,0%
[3年前との比較]
賃金制度は業績がより反映されるようになった29,3%
変化していない60,6%
[賃金水準]
低くなった29,0%
変化していない43,4%
[労働時間]
長くなった27,5%
短くなった14,4%
[評価の賃金・賞与への反映]
納得感・低下した29,9% 変わらない54,7% 高まった 9,7%
公平感・低下した20,0% 変わらない63,2% 高まった10,9%
賃金満足度・不満51,4%
[失業への不安]
正社員46,8%
派遣社員 他の就業形態に変わりたい43,7% 安定した仕事に就きたい46,8%
○信金中央金庫総合研究所調査報告
修正失業率(完全失業者数5,3%+求職意欲喪失者数) 6,1%
*総務省労働力調査 調査期間の月末1週間で@仕事がなくA仕事を探したB仕事があればすぐ就業可能を充たす者を完全失業者数と見なすが、職探しをしない・一時的に中断者は実質的失業者だが統計上は非労働力人口となる。非労働力人口から休職意欲喪失者を分離すると、14,7万人(00年)→29,9万人(01年)→51,7万人(02年)→59,4万人(03年)と急増している。これを総務省・完全失業者数に加えると、6,1%(02年)→6,1%(03年)と横ばいで失業実態は改善されていない。
○厚労省「就業形態の多様化に関する総合実態調査結果の概況」(7月21日発表)
非正規社員34.6%(前回比+7,1ポイント)
正規社員376万人が非正規へ移行
内訳 パート労働者23,0% 契約社員2,3% 派遣労働者2,0%
非正規社員雇用理由上位3(複数回答)
賃金節約51,7%
日、週の仕事の繁閑に対応するため28,0%
景気変動の調整26,5%
碑石社員月額賃金20万円未満78,0%
現在会社の就業期間
2-5年未満30,9%
5-10年未満18,7%
10年以上12,8%
派遣労働者で5年以上15,5%(違法状態)
非正規就業を選択した理由 正社員として働ける会社がない40%
日本人材派遣協会「労働者派遣事業の実績と見通し」(全国主要109社 4−6月と今後3ヶ月 8月17日発表)
派遣スタッフ実稼働者数 前年同期比+13,8% 首都圏+15,3% 関西圏+13,7%
職種別 ソフト開発+23,7% 事務用機器操作+18,3%
紹介予定派遣(6ヶ月以内に直接雇用を予定し履歴書送付と事前面接をおこなう)+48,4%
製造業務実稼働者数 1054人(4月)→1503人(6月)
今後3ヶ月見通し スタッフ実働者数 横ばい値(50%)より大幅増の70,3%
○UFJ総合研究所調査報告(14日発表)
企業DIは6月日銀短観で大企業製造業+22,中小企業製造業+2と好転したが、中小企業の回復水準は低い。企業規模別1社当たり経常利益(本業益+金融損益)は、大企業(資本金10億円以上)と中堅企業(1−10億円)は順調だが、中小企業は失速している。特に1ー2千万円、2千ー5千万円の小規模企業で利益率の減退が観られる。なぜか。
原油高騰で商品市況が上昇する中で、売上原価の伸びで中小企業が大企業を上回るが、大規模なリストラを実施した大企業は、資材・部品調達の価格決定力を高め、多様な調達ルートを持っているから、売上高変動費比率を安定させているからだ。小企業は仕入価格の上昇分を販売価格に転嫁できず、利益率は悪化している。大企業は固定費中の人件費を激減させ、デジタル家電・輸出の恩恵を受けている。このまま収益力の格差が拡大すれば、景気後退で売上数量が落ち込めば中小企業の将来は危うい。
○経済財政白書(内閣府04年度年次経済報告 16日発表)
@構造改革による下押しの除去に総合的成果→輸出増加・設備投資増加→個人消費底堅さ→日本経済は長期停滞から脱しつつある
A企業人件費慎重・パ−ト比増大・年金保険料アップ→雇用者所得伸び緩やか
B地域経済回復のばらつき・中小企業不振
C危機的な財政→削減努力と必要な税制措置
D若年層(25−34歳)の長期失業者数増大
*コメント:要するに@とA〜Dの間に埋めがたい背理があり、構造改革路線の失敗を自己告白している。白書はDについて、求人と求職のミスマッチ、親との同居若年未婚者の失業率が相対的に高いことで、若者が真剣に求職活動をしていないからだと云うが全く逆だ。就職できないからこそ親との同居を選ばざるを得ないのだ。
○帝国データバンク2004年上半期全国企業倒産(1−6月 負債1000万円以上)
倒産件数7253件(前年同期比-19,3%)
負債総額4兆3707億4200万円(同比-32,3%)
破産件数2640件(過去2番目)
業種別倒産件数 食肉卸18件 ホテル・旅館業56件
○東京商工リサーチ2004年上半期全国企業倒産(1−6月 負債1000万円以上)
倒産件数7072件(前年同期比-19,5%)
負債総額4兆1642億円(-34,8%)
不況型倒産構成比76,47%(過去最悪)
*コメント:倒産件数は表面的に減少しているが、大企業・製造業と中小企業・非製造業、都市と地方の2極化が鮮明になり、多くの企業は本業再生の展望はない。おそらく倒産申し立て寸前で喘いでいる業主と企業が多いのではないか。
○総務省全世帯家計調査速報(6日発表 農林漁業を除く2人以上世帯)
1世帯当たり消費支出 301、320円(前年同月比+4,8%)
同季節調整値 前月比-0,6%
支出費目
交通・通信+21,4%(自動車購入+91,4% 携帯電話料金+16,1%)
教養娯楽 +12,2% 家具家事用品+10,7% 住居+4,8%
保健医療・教育はマイナス
○内閣府機械受注統計(8日発表)
船舶・電力を除く民需(民間設備投資の先行指標)9971億円(前月比-2,1%)
製造業4462億円(-9,1%) 鉄鋼・造船は+、電気機械・精密機械-転換
非製造業5485億円(+3,0%)
○内閣府景気ウオッチャー調査結果(8日発表)
景気現況を3ヶ月前と比較する現状判断指数(DI)は、家計動向(49,0)・企業動向・雇用動向のすべて指数低下し、51,4(前月比-1,4ポイント)となった。この調査は全国2050人のドライバーや飲食店主に街角の景況感を聞き、景気判断の分岐点を50とする。有効回答数88,2%。
○日銀貸出・資金吸収動向速報(8日発表)
銀行貸出残高386兆8993億円(前年同月比-4,2%)で78ヶ月連続下降、01年より-72兆円
大手銀行-6,9%
地方銀行-0,7%
不良債権処理加速政策による銀行融資の激減で、企業の資金需要は中小企業中心に厳しい。
○日銀マネーサプライ(通貨供給量)速報(8日発表)
M2+CD(現金、要求払い預金、定期性預金、譲渡性預金)平均残高693兆円(前年同月比+1,8%)
項目別
流動性預金(M1現金+普通預金) 現金+1,1% 普通・当座預金+4,2% 譲渡性預金+23,2%
○日銀マネタリーベース(7月2日発表)
日銀が供給する通貨(市中に出回っている貨幣総額)=現金通貨(貨幣流通高で示される日銀券発行額と補助貨幣)+民間金融機関の法定準備預金(日銀当座預金)
平均金残高107兆2957億円(前年同月比+4,4%)
○財務省03年度一般会計決算概要(7月1日発表)
税収43兆2802億円(見積額41兆7860億円を1兆4942億円上回る)
内訳 法人税10兆1152億円(前年度決算比+6,2%)
消費税9兆7107兆円(前年度比決算比-1,0%)
所得税13兆9146兆円(前年度決算比-6,1%)
新規国債発行額35兆3450億円(予算額を1兆1000億円下回る)
歳出総額82兆4159億円
決算収支1兆5411億円(黒字)
純剰余金1兆506億円(地方交付税分を差し引いたもの、財政法で50%以上を国債償還に当てる)
*コメント:法人税収入が伸び所得税収入が減っていることが何を意味しているか、一目瞭然です。
○厚生労働省02年度所得再分配調査報告書 *ジニ係数 0から1までの値をとり0に近い程所得格差が少ない(伊ジニ1932年開発)全国10125世帯対象 有効回収率75,3%
当初所得(雇用者所得と事業所得の計) 0.4983 *84年調査から連続上昇
再分配所得(当初所得から税金・保険料を控除し社会保障給付を加える)0.3812 *84年調査から最悪水準へ
日本は米国・英国に次いで所得格差が大(次いで仏・独・スウエーデン)
○日銀短期経済観測調査(短観 1日発表 10416社対象 有効回答率97,1% 調査回答期間5月26日から6月30日)
大企業・製造業DI+22
内訳 業種別 鉄鋼+44(46ポイント上昇) 非鉄金属+31(21ポイント上昇) 電気機械+25(19ポイント上昇)
大企業・非製造業DI+9
内訳 飲食店・宿泊+4(29ポイント上昇) 運輸+10(10ポイント上昇) 小売業-7
中小企業・製造業DI+2(大企業製造業DIとの格差15から20へ拡大)
内訳 鉄鋼+30(13ポイント上昇) 化学・造船重機もプラス転換
中小企業・非製造業DI-18(2ポイント上昇)
内訳 小売業-4
大企業雇用者数(パート含む)前年同期比-1,6%
中小企業雇用者数前年同期比+0,9%
04年度設備投資計画前年度比 大企業・製造業+20,4% 中小企業・全産業-14,1%
*コメント:下記政府統計との非整合性が大きい。輸出関連と中国関連の大企業・製造業は確かに伸び、中小製造業が引っ張られている傾向はあるが、雇用なき景気回復で国内経済循環の成長とは無関係だ。中小非製造業の沈滞は何を物語るかーにこそ分析の焦点を当てなければならない。外需主導の2極分解。なにか参院選を視野に置いた政策的意図を感じる日銀統計だ。
○厚生労働省毎月勤労統計調査(速報値 事業所規模5人以上 30日発表)
所定内給与 -14523円(01年比) *基本給・諸手当 12ヶ月連続低下
現金給与額 274972円(前年同月比-0,8%) *基本給・諸手当・残業代(23ヶ月連続で増加)
常用労働者数 -505000人(同上) *2ヶ月で労働日18日未満を除く
内訳 一般労働者 -227万人(78ヶ月連続で減少)
パート労働者 +1765000人
○農水省・農業経営統計調査(30日発表 耕地面積30アール以上または農産物年間販売額50万円以上対象)
農家総所得 772万円(前年比-1,6% 7年連続で減少 兼業農家の給与所得減)
農業所得 111万円(前年比+8,3% 農産物売り上げー農薬費ー飼料費) *米・野菜不作による価格上昇
農外所得 432万円(同上 -4,5%)
○経済産業省・中小企業庁4−6月期中小企業景況調査(30日発表 18879社対象 有効回答率95,3%)
業況判断DI -24,9(前期1−3月期より1,6ポイントイント拡大)
電気・情報通信・電子部品再びマイナスへ
化学・卸小売マイナス幅拡大
建設・サービスマイナス幅縮小
○総務省・労働力調査(速報値 29日発表)
完全失業率(季節調整値)4,6%(前月比-0,1ポイント) 319万人(前年同月比-56万人)35−44歳男性のみ31人(+1万人)
24歳以下男性完全失業率11,2%
同女性8,6%
週49時間以上の労働時間+38万人(2,0%)
就業者数6389万人(+29万人)
うち雇用者数5406万人(+55万人) サービス業728万人(+66万人) 卸・小売業-23万人 製造業-22万人
自営業主・家族従業者数960万人(-26万人)
臨時雇い617万人(+24万人 4,0%)
○厚生労働省・一般職業紹介状況(29日発表)
有効求人倍率(季節調整値)0,80倍(前月比+0,03ポイント)
有効求人数-0,3%
有効求職者数-3,1%
新規求人数+5,5%(前月比-7,5%) サービス業+15,9% 運輸業+12,7% 情報通信業+12,6%
○厚生労働省による新採用と法定割増賃金(+25%)のコスト比較試算(毎月勤労統計調査と就労条件総合調査から)「第11回仕事と生活の調和に関する検討会議」資料より
新規雇用コスト 3127円/時 *労働費用(=賃金+保険料+福利厚生費)/所定労働時間
既存労働者残業コスト 2055円/時(割増率はゼロで計算)
両者均衡点 既存労働者割増賃金率52,2%
結論 現行割町賃金率25%が極端に低いことを示す
○総務省家計調査報告書(29日発表)
勤労者1世帯当たり消費支出 322、716円(前年同月比+5,6%) *休日の旅行と外食
配偶者収入+15,3%
基礎的支出(食料・家賃・光熱費)+4,6% *原油価格高騰
交通通信費 +22,7% *自動車購入、ガソリン代、有料道路料
家具・家事用品費 +21,0% *高気温によるエアコン+68,2%
教養娯楽費 +15,7% *PC・TV耐久財購入
*コメント この調査はサンプル数が4000世帯と少なく、高額商品を購入する富裕層に偏向し実態を正確に反映しないと思われる。なぜなら厚労省の1人平均現金給与総額は12ヶ月連続で低下しているのに、総務省1世帯当たり実収入は04年1月以降急増しており、サンプルが富裕層に偏向していると推定される。また自動車販売協会では5月自動車国内販売台数は大手5社すべて前年実績を下回っているからだ。
○経済産業省『通商白書2004年版ー新たな価値創造経済に向けて』(29日発表)
・企業増益と雇用のアンビバレンツ 90−02年までは雇用者報酬(雇用者の所得)と営業剰余(企業の利潤)の変化率は連動していたが、90年代以降営業剰余の改善と雇用者報酬の伸びは連動しなくなった、その要因は労働コスト上昇の抑制にある、特に製造のリストラ効果は著しい「ジョブレス・リカバリー(雇用なき回復)」状況を生んでいる
・企業の投資行動 物的資産(建物、設備、機械)から知的資産(アイデア、ノウハウ、技術、知的財産権)へ移行
・企業競争 消費者への差異性ある財・サービスの提供、その源泉としての知識財価値上昇
・国際貿易 中国=最終組立国と他のアジア地域=部品供給国の東アジア国際分業
・日系企業 デジカメなど高付加価値部品の生産・開発機能は日本に残し、製造・販売拠点を中国展開
*コメント
・ジョブレス・リカバリーを初めて政府統計で指摘したのは画期的だが、それだけ生活が危機にあることを反映している
・価値創造の源泉の分析はあるが価値創造の帰属分析が欠落
・価値の差異による利潤、競争による創造性など企業競争の側面に分析が傾斜
・価値の共同管理(どのような生産システムで、誰のために生産し、どう分配するか)という持続可能な社会構築の発想がない
・EU予算の1/3が地域政策投資、ドイツ南部の自動車制限と路面電車利用促進政策を例に、日本の地域経済の空洞化などを指摘するが上記3点との整合性がない(2004/6/30
8:26)
◆日本の林業問題
日本は国土面積の67%を森林が占める世界有数の森林国だ。しかし林野庁の輸入依存政策で外材が80%を占め、国内林業は壊滅状態にある。森林労働者の労働条件は劣化し、平均収入は300万ー400万円であり、高齢化(平均年齢60歳)と担い手不足が深刻で緊急に除間伐が必要な山も放置され荒廃して放置されている。
森林再生の道はあるのか。ここでウッドユニオン活動をみよう。上伊那森林組合の技能職員(現場作業員)による「上伊那ウッドユニオン」がある。森林組合は、森林の育成管理・森林の公益的機能維持・後継者育成に向けた森林所有者がつくった協同組織であり、技能職員(植林と伐採担当)と事務職員(測量と地図づくり)で構成される。技能職は天候に左右された不安定収入と材価低迷による作業単価の下降で年と経験を重ねても収入は上がらない。里山が放置されているのに、林道・作業道が整備されていない天然林の伐採と造林を優先する無方針など問題は多い。上伊那ウッドユニオンは森林組合70人のうち30人で組織する平均年齢39歳の若い組合である。団体交渉によって、労働災害講習会開催、有給休暇の取得条件、チェーンオイルを鉱物油から植物油へ転換など長野県の補助事業として認定させてきた。行政と山林所有者・森林組合の連携による森林再生を模索している。(2004/6/29
8:19)
◆イラク債務問題と復興ビジネスのアメリカ化
イラクが外国から借りている債務は次のような状況となっている。
1,日 本 41億 860万ドル(19,5%)
2,ロシア 34億5000万ドル(16,4%)
3,フランス 29億9370万ドル(14,2%)
4,ドイツ 24億 390万ドル(11,4%)
5,アメリカ 21億 179万ドル(10,4%)
6,イタリア 17億2600万ドル( 8,2%)
7,イギリス 9億3080万ドル( 4,4%)
8,オーストリア 8億1310万ドル( 3,9%)
9,カナダ 5億6429万ドル(
2,7%)
10,オーストラリア4億9930万ドル( 2,4%)
この債務比較をみれば、今次イラク戦争参戦国の債務が相対的に低額であることが分かるが、唯一日本のみがトップの債務でフセイン政権を支援しながら、イラク攻撃に参戦した奇形性が浮かび上がる。イラクが外国から借りた公的債務残高は210億1800万ドル(元利合計で遅延損害金は含まない)。経済復興に向けた債務削減をめぐって、債権国側の意見が対立しシーアイランド・サミット議長総括ではイラク債務削減は触れることができなかった。すでにサミットは削減そのものの合意はあるが削減率で激しく対立し、米国案に賛成したのは小泉日本首相のみであった。米国案は90%削減案であり、仏・独・露案は50%削減案である。IMFのイラク経済調査団は90%以下の削減でも充分復興可能と結論している。削減率は客観的なイラク経済の条件を基礎に算定すべきであるが、米国はナゼ帳消しに近い案を主張するのだろうか。
@主要国で比較的債務額が少なく、他国に較べて打撃が小さい。
Aイラク復興事業の大半が米国企業なので、速く経済復興すればそれだけ米系企業の利益は大きい。
B債務帳消しはイラクの石油輸出利益を債務返済に回さなくてもいいから、イラクの米系形石油企業の利益が最大化する(イラクの原油生産額は年間150億〜180億ドルで、米国債務の7から8倍に上る)。
イラク債務削減問題は主要国債権国会議(パリクラブ)で議論されるが、パリクラブは19ヶ国による途上国公的債務処理を検討する会合で、56年アルゼンチン債務問題を契機に結成されたもので、国連統制下の国際機関ではない。パリクラブは今まで80ヶ国・4000億ドルの債務処理を決めた。日本の対米従属の深化を示している。(2004/6/28
17:56)
日本の対中東復興ビジネスの大要をみる。
○三井物産 サウジ国営石油会社アラムコへの電力供給の火力発電プラント500億円受注(英国電力会社インターナショナルパワーとサウジ有力財閥サウジオジェールが設備を主契約社・三井物産に発注→韓国現代重工業に外注)
○住友石油化学 サウジ企業との合弁で総投資額5000億円の石油精製・化学プラント建設
○三菱グループ 58社出資のサウデイ石油化学とサウジ政府系企業との合弁で石油化学プラント2500億円調査開始
◆原田永幸日本マグドナルドCEO(55歳)にみる企業家精神
04年2月にアップルコンピュータ社長から日本マグドナルドCEOへヘッドハンテイング。外食市場はパソコンの10倍、ハンバーガーは毎日の衝動買い、ダイナミックでスケールの大きい市場だ。アップル社長に就任した97年は、ウインドウズに押されて業績悪化。全国3700の取扱店を250に絞り込み在庫を適正化し、代理店への高額マージンを圧縮し、iMacのイメージ戦略でシェアを急速に伸ばした。即断即決「決めたらすぐやれ、はもう古い。決めなくてもいいからやれ」である。
マグドナルドは価格戦略の迷走で02年赤字転落、創業者・藤田田の日本独自路線の残滓も強い。組織の効率編成は決断してから2週間で完了。新組織は部署の責任を明確にし、縦の階層をなくし、戦略方針が決まったら自己判断でやり抜く。企業文化は情報コントロールと意志決定プロセスで変わる。年功によるキャリアという風土は根底から崩す。寝ていても成果を出せば評価する。ユーザーと直接かかわることが最もエクサイテイング、商品の無形の価値を伝えるブランド戦略が普遍的な経営課題という。どんなビジネスも競争モデルは、@商品力・技術力→A価格競争→Bサービスなど付加価値競争へて展開する。外との戦いではなく、社員の意識改革や経営戦略の再構築がマグドナルドの課題だ。
ブランド再構築は、商品差別化よりもサービスなど無形の価値だ。気持ちが豊かになるという情緒でつくられる。広告宣伝ではブランドはつくられない。店に着て店員と接し、商品を買い食べるというすべての体験がブランドを形成する。日本人とスウエーデン人は無形の価値に対する感性が鋭く金をかけることを厭わない。「全国どこでも最もスピーデイーで最も求めやすい価格で提供するベストの商品」がコンセプトだ。
最近のスローフードはニッチビジネスだ。今のトレンドというのは間違っている。すべてのビジネスはマスかニッチかどちらかに絞らなければならない。中途半端が一番ダメだ。マグドナルドはマスとボリュームでいくビジネスモデルだ。以上」・朝日新聞6月26日朝刊。
コメント:現代のビジネス経営の先端モデルが、@速度の経済 A顧客満足経営 Bブランド戦略にあることを実証し、その基軸となる条件が従業員の目標に対する自主的投企にあることを示している。しかしマグドナルド商法の致命的欠陥は、商品自体の使用価値に対するアプローチがないことだ。それはスローフードに対する関心が絶無であることに如実に表れている。要するに自己利益極大化を追求するのみで、社会的責任投資の思想がない。米国型食文化の末期的な限界が露わに鳴りつつある時代認識がない。(2004/6/26
21:43)
◆子どもの血と汗がしみ込んだスポーツウエアを喜んで着ているのは誰か
英国・NGO「オックスファム」が、「クリーン・クローズ・キャンペーン」(被服産業の労働条件改善を図る組織)と国際自由労働組合連盟と協力して、被服産業の生産拠点がある6ヶ国の労働者186名やマネージャーからの聴取調査を実施したオックスファム報告書が提出された(昨年5月から今年1月まで)。スポーツウエア・メーカーのビジネスモデルの特徴を次のように整理している。
@納品価格の非情な引き下げ
A納品期間の短縮
B安価な製造コストを求めた工場のワンダーフォーゲル展開
「五輪に労働搾取という種目があれば、巨大スポーツウエア企業がメダルを獲得する。アテネの競技場から遠いところで、労働者の生存をかけた戦いが繰り広げられている。低賃金・長時間労働、その大半は基本的な雇用保護を受けていない」と批判し、生産面でのフェアープレーをIOCにも要請している。
生産現場は次のような実態がある。
○朝8時から昼食を挟んで午後5時まで働き、5時半から毎日残業し、ピーク時は夜中の2〜3時まで。疲れていても基本賃金が低く、選択肢はないので拒否できない(タイ)
○もし3回残業を断れば解雇され、休日の勤務を断っても解雇される(カンボジア)
○契約は紙切れに過ぎない。3時間を超える超勤は禁止されているが、3時間より少なかった日はない(中国)
○病欠は許されない、仕方なく休めば復帰の際に日給が減額される(インドネシア)
○可愛い女の子は男性管理職から嫌がらせを受ける。オフィスに呼び出され「セックスしないと仕事がなくなるぞ」と脅かされる8インドネシア)
○隣の工場がストをした時に監督は「あいつら皆な職を失うぞ。お前達は同じ間違いを犯すなよ、奴らと同じことになるぞ」(トルコ)
途上国の労働力供給無制限モデルを最大限に利用する多国籍企業の冷酷な利潤極大化原理が露骨に発現している。数年前のユニクロ現象といわれた途上国少女労働力を動員した繊維産業の海外展開モデルと一致する。スポーツメーカーは、五輪に出場するトップアスリートに自社製品を着用させ、市場制覇を狙ってウエアーのみならず、あらゆるスポーツ器具の製造に途上国児童・少女労働力を最大限に利用している。特にNIKEのシューズやサッカーボールが有名だ。米国では、途上国の児童労働を搾取するスポーツメーカーの米国内販売を禁止する法案と不買運動が提起されている。あなたがグランドで汗を流しているスポーツ用品には、途上国の児童・少女の血と汗がしみ込んでいる。
子どもの健康と成長に有害な影響を与える児童労働の最大の原因は貧困にある。世界の児童労働(5〜17歳)は2億4千600万人いる(ILO推計)。子どもたちは家計補助労働を一端を受け持つか、自らの生存のために、家事使用人(召使い)や工場労働、ゴミ拾い等のの長時間・過酷な労働で教育を受ける権利や友だちと遊ぶ権利(国連子どもの権利条約)を剥奪され、不衛生な環境で皮膚疾患や呼吸器疾患、有毒物質に曝されている。(2004/6/23
20:37)
◆拡大生産者責任制度とはなにか
拡大生産者責任(EPR=Extended Producer Respnsibility)は、生産者が製品の生産・使用段階のみならず、廃棄・リサイクル段階まで責任を負うという考えであり、具体的には生産者が使用済み製品を回収し、リサイクルや廃棄物として処理し、その費用を分担する仕組みだ。この狙いは、生産者の製品開発思想に、リサイクルしやすい製品や廃棄処理しやすい製品の開発で処理コスト削減を図るモチベーションを高めるという点にある。生産者は処理コストを製品価格に上乗せすることは可能だが、価格上昇と販売減少はパラレルだから、より一層回収とリサイクル費用削減努力が生産者に生まれると期待される。
先駆的に導入したドイツは、「廃棄物回避・処理法」(86年)・「包装廃棄物政令」(91年)・「循環経済・廃棄物法」(94年)で、環境負荷を極小化する製品製造を生産者に義務づけ、設計段階から廃棄物発生を極小化するルールを規定した。OECD(経済協力開発機構)も加盟国政府に手引き書を配布してEPR政策導入を促進している。
日本では6つのリサイクル法(家電・容器包装・食品・建設・自動車・パソコン)によって、一定部分をリサイクルしているが、EPRが弱いためにペットボトルのように自治体負担で抑制効果が稼働しない事態が起きている。恐ろしいことは、政府が推進している何でも燃やせる大型焼却炉による大量の燃焼ゴミ処理方式は、燃やすゴミを確保することに自治体は努力を傾けるという悲惨な事態が起きていることである。焼却中心主義からEPR方式への転換が求められている。(2004/6/23
8:17)
◆UNDP(国連開発計画)「テクノネット」発足(23日)
1973年カナダの政府系開発機関が立ち上げた「テクノネット・アジア」はアジア各国に技術・情報を提供したが、90年代末に日本政府が主催する「アフリカ開発会議TICAD」はアフリカでの同じ機構を立ち上げるよう提案し、UNDP主導で「テクノネット・アフリカ」が結成される。加盟は南ア、ナイジェリア、タンザニアなど7ヶ国の中小企業振興機関と商工会議所など14組織。UNDP(国連開発計画)は、技術・情報を必要とする企業と提供できる企業の最適な組み合わせを支援し、アフリカ企業の信用度上昇を担う。
テクノネット・アジアとテクノネット・アフリカが協働して、アジアからアフリカへ農業関連産業を中心に中小企業育成・技術と情報移転をおこなう。アジア系企業は情報・技術提供による利益と将来の取引の条件をつくる。以上朝日新聞6月22日朝刊。(2004/6/22
9:13)
◆農村女性起業数急増ー農水省03年度調査より(全国農業改良普及センター協力)
農村に住む女性が起業し活動している件数は8186件(前年度比+5,8% 調査開始97年度の2倍)となった。事業内容は、食品加工(漬け物など)72%、販売・流通(直売所運営など)43%が上位で、形態別ではグループ経営5635件、法人化(有限会社など)229件(2,7%)、販売額は1000万円以上13%(02年度より+126件)、300万円未満61%となっている。以上朝日新聞6月22日朝刊。(2004/6/22
9:14)
◆祭りの経済波及効果ー名古屋どまんなか祭りの場合
名古屋市で毎年8月に開かれる「にっぽんど真ん中祭り」の経済誘発効果は60億円(UFJ総合研究所)。昨年第5回の参加者数15000人、観客数142万人は、東海3県に拡大し、買い物と観光に波及効果を持ち、市内12カ所の分散開催で地域商店街への活性化効果もあった。県内生産誘発額は58.9億円(直接・間接含めて)で、543人の雇用を生んだ。夏休みの8月下旬という時期も効果を大きくしている。以上朝日新聞6月22日朝刊。(2004/6/22
8:29)
◆名古屋のものづくりーパチンコ
03年度のパチンコ台生産台数は378万台。遠州(静岡)や渥美(愛知)で戦前からの温室栽培用ガラス板と、堀川に集積する合板づくりの技術が融合してパチンコ台の盤面サイズのスタンダードができた。パチンコ台の原型は「現代パチンコの生みの親」といわれる正村竹一(1906−75)が開発した「正村ゲージオール15」である。戦時期に温室ガラス板は日光を反射して米軍機の標的となり地中に埋められ、一方で戦前からの海外向け紅茶用茶箱があった。両者の幅40−50a、高さ50−60aはサイズが見事に一致していた。鋼の玉の勢いを受けとめても釘がゆらがず、湿度で反り返らない硬い材質の盤面が求められた。堀川沿いで合板会社を経営する山口博は、固くて粘りけのあるブナを使うが、ブナは収縮率が高く生木を乾燥させると波打ち、板に高熱と圧力をかけて伸ばせば貼り合わせる接着剤が溶ける。山口は、乾燥させた家畜の血を接着剤に混ぜることによって解決し、現代パチンコ台制作の基礎を築いた。堀川の材木集積地で開発されたパチンコ台の技術は郊外へ伝播し(愛知県十四山村 浅井合板)、厚さ1_のブナと南洋材の薄板を11枚貼り合わせる幅44a、高さ55aの現代パチンコ台のスタンダードとなった。詳細は名古屋市西区「正村竹一資料館」へどうぞ。(2004/6/21
19:34)
◆企業・経営合理化情報(随時提供)
○スズキ自動車・チャレンジ30
2002年4月から3年間で売上高・生産性を30%アップし、人員・人件費・商品開発期間を30%削減する。従来の4輪車開発期間40ヶ月が1年に短縮され、実験やテストが不充分のまま市場に出されて、リコールとクレームが増大している(象徴は三菱)。チャレンジ30によって、3月連結決算で経常利益は史上最高の952億円、コスト削減で560億の効果を上げた。2年間で5人の自殺者(4人は管理職)、うつ病などの精神障害による休業日数が増大、特に設計担当部門に集中している。
○UFJ,三菱東京統合(7月14日発表)
巨額の不良債権を抱えて経営不振に喘ぐUFJは、資料隠蔽や業務改善命令の検査忌避で刑事告発を受ける直前にあった。連結最終損失4028億円、連結自己資本比率9,24%、不良債権比率8,50%と4大金融Gで最悪の経営状態にあった。不良債権処理を一気に断行すれば、経営の健全性基準である自己資本比率が一気に低下し、8%以上を条件とする国際業務から撤退して4%以上の国内基準行に転換するか、他のメガバンクとの再編かをめぐる選択に直面した。店舗網と顧客基盤が競合しない三菱東京との統合の路線を選択することとなった。三菱東京は、総資産106兆6155億円、従業員総数44000人、3月決算は5608億円の黒字で、4大メガバンクのなかで唯一公的資金を完済し、米ニューヨーク証券取引所に上場している。両者の経営統合によって、本支店760カ所(海外含む)を超える世界最大のメガバンクとなる。
金融庁主導で推進されてきた「国際競争を勝ち抜くため」の金融再編によって20以上あった都市銀行は半分以下になってしまったが、合併によって収益性が逆に悪化してしまった。政府が推進する不良債権の最終処理政策によって中小零細企業への貸し渋りによって、本来利益率の高い中小企業への貸出を激減させた結果だ。さらに新規融資の審査コストが膨大となって銀行経営を圧迫した。中小金融が主体であるUFJがもっとも影響を受けたのだ。UFJと三菱東京の統合によって、2〜3の巨大な金融コングロマリット(銀行から保険、証券などを包括する総合金融機関)が金融を支配するとどうなるだろうか。不良債権と見なされた企業の整理が急速に推進され、民間企業も寡占状態となるだろう。国民は、預金から株式、国債保有などすべての分野で特定金融グループに管理され、住基ネットと結んだ国民総背番号制の時代にはいるだろう。破綻企業は、米国の禿鷹ファンドに買収され資本の米国移転が進む。旧長銀・新生銀行は、8兆円の公的資金を投入し米系投資組合が1220億円で8千億円の利益をあげた。1400兆円と言われる個人金融資産を流動化させて株式や米国債に投資させる。当面のターゲットは350兆円の郵貯と簡保だ。
新自由主義・市場原理の矛盾がこれほど露わになったことはない。規制緩和による競争の推進が経済を活性化するとの言明は、国家独占資本主義的な寡占化を生みだそうとしている。日本経済は3大メガバンクが独占的にコントロールする統制経済の時代に突入した。これは明かな独占禁止法違反ではないか。国内市場は狭隘化し海外展開を加速するのは戦前期経済のメカニズムと同じだ。日本最大の軍需企業から成り立っている三菱Gはますます戦争経済への傾斜を強めるだろう。対案はあるか。銀行の機能分散と特化による多様な金融システムへの転換に第3の道がある。
○内閣府経済社会総合研究所「2003年度企業行動に関するアンケート(構造改革下に於ける日本企業のダイナミズム)」
東京・大阪・名古屋証券取引所1部・2部上場2473社対象、1243社回答(04年1月実施)。
固定費用削減の施策を実施した企業 43,6%
固定費用削減の人件費圧縮効果があった企業 47,9%
正社員雇用状況 年度平均-3,4%
より一層リストラを実施する企業 53,3%(資本金100億以上61,1% 10億円未満40,4%)
これ以上のリストラ困難とする企業 39,7%(資本金100億以上31,3% 10億円未満52,1%)
もともとリストラをおこなう必要がない企業 2,2%
○ウオルマート
世界最大の小売業ウオルマートは、米南部アーカンソン州に本社を置き、03年度売上高2560億ドル(28兆円)、利益額90億ドル(9900億円)、従業員数120万人(米国内のみ)という企業規模だ。ウオルマートの経営戦略は、徹底した低コスト・低賃金にあり、男女差別賃金・昇進体系から不法滞在移民と未成年者の就労、タイムカード不正による残業手当不払い、労働組合結成の禁止などコーポレイト・ガバナンスが崩壊状態にある。01年に6人の女性労働者が男女差別賃金を告発する訴訟を起こし、サンフランシスコ地裁は男女差別の証拠を認め、98年からの全国3000店舗の女性労働者すべて160万人を対象とすると判断しました。同じ仕事について、男性時給9ドルに対し、女性は勤続9年間で時給8ドル44kが続いた。(22日サンフランシスコ連邦地裁)
○日本航空インターナショナル
JALは03年に日本エアシステムとの企業統合を控えて、深夜業免除者の限定を通知し、その後申請者全員に月5日程度の乗務を保障する一方で、乗務のない日を無給とする協定案を提示したが、この協定を拒否した日本航空客室乗務員組合員に対し、月1〜2日の乗務しか与えず結果として賃金が1/3〜1/20にカットされる事態となった。育児・介護休業法にもとづく深夜業免除のスチュアデスへの差別的処遇に対して2名が東京地裁に提訴した。「経済的にも苦しくなり、仕事を奪われた屈辱感と悔しさ、子供を産んでも働き続けたいと願う後輩達に道を開きたい」(23日記者会見で)。
JALの労使紛争は組合分裂に波及し、空の安全の危機をもたらすまでに激化したのは、山崎豊子『沈まぬ太陽』でリアルに描かれている。まだこうしたプレ・モダンの労務管理政策がおこなわれていたとは!
○松下電器産業
7月1日早期退職者募集開始(3000人対象) 01年度13000人に続く連続4弾 04年度合理化費用800億円(前年比-120億円) 松下電子部品(門真市)・松下電池工業がAV機器用部品の一部をマレーシアに、ニッケル水素電池生産を中国に移管する。分社化した情報システム開発企業「パナソニックシステムソリューションズ)も早期退職募集。中期経営計画で営業利益率現行2,6%→5%(06年度)の目標値実現のための措置。(6月20日発表)
○三菱自動車工業
平成16年度からの中期再建計画「事業再生計画」は、生産能力17%削減(平成18年度まで)に向けて、@岡崎工場閉鎖(コルト平成18年)、水島工場(倉敷)とパジェロ製造(岐阜坂祝町)の2工場に集約、豪州工場のエンジン工場17年閉鎖、組み立て工場は年3万台に縮小、A製品構成はパジェロ・ランサーエボリューションのSUVとスポーテイカー中心に、アジア戦略車と北米収益回復をねらう。B株主構成はダイムラー37%→20%でファンドが40%の筆頭株主となる。連結ベースの総人員38、200人を22%削減する。岡崎工場は7、600人整理。生産ラインには1800人がおり、01年に閉鎖された大江工場からの異動者もいる。このリストラで退職する従業員は「自己都合退職扱い」で勤続15年の場合は退職金は-40%ダウンとなる。雇用保険の失業給付も5ヶ月しかない(会社都合退職は最長で11ヶ月)。雇用継続社員の賃金一律5%削減、年末一時金は見送られる。三菱自工労組はリストラ計画を基本的に受容した。(6月21日発表)
同社は7月14日付けで産業再生法の適用申請を経済産業省におこなった。同時に投資ファンド「フェニックス・キャピタル」とJPモルガンを引受先とする2000億円の増資を実施する(こうして米国ハゲタカファンドに経営権を譲渡する)。99年と00年の2回にわたる産業再生法の適用によって4096人を解雇し6億900万円の減税を受けたばかりの同社は、その後続々とクレーム隠しが発覚し、実質的に産業経済省は「企業としての信頼回復」という産業再生法の趣旨を蹂躙していたことになる。今回の適用で、増資に課税される登録免許税が10億円減税される。(7月14日発表)
◆アジア通貨スワップ協定
アジア中心に通貨スワップ(交換)協定が網の目のように締結されている。ある国が外貨不足などの通貨危機に陥った時に、締結国が金融支援する仕組みだ。00年以来、ASEAN(東南アジア諸国連合)と日本・中国・韓国(ASEAN+3)の間で16件の協定が締結されている(5月現在)。ASEAN+3財務大臣会合で「スワップ協定の有効性を強化」し、05年会合までに新たな方向を提起することを確認した。
この協定の背景には97年アジア通貨危機があり、タイ・インドネシア・韓国で外国の投機グループが自国通貨の売り浴びを受け暴落の危機に瀕した。各国政府は手持ちのドルで防戦買いをおこなって、外貨不足になり、貿易代金などの支払不安が増して経済信用を失墜した。ドルを入手したいためにIMFからの支援を受けたが、IMFは米系企業と銀行が進出しやすくなる規制緩和と補助金廃止などを貸し出し条件とした。
IMFに依存しないアジア金融システムをつくろうと、最初は日本中心にアジア通貨基金構想を提起したが、米国の反対で挫折した。そこで強固な組織的金融ネットではなく、ソフトな通貨スワップ協定が登場した。通貨スワップの2国間協定が網の目のように締結されると、金融危機に陥った国は多くの国から支援を受け、逆に支援国のリスクは軽減される。こうして金融の2国間支援協定はアジア通貨基金のような機能を実質的に実現することにある。アジア通貨基金構想の段階では1000億ドルの基金を想定したが、現在のスワップ・ネットは360億ドルの規模に達している。
すでにユーロが起動してドル体制からの自立経済圏が構築される動きとともに、アジアに於ける独自通貨ネットは長期的にはドル経済圏からの自立可能性を潜在的にはらんでいる。米帝国がイラク攻撃に踏み切った背景には、中東原油をドル決済からユーロ決済に移行させる動きを軍事力で粉砕する米帝国の追い詰められたドル支配力の防衛の意味があったことは確実である。(2004/6/20
20:02)
◆日本上場企業の外国人持ち株19,7%! UFJ31,4%
外人投資家が日本の有力企業の株式を買い進めている。「03年度株式分布状況調査」(全国五証券取引所 17日発表)では、上場企業の株式の内、外人持ち株数比率は19,7%(前年度比+3,3ポイント)で過去最高となった。株価ベースでも全体額に占める外人割合は21,8%(前年度比+4,1ポイント)で過去最高。33業種すべてで外人保有比率が上昇した。
日本株を積極的に買っているのは、海外個人資産を運用する投資信託・年金・ヘッジファンドであり、日本の景気復調と持ち合い株解消による割安に注目している。外人持ち株比率の上昇は、企業の配当政策と経営に大きな影響をもたらす。UFJホールデイングズの外人比率は31,4%(+20ポイント)で、モナコの投資会社が実質的な筆頭株主となっている。
こうした外人持ち株比率の上昇を受けて、武田薬品・TOTOは、利益のうち株主配当の割合を示す配当性向基準を30%に上げると決定し、配当基準の透明性を高めた。(2004/6/18
10:07)
◆リンゴ検疫制度の緩和は日本の果樹生産農家を壊滅させる
農水省はWTO勧告によるリンゴの火傷病検疫制度改定を発表した(17日)。対日輸出用のリンゴ園の周囲に500m幅で設置する感染防止用の緩衝帯を10m幅にし、リンゴ園地の検査を年3回から年1回に緩和するという内容だ。03年11月にWTO上級委員会が火傷病の日本の検疫基準が厳しすぎるという米国の訴えを認め日本政府の勧告していた。日米協議で米国は「火傷病は生果実から伝染する恐れはない」として検疫全廃を主張したが、日本側は独自の基準緩和に踏み切る。米国の再提訴の可能性も残されている。
*コメント リンゴは健全な樹体の育成が基本であり、徹底した栽培管理によってはじめて良質のリンゴが生産される。リンゴ生産史は、病気と害虫との戦いの歴史である。1890年リンゴワタムシから戦後の黒星病など大規模な病害はすべて海外移植と輸入病害病に起因した。03年リンゴ火傷病検疫をめぐるWTO紛争で日本は敗訴した。
リンゴ火傷病はErwinia amylovoraというウイルスによって蔓延し、リンゴ・ナシなどの果樹や花木類を侵す重要危険病害である。もyとは米国東部の風土病であったが北米全体から西欧全域を経て西アジア・エジプト・ニュージランドへと拡大し、日本は未発生である。
火傷病に羅病した植物は火にあぶられたような症状を示し、ウイルスは花器や付傷部から侵入し、花・枝・幹へ広がり枯れ死を起こし、高温・多湿の場合は病勢が著しく進み、細菌粘液が溢れ出て園地での蔓延をもたらす。果樹・花木に広範囲な被害が誘発される。火傷病の侵入を阻止する絶対的な検疫制度が必要である。
さらにリンゴ農家の価格安定対策が求められる。1997年のリンゴ価格の暴落に対して「青森県生食用リンゴ価格安定制度」「果樹経営安定対策事業」によって価格暴落時の一時的な所得補償制度がつくられたが、加工用リンゴは対象外である。加工用リンゴは裾ものとして20%程度発生するが、果汁輸入量は生果換算で平均56万トンであり国内果汁用仕向け量の4倍に達している。加工用リンゴ需要が減少し、供給がだぶついて価格が下落し、これが生食用リンゴ価格の下落を誘発している。火傷病対策が緩和されるならば日本リンゴ農家の経営は危機に陥る。リンゴ繊維は動脈硬化防止作用、ポリフェノール機能で注目されており、国内リンゴ生産の経営安定政策が求められる。以上農民運動全国連合会サイト参照。(2004/6/17
8:34)
◆政府の戦略産業論ー6月4日「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」(骨太方針第4弾)
「燃料電池など7つの戦略産業分野を育成するため、研究開発・人材育成・規制改革・環境整備等を重点的に推進する」としている7戦略産業の1つにビジネス支援サービス産業がある(経済産業省「新産業創造戦略」)。BSSの中心は「対事業所サービス」であり、企業のコスト削減を極大化するアウトソーシング業務を請け負う産業=請負・人材派遣業であり「市場規模の加速度的拡大を図る」としている。その戦術は「公的部門の外部委託」を推進し、成長制約となる規制・制度の克服にある。経済産業省「経済活性化のための改革工程表」(3月)は「労働者派遣事業・職業紹介事業に関する規制緩和」を掲げている。
政府中長期展望
2010年ビジネス支援サービス産業 市場規模107兆円(00年の1,4倍)
2025年対事業所サービス(請負)生産額 全産業の10,8%(第1位商業11,3%)
非正規労働者比率 2010年36,5%→2025年40%
すでに全国の派遣労働者数は213万人(02年 3年間で倍増)となり、製造業への派遣解禁によって(対象800万人)一層増大する。請負労働者は100万人という推計があるが統計も監督官庁もないので実態は正確に掴めない(多くは偽造請負である)。経済産業省「ものづくり白書」(6月)は、生産現場で業務請負を活用している大手製造業(従業員3000人超)は71,6%であり検討中を含めると80%に達する。
派遣・請負形態の企業メリットは何か。「生産変動に柔軟に対応できる」65,6% 「人件費を抑制できる」23,2% 「その他」5,6%(経済産業省製造業調査04年2月)であり、雇用不安と低賃金による労働力コスト削減にある。
政府の労働力政策はどのように変容してきたか。1985年の労働者派遣法によって、職業安定法が禁止する労働者供給事業を初めて一部合法化し、派遣労働の対象業務を拡大し、現在規制されているのは港湾・建設分野のみでほとんど自由化された。
問題は野放しにされている偽装請負である。偽装請負とは、形式的な「請負」契約で実体がない労働力供給を言い、職安法44条違反で懲役1年以下の犯罪となる。実体のある請負とは、@作業の完成に財政・法律上の全責任を負うA労働者を指揮監督するB単なる肉体的な労働力提供ではないーなどである。偽装請負は企業が労働者派遣法の規制すら免れようとする一種の奴隷労働である。政府「産業再生法」によるリストラ促進政策は不安定雇用創出の間接刺激ともなった。
正規・非正規労働者の均等待遇原則、派遣先企業での正規雇用移行原則、業務請負の規制が当面求められる。(2004/6/17
7:43)
◆仏大統領宅 狙い撃ち停電 コンナコトありか!?
フランス国民議会は、電力・ガス公社を株式会社化する法案の審議に入った。民営化された場合の大量解雇に抵抗する職員組合が、賛成する政治家の私邸を狙い撃ちする「選択停電」ストライキに入った。電力公社労組は、仏中部にあるシラク大統領の出身地であるコレーズ県サラン一帯を72分間停電させた。この町にはシラク記念館や大統領夫妻の私邸がある。労組は「大統領の豪邸だけを停電させるのは技術的に無理だった」と言う。南部エロー県でも、民営化法案を支持する与党下院議員の事務所と私邸が停電し、議員は「私生活への脅迫だ」と抗議声明を出した。仏東部でも、労組員が送電所を占拠し、ドイツへの電力供給が半日停止した。パリ北部の送電所が占拠され、首都圏の国鉄や工場への影響が懸念されている。
いったい何だこれは! 日本ではただちに刑事事件rとして警察が出動し犯罪として裁かれるだろう。ストライキ権とはいったい何かを赤裸々に示している。欧州の労働権の強固な蓄積をつくづくと実感する。哀れな日本労働者階級!労働基本権の歴史と存在の重みを露わに示している。(20004/6/17 18:01)
◆世界と日本の社会の2極分解ーメリルリンチ日本証券「03年末世界個人資産家に関する報告書」(16日発表)
米メリルリンチと仏コンサルテイング会社キャップジェミニが世界銀行とIMF等の所得統計をもとに富裕層を分析。100万ドル(1億1千万円)以上の金融資産を持つ層。世界的な景気回復を背景とする株価上昇、米国はブッシュ政権の株式配当減税など高額所得者優遇措置が原因で米国人125人に1人が億万長者である。。。
○世界富裕層 770万人(前年比+50万人 7,5%+)
○世界富裕層保有資産 28兆8千億ドル(3168兆円 前年比+7,7%)
○世界富裕層投資対象 低利債券商品、変動幅大株券、ヘッジファンド投資など安定投資、ベンチャー投資は減少
○富裕層人口伸び率 インド6万1千人(+22%) 米国227万人(+14%) 中国23万6千人(+12%) 欧州260万人(+2,4%)
○日本富裕層 131万2千人(前年比+7万2千人 5,8%+ 全世界の17%を占める *前年比不動産を除く金融資産を100万ドル(1億1千万円)以上所有する層)
世界最富裕国アメリカの2極分解をみてみよう(英誌『エコノミスト』参照)。全米家庭総数の1/5に相当する最富裕層が全米総収入の50%を占め、同じく1/5を占める貧困層の総収入比率は4%弱であり、米国227万人の収入は米国最貧層1億人の収入に相当する。富裕層と貧困層のインターネット加入率格差は27%である。最富裕層の平均年収は137,500ドルで最貧困層の平均年収13,000ドルの10倍にあたる。特に首都ワシントンの貧富収入格差は27倍である。過去10年の最富裕層平均年収は過去10年で15%増大したが、最貧困層は1%増大しただけである。米企業トップの社長と従業員の平均給与格差は42:1→419:1に拡大し、大企業役員の平均年収は180万ドル→1,060万ドルにはね上がった。
ILO調査では、米国労働者の労働時間は10年前より83時間(+4%)長くなり、700万人(40%)の公務員が団体交渉権を剥奪され、200万人の連邦政府職員がスト権を剥奪された。ILO7項目労働基準で米政府が批准しているのは1項目に過ぎず、無償医療保険制度を実施していない唯一の工業先進国となった。4344万8千人(全人口の16,1%)が医療保険に非加盟で、貧困者1120万人(全貧困者の31,6%)が医療保険に非加盟である。ニューヨーク市民の30%はすべての医療保険なしに生活している。
米商務省統計局報告では、3580万人(米総人口の13,3% 6,5人に1人)が極貧生活であり、ニューヨクでは29%が貧困ライン以下、5%は貧困ラインの1/5の収入、7%は時々食費がなく、17%は支払いが遅延している(コロンビア大学調査)。全米3千万人が充分に食事ができない、7,2%が食事がない、15,2%が子どもに食事を提供できない。サンフランシスコでは1万4千人のホームレスがおり、169人の浮浪者が路上で死んでおり、80%のホームレスが暴力犯罪の対象になっており、66%が慢性病を患いそのうち1/3が子どもがあり、1/4が子どもであり、1/3が退役軍人であり、49%が治療を要する精神病にかかっている。
目眩くような貧富の両極分解である。こうした国内矛盾を対外的に転化するために、常に対外戦争をするという米国の戦争原因が誘発されている。貧困青年層が軍隊に入り、海外で虐待をおこなうという哀しい構造が浮かび上がる。(2004/6/17 10:01)
◆21世紀の社会保障戦略
政府戦略。
(1)年金制度
政府モデル世帯(夫=厚生年金40年加入 妻=専業主婦) 04年月額233,000円→30年月額160,000円
同国民年金 04年月額平均46,000円→30年月額平均32,000円
(2)介護保険制度
03年4月 保険料全国平均13,1%引き上げ→介護認定者の22%(82万人)サービス未利用(04年2月)
05年 全般見直し 利用料 現行10%→20〜30%引き上げ (*社会的介護から家族介護への実質的転換)
(3)医療制度
06年 抜本改革
@高齢者医療制度再編 所得が少なく健保家族として医療保険料支払い不能者410万人(65歳以上)から保険料徴収(政府資産では75歳以上の一人当たり平均保険料は月額7、000円)→介護保険料と合わせて月額10,000円が年金から差し引かれる
(4)生活保護制度
04年 老齢加算の縮小・廃止
05年 母子加算廃止、国の負担を現行3/4→2/3へ引き下げ、生活扶助基準引き下げ(*生活保護基準は、国保料・介護保険料・介護利用料・公営住宅家賃減免など低所得者対策基準のベースになっているから、すべての国民生活に連動して生活水準全体を引き下げを誘発する)。改訂年金法の日程は次のようになっている。
04年10月 厚生年金保険料引き上げ開始(毎年+0,354% 労使折半) 年金額の伸びを自動的に抑えるマクロ経済スライド制導入(給付水準の引き下げは05年4月から)
05年 4月 国民年金保険料引き上げ開始(月額毎年+280円) 20歳代低所得者国民年金保険料猶予制度開始 60−64歳の会社員の年金一律20%カットを廃止 育児休業中の保険料免除期間3年に延長
06年 4月 障害基礎年金と老齢(遺族)厚生年金の併給可能に
06年 7月 国民年金保険料の減免制度を2段階から4段階に拡大
07年 4月 70歳以上の厚生年金を収入に応じた減額 子どもがいない30歳未満の女性の遺族年金を5年に制限 離婚時話し合い阿で厚生年金の夫婦分担が可能に
08年 4月 会社員の夫と専業主婦の離婚で、夫の厚生年金を自動的に2分割
○日興シテイグループ証券投資分析レポート(7月6日付)
「参院選の民主党勝利、自民党勝利何れの結果になっても、消費税引き上げを含む史上最大の国民負担増が予想される。民主党勝利ならば、07年4月に消費税率が現行5%から3ポイント引き上げられて8%になり、これは約6兆円の増税となる。自民党の場合は、常識的には07年4月1日に消費税を引き上げ、公明党が主張している定率減税(年間3,4兆円)の段階的廃止も検討されよう。07年度には10兆円前後の負担増が予想される。共産党の議席増以外のシナリオでは国民負担増の変化はない。」
21世紀の政府の社会保障戦略は、90年代までの公的支出削減・自己負担増という「社会」保障という枠を基本的に転換し、私保険制へ踏み出そうとしている。@医療と年金については、公的保険部分の限定・縮小=私的保険の上乗せという二層化原則への転換、A医療・福祉サービスの市場原理による再編成、公的医療と私的医療の混合診療システムをめざす特定療養費制度(差額ベッドから治療内容への拡大)、介護保険の個別事業者との契約と公的保険の給付制限=超過部分の全額自己負担などなど医療と年金を介護保険制度型へ切り替える。要するに財産の水準に対応した健康と命の差別化戦略である。
いま日本ではきちんと働いても生活保護水準以下の生活しかできない「ワーキング・プア」が大量に出現している。就学援助の受給基準を生活保護基準の1,1倍の自己申告制にしている東京都足立区の小中学校は、受給比率が40%を超えている(!)。ワーキングプアは、社会保障制度の根幹を底抜け状態にする。厚労省は、一般母子家庭(ほとんど勤労家庭)の生活水準のほうが低いと云うことを理由に、生活保護制度の母子加算廃止を要求している。勤労青年の収入が退職年金収入より低いと云うことを理由に年金水準を引き下げようという論理になる。60年代の政府は、ワーキングプアの救済措置として生活保護制度を使おうとしたが、その後逆転し生活保護世帯から勤労世帯を追放し、勤労世帯の最低生活保障は底抜け状態となって、市場原理に放置されてきた。ワーキング・プアの激増は、日本の社会保障システム全体の大崩壊に利用されている。お前たちよりももっと貧しい者が多いのだから、基準は低い方に合わせるのが当然ではないかーと生存権思想を真っ向から否定する論理だ。(以上後藤道夫氏の論考を参照して、2004/9/7追加)
こうした公的保障縮減は必然的に民間福祉市場を拡大して、「福祉は金で買え」という時代が来る。07年の消費税増税とセットになって日本は企業の”わが亡き後に洪水は来たれ”という末期的社会システムとなる。
こうした政府戦略に対するオルタナテイブの焦点は最低保障年金制度にある。無年金者や超低額年金者を含む全国民の生存権(憲法25条)を全額国の負担で保障し、その上に掛金に応じた給付を上乗せする欧州型年金システムである。国連「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会」は、日本に最低年金制度が存在しないことに対して懸念を表明している(01年8月)。(2004/6/17
9:45)
◆七・五・三現象の背後に何があるのか
入社3年以内で退職する青年の割合が、中卒70%・高卒50%・大卒30%に上る。就職厳冬期になぜ短期間で退職するのか。政府は、若者の就業意識の変化による雇用のミスマッチとするが実態はどうか
若年正社員(30歳以下)の退職理由(「若年者のキャリア支援に関する実態調査」厚労省委託調査03年2月実施)
賃金・労働時間の条件がよくない 35,4%
会社に将来性がない 27,6%
他にやりたいことがある 20,5%
キャリア形成の見込みがない 18,9%
人間関係がよくない 17,7%
仕事が自分に合わない、つまらない 17,3%
健康上の理由・家庭事情・結婚 11,0%
通勤時間が長い、通勤の便が悪い 10,2%
倒産、解雇、雇用契約終了 5,9%
その他 8,7% (2004/6/17 9:07)
社会経済生産性本部「04年度新入社員対象 働くことの意識調査」(有効回答数3、843人 17日発表)
○進路を決めるのにフリーターになってしまうかも知れないと思った 35,5%(特に短大・普通科高・職業科高高い)
進路を決めるのにフリーターだけにはなるまいと思った 69,3%
今後フリーターになる可能性がある 31,3%
○何れリストラされるのではないかと不安だ 35,6%(昨年39,9%)
これからは終身雇用ではないので会社に甘える生活はできない 89,1%
総務省「労働力調査」(2004年度)・厚労省青年就業状況調査((03年度)
完全失業率
全年齢平均 5,3%
15−24歳完全失業率 10,1%
同年齢男性完全失業率 11,6%
新規求人に占める派遣・請負割合 33,9%
同上の大都市部ハローワーク 50%〜60%
青年失業者の正社員希望率 70%
パート・アルバイト希望率 20%
◆日本の観光産業はどうなっているかー国土交通省『03年度観光白書』(15日)
○国民一人当たり国内宿泊観光旅行回数 平均1,28回(前年比-0,13ポイント 1988年以来最低水準)
○外国人旅行者数 521万人(前年比-0.5% 国別では韓国146万人(+14.7%)以下台湾・米国・中国
○日本人海外旅行者数 1330万人(前年比-19.5%)
個人消費の低迷と割安海外旅行商品の販売で国内旅行の減少傾向が続き、SARSの影響で落ち込んだ外国人旅行客は8月から増えW杯開催で恢復した前年にほぼ並んだ。相互理解の重要性を強調している(キリシタン殉教史を案内するツアーを企画した長崎県、中国人と韓国人は訪日時に日本への印象が変わるなど)・(2004/6/16
8:07)
◆マツダ始業前不払い労働是正(14日)
マツダは始業前準備作業・ミーテイング・体操を労働時間に算入せず、不払い労働となっていたが、労働基準監督署の指導を受けて是正した。その内容はベルトコンベアの指導時刻を5分遅らせることによって始業前作業を組み入れるというものだ。現業部門約1万人がこの対象となる。マツダ宇品工場の組み立てラインは、昼勤の場合午前8時15分の始業時間にラインのコンベアが動き始める。しかし作業員はその前に始業点検・部品のセットと打ち合わせのミイーテイングで30分就業する。このうちミイーテングの5分間をサービス残業と認め是正した。午前8時15分にミイテーングを開始するからラインの駆動は5分ずれ込み8時20分となった。組み立てラインは1分で1台の生産ができ、5分遅くなることは1ラインで5台生産が少なくなる計算だ。鋳型をつくる素材部のH氏が、5年間にわたって勤務時間前の詳細な記録をとり、T(体操)・S(指差呼称)・M(ミイーテイング)・8分前から(開始)などの詳細なデータをとった。各作業員に数万円から10数万円の残業手当が支払われるようになった。今までは残業予算(1ヶ月10時間など)がつくられて、作業員は予算以上の残業手当は出なかった。(2004/6/45
8:10)
◆帝国データバンクの全国企業倒産状況調査(14日発表)
○全国企業倒産数 1182件(前年同月比-20,2%)
○負債総額 5372億円(同-32,9%)
○清算型法的処理(破産+特別清算 事業活動の断念) 470件(39,8%過去最高)
○倒産抑制の要因
不渡り倒産減少・信用保証・大手企業の業績回復
○業種別倒産状況 建設・製造・卸売りなど5業種で20%超の減少、上場企業倒産1件
○倒産形態
不況型倒産880件(74,5%)
老舗倒産(業暦30年以上) 318件(26,9%)
◆UNCTAD(国連貿易開発会議)総会は何を決めたか
UNCTAD第11回総会(サンパウロ)は国連ミレニアム目標(重債務最貧国HIPCへの債務削減を推進し2015年までに飢餓人口半減をめざす)に向けた具体的低取り組みの審議が始まった。初日に於ける主な意見を集約しよう。
○アナン国連事務総長「公正で民主的な経済社会秩序確立に向けた市民運動による政府への圧力」(NGO代表との対話集会)
○NGO代表「WTOの貿易自由化は生活と環境を悪化、市場参入のために必要な規制措置を放棄する、貧富の差の拡大、持続可能な発展・所得創出・貧困削減を妨害している。WTOとIMFの民主的改革による新たな公正な国際貿易秩序の構築が必要」
○G77(64年ジュネーブの第1回総会に参加した77途上国で結成され現在132ヶ国に拡大)「途上国に不利な経済ルールと途上国同士の経済協力、1次産品への依存構造、全般的貧困状態、技術後進性の諸問題は解決されていない。カンクン閣僚会議決裂は希望の兆しだ。先進国の単独行動主義ではなく国連の多国間主義を強化する。市場原理優先で政府の役割を極小化する新自由主義を批判する」
以下続報(2004/6/15 7:51)
○タクシン・タイ首相「人間がつくり出したグローバル化は人類の利益になるように人間の手によって制御されなければならない」
○フント国連総会議長「繁栄の海の中で多数の途上国が経済成長と開発のためにいまだにもがいている一方で、多くの先進国が海の上に浮かんでいる」
○メサ・ボリビア大統領「各国政府が自国の経済開発のために積極的に活動することを制限する論理が国際金融機関から押しつけられている。公平な社会発展を保障する上で国家の役割を重視する必要がある」
○ルラ・ブラジル大統領「社会の安定と開発につながる公共投資が社会の合意形成などに国家が果たすべき役割を軽視する国際金融機関の主張は誤った処方箋だ。グローバル化を開発のための道具とすること可能であり、それによってすべての人びとにグローバル化の利益を配分することができる。公正な貿易、経済体制のために途上国側の団結を強化する必要がある」
○アナン国連事務総長「他国に対し貿易自由化の圧力をかける国々は、自らも自由化をしなければならない。途上国のみに自由化を強制し、ダンピング輸出につながる農業補助金の削減に応じない欧米諸国は譲歩すべきだ」(以上は14日開会式語の討論から) (2004/6/16
7:36)
最終宣言案起草でG77と米国の主張が対立している。多国籍企業の説明責任の義務化(02年ヨハネスブルグ・サミット合意の追認)と途上国の持続的開発への貢献を盛り込み、経済戦略決定の選択性の政策スペースを確保しようとうするG77に対し、米国中心に激しい抵抗がおこなわれている。(2004/6/18
7:02)
最終文書「サンパウロ・コンセンサス」・宣言「サンパウロ精神」を採択して閉幕。グローバルの積極面を最大化する開発戦略の策定、途上国の政策選択の自由、政府の役割重視など新自由主義的な多国籍企業の行動を規制する内容となった。なぜ途上国の主張が国際的認知を得たのか。
@WTO主導の国際貿易に変わる別の国際貿易システムである途上国間貿易の急成長である。途上国間の貿易拡大をめざす「貿易特恵システム設立交渉」(98年)の再開が決議され、途上国間貿易の関税が半減されれば、年間貿易総額は185億ドル増加すると推定される。
AWTOカンクン閣僚会議(03年)を契機に誕生したG20(食料輸出途上国共同グループ)で、WTO交渉が西欧主導から途上国参加型に移行していることだ。(2004/6/20
8:20)
◆ヨーハン・トーレン「新しい市場経済下の青年実業家」(愛知労働問題研究所『所報』2004年5月号所収)
ドイツ・ブレーメン大学のトーレ博士が1996年ー97年にかけて、中・東欧CEE4国とCIS3国の30歳未満の若手企業家550人を対象としたインタビューをもとにした小規模ビジネスの実態報告。旧社会主義システムが崩壊して市場経済化に向かう旧ソ連東欧で、若手小規模企業家がどのように誕生し、どんな問題があるかーその一端がうかがえて非常に面白かった。更に彼が依拠する方法論が、フランス構造主義社会学者ブルデユーとドイツ批判的社会学者ユルゲン・ハーバーマスであることだ。
分析方法は以下の通り。
(1)マクロ独立変数 @市場改革・法規定の現状 A教育・職業訓練の種類
(2)ミクロ従属変数 @ビジネスの種類 A登録ビジネスか闇経済か B主業か副業か C将来目標の安定性(+-)
分析結果は以下の通り。
市場化された若手企業家の実態は、CEEでは職業訓練とビジネスの相関性が高く、正規登録事業が多い、主要収入源として自営されている、将来目標は高い。CISではソ連崩壊後の資本主義は、政治的な世襲制民主主義と経済的な寡頭制派閥システムの結合にあり、若手企業家の小規模ビジネスはマクロ経済の有機的部分とはならないニッチ市場である。職業訓練とビジネスの相関性はなく、闇経済の副業として展開され、将来的確信性はない。以上から導かれる結論は以下の通り。
(1)若手自営業者の経済的資本の基礎には文化的・社会的資本が規定性を持っている
経済的資本が文化的・社会的資本のを決めるというブルデユー理論とは逆に、文化的・社会的資本が経済的資本のあり方を規定している。文化的資本は@精神的・肉体的なあり方 A理論と評論を具体化する文化的製品(写真、辞書、器具、機械) B教育的資格であり、教育システムと家系的継承を媒介に再生産される。社会的資本は、潜在的資産の複合体としてあり、制度化された相互面識と認知の諸関係からなる恒久的ネットワークである信用証明によっって「名誉と評判の資本」を獲得する。かっての国家社会主義が形成した経済的資本は破壊されたが、文化的・社会的資本は破壊されないまま中心的位置を占めている。
CISの30歳までの若手自営業者は、主業として正規登録されたビジネスをおこない、ほとんど91年以降に新規創業されている。ほとんどは男性事業者であり、女性は男性のパートナー(父、兄弟、ボーイフレンド)または保護者の助けを経ており、全体として自営業は男性の領域である。自営業に対する支援サービスで女性対象の企画は皆無であった(土木建築業、製造業、売買ビジネス、消費・金融の対事業所サービスは男性的業務である)。2次経済で出現した小規模・私的ビジネスは雇用の主要分野となりつつあるが、短期的利益に関心があり長期的・継続的変化に興味を示さない。積極的な社会的ポリシーを持たないリベラルなマンチャスター型経営理念が多い。ほとんどの地域は調査に協力的であるが、アルメニアのみが例外である。アルメニアは従来の政治機構と一党独裁が事実上温存され、アゼルバイジャンとの戦闘を勝ち抜いて准全体主義的な支配があった。
(2)経済的資本創出のための跳躍台としての文化的資本
教育レベルの金銭的価値が、文化的資本と経済的資本の変換率を定着させる。CIS3ヶ国では若手企業家の80%は高等教育経験者であるが、専攻を活かしたビジネスというよりも社会的ネットワークのスペースがビジネス機会をつくり出している。学校在学中から企業家をめざした者は少なく、大多数は省庁や国有企業での被雇用者を望んでいた。国家経済が崩壊し、給与が出なくなって初めて自営への道を探索し始めた。最初は省庁や国有企業の被雇用者でありながら、一方で自営を始めるというものだった。第1にまだ自分のビジネスに不安があった、第2にビジネスは社会的に認知されず公的部門の特権は捨てられなかった、第3に公的部門は不可収入源として意味があった、第4にコネがきいた、第5にまた国有部門が復活するという期待もあったからである。
若者のビジネス参入の初期形態は、直接的売買による取引であり、個人的物品・家庭用品・農産物・園芸作物などであり、路上販売から、資力のある者は他の国への買い出しをおこなった。財源は共同経営で、売上が伸びると店舗を構えた。こうした初期の直接的売買取引は、運営諸経費が安く利益回収が早く、設備投資が必要でないから若者の多くが参入できた。
(3)経済的資本発展のための跳躍台としての社会的資本
社会的資本は、有効に動員できるネットワークの規模と企業家の傘下にある個人の資本の総和である。初期の変容社会のネットワークはマフィア型である。強固な結合力と排他性で有効に機能する。社会的資本は構造的次元(接触による資源の入手)と関係的次元(信頼性資産)からなりたっており、国家機関や銀行からの支援は有効ではなく、取引は現金か物々交換に拠った。
若者の支援の中心は家族と友人であり、家族の支援の多くは贈与であり、友人の支援の多くは短期ローンだ。
企業家は初期の直接的売買から離陸し、ビジネス分野の拡大に向かい、小規模ビジネスの最低ベースラインである年間売上高1000ドルから最高で200万ドルに到る格差も誘発された。経営者の個人収入は250〜600ドルで個人生活は決して豊かではない。若手企業家は「機会の窓」を開いた段階で、モテイベイションは「稼いで使う」ではなく「投資し、働き、稼ぎ、再投資する」である。
(4)結論ー「おくればせの革命」(ユルゲン・ハーバーマス)
@売上高回収による短期利益追求型が多く、設備投資を伴う中期計画は弱い
A税金を避ける賄賂経済が主流であるが、ビジネス環境を整備する法的枠組みへの期待も大きい
B市場経済を阻害する法的規制を解放すれば、市場化が活性化するというアメリカ型ビジネス戦略は適合しなかった。
C「ソビエト型人間」の基本にある進歩の自動成長論が生み出した、革新に対する恐怖の労働慣習、努力とイニシアテイブの欠如、服従による庇護への期待が最大の問題である。個人のインセンテイブと生産性評価なしに進歩はない。国家社会主義計画経済は、非生産的労働者と非効率的な生産を排除・克服する効果的メカニズムの欠如にあった。個人的努力の「渇望人間」(オッフェ)は、旧体制では抑圧の危機の脅威によって歪曲されていた。(2004/6/14
7:24)
◆協同組織金融機関の現状と課題
信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合などの協同組織の源流は、1900年に制定された「産業組合法」にある。この法制定に参加した柳田国男は産業組合は「社会の中級以下に立ちて、資本に乏しき者が、その生活の状態を改良発達せんがために相結合したる団体」と記している(『最新産業組合通解』総論第1章産業組合の概念)。
バブル崩壊以降協同組織金融機関は急減している。
[信用金庫]401金庫(98)→307金庫(04) 店舗数8668カ所→8075カ所 役職員数151721人→124051人
預金98兆4327億円→106兆1009億円(+7,8%) 貸出70兆4088億円→62兆6364億円(-11,0%)
[信用組合]351組合(98)→181組合(04) 店舗数2822カ所→1958カ所 常勤役職員数38246人→23648人
預金21兆3530億円→15兆2828億円(-28,4%) 貸出16兆5221億円→9兆1897億円(-44,4%)
中小企業金融を支えてきた機能が喪失しつつある。なぜこうなったのか。資本の集中を推進する金融政策の攻勢を受けたが、同時に規模の拡大による利潤極大化戦略を採用した経営姿勢にある。協同組織金融機関の経営指針として、英国コープ銀行が世界最初の「行動規範」を制定(1992年)してから、EU各地の協同組合銀行が急速に制定を促進している。日本最初の「協同組織金融機関の行動規範」がこの3月6日に制定された。その「基本姿勢である”一人は万人のために万人は一人のために”」は「営利至上主義の利潤優先型経営姿勢・事業と対立せざるを得ない。ここにこそ協同組織が市場経済万能主義と対抗する意義がある」としている。いままで総会を意志決定機関と決めていながら、総代会で済ませていた現状を変え、最低年1回の総会開催を提案している。EU行動規範に較べて環境・平和問題が弱いが、金融庁「リレーションシップ・バンキング行政」と対比して注目される。
◆裁量労働制とは何か
東京商工会議所「労働政策に関するアンケート調査結果」(733社回答 調査時期04年4-5月)で、裁量労働(みなし労働時間)制対象者を「労働時間規制の適用除外」とする要望が急増している。「早急に管理監督者と同じ適用除外にすべき」20、1%、 「将来的に管理監督者と同じ適用除外にすべき」37、2%で57,3%が適用除外を求めている。昨年の労基法改正で見送られた金銭賠償方式(解雇無効の際の金銭による労働契約の終了)を「制度化すべき」57%、「必要ない」15,6%となっている。外国人労働者受け入れ「積極的に受け入れる」10,9%「規模と期間を制限して受け入れる」22,1%「条件整備まで慎重に」51,7%となっている。自由記載欄ではホワイトカラー・イグゼンプション(事務技術系労働者の労働時間適用除外)の早期導入を求める声も多い。裁量労働の適用除外は、労基法の労働時間規制から外すことによって残業代の使用者責任を免れることになる。
こうした経済界の要望を受けて厚労省「仕事と生活の調和に関する検討会議最終報告書」は次のような労働時間規制撤廃の提案をおこなった(6月23日)。労働時間・就業規則・契約期間・仕事内容・仕事拘束度を「労働者が自ら選択できる働き方の多様化」原理へと転換させるべきだとする。
○労働時間規制に囚われない働き方=職務内容が労働時間規制になじまない仕事は、本人の希望により労働時間規制の保護から外す。労働時間短縮や勤務地の限定は、企業の時間当たり固定費を上昇させるから、時間当たり賃金水準が低下することを認める。残業割増賃金制に代わる代償休日制を導入する。均衡処遇は、パート労働者の賃金上昇とは切り離し、正社員の処遇見直しから検討する。複数職場の就労の雇用保障は弱めざるを得ない。
*コメント 通産省の議論と見間違うばかりの権利剥奪である。現状のサービス残業と違法長時間労働の解決責任は企業にあるにもかかわらず、法改正によって違法性を阻却しようとする逆立ちの発想である。厚労省は憲法25条と労基法(第1条:労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない)という精神を優先し、企業利潤に対抗する立場にあるはずである。「本人の自律的な自由意志による選択」という形式的自由主義は、成果・業績主義賃金の下で実質的に稼働しないことが分かっているにもかかわらず、なぜ非情な改訂を平気でめざすのか。簡単に言うと、自由時間が欲しければ賃金と雇用不安を覚悟し、それがイヤなら自己責任で無報酬労働をせよーと言うに等しい。資本と労働という力関係が異なる主体間では、形式的自由は強者の自由を意味するというのが19世紀の結論であり、20世紀のさまざまの労働社会権が登場した歴史をも無視している。こうした改訂は国際基準と原理的に背反し、海外(特に欧州)で外国人労働者をこの基準で雇用することはできない。
次に裁量労働制の意義と問題を検討する。
労基法が改正されて企画業務型裁量労働制の適用が急速に進んでいる。「自立的で自由度の高い柔軟な働き方を求める勤労者の能力や意欲をより有効に発揮させ、生産性と成果を向上させる」(日経連要望書)ものとなるだろうか。日本IBMは6400人(全社員の1/3)のSEに専門業務型裁量労働制を適用し、日立製作所は事務・営業職を含めて2万人(全社員の1/2 若年社員を除く)に適用する。独立法人国立大学の過半数にも裁量労働制が導入され、NTT研究所も同じく導入する。
裁量労働制は労基法第38条「業務の性質が労働者の裁量に委ねる必要があり、遂行の手段と時間配分の決定を使用者が指示せず、労働したものとみなす」。専門業務型(38条3)と企画業務型(38条4)があり、「創造性豊かな人材がその能力を存分に発揮しうるような自律的で自由度の高いフレクシブルな働き方」(厚労省資料)と理想化している。
裁量労働制登場の背景には成果主義賃金制がある。個人業績を評価する目標管理によって、企業成果貢献基準で給与と賞与を決定する成果主義賃金は、日経連「新時代の日本的経営」(1995年)が提起し、特に電機大手(日立、松下、NEC、ソニー)が先行して導入した。その実態は、[職務給+業績給]を基本とする定期昇給の廃止・諸手当廃止・降格降給制であり、総人件費削減と競争主義過密労働と労働力流動化(NTT11万人、東芝2万人、富士通16400人、松下5000人、NEC4000人、JAL4500人削減)であった。長時間過密労働のサービス化を規制する労働時間管理を強いられた資本は、労働時間と賃金を分離し、割増賃金支払義務を免除する裁量労働制導入で対応する。さらにフレックスタイム制を採用していた企業は個々の社員の労働時間管理が煩瑣となり労働時間管理そのものを廃止できる裁量労働制を求めた(日立)。
NTTの研究・技術職の裁量労働制は次の通りである。
@対象者:一般資格2級以上の研究・開発業務従事者(修士卒平均2年目から)
Aみなし労働:1日30分以上勤務で7時間30分の勤務と見なす(30分未満は欠勤)
B就業時間:勤務可能時間は7:00〜22:00
C深夜勤務:22:00〜5:00の勤務は事前の所属長の承認
D週休日:2時間・反日年休は不要となり1日単位の取得
E休暇:同上
F時間管理:始業と終業、休憩時間を毎日勤務表に記入し上長に報告
G裁量研究開発手当:資格等級別定額んが月齢手当として勤務実績に応じて支給(16日未満の勤務日は減額)
H裁量業績手当:半期ごとの個人業績反映結果に応じ、資格等級別評価段階別に支給、1人平均半期20万円
I相談窓口:裁量労働制の質問・相談
J健康・福祉確保措置:月間実労働時間200時間を超える者への保健指導
K上長とのコミュニケーション:チャレンジシート、業務実施予定表、業務スケジュール、進捗状況、業績目標の達成
L在宅勤務:月5日限度
さて裁量労働制と科学・研究開発労働はマッチングするだろうか。
現代の科学・技術労働の本質的特徴は、次のような諸点にある。
@諸分野の融合と共同労働を必須とする総合的な労働である
A多様な周辺技術を結集するもので、単なる個々人の算術的集積ではない
B短・中期的収益性をめざす産業技術といえども、全般的な科学技術水準の成果の一部が緻密な計画の下で結実するものである
C不確実性がつきもので、不確実性が逆に研究のモチベイションを高め、新発見と新分野開拓の契機となる
従って、現代の科学・技術労働と、個々人の成果と評価に短絡的に帰着させる裁量労働制は本質的にそぐわない。科学・技術労働の過程で指揮命令が無意味となる「裁量労働」は当事者の「裁量権」に属し、みなし労働時間と引き替えにすべきものではない。自発的に何日も何日も不眠不休のしごとによって新発見に到るというのは、あくまで個人の主体的なモチベイションによる。「裁量」とは労働者の自発性・自主性に依拠する高度の知的活動の領域であり、それを「みなし労働」とすることは所定内労働時間と賃金に自発的活動を隷属させることになる。
知的創造活動の実現は、雇用の安定性、健康な生活環境にあり、上司の評価と所定内労働時間を意識した賃金に封じ込めて圧殺しないことにある。「ゆとり」と労働への自負、尊厳の感覚は、成果主義裁量労働制によっては生まれない。
成果主義の究極にある定期昇給廃止(トヨタ)は、反人間的な性格が強い。定昇は「1年経てば誰でも経験と知識は向上するという人間能力の尊厳」の表現であり、人間の成長可能性に焦点を当てた事業再構築をめざすものであるから、定昇廃止は人間機械論に他ならない。
最後に確認することは、以上の論理は利潤極大型の成果主義裁量労働制の疎外形態を述べたものであり、人間の尊厳と成長型の成果主義裁量労働制の将来形態は別にある。文化発展に向けた必要労働に対する正確な評価と自主・自立型裁量労働という新たな労働形態が現在にあって未来を代表する、未だ生まれいずる形態が構想されるであろう。以上長田好弘「研究・技術職への裁量労働制導入とどう立ち向かうか」(『経済』2004年7月号所収)参照。(2004/6/12
9:45)
◆GMランシング工場におけるリーン生産システム
03年度世界自動車販売台数はGM860万台・トヨタ678万台・フォード672万台であり、米国自動車産業が不振に喘いだ1980年代半ばにMITが自動車生産の国際比較調査でトヨタ生産システムの生産性を実証しリーン生産システムという一般理論を提出し、それ以降米国ビッグ3は企業再建の中心にリーン生産システムを置いた。1980年代までの生産システム改革は大量生産方式Fordeismkaから労働の人間化QWL=Qualituy of Working Liefへという流れであったが、ここにきて品質とコストを最優先する方式に転換した。リーンLeanとは「ムダのない、贅肉のない」状態であるがその語義は多様であり、チームコンセプトないしチーム方式を強調する点で共通している。トヨタは多様な仕事を工夫を凝らして協力しコストダウンと能率向上をみんなで考え実践する生産管理である。
しかしトヨタシステムと米国型労働慣行は基本的に矛盾する点があるから機械的導入はできない。
@テーラー・フォードシステムは細分化された厳格な規定労働があり、賃金はその労働に支払われるから、基本的にジョブローテーション越境労働はできない
A既成の職務給Job based Payから職務を超えた賃金支給制か担当職種の数量による支給Skill-Based-Pay
or Pay for Knowledgeに移行させる賃金基準の「仕事」から「人間」への転換である
Bジョブローテーションを実現する企業内教育とOJTの導入である。労働移動が自然である米国で社員への教育投資は困難である。
C先任権Seniority慣行(勤続年数で解雇と配置を含む処遇を優先する)はチーム制になじまない
GMランシング工場の改革は、1987年本社とUAWのToledo合意(The
Quality Net-work)という顧客満足型企業再建をめざすリーン生産システムの導入に始まる。1988年からFirst
Time Build(チーム生産方式)の導入が始まり、高品質・高サービス・低コストに向けた労使協調の実現に入った。現場管理者に到る特別訓練と組織改革の準備を経て1993年からチーム生産方式の協約化と人事労務管理のリーンシステム導入が始まった。
チームは4〜8人で編成され、目標決定・安全、品質、技能開発、出退勤、訓練、生産管理(アンドン)、清掃、ムダ排除などをチーム単位で責任を持つことを基本とした。従来との差異で注目する点は以下のようになる。
@不良品と作業の不具合はアンドン(発生を示すランプ)を利用する
A品質トラブル発生は前工程と後工程にも知らせる
B他のチーム作業員にも協力する
Cチームの会合に出席し、ジョブローテーションをおこない、チーム内の全ての業務に熟達する
チームリーダーTeam Coordinatorは既成の監督者(管理職)ではなく、自主的な応募による労使共同の選考によっておこなわれ、合格者から先任権順に選ばれる。選考(査定)基準は、経験・能力・技能・業績である。チームメンバーはリーダーのリコール権を持ち、60%以上の署名で嘆願書を提出し解任することができる。
チーム生産方式は、小集団による職務の再編→ジョブローテーションによる多能工化、集団による作業の質と効率向上をめざすGM型リーン生産システムである。
@職務再編成をどう進めたか 職務数の削減(90年63種→99年32種)による職務境界の整理と移動性実現
Aジョブローテーションをどう進めたか 93年協定の自発性原則は5%程度しか機能せず、93年から強制に移行した(1.5時間〜1日の間隔でローテーションする)。UAWがこれを受け入れたのは工場閉鎖の雇用確保と一律賃上げと引き替えにある。しかしローテーションは組合員間の実質的な不平等を誘発し、作業効率を低下させ、現在は免除規定を設けて試行錯誤が続いている。
B賃金体系の再編をどう進めたか 改革以前の賃金表は細分化された膨大な職種別賃金表でありこれを改編しないとローテンションは不可能である。ペイ・フォア・ナレッジは、チーム内の職務が1つできれば18.12$、2つできれば11kk昇給して18.44$とする技能形成と多能工化へのインセンテイブ賃金体系である。しかし自発性原理では現実には機能しなかった。そこで強制によるフラット・レート(スポット)型賃金体系を導入し、複数の職種を担当しても賃金変動はないようにした。職種に無関係に作業員とリーダーの2段階賃金制にした。この結果ローテーションは格段に進んだ(時給一律50kアップと引き替えであったが)。
果たしてGM戦略は成功したのか。現段階の問題点を挙げる。
@人事権の一部を組合に移譲した。ある職種内で空席が発生した時にフォアマン(Supetvisor)の裁量で決めていたのを、部門内職務選択移動としてセニョリテイに基づいて決定することにした。職種簡略化による不本意移動の回避yとして有効である。
Aローテーションが機能しない要因は、賃金昇給幅の魅力が少ないからではなく、従来の労働慣行の壁によるところが大きい(長年特定職務に精通した人に新たな職務を強制する困難性)。
B職務給型賃金を人事考課型賃金に移行させることが、労働慣行上非常に難しい。GMでは賃金決定の変数は職務と仕事に比重があり、実質的に職務給が残っている。これは非熟練職種の場合であり、熟練職種は完全な職務給である。以上黒田兼一「GMランシング工場」(『経済』2004年7月号)参照。
非常に興味津々たる報告である。トヨタ生産システムがなぜ日本で見事に機能し、米国では機能しないのか。日本型集団主義という視点が便利な分析視角であるが、労使力関係の要因も作用しているように思われる。私はこの問題状況を日本の学校システムの現場に適用するとどうなるかー考察し試案を出してみたい誘惑に駆られる。その場合にトヨタ生産システムを普遍的な生産管理モデルとみなして良いかどうかを検討したい。
トヨタ自工は、連結決算による経常利益は1兆4千億円(純利益1兆円)、内部留保は8兆5千億円を超える世界企業であり、1日32億円の純利益をあげるリーデイング・カンパニーである。その戦略はなにか。
@究極のコスト削減戦略 00年から02年の3年間で1兆円コスト削減「総原価低減CCC21」戦略で7600億円のコスト削減に成功した。中心は総人件費削減の成果主義賃金体系である。96−01年で6000人を削減し(女性事務職廃止、1000人を派遣化)、生産ラインは非正規雇用・期間工と請負・派遣が00年6千数百人→1万人となって、30%の非正規社員が動かし、部門の外注化・委託化が推進された。生産ラインの超過密「速度の経済」化、ラインの整理・再編、多能工化が進み、事務・技術部門の裁量労働・成果主義・組織のフラット化が進んだ。過労死認定基準月45時間を超える残業が80.5%に及んでいる(豊田労基署)。関連下請企業の正社員削減、外人労働者採用、定年切り下げ(60歳→57歳)、賃金カット(50歳代15〜20%)、物流費削減が同時に進行した。下請の受注状況は好転しているが実質利益は下降している。
豊田市の資本金1千万円以下の中小企業4600社のうち03年度法人市民税を納入した企業は30%に過ぎず、70%は赤字企業だと云うことになる。トヨタ系大企業(資本金50億円超)の法人市民税は334億円(90年度)→279億円(03年度)と下降し、法人税減税によるトヨタ収益は地元還元されていない。
現在は国内全工場で総原価更に30%コストダウンをめざす「BT2」(ブレイクスルー・トヨタ03−06)が展開し、中国コストの標準化が進んでいる。先の戦略にプラスしてラインの独立採算制とトヨタ資本による派遣・委託・請負会社が設立され、中国人労働者の正規採用(九州工場)が決定された。トヨタ労組の調査では、不安を感じる内容が「精神的緊張とストレス45.2%、体力と能力の限界35.2%、変化への対応33,3%、仕事量の増加と処遇27,3%」となっている。トヨタ生産システムのカンバン方式は、人間カンバンと部品カンバン方式によって人間本来の自発性を極大化した労働力と部品の最適調達システムを実現している。
結論的に言えば、近代合理主義に基礎づけられる小集団多能工の自発的労働が、経営の論理に巻き込まれて労働の無制限的非人間化を伴いつつ進行している。資本の論理から解放された自由時間創出の契機と可能性を拓くトヨタ生産システムの原理的転換を展望する理論構築が不可欠だ。(2004/6/10
20:41)
◆中小企業借換保証制度
政府の不良債権最終処理によってRCC(整理回収機構)送りの対象となって最も打撃を受けた中小企業経営を維持する制度として01年に京都から始まった借換保証制度は03年度から政府制度となった。信用保証協会の保証付き借入金を、より返済期間の長い融資へ借り換えたり、複数の借入金の債務を一本化することにより毎月返済を軽減する。京都府・市の制度では、国の「経営安定化資金」の借り入れは借換の対象とならない」ことの是正を求めて始まった。当初政府は「モラルハザードを誘発する」とし、金融機関も借り換えは融資条件の変更にあたるとして融資に消極的であった。03年補正予算に盛り込まれた借り換え保証制度は全国で42万5千件(6兆3千億円)を超える保証実績をあげた(5月26日現在)。
無担保保証の8千万円のうち5千万円までは第3者保証なしで受けられるが、5千万円以下の無担保保証も第3者保証人を徴求しないという運用に転じ、債務を一本化した場合にもその無担保保証残高5千万円以下でもその運用を適用する。条件変更貸し付けに対する借り換え拒否や、借り換え期間中の新規融資の排除も「やる気と能力のある中小企業の資金繰りを円滑化する」という制度種子に反するということになった。(2004/6/8
7:37)
◆最先端生産管理システム
製品多様化と商品サイクルの短縮に対応するQR供給が企業経営の中心課題となってきた。携帯・パソコン・自動車の生産管理手法の最先端をみてみよう。キーワードは開発期間短縮・在庫管理徹底・生産平準化・部品共通化である。
○携帯電話 モデルチェインジは6ヶ月単位。開発費抑制が最大の課題。携帯電話の金型の設計から成形まで45日間を25分の1の45時間に短縮したのがインクス(大田区)であり、CAD(コンピュータ支援設計システム)によって設計図を含む全ての文書を電子化した。熟練エンジニアの技能を数値化して電子入力し、24時間稼働の工場は最小限のアルバイトに委せ人件費を大幅に削減、速さと安さで携帯用金型業界の世界シェア30%を独占している。携帯各社は特注品の半導体を普及格安品に切り替え部品調達段階でコスト削減を図る。
○パソコン PC製品は生鮮食料品と呼ばれ製品寿命は4ヶ月だ。年に3回のモデルチェインジでCPUやHDの性能を更新し最高機能のPC提供を競う。心臓部のCPUはインテルが独占し国内利益はない。次期新製品投入までに在庫をゼロにし、部品の最適調達が求められる。需要予測と出荷量・出荷時期の判断が企業経営を決める。富士通は毎週水曜日に経営会議を開き、前の日曜日までの売れ行きを見て1週間の生産計画を立て、その日のうちに工場に発注する(島根県・福島県)。01年までは20日に1回の生産計画であったが無駄な生産をしないために極端な短縮を行っている。NECも前の週の土曜日の売上を元に水曜日を基点とする1週間生産計画で03年度は70億円を超える黒字を出した。
○乗用車 トヨタはベーシックカー開発に時間をかけ、その車台に多様なボデイーを載せて新型車を供給するバリエーション展開を始めた。99年排気量1gの新分野にヴィッツを投入し、その後03年までに10種類のヴィッツベースの新型車を時間差で供給した。大きな駕籠のファンカーゴ、角張ったデザインのbB、欧州風のイスト、ユニバーサルデザインのラウム、7人乗り小型車センタなどだ。エンジン周りと足回りの車台部分は共通で同じ生産ラインでつくる。ある車種の売れ行きが落ちても他の車種がカバーし、生産ラインの操業度は最高水準を維持し続ける仕組みだ。基本構造が共通で、衝突実験も実車実験回数を削減し、最新デザインの即自供給が可能となる。(2004/6/7
8:00)
◆食料主権とWTO農業交渉
食料主権は食料と農業政策を自主的に決定する権利を云う。96年世界食料サミット(ローマ)のNGO会合で、世界100以上の農民組織でつくるビア・カンペシーナが始めて提起した藝念であり、「国民の食べる権利」を国家主権の一部として認めようとする主張である。この概念は第60回国連人権委員会(04年)でも、検討すべき「農業と貿易に関する新たな代案」の一つとして確認された。FAO(国連食糧農業機関)は世界の飢餓人口8億人を2015年までに半減する目標を決めたが(1996年)、その目標の達成はアグリビジネス(農業多国籍企業)の無秩序な貿易を規制できるか否かに懸かっている。途上国の輸出主導型商品作物の生産強要を規制する食料主権条約(食料主権原則を国際法化する)の制定が緊急の課題となっている。国連人権委員会も「食料に対する主権」を採択し、「WTO加盟国が食料主権をグローバルな貿易ルールによって脅かされることのないように、WTO協定の不公正・不均衡の是正を求める・・・、農業の農産物貿易のオルタナテイブ・モデルとして食料主権を考慮する」としている(参加53ヶ国 賛成51ヶ国・反対米国のみ・棄権オーストラリア *日本は賛成)。食料主権概念は1996年に世界的な小農・家族農民組織「ビア・カンペシーナ」が提起し、遂に国連機関が確認するグロ−バル・スタンダードとなった。日本政府も、「食料・農業・農村基本法」の市場原理に一定の修正を加え、「多様な農業の共存」「効率重視の画一的農業のみが生き残れる貿易ルールの拒絶」を主張するスタンスに転じている。
ではあらゆる産物の貿易自由化を推進するWTOの「不公正・不均衡」とは何だろうか。最大の農産物輸出国・米国は、他国に自由化を迫る一方、02年農業法で再生産費をもとにした目標価格と国際価格との差額をせいふが不足払いする「価格変動対応型支払」制度を創設し手厚い国内保護策をとり、輸出・輸入の両面を持つEU諸国も農業予算の60〜70%を占める価格・所得保障政策を採用している。自国の農産物輸出を保護しながら他国農業を破壊する欧米型手法が、途上国からみると不公正・不均衡になる。途上国の反発を受けて米国は2国間交渉の自由貿易協定(FTA)締結という二重戦略を採用している。
日本は95年コメのミニマムアクセス(最低輸入機会)受け入れ以降、毎年77万トンのコメを輸入し処分しきれずにプラステイクの原料にしている。日本の農産物の平均関税率は12%であり、これを下回っているのは米国・カナダ・オーストラリアなどの輸出国だけである。減反政策と価格保障廃止によってカロリー基準・総合食料自給率は主要国最低の40%に落ち込み、穀物自給率は28%に落ち込んで(世界130位)危機的な状態になっている。新多角的貿易交渉(新ラウンド)の枠組み合意を目指して7月27日に開始されるWTO一般理事会では、幾つかの潮流がグループをつくっている。
○ケアンズ・グループ(オーストラリア、ニュージーランド、カナダなど17ヶ国 農産物輸出国)
○G20(中国、インド、メキシコ、フィリピン、南アフリカ、ナイジェリア、インドネシアなど20ヶ国 途上国中心)
○G10(日本、スイス、ノルウエー、韓国など10ヶ国 先進国の農産物輸入国)
○EU(25ヶ国)
○米国
○他の途上国(ケニアなど)
現在は高関税品目ほど関税引き下げ幅を大きくする傾斜的な「階層方式」が焦点であり、重要品目の例外措置をめぐって交渉が続いている。本質的には、自由貿易拡大を最大課題とする現行WTO協定の枠内での部分的妥協交渉に過ぎないから、早晩コメ→豚肉・畑作物などの他の品目にも拡大する。WTOの枠をを超えた食料主権原則による農業政策への転換をいま行わなければ、日本の食生活と農業は壊滅する。
日本型食料主権の確立の芽生えは、すでに産直運動、学校給食の地場産活用、循環型農業、地産地消システムの推進など生産基盤を支える先進的経験を蓄積しつつあります。問題は農家直接支払制度を中心とする政府の支援政策です。直接支払制度とは、国や自治体の助成金が生産者に直接支払われる制度です。既成の農業補助金は、農産物の価格を一定水準に保つことで農家所得を維持する間接支援であったが、直接支払制度は市場価格は市場システムに委せ、代わりに農家所得の水準を維持することによって経営安定をめざします。なぜこの制度が注目されているかというと、WTO農業交渉で農業保護のための関税撤廃や引き下げが行われても国内農家を保護する開放経済下の農政手法であるからです。
欧米の直接支払制度はEUでは国際競争力確保の価格や関税引き下げの見返りに補給金を支給する所得対策(92年)・環境や景観に配慮した農法を採用する農家への環境対策(87年)・生産条件の悪い産地で農業を続ける農家に助成金を支給する条件不利地域対策(75年)として導入され、米国では所得対策(96年)が導入されています。
日本では、中山間地の生産条件の悪い農山村を対象にする直接支払制度がはじまった(00年)。農業の国土保全や景観維持などの多面的機能を維持し、耕作放棄地を減らす効果を狙っている。農水省は「所得対策」「環境対策」としての直接支払制度導入に向けて検討中である。直接支払いの方法は、水田・畑地など耕地面積10アール当たりいくらという一定額支給方式があるが、農水省は水田営農と北海道大規模畑作営農のプロ農家に対象を限定する。農業団体は小規模農家も対象とすべきだとし、また集落対象の団体支払制度を主張している。つまり農水省の戦略は農業法人化大規模経営への転換を推進する戦略の手段として直接支払制度を位置づける面がある。(2004/6/7
7:26)
◆コンテンツ促進法とは何か
パソコンやインターネットの普及に伴う映画・音楽・ゲームなどのコンテンツビジネスが急成長している。アニメやゲームソフトなどを知的財産と位置づけて国や自治体の支援施策を義務づけるコンテンツ促進法が成立した。例えばポケットモンスターは、アニメ、漫画、ゲーム、人形のキャラクター商品含めて国内売上高1兆円を超え、波及効果を含めると2兆3000億円という膨大な財を生み出している(経済産業省資料)。日本のコンテンツ産業規模は11兆円に達し、鉄鋼産業(5兆)の2倍であり自動車産業に比肩する成長産業である。政府はアニメ産業を輸出ビッグビジネスとして戦略産業化するが、アニメの日本文化性を育成する視点はない。しかし日本のコンテンツビジネスの最大の特徴は、圧倒的多数の下請中小零細プロダクションが支え、著作権譲渡・資金調達でTV局や大手元請けプロダクションの不公正取引にさらされている。作品創造者であるアニメーターはほとんどフリー契約で、労災保険・雇用保険は加盟できず、月実質収入は6〜7万円で後は出来高払いという不安定契約であり、離職率80%で3年が上限だという実態だ。映画撮影所の閉鎖という政策基盤の崩壊と相まって人材育成は劣悪な条件だ。日本のアニメ制作費は欧米の5分の1で、低コストの海外下請が進行し、国内人材の閉塞と日本の高度アニメ技術の継承が危機に瀕している。不公正取引の是正、政府による実態調査、社会保険制度の導入、フィルム保存の資金支援が緊急課題であり、文化芸術振興基本法の理念を具体化するコンテンツ作品の創造・享受権の具体化がのぞまれる。(2004/6/6
10:47)
◆再生可能エネルギー国際会議「ボン宣言」(ボン 6月4日)
2015年までに世界人口のうち10億人に再生可能エネルギーを供給するという行動計画を採択。再生可能エネルギーを将来の中心エネルギと位置づけ、各国の自主的導入・普及計画を進める。石油依存がテロの脅威を高め、貧困克服と気候変動防止には再生可能エネルギーの普及しかないとしている。国連目標の2015年までの貧困半減目標は、世界人口10億人の再生可能エネルギーの供給しかない。この会議はEU・ニュージーランド・南米87ヶ国が参加し、米国・ロシアはオブザーバー参加。
有限で枯渇する石油・原子力から太陽光・風力・バイオマス・・地熱・波力など半永久的に使用可能なエネルギーへの転換は、地球温暖化をもたらす化石燃料に替わるものとして世界の主流となりつつある。(2004/6/6
8:45)
◆雇用のミスマッチ論は正しいかーフリーターは好きでなっている、勤労意識が低いからか?
求職者が贅沢か或いは高望みで求人はあるのに失業率が高くなるという雇用ミスマッチ論がある。正しいか。ハローワークの統計では、求職<求人はパート労働のみだ。パート求職者1:パート求人者1.58であり、パート希望者2人に求人は3人あると云うことだ(厚労省5月28日発表調査結果)。しかし正規社員は求職1:求人0.62で正規就職を希望する2人に求人は1人しかない。
ハローワークで求人をして3週間経過後も休職者の応募がない求人条件をみると、平均賃金が他の求人事例より低水準(職業計で2000円)という実態がある。現在求人が急増しているのが派遣と業務請負(求人の33.9%)であるが、特にこの業界への就業率が低く(全体の50%以下の充足率)、就業場所と雇用期間の非透明性が大きな壁となっている(下記参照)。つまりミスマッチの主要な要因はパート・派遣等の不安定雇用を推進する企業の人事政策にある。(2004/6/5
8:45)
調査対象公共職業安定所合計(厚労省「労働力需給ミスマッチ状況調査」03年11月)
新規求人数 充足率 請負求人数 構成比 充足率 派遣求人 構成比 充足率
59.367人 8.5% 16.664人 28.1% 3.1% 3.459人 5.8% 4.0%
「国民生活白書」(03年版)のフリーター定義は「15−34歳の若年(学生と主婦は除く)のうち、パート・アルバイト(派遣を含む)及び働く意欲のある無職の人」となっている。学生と主婦を除くのは、学業や育児の傍ら自ら選んで就業する場合が多いので区別するためだ。フリーターは183万人(90年)→417万人(01年)と若年5人に1人と急増し、2010年には47万人(3,5人に1人)まで増大すると予測される(UFJ総研試算)。この状況を政府はどう見ているか。
○文科省初中局長「フリーター志向の高まりなど若者の勤労観が身についていない」
○坂口厚労相「いろいろ対策を並べても働くという気持ちにならなければなかなか就職しない」(03年参院予算委)
○小泉首相「人さまざまだ。勤労の重要性の認識、いかにやる気を持って貰うか」(04年衆院予算委)
内閣府「若年層の意識実態調査03年」では、フリーターで正社員希望は72,2%に達し、フリーター希望は14,9%にすぎない。フリーター急増の真の要因は、「経済低迷による労働需要減少と企業の採用行動の変化によるところが多い」(内閣府「国民生活白書」(03年版)と政府自身が言っている。フリーターという雇用形態は、青年個人の生活を不安定化するが、同時に社会全体の経済的損失を上昇させる。「若年の職業能力が高まらないために経済全体の生産性が低下」し「未婚化、晩婚化、少子化などを深刻ささせる」(「国民生活白書」)。以下はUFJ総合研究所「フリーター人口の長期予測とその経済的影響の試算」(04年3月発表)。
正社員 フリーター
平均年収 387万円 106万円
生涯賃金 2億1500万円 5200万円
住民税 6万4600円 1万1800円
所得税 13万4700円 1万2400円
消費税 13万5000円 4万9000円
消費額 282万9000円 103万9000円
経済的損失は 税収1,2兆円、消費額8,8兆円、貯蓄3,8兆円、名目GDP-1,7%となる
05年度予算における厚労省の雇用労働分野の要求内容は以下の通り。
@若者人間力強化プロジェクトー働く意義の実感と意欲の喚起(231億円)
A職業紹介情報提供の促進ーハローワーク事業の民間活用(38億円)*求職者の就業状況に応じて業者に国が報酬を支払う
B緊急地域雇用創出特別交付金廃止(3年間で4300億円投下し、51万人の雇用を創出)
職業安定法第5条「国は労働力の需要供給の適正且つ円滑な調整を図る」ではなく、規制緩和による派遣事業拡大を推進し、民間委託化によって求職者と人材業者の競争を激化させた政策の延長上の予算要求である。雇用拡大と失業給付日数の延長・一時的雇用の提供など過剰供給の基礎を改革しなければならない。(2004/9/23
8:27追加)
◆総務省「4月全世帯家計調査速報(農林水産業を除く2人以上世帯)」(4日発表)
○1世帯当たり消費支出 328.690円 物価変動を除いた実質支出前年同月日+4.6%
○支出項目 教養娯楽+13.7%(PC購入と海外パック旅行↑)
交通・通信(移動電話通信料・自動車購入費↑)
家具・家事用品+11.0%
食料・住居↓
◆中小企業政策の最適化とはなにか
政府・経済財政諮問会議は「骨太方針」第4弾を3日に発表した。構造改革戦略による大企業の収益率上昇をもたらした政策要因は何か。@設備投資・研究開発減税1兆円A産業再生法によるリストラ減税支援B不安定雇用の増大(30%が派遣や契約社員、製造業務への派遣拡大、製造業の40%が派遣の積極活用を希望(『ものづくり白書』))C大手銀行への公的資金投入と中小企業金融の削減(日銀調査で50兆円の減少)などである。特に民営化推進が極大化する。郵貯・簡易保険の政府保障廃止、郵便局網の再編、医療・福祉・保育・教育4分野の民営化である。
これを支える財政は@国庫補助廃止・縮減(3兆円)A地方交付税縮減B地方税源移譲(3兆円)であるが、要するに中央政府の赤字を地方へ転嫁するに過ぎない。税金のうち社会保障支出は30%に転落したが、今後もこれを最大の課題とするとしている。07年度をメドに大型消費税導入を明言し、法人税減税を更に推進するとしている。さてこのような国民経済の中で中小企業の存立基盤はあるだろうか。
日本の中小企業は企業数の99、7%(469万社)、従業員数の70、2%(2996万人)、製造業出荷額の51,2%(147兆円)を占め日本経済の中核を担っている。中小企業金融は貸出額-56兆円(4月末現在)の一方、巨大銀行へは30兆円の公的資金投入を行った。旧長銀8兆円投入→米国リップルウッド社に10億円で売却→新生銀行1兆円譲渡益計上→日本政府への税金納入0円(!)という実態である。中小企業金融の緊急課題は、@信用保証協会の保証機能拡充(基金積み上げによる財政基盤強化、資金繰り円滑化借換保証制度の保証枠拡大)A国民生活金融公庫・中小企業金融公庫出資金拡充である(日本政策投資銀行出資金1兆2千億円に対し、公庫出資金はそれぞれ3000億円と4000億円)。
中小企業経営を保全する緊急課題として以下のことが求められる。
@下請検査官増員
A下請代金遅延防止法と下請中小企業振興法改正による中小企業強化
下請代金遅延による支払い命令は1億2千400万円(過去最高)、減額による支払い命令は5億1千900万円(過去3番目)に達している(03年度公取委報告)。これは氷山の一角に過ぎない。
B大型店出店規制強化(出退店ルール、営業時間規制)
B納税者憲章の制定(申告納税権、調査の事前通知、プライバシー保護、立会人制)による適正税務調査と推計課税の限定、不服申し立てと救済権の確立など。サミット参加国で納税者憲章がないのは日本とロシアのみである。
C中小企業政府予算の拡充(国家予算の0.36%=1738億円)を最低1兆円(2%)に増額、研究開発費73億円の抜本拡充(大手企業上位10社で414億円で、日立1社に満たない)。98年から導入されたSBIR(中小企業技術革新制度=6省で中小企業枠設定)は300億円(米国SBIRの2割)に過ぎず、経済産業省所轄の技術開発・経営革新の支援件数は700件(中小企業数374万の0,019%)に過ぎない。小企業の大半は支援から外れ、高度最先端技術と新規性が申請基準となり、利用時の「自己負担」原則と援助金後払い制によって、小企業は利用不可能である。小企業支援責任を政府から自治体へ移行しようとしている。
D経営相談システムの充実などが求められる。
しかし政府の中小企業政策の基本はどうか。『2004年版中小企業白書』のサブテーマは「多様性が織りなす中小企業の無限の可能性」といういかにも牧歌的なものである。長期不況で、デジカメや一部の輸出関連は回復傾向が見られるが、多くの中小企業は体力を消耗しいまなお深い傷を負ったままである。世界に冠たる中小企業政策と謳われた日本の中小企業政策はいまや断末魔に喘いでいる。中小企業政策の大転換は99年の中小企業基本法改正(36年ぶり)ではじまり、@資本金規模範囲の上限引き上げA格差是正から独立中小企業の多様で活力ある成長戦略へ転換した。保護ではなくやる気のある中小企業育成だ。支援の焦点はベンチャーと優良企業へ転換したが、資本金規模範囲の拡大で対象企業数は拡大したが支援費そのものは増加していないから、結果的には選択的支援となり、1社当たりの支援費は削減された。優良企業を対象とした結果、限界企業は見捨てられた。「中小企業」と区分する根拠は、経営の自己努力では限界があるから政府支援をおこなうという本質的な支援の性格は消し飛んだ。細かいメ入を多様に用意して申請の煩雑さは倍化した。米国型の政策ごとに規模区分を設定し、集中的な支援費投下への転換が求められる。
1980年代の空洞化に対処して米国では、技術研究開発・開業資金調達支援政策を進め、SBIR(中小企業技術革新制度)1400億円を計上するなど、中小企業数は504万社(91年)→535万社(95年)→578万社(98年)と53万社増加し、欧州でも00年にEU中小企業憲章が「中小企業は欧州のバックボーン(背骨)」と規定して中小企業政策を強化している。
(2004/6/4 10:14)
◆グローバル・スタンダードとしての欧州年金制度モデル
EU首脳会議「適切で持続可能な年金に関するEU報告」(03年3月 リスボン)は加盟15ヶ国の年金世論調査結果から。
○心配なしに退職後やっていける 13%
○気をtければよい生活ができる 33%
○考えていないが大丈夫だ 16%
○分からない 19%
○考えていないが心配だ 9%
○生活が困難だ 10%
EUリスボン合意は、高齢化に伴う年金制度のEU共通課題を決めた(65歳以上人口 00年24.2%→50年49%)。共通目標は@年金妥当性A財政的持続性B近代化を柱に、「高齢者が貧困の危険に陥ることなく、公共・社会・文化的な生活に参加することが可能な、品位のある生活水準を享受するよう保障する」ことを基本に11共通目標を各国政府との義務とし、EUに対する報告を義務づけた。共通目標のトップである年金生活者の生活水準保障は、最低保障年金をEU社会福祉制度の基本とし、保険料支払期間と家屋などの財産の有無に無関係に支給する。勤労年齢住民の所得水準に比例した支給制度もある(デンマーク、オランダ)。各欧米年金制度は次記の通り。
(1)フランス
仏最低保障年金は「老齢最低年金」と呼ばれ、勤労体験(保険料支払いの有無)によって拠出型と無拠出型に分かれる。拠出型(民間労働者)は最低3ヶ月の保険料支払期間で年金受給資格が発生し、最低年金に達しない部分を高齢賃金労働者手当から補足する。無拠出型(保険料を生涯支払わないか3ヶ月未満)は、65歳で無収入の単身者は月588ユーロ(79000円)を最低年金として国から受ける。夫婦なら月1053ユーロ(14万円)である。仏の雇用促進最低収入RMI(日本の生活保護)は、単身月418ユーロ(56000円)夫婦で627ユーロ(83600円)であるから、最低年金は生活保護基準を上回っている。
仏最低保障年金制度は第2次大戦時のレジスタンス運動の成果として1945年に生存権による制度が確立した。第4共和制憲法は「国はすべての人に対して、とりわけこども・母親・老年労働者に、健康保護・物質的安全・休息・余暇を保障する。その年齢・精神状態・経済状態のために労働できない人は全て、生存にふさわしい手段を公共体から受け取る権利を持つ」と宣言し、現行第5共和制憲法は「フランス人民は、1946年憲法前文で確認され補充された人権・国民主権の原則に対する愛着を厳粛に宣言する」としている。
(2)イタリア
イタリアの最低保障年金は1969年に「社会年金」として創設され1996年に「社会手当」と改称されている。保険料支払いがない65歳以上の無所得者全員に一律月368ユーロ(5万円)が支給され、70歳になると536ユーロ(7万2500円)に増額される。夫婦は単純に2倍となる。所得があっても社会手当水準に満たない者は差額が支給される。69年の戦後最大の労働攻勢”熱い秋”で実現し、同時に労働者の年金制度である勤労年金が実現し、労働者憲章法も70年に成立している。最近は勤労年金の保険金支払期間の延長が図られているが成功していない。イタリア共和国憲法第38条は「生活に必要な資力に欠ける全ての市民は社会的な扶養と援助を受ける権利を有する」としており、年金が保険料の対価としてでなく基本的な生存権であることを明示している。
(3)イギリス
英国の年金制度は、公的年金が「基礎年金」(国民全体を対象)と「国家第2年金」(被用者対象)及び民間企業年金・個人年金があり重複受給できる。基礎年金は保険料最低10年間で受給できるが満額受給は44年(女性39年)で受取額は拠出期間によって異なる。支払開始年齢は男65歳、女60歳(10年から段階的に65歳に引き上げ)。サッチャー保守党政権以後賃金スライド制が物価スライド制に替わって基礎年金の支給額は低落したが、労働党政権以降貧困者最低所得保障制度MIGが導入された(資産調査で60歳から需給)。支給額は単身者で週105.45ポンド(22000円)、夫婦で週160.95ポンド(33000円)。年金その他の所得を会わせてもこれに達しない場合は、差額が支給される(一定以上の貯蓄は支給額が調整される)。全国245万世帯が平均週41.67ポンド(8600円)を受給している。年金掛金支払い不能者は、税金でこの水準までの所得が保障される。
(4)ドイツ
最低の文化的生存権を保証する基本保障年金制度があり、給付額は月850ユーロ(11万円)、老齢年金月600ユーロを受給する人は差額の250ユーロを基本保障年金として支給される。個人が保険料を支払うのではなく、国が全額を負担し65歳以上の高齢者とすべての障害者に支給される。日本の生活保護にあたる社会援助金は、子どもの所得に応じて支給額が変わるが、基本保障年金は一定額が支給される。老齢年金の受給最低保険料支払期間は5年である(日本の国民年金は25年、厚生年金で20年)。つまり5年間保険料を支払えば65歳から月100ユーロが支給される。低所得者への支援は、失業中の保険料は失業保険会社が支払い、育児休業で出産後3年間は親の一方の保険料は国が負担する。学生の保険料は3年間分を国が負担する(05年度から廃止予定)。ミニジョブといわれる月収400ユーロ以下のパートは、雇用主が賃金の25%にあたる額を国が一括納入し、パートは税金・健康・年金・雇用各保険料を全額免除される。年金積立金の投資運用は禁止され全て預金運用され、積立金はほとんどなく支給総額1ヶ月分の80%しか保有していない。
(5)EU
EU財政安定協定は各国の財政赤字をGDP3%以内に抑制する義務を課し、各国の年金財政に困難をもたらした。EUの年金制度維持の戦略は、高齢者を含む雇用率上昇、勤労者と退職者収入の公正な均衡である。2010年までの平均雇用率達成目標70%、特に高齢者雇用率50%(現状は30-40%)をまざす。保険料率と制金収入引き上げを避け、安定成長・高雇用率・赤字削減措置を遂窮する。EU15ヶ国のGDPに占める公的年金総額は平均10,4%(00年)であり、独11,8%・仏12,1%・伊13,8%・デンマーク10,5%となっている(日本は平均寿命が長いにもかかわらず8%と異常に低い)。保険料の使用者側負担率を高くし、伊では労働者8,89%・使用者23,81%、スペインでは労働者4,7%・使用者23,6%であり、所得・資産に応じた負担原則が貫かれる。年金積立金はないか、ほとんどないのに対し、日本は236兆円(GDP比47% 01年度)という異常な構造となっている。一定の積立金は必要だが日本のような異常性はない。 (2004/6/2
8:44)
◆日本生協連「2003年全国生計費調査」(登録モニター 1383世帯が12ヶ月連続して家計簿を提出 平均年齢49.1歳 会社員56%・公務員15%・無職15%・その他14%)
○月実収入 648.124円(年収入を12で割る 96.3%↓ 96年=100)
○消費支出 426.252円(92.9%↓ 同
)
○社会保険料 62.711円(106.2%↑ 前年比)
○収入に占める社会保険料割合 9.7%↑(01年8.8% 02年雇用保険料引き上げと03年総報酬制導入による急増)
○社会保険料と税金の合計 107.780円(104%↑ 前年比)
○ 同 収入に占める割合 16.6%↑
○社会保険料と税金割合 58:42(96年は50:50)
○収入が勤労所得から年金に変わった14世帯分析(99年ー03年)
99年平均年収977万円・支出916万円=61万円黒字
03年平均収入403万円・支出496万円=93万円赤字(教育費↓・家賃地代↓・被服→・通信→・交際費↑)
コメント:市場原理主義型経済運営によって平均収入と消費支出は下降し、個人消費が条件となる内需主導型経済発展の基盤が失われつつある。しかも支出に占める社会保険料と税金の割合の急上昇はますます消費支出を抑制し景気回復を遅らせるだろう。(2004/6/2
8:07)
◆地域経済動向・中小企業景況
内閣府地域経済動向調査(31日発表)
○北海道「やや弱含み」 公共投資依存度高く公共投資削減の影響、デジタル家電・電気機械・自動車の比率が低い、主要産業である観光の低迷
○東海「力強く回復」 自動車関連・電気機械の生産堅調
○中国「回復している」 個人消費の改善
○東北・北陸・近畿・四国「持ち直し」
○南関東・九州・沖縄「緩やかな回復」
*コメント 全体として地域間格差が増大している。電気機械・自動車など輸出関連産業が回復を牽引しているので、内需型産業構造への転換は進んでいないことに回復基調の本質がある。次記の中小企業景況調査にも連動している。海外生産の一層の拡大のなかでどう推移するか注目したい。
中小企業金融公庫・中小企業景況調査(31日発表 取引先900社対象、有効回答率68.4%)
○販売価格DI(上昇回答率-低下回答率) 0.7(前月比+3.4ポイント 91年9月以来12年8ヶ月ぶり)
○今後3ヶ月間の売り上げ見通しDI 15.8(00年ITバブル期に匹敵)
○利益額DI +4.0ポイント
公正取引委員会下請代金支払い遅延防止法運用状況調査(1日発表)
○遅延利息支払い命令額 1億2409万円(過去最高)
○親事業者違反行為数 1365件
うち支払い遅延392(45%)・長期手形184(21%)・代金減額134(15%)・購入強制53(6%)・早期決済51(6%)・買い叩き32(4%)・返品22(3%)・受領拒否8(1%)
(2004/6/1
8:46)
◆大型店出店で地域は活性化するか
福島県伊達町(人口1万1千人)への大手流通企業イオンの超大型ショッピングセンター「ジャスコ」出店計画が頓挫している。1999年にイオンが伊達町に開発基本構想を提案し、敷地面積26万平方b(東京ドーム5個半分)、スーパー・ホームセンター・レストラン・レジャー施設等の店舗総面積7万7千平方bで5千5百台の駐車場を設置する。想定商圏半径20kmで対象は福島市を含む周辺1市7町・30万人である。
頓挫の主要因は農地取得の失敗である。出店予定地地権者120人のうち10数人が店舗用地の賃貸借に同意していない。農地転用は、農地法による県の土地利用変更許可が必要だが地権者の契約不同意で県の許可が出ない。ここで共同体内の紛争が激化し、同意地権者が不同意地権者に対し執拗な同意強制や強迫的行為と嫌がらせが続発した(庭先にゴミを置く、田の水を抜く等)。コメ一反10万円しかないが、イオンに貸せば100万円になびく農家も出現する。先祖伝来の農地を耕して農業を続けてきた共同体農民の分断を生むことjによって地域コミュニテイーは破壊されようとしている。根底には地域活性化戦略の方法論の分岐がある。
(1)誘致外来型地域開発戦略→大規模店進出は大規模な雇用効果を生み、地権者の生活を保障して地域振興の条件をつくる
(2)内発型地域戦略→地産を中心にした地域づくりが地域振興の基本だ
ジャスコ出店による伊達町の影響を試算すると、2000店の関連商店の閉鎖とそれに伴う4000〜5000人の解雇・失業(山形県三川町ジャスコの影響結果による試算)が誘発されると推定される。地域中小商店の家族消費と地域調達による地域還元力にたいし、大手資本に吸収される利潤の大部分が東京本部へ吸収され、域外と海外投資へ振り向けられ、地域内再投資力による地域循環は衰弱し、地域商店街の存立条件は成り立たなくなって、農村共同体は破壊される。大型店は地域経済を吸い上げるブラックホールなのだ。
全国商店街18000カ所がこの10年で13000カ所に激減し、大型店売り場面積が全面積の60%を占めるにいたり、大手4社の店舗は夜11時以降の営業が70%にも及び、青少年非行の温床ともなっている。中小企業庁「商店街実態調査」(5月)では、全国3455商店街の96,6%が「停滞ないし衰退」し、空き店舗比率が7,3%に達している。1つの商店街(平均53店)に約4軒の空き店舗があるという数字だ。経済産業省商業統計では、99年ー02年の従業員1〜4人の小商店の全店舗面積が139万u減少し、従業員50人以上の大規模店舗面積は419万u増加した。小規模商店数は91年127万軒→94年114万軒→97年106万軒→02年90万軒と激減している。
欧米の大店規制はどうなっているか。
○フランス
フランス商業法は売場面積300平方b超店舗は事前許可制としている。@商店街の個々の需給状況、A当該地域内の大型・中型店の密集度、B商業と手工業への影響度、C多様な商業形態のバランスへの影響を審査員6人が審査し4人が賛成して許可される。
○ドイツ
ショッピングセンターと1200平方b以上の店舗は、原則として都市中心部と大型店専用特別地域のみ出店できる。小売店深夜営業原則禁止など厳格な規制を設けている。都市計画にによる用途地域規制はイギリスも同じ。
○アメリカ
連邦政府による規制ではなく、州・自治体が規制制限し、用途区分規制(バークレー市など)や環境保護法で厳しく規制している。ロサンゼルス市はウオルマート進出計画に規制をかける条例を可決した(8月18日)。売場面積1万平方b以上で、食料品が売場の10%以上を占める大型店の市内進出は、独立機関による地域経済への影響調査を義務づけてその費用を負担させ、市議会が調査結果を基に進出の是非を判断するというものだ。ウオルマート社(アーカンソー州)は従業員120万人(米国)、売上高28兆円を誇る世界最大のスーパーで日本のダイエーへの資本参加が浮上している。徹底的な低コスト、低賃金、労組禁止で、男女賃金差別による160万人の集団訴訟が提訴されている。米国第2の大都市で大型店出店にストップをかける画期的な条例だ。
最低日本では、生活環境の最適化という視点からの営業時間規制が求められる(仙台商工会議所の24時間営業規制基準制定意見書、堺市住宅地域営業時間規制条例など)。
郊外型大型店進出による中心市街地衰退に対する対応は2つの問題がある。第1は、出店の影響は当該自治体のみならず周辺自治体にも広範な影響を与えるが正規意見表明権は当該自治体にしか保障されないという大店立地法の問題であり、第2は土地利用に関する法律が細分化され総合的土地利用構想のプランニングに限界があるということだ。伊達町ジャスコ問題はこの2つの問題を突破しようとするモデルとなった。以下時系列的に経過を追跡してみよう。
1998年 福島県中心市街地活性化対策推進本部設置(代表 副知事)
まちづくり懇談会による県民各界意見聴取
2002年 中心市街地活性化報告書作成(総合的なまちづくりに向けた郊外型大型集客施設に対する県の調整システムの提案)
2004年 福島県広域まちづくり検討会提言(広域商圏を持つ大型施設の立地に対する県の調整)
@立地ビジョン(県が出店に対する構想を作成し、市町村が適正立地のためのゾーニング=土地用途規制を行う
A個別調整(県は出店計画概要と地域貢献についてのマニフェスト=宣言を含む出店届の提出を受け、関係市町村と住民に説明
を求め、立地適否の意見を事業者に通知し自主的対応を求める
この福島モデルは、県民の主体による包括的な広域ビジョンへの参加としての意味があり、さらに大型店出店に県が積極的に関与する点で注目される。立地ビジョンでは、県が大型店が望ましい地域とそうでない地域を示すという画期的な内容を含んでいるが、同時に該当市町村・住民との合意が不可欠であり県の大権に傾斜する危険もある。
しかし今回のジャスコ進出問題の皮肉な効果は、実は住民による主体的なまちづくりが創造的に展開していていく契機となったところろにある。1つは乗り合いタクシーシステムの普及である。保原町商工会はワゴン車2台と小型タクシー数台を運行し、予約制の相乗りで運賃200円(郊外は300円)の共同タクシーの運営を始めた。利用者は高齢者の通院と地元商店街が多く、玄関先から目的地の玄関先まで運ぶ。地域福祉と地元商店街活性化の重層的な効果を上げている。ジャスコ出店予定地の農業者は農業の環境保全機能を重視し、国産食料の保全と地産地消システムを追求しようとしている。商業ビル倒産に伴う入居事業者の2次破綻を防ぐために、商工会議所が県と市の補助を受けて新たなビルの賃貸を行い店舗を維持している。ジャスコ出店を契機として農業者と商業者の共同、生協と事業者との共同や市民連帯が進んだ。
実は超大型店出店問題は福島だけではない。イオンは今後3年間で全国10カ所の超大型巨艦店出店計画を立案している。その幾つかの実態を見る。イオンはJR苫小牧駅近くに店舗面積42、585u(延べ床面積81、000u)という北海道内最大規模のSCを来年3月に開店する。苫小牧市商店街は60年代から70年代にピークを迎え、それ以降生鮮商店・靴屋・紳士服店が姿を消し、商店街振興を立ち上げようとしている段階でイオンの直撃を受ける。深夜11時までの営業、3、550台の駐車場、400台の駐輪場を備えた大規模スーパーの攻勢に地元商店街は壊滅する。
大阪府泉南市へもイオンが進出し11月に開店する。大阪府は関空支援基地としてりんくうタウンを造成したが、多くの土地が売れ残りそこにイオンSCを誘致した。東京ドーム3個分の敷地(14万u)に店舗を展開する。泉南市は市内中心部から直結する総額65億円の道路整備をおこなった(泉南市負担38億円)。ところがそのなかには市長が株主である道路予定地企業への補償金30億円が含まれている。大阪府はりんくうタウンのイオンへの借地料を坪500円に設定した(市内賃借料の半分以下)。大型店出店による雇用効果と既存店倒産による失業+自治体財政赤字(泉南市500億円)を比較考量すると、その結論は明らかではないか。
他方で進む地域活性化の地道な取り組みに注目しなければならない。「ミニチャレンジショップ事業」(富山県 低家賃で空き店舗を貸し若者の創業支援)、弁当給食サービス(京都 高齢者の技能活性化)、瓶ビール消費運動(茅ヶ崎市)など地域商店と住民の共同などが進んでいる。
京都市の小売商業調整特別措置法(商調法)を活用した取り組み。京都市内は、大型店の出店規制緩和により、伊勢丹・ダイエー・イトーヨーカ堂・ジャスコ等の全国スーパー大手が出店し、イオンが市中心部に店舗面積22000uの超大型店を開店し、コジマ・ヤマダ等の家電量販店の進出が相次いだ。京都市内に碁盤の目のようにあった町筋商店街は閉鎖店が相次いで00年以降5つの商店街振興組合が解散した。政府は大規模小売店舗立地法(大店立地法 00年)制定時に、地方自治体が「需要と供給の関係を考慮」する独自施策を禁止すると定め(13条)、大店立地に対する地方の規制権限を排除した。しかし商調法は、大企業と中小企業間の紛争について、自治体が調停・斡旋するするものであり、大店立地法の需給調整にはあたらない。商調法は、59年に大企業の購買会事業や小売市場の調整法として制定され、中小小売商団体やその構成員が著しく悪影響を受ける場合に、大企業事業の調査・開始時期繰り下げ・規模縮小に関する調整・斡旋・勧告を知事に求めることができる。同法の出店基底は、大店法が優先されて死文化していたが、大店法廃止によって復活したことになる。京都府電気商業組合(770社)はこの商調法による調停・斡旋を申請する。
さて崩壊する地域商店街再生の戦略を考えよう。
(1)欧米型出店規制への転換 スイス、仏、伊、ベルギー、独、英、米の大型店出店の許可制・中小商店への配慮規定・環境街作り規定・深夜営業禁止規定を全て盛り込んでいるが(米のみ深夜規制なし)、日本のみが出店届出制で、中小商店の配慮規定と深夜規制がない無秩序出店となっている。
(2)地方自治体の商業集積決定権、出店調整権、まちづくりアセスメント制、地域支障の原則禁止、出店地誘導制、事前協議制、不公正取引規制
(3)地域商店街のライフライン機能、文化防災機能、ものづくり集積機能、地域経済循環機能の総合的発展など(2004/6/1
8:29)
名古屋市の繁華街・栄にあるダイエー栄店の24時間営業計画に対して、名古屋市130の商店街でつくる名古屋市商店街振興組合連合会が反対しているなか、地元のプリンセス大通り商店街協同組合と住吉通り商店街振興組合が賛成の意見書を市長に提出した。県全体に24時間営業が拡大することを恐れる名商漣と地元活性化を優先する商店街の矛盾である。大店立地法では自治体への届け出だけで営業時間の変更が可能だが、ダイエーは名古屋市の要請を受けて説明会を開く。ダイエーは総合スーパー(GMS)を閉鎖し、食品スーパーに再編する経営再建計画を打ち出している。地元商店街が恐れるのは、24時間営業の挫折によるダイエー本体の撤退である。栄地区は名古屋市最大の繁華街であり、終夜煌々と電飾される地域である。ダイエーの24時間営業は、栄地区に限定すれば一定の相乗効果があるだろう。しかしこれが地域を越えて他に波及すれば、中小商店は壊滅し、大型店のみ生き残って商店街は衰滅することは明らかだ。(2004/8/4
19:16追加)
壊される街を再生し新たな発展を目指す地域の政策プログラムとして、まちづくり条例制定運動が進んでいる。以下は日本商工会議所・まちづくり条例研究センター「2000年度全国まちづくり条例調査結果」から。
まちづくり条例制定自治体数 504市町村
まちづくり要項制定自治体数 478市町村
まちづくり条例・要項ともに制定自治体数 221市町村
まちづくり条例・要項いずれか制定自治体数 全国市町村の25%
(条例内容)
単なる理念条例 40%
開発の具体的な誘導基底を持つもの 60%
(規制内容 525条例)
届け出義務規定(手続き設定)54,9%
環境アセスメント 13,9%
ゾーンニング(土地用途指定) 19,2%
その他 12,0%
(事例)
○穂高町まちづくり条例(長野県南安曇郡)
アルプス源流の河川、わさび田の良好な環境と農業が、急激な人口増とミニ開発によって農業振興地域の虫食い的市街化で喪われるという危機感から、住民アンケートを経た土地利用構想を策定し、土地利用整備基本計画(1998年)・まちづくり条例(1999年)制定。土地利用ゾーンごとの許容用途提示と連携した宅地開発等指導要綱・自然保護等指導基準を規定し、住民と行政の協議によるまちづくり推進、業者の地域住民説明会義務づけ協議制などを規定。
○湯布院・潤いのある町づくり条例(大分県大分県湯布院町)
1000m級の山あいにある湯治場を持つ温泉。50年代のダム建設反対運動以来自治意識高揚。湿原地域へのゴルフ場建設・外部資本による原野買い占め・日出生台米軍演習などに反対する住民主導型観光振興をめざし、1990年町づくり条例制定。町長の責務として、開発に対する住民の生活環境保全義務規定。自然環境・魅力ある景観・生活環境をかけがえのない資産とする理念。地区計画に開発事業を適合させる、保存が必要な地区の開発は原則抑制、事前の環境調査・町との協議・住民説明会と協議義務、立入調査権など規定。
自治体による開発規制は、1960年代・高度成長期「開発指導要綱」(行政指導基準)→1980年代・要項制定に対する政府の緩和政策に対抗する「まちづくり条例」制定→1990年代・バブル崩壊後の郊外産廃、遊戯施設、風俗店、住宅開発の乱立に対抗する条例制定本格化→2000年代・住民主権による条例制定権運動と展開してきた。土地利用決定権を把握する政府主導型開発促進政策に対する住民主導型環境保全+内発型地域政策の対抗関係がある。(2004/8/5
9:19追加)
では今最も熱く燃えていると云われる京都・西新道錦会商店街(西新道商店街)の熾烈な生き残り戦略をみてみよう。同商店街は南ー北、東ー西の各筋合わせた500mの通りに、鮮魚、野菜、青果、精肉、鶏肉、総菜、米穀など食品中心に120店が並ぶ。京都の繁華街と云われる四条河原町のような中心街でもなく、京の台所といわれる錦市場のような広域集客型の商店街でもない。近隣の住民が毎日の食材を毎日買いに来る地域型・近隣型商店街の典型である。かっては友禅の型染め職人が働き、住む町で、市内で最も人口密度が高く、高齢者の多い地域だ。午前10時半を回った昼食準備の時間になると、友禅職人の昼食準備のために買い物をするという昔からの習慣が定着しているから、目当ての食材がなくならないうちに一斉に買い物に出るというパターンだ。12000世帯(4万人)が居住する半径1,2kmがこの商店街に死命を決する商圏であり、この地域のニーズに添うなかでしか生き残りはない。
@地域行事を企画する:8月1日は年に1度の夏祭り・夜店が並ぶ。温かみがある昔ながらの家庭的な雰囲気の祭りが、商店街への親しみを生み、地域の繋がりを実感させる。かっての祭りの伝統を商店街が主体となって引き継ぎ、即効的な利益ではなく長いスパンでの地域活性化につなげる。8月末には堀子川のゴミを清掃し、子ども魚つかみ取り大会など四季に応じた行事企画で地域を盛り上げる。
A販促事業:時節セール、月3〜4回の宣伝チラシ、ファックスネット(高齢者が自宅から買い物の注文ができる)、空き店舗を改造したホールでの高齢者昼食会、法律相談、学生インターンシップ、中高修学旅行生の商店街体験(半日店員)、最も有名なのがエプロンカードというプリペイドの買い物カード。40項目以上の販促事業を実施している。
エプロンカードは、財布代わりに買い物ができ、小銭を扱う必要がない簡便性を実現している。1万円の前払いで400円のポイントが付き主婦層に人気がある。このカードは1988年に商店街振興組合が商店街事業として健闘を開始し、当初は大手メーカーはすべて門前払いしたが、90年の中小企業庁「中小企業小売カード化推進事業」の応募し認定を獲得、92年に日本初の多機能電子マネーとして使用が始まった。カード内部に組み込んだICチップに消費額・残金情報が記録され、小売店は専用端末機を通して決済する。プリペイド、ポイント管理、掛け売り、家計簿サービス等の多機能生を持ち、TVでの商品情報検索もできる。現在カード発行枚数は4000枚、年間発行額3億円に上っている。その後経済産業省の事業補助を受け、システムの更新を続け、今や北海道・長野・神奈川など全国10カ所の商店街に拡大した。エプロンカードは、導入当初店の売り上げを10%引き上げ、大型店進出による消費者離れを食い止める重要な方法となっている。
1999年に始めた始めた給食弁当は、商店街と地域の精神障害者施設「朱雀工房」が協力して実施する高齢者昼食会だ。現在の注文数は40食で半分は宅配、半分は商店街ホールでの会食、高齢者向けの工夫されたメニューで代金600円。食材は商店街が提供し弁当づくりと配膳は施設が担当する。
B対大型店対策
京都市内の売場面積500平方メートル超店の合計面積が市内全小売業売場面積に占める割合は、1985年29,8%→2002年43,0%に拡大し、1ー4人の小規模小売店数は19000店→13000店へ6000店(32,6%)に減少した。4年3月に南西800mにイオン資本によるダイヤモンド・シテイ・ハナ(店舗面積2200平方b)が出店し、西新町商圏のすべてが商圏に入った。南東500mにはJTが12000平方bの大型食品スーパーが出店する。若者のニーズや雨天時や暑い日には大型店に行く消費者も増えた。振興組合は商調法(小売商業調整特別措置法)による調整を京都府に申請する。出店予定スーパーは生鮮4品目(野菜・肉・魚・鶏肉)や日用必需品に強く商店街への影響は大きい。開業予定日、取扱品目、予想商圏の詳細な内容を調査するよう申請する。
最大の対抗軸は就学前ののこどもを持つ若い子育て世代の獲得競争だ。ハナは、子ども服専門のキッズフロアやゲームコーナー、幼児用乗り物、親子で遊べるコーナーを設け、30歳代が遊びながら買い物する店舗構成になっている。商店街は「京の商店街チャレンジ21」事業を立ち上げ(京都府後援・補助)、エプロンカードの高機能化(エコマネー化)や子育て女性へのホール開放、女性の商店街への参加をカードポイントと結びつけるなど新たな潜在ニーズ掘り起こしに挑戦する。
もう一つが高齢者ニーズへの対応だ。商圏内にある朱雀第7小学校区と第3小学校区の65歳以上高齢者比率は23%・21%であり、京都市「京都市商業ビジョン2004」は、高齢者が安心して暮らせる地域商業の重要性を指摘している。
総務省・行政評価監視報告(9月15日)は、中心市街地活性化政策の効果が発揮されていないとした。実施前よりも歩行者量が減り、空洞化がより進んでいるとして、事業効果見込みの厳正な審査と補充金分配の見直しを勧告した。中心市街地活性化法による基本計画を策定した593市町村のうち138市町村を調査、大半の市町で中心市街地の人口・商店数・年間売上高全てが減少、特に「マルチメデイア街中にぎわい創出事業は通行量が減少するなど効果がない。(2004/9/16追加)
◆中国経営管理学会第5回研究大会(於 京都大学100周年記念時計台記念館 5月29〜30日)
第1日 基調講演 小池俊二「日本企業から見た躍進する中国経済」
共通論題 杉本孝「中国鉄鋼業の経営メカニズムの新たな変化」
大原盛樹「中国地場オートバイ産業の海外進出と日系企業の対応」
伊達浩憲「中国自動車産業における製造技術とマネイジメント」
第2日 分科会 ここで私は「農産物3品目をめぐるセーフガード発動の経済効果」について報告した。
*コメント:小池氏はサンリット産業社長で、自社の中国進出の成功的な側面について主として語り、日本繊維産業の衰退状況を指摘していたが、再構築の戦略については技術高度化とデザインを含む製品差別化というものであり、それがなぜ沈滞しているのか突っ込んだ考察はなかった。私の報告は、単なる比較優位論では処理できない限界市場財としての農産物の特殊性を強調したが、討論者と会場の中国学者からの反応はあまりなかった。学会の性格が違っているのかも知れない。
全体を通して、WTO加盟後の中国が生産システムから会社経営管理、会計制度を含めて、国際基準に適合させようと必死の制度改革をやっていることがうかがえた。そのなかで社会主義市場経済とは何なのか、企業の経営組織に占める党幹部の比率から分析した中国人留学生の報告はユニークで精緻な統計的方法を駆使して印象に残った、中国人留学生の水準の高さを感じた。21世紀が中国の時代だという実感がアカデミズムからも伝わってくる。京大の雰囲気は、活気に満ちて自由な雰囲気が漂っていた。久しぶりに立て看を見て、学生が集まっているのをみた。東大本郷は立て看一つなく、校内もひっそりと落ち着いているのと較べて面白かった。教養と院まで同じキャンパスにある京大と、本郷・駒場に分離している東大の違いだろうか。(2004/5/30
17:50)
◆世界は飢えている
○世界貧困会議(世界銀行主催 上海26〜27日)から。
中国:農村部人口9億人のうち2900万人が貧困層(1人当たり年間所得625元=8500円以下)であり、基準を825元(11300円)以下では9000万人で都市部2000万人を含めて1、1億人である。80年代からの貧困対策により2億人の貧困層を解消した。
○国連貿易開発会議(UNCTAD)『後発途上国報告2004』から。
後発途上国GDPは00−02年+4.9%上昇、1人当たり実質GDPは+2.6%上昇し、途上国全体GDPの+1.8%上昇の中でも有意味な上昇がある。この要因は、
@ODA(政府開発援助)とFDI(外国直接投資)の増大
A援助提供国が後発途上国に国際援助を集中(02年のODAの28%)
しかし後発途上国の絶対格差は拡大している
@乳幼児死亡率(100人に対する) 途上国全体7人・OECD国1人未満・後発途上国16人であり、ミレニアム開発目標(15年までに死亡率を2/3に削減する)を達成する見込みがあるのは統計可能な48ヶ国中11ヶ国に過ぎない
A妊産婦死亡率(出生10万人に対する) 途上国全体463人・OECD12人・後発途上国1000人
B栄養不足人口比 途上国全体18%・後発途上国38%
後発途上国の絶対水準が上向かない要因は
@対外債務の上昇
A輸出産品価格の下落(例:タンザニアのコーヒーなど)
B世界人口比11%の後発途上国のエイズ死亡は世界の37%を占める
C後発途上国の60%が90〜01年に内戦を経験している (2004/5/28
8:54)
*後発途上国とは、国連開発政策委員会の基準で国連総会が認定した特に開発が遅れた途上国50ヶ国をさす
○国連食糧農業機関(FAO)定期報告「食料収穫量と不足」(5月発表)
アフリカ24ヶ国を含む35ヶ国で深刻な飢餓が発生(原因は干ばつ、紛争、エイズなど)。スーダン西部ダルフール州内戦で100万人以上の国内避難民の飢餓が発生。北と西アフリカでバッタによる被害に有効な対策がない、南部アフリカのザンビア・アンゴラ・ナミビア・ボツアナでは豪雨による河川氾濫、ジンバブエでは食料生産が100万トン不足。慢性的食糧不足の北朝鮮では、今年4月に60万人しか完全な配給を受けれず今後6ヶ月間に12万3千トンの援助が必要、スリランカでは干ばつで今年の米生産が-18%となった。ハイチでは内戦で一時支援が不安定となり、隣国ドミニカ共和国含めてで豪雨による洪水被害が広がっている。中米ではコーヒー価格の下落で産地農村が飢餓となっている。EUは穀物増産が続くが、ウクライナでは霜被害があり、米国・カナダ・オウストラリアでは穀物収穫の減少が予測される。(2004/5/29)
◆21世紀の地域経済を考える視点(1ー中国経済との連関)
大西広(京大)「環太平洋長期計量経済モデル」によれば、2030年前後に中国GDPは世界の40%を占めるに到る(現在3〜4%)。日本の円は25年で3倍化したので、中国人民元も3倍化すると仮定する。GDPが年率7%で成長すると仮定すると、10年間で2倍、20年間で4倍、30年間で8倍となる。すると8×3=24倍で実に40&を超える。中国が世界GDPの40%を占める地球をどう予測できるだろうか。幾つかの問題を列挙してみよう。
@世界のハード・カレンシー(基軸通貨)は、人民元・ユーロ・ドル3基軸となるだろう。
A米国のドル特権は崩壊し、ドルが暴落した場合の中国への逆影響はどうなるか。アメリカの過剰輸入の寄生的循環が崩壊したときに、中国の成長はあり得るか。中国の成長は対米輸出に依存している構造はどうなるか。米国市場に代わる海外市場はあり得るか。
B中国の高度成長は地球環境にどのような影響をもたらすか(二酸化炭素排出量、水と食糧問題など)。中国の経済成長路線と世界環境保全との両立は可能か。
C斜陽国家米国の危機の外部への転嫁がより進む。新自由主義型グローバリゼーション→帝国主義型グローバリゼーション→ファッシズム型グローバリゼーション
D帝国に対抗する「赤(社会主義)と緑(エコロジスト)の同盟」、脱市場型社会の探求(第3の道)、分権と参加型民主主義、反グロバリゼーション運動(もう一つの世界は可能だ)、東アジア共同体構想の現実化
E中国の脱社会主義と中華帝国型発展の可能性
F米国一極支配モデルの崩壊と新しい世界秩序の形成
結論的に言えば、米国が衰弱して新たな世界形成に向かう激動の時代が21世紀前半であろう。その時にわたしの人生の幕も閉じるだろう。しかし日本の地域経済も中国経済との連関の中で進展していくことは間違いない。(2004/5/28
00:14)
◆民主党の農家所得補償案
民主党「農林漁業再生プラン」(26日発表)の概要は以下の通り。
従来型補助金政策から所得補償政策(経営安定化資金を直接農家に支払う直接支払い制度)への転換が基本。コメなど穀物と飼料の生産農家に年間総額1兆円の所得補償により将来食糧自給率を40%→60%へひきあげる。直接支払いの対象は、コメ・麦・大豆・雑穀(ソバなど)・菜種・飼料作物6品目で、専業・兼業に係わらず農家に一定の所得を保障することで安定的な農業経営を実現する。補助金制度は「施設・機械購入を対象とし農家所得にはつながらない」とし、欧米型直接支払制度を導入する。
市場価格安定のための減反は廃止し、直接支払い6品目は国が品目ごとに総生産量目標と都道府県との割り当てを決め、さらに市町村が地域別割り当てを行い、一定の生産量を確保する。試算では対象農家延べ230万戸で、15haの農地でコメ・麦・大豆をそれぞれ5haずつ生産する農家は年間600万円、2haでコメ・麦・大豆・菜種を0.5haずつ生産する農家は年間80万円が支給される。
農水省「農政改革の基本方向について」(24日発表)でも直接支払制度導入を検討しているが、対象は大規模農家40万戸であり民主党案は6倍に上る。ただし民主党案では1兆円の財源と外国産農産物輸入に対する政策は判然としない。民主党の農林漁業再生プランを検討してみよう。
@コメの安定供給政府責任が明確でなく、市場原理に委ねる輸入自由化に対するスタンスが不明確だ。備蓄米買入価格制度を存続するのか、米価下落対策・転作補助金は存続するのか、政府の大規模経営戦略(現在の170万稲作農家→8万農家へ再編=北海道10ha・その他4ha以上)を評価するのかなどが不明確である。
A農林水産関係公共事業費・農業関連公益法人への補助金と委託費の再検討をどうするのか
B複合経営・兼業などの家族経営や法人化共同事業支援、集落による交錯受委託と生産組織支援による耕作地法規拡大阻止政策はあるのか
C地産地消と地域農産物による食品加工事業支援
D農業の多面的機能を評価する中山間地直接支払制度の平場地への拡充
E株式会社による農地取得への制限規定はあるか
基本的には食料主権と食糧安保を基調とするWTO交渉に臨む基本的態度にある。現在進行中のFTA(2国間貿易自由化協定)とEPA(経済連携協定)を無条件に支持するのか、自由貿易推進のための農産物輸入自由化に転落する危険をどうするか。
F森林の多面的機能を維持する除伐・間伐の治山治水、木材価格暴落を阻止する造林経費控除の経費全額引き上げ、地元公共事業の国際材優先、バイオマス発電に関する政策提案はあるか
G食用水産物自給率50%への激減、海洋資源枯渇を阻止する政府価格安定対策はあるか。休漁・減船補償や青年漁業者支援制度、水産予算の公共事業偏重、大型空港と米軍基地拡充による海洋破壊に対する政策はあるか・・・・等々の課題が指摘されよう。(2004/5/27
18:20)
◆WTO(世界貿易機関)農業交渉
WTOに加盟している148ヶ国・地域(うち途上国100ヶ国)は、食料純輸入国10ヶ国(スイス・ノルウエー・日本など)は「G10」グループを形成し、有力途上国(ブラジル、インド)などは「G20」グループ、EU、米国などそれぞれの主張を展開して、05年1月に一括妥結する。上限関税方式(関税率に上限を設けすべての農産物の関税率をそれ以下に引き下げる)に例外品目を認めるかどうかが日本の焦点である。00年の日本の高関税農産物は次の通りである。
コメ490% 小麦210% 小麦粉90% 大麦190% 脱脂粉乳200% バター330% でんぷん290% 雑豆460% 落花生500% コンヤク芋990% 生糸190% 砂糖270% 獣肉50%
農業交渉の主要3テーマでの日本の対応は以下の通り。
@輸出補助金削減
輸出補助金の撤廃。*G10諸国との摩擦を生む。
A国内助成見直し
農産物の生産と輸出への支援政策削減。生産調整助成(93年度ウルガイラウンド合意で対象外)は予算額の上限設定の規律強化を行う。*価格支持政策をとる米国には打撃となる。
B関税引き下げ方式
全品目平均引き下げ率設定方式またはその他の別方式何れにせよ、関税上限設定には反対し、重要品目(コメなど)を対象外とする。途上国からの輸入品に対する特恵関税は確保する。コメのミニマムアクセス(MA)のような低関税輸入枠は途上国農産物のみの別枠制とする。
一方WTOを批判する東アジア&東南アジア貿易キャンペーン戦略会議(バンコク 4月26日)は、グローバリゼーションと民営化に反対し特にWTO農業交渉を阻止するポジション・ステイトメントを発表した。その農業・漁業分野の内容は次のようになっている。
[農漁業]
@農漁業の輸出志向モデルは農漁民の生活を向上させていない。このモデルは深刻な飢えをもたらし、農漁村コミュニテイーを窮乏化させ破壊している。
A私たちは引き続き農漁業からWTOを排除するキャンペーンを行う。
B私たちは農漁民、特に零細農漁民の生活を守る権利を各国に要求する。
C私たちはダンピングの即自終了、ダンピングをもたらす先進国の国内輸出支援システムの廃止を要求する
D私たちは新自由主義的農漁業政策に対するオルタナテイブとしての食物主権を主張する
[G20諸国]
@G20諸国はWTO内異議申し立て勢力であるが、アグリビジネスによる零細農民と持続可能な農業の破壊に対するあいまいな態度は認めない。
AG20諸国が農業自由化に関するあいまいなアジェンデに固執すれば、G20は途上国のオルタナテイブの歴史的機会を逸する。
[民営化]
@土地・水・森林・種子・漁場などの天然資源の民営化を認めない。それは生活と世襲財産を奪い、生態系を破壊する。
[自由貿易協定FTA]
@FTAは新自由主義的なアジェンダを推進する手段であり、WTO協定に先行して推進される自由化プロセスの強化である。
さてWTO農業交渉の実質的主導権は、米・EU・ブラジル・インドのG5である。しかし対極にG20がある。G20とは何か。03年でのカンクン第5回WTO閣僚会議が流会した背景にG20と呼ばれる新たな途上国ループの誕生があった。G20の由来は、03年のジュネーブWTO準備交渉で誕生したあだ名である。当初はブラジル、インド、中国、南アなどメジャーな途上国が参加し、カンクン会議で新たにインドネシア、ナイジェリアが加わってG20プラスと称せられたが、米国の圧力によりエルサルバドル、ペルー、グアテマラ、コロンビアが脱落し、当初の4ヶ国中心にG4プラスと呼ばれることもある。G20は結成以来WTO農業交渉で@先進国農産物市場開放A先進国農産物輸出補助金撤廃B事実上の輸出補助金である先進国農業支援政策廃止を主張してきた。G20の出現で米国とEUが主導するWTOの南北力関係は変容し、先進国に対する途上国側の組織的抵抗に発展した。1970年代に新国際経済秩序(1974年)や天然資源の恒久主権と多国籍企業の活動規制などを主導したのは、G77と呼ばれるアルジェリア、タンザニアというアフリカ勢であったが、その後米国・EUに立ち向かうのは3大陸にまたがった農業大国となった。
途上国農業は破綻に瀕し、農産物市場価格は劇的に低落した原因は、先進国は巨額の輸出補助金と国内補助金にあると主張する。途上国農民はVia
Campesinaのように国境を越えた連帯を示し、G20をWTO交渉を批判する勢力として戦術的・短期的には支持するが、長期的にはアグリビジネスの利益を巧妙に代表していると批判している。Via
CampecinaはWTO農業交渉自体をアジェンダから切り離すよう主張しているが、これは多くのNGOと一致する主張である。米国とEUはG20の分裂を図って中南米諸国を脱落させたが、G20の根幹はゆらいでいない。
さてWTOの外では、G4中心の南ー南協力が推進されている。@IBSA(インド、ブラジル、南アの3国)が3極委員会を結成し、ニューデリー活動計画を採択し、07年までの貿易額を年間100万$に倍増する戦略的提携を推進している。Aインド、西アフリカ8ヶ国で「TEAMー9」会議を開き、インドが西アフリカ8ヶ国に対し5億$の借款と技術援助を約束し、BIBSAはUNDP内に「貧困と飢餓のための信託基金」を設立しCインドとブラジルを含むMERCOSUR間特恵貿易条約を締結した。G20の出現は、WTO内の南北対決と、途上国が主導する南ー南協力の新たなオルタナテイブを生み出している。
例えばブラジルは米国綿花生産者補助金制度はWTO協定違反として提訴したが、WTO紛争処理小委員会(パネル)はブラジルの主張を認め当事国に通知した(18日)。はじめて先進国の補助金が途上国の農産物輸出を妨害しているとするWTO裁定は今後に重大な影響を与える(米国はWTO上級委員会に提訴)。
*WTO交渉経過
2001年11月 新ラウンド交渉開始決定(ドーハ閣僚会議)
2002年 2月 7分野交渉グループ設置(農業・非農産品・紛争解決・サービス・アンチダンピング・知的所有権・環境)その他新分
野(投資ルール)など決定。紛争解決は一括妥結の枠外へ移行。
2003年 9月 カンクン閣僚会議決裂
2004年 5月 WTOパリ非公式閣僚会合
7月 農業の枠組み合意一般理事会
2005年 1月 香港閣僚会議(一括妥結)
(2004/5/27
8:53)
◆企業内個人紛争の現状と労災認定から働き方が見えてくる
労働者健康福祉機構「心の電話相談」統計から(03年度全国21労災病院で実施)。
○相談件数 12920件(前年度比+56%)
○相談内容 上司との関係1211件 仕事の質的負荷610件(前年度の2,4倍) 社内いじめ401件
○ストレス内容 落ち着けない イライラ不安定 自殺をせざるを得ないと思う(414件!)
厚生労働省「03年度個別労働紛争解決制度施行状況」(地方労働局・主要労基署・総合労働相談コーナー(300)の集計)は、企業内での個人紛争の実態の一部を浮かび上がらせる。
○総合労働相談件数 734257件(前年度比+17.4%)
○民事上個別労働紛争相談件数 140822件(前年度比+36.5%)
うち解雇 29.8%
労働条件引き下げ 15.8%
いじめ・いやがらせ 7.4%
退職勧奨 6.8%
出向・配置転換 3.4%
セクハラ 1.9%
女性労働問題 1.1%
募集・採用 1.4%
雇用管理など 1.2%
その他労働条件 18.6%
その他 12.5%
厚生労働省調査で、精神疾患に係わる03年度労災認定状況が明らかとなった。
○精神障害認定数 108人(前年度比+8人)
専門技術職(システムエンジニア・設計士)28人(前年比+7人)
技能職(製造工など) 24人(前年度比+13人)
販売職
10人(前年度比+6人)
○過労による脳・心臓疾患過労死認定数 157人(前年度比-3人)
請求数(死に至らない件数も含む)
705人(前年度比-13.9%)
認定数(同上) 312人(前年度比-1.6%)
○精神障害労災請求数
438人(前年度比+97人・28.4%)
うち自殺企画者数 請求者121人・認定者40人
以上の2つのデータからうかがえることは、雇用と労働が一段と厳しくなる中で、職場内紛争が増大し、職場でのストレスの強度が高まっていることだ。労働紛争の嫌がらせでは、「仕事が向いていないからやめろ」「(他の社員の前で体重測定され)デブ(と言われる)」とか雑巾で顔をはたかれる等の暴力を受けているとか、解雇対象の人選の不明朗性などがある。脳・心臓疾患労災は99年以降急増し02年でピークに達し03年は微減であるが依然として高水準であり、精神障害は一貫して上昇傾向にある。申請と認定数のデータの裏に膨大な数が存在していることが予測される。この数字の裏に潜む悲惨に対する想像力なしに統計を見る意味はない。(2004/5/26
8:41)
◆自営業の現代化
独立してチャレンジしようする自営精神に充ちたベンチャー的な自営業は社会の活性化の源泉である。自営業の類型を幾つかに整理する。
@プレ工業化自営業:工業化の前段階に小農の自営業的活動が展開され、江戸期の農民のかなりが自立耕作と機織りや行商を活発に行い、こうした小農経済が来たるべき資本主義的工業化のエートスを準備した。明治期産業革命は自営を含む在来産業を基盤としながら遂行された。近代化を阻害する前近代的遺物と見なした今までの見解は大きく修正された。
A街頭ビジネス:途上国の都市に見られる屋台、人力車、路上理髪業など多用なビジネスであり、インフォーマルセクター(ILO)と呼ばれる貧困メカニズムが生み出した生存維持の活動を言う。途上国の内発的発展との関連でその意義が再評価されている。
B情報社会型自営業:SOHO等とも云われる個人の自営業であり、家族の協働を必要とせず、成熟した契約ビジネスの可能性を持つが、一方ではアウトソーシングの受け皿として不安定就業の実態もある。欧米先進国での自営業者数増大の要因となっている。
日本の自営業者数は一貫して減少傾向にある。農業自営業主600万人→現在100万人、非農業自営業主(サービス、製造)700万人→500万人と激減している。その主な要因は、第1に家族総動員の伝統的自営業形態への忌避、第2に大型店と大規模経営によって赤族経営の営業基盤が衰弱したからである。問題はSOHO型自営業が日本で伸張し、自営業者数を回復させるかどうかであるが、その根底には生き生きとしたベンチャー的な個人精神が成熟するか否かにある。自己選択・自己決定戦略の強化と裏腹に世を覆いつつある集団主義の心情はこうした自営業の精神を衰弱させているのではないか。そこで注目されているのがNPO活動である。
『04年度国民生活白書』は「新しい公共」と題して、住民主体の地域活動の意義を強調し、個人でも自治体でも解決できない領域(高齢者・子育て・環境保護・町づくりなど)を評価している。既成企業も提供できない暮らしのニーズに果敢にとりくむNPOや地域通貨運動などが注目される。ただし自治体財政危機の打開として民営化の手段として扱えばそれはほんらいのNPOではない。NPOを含むコミュニテイ・ビジネスが今後の地域再生の担い手の重要な部分となるだろう。以上朝日新聞5月21日付夕刊参照。(2004/5/27
13:26)
◆「地域再生推進戦略」は地域を再生するか
政府・地域再生本部は「地域再生推進戦略」を27日に決定し6月の「骨太の方針」に入れる。その概要は以下の通り。
1)「地域再生推進プログラム」の拡充(地方にできることは地方に)
2)補助金統合・簡素化(補助対象が建物・施設ごとに分かれている現在の制度を、事業全体を対象とする8分野にして自治体の資金配分の独自判断を認める)。統合は次の通り。
@育児 保育所・児童クラブ(厚労省)と地域こども教室(文科省)
A商店街 中小企業活性化総合補助、IT活用型経営革新モデルなど20補助(経産省)
B廃水処理 下水道(国交省)、集落排水(農水省)、合併処理浄化槽(環境省)
CIT 公的機関の高速回線(総務省、農水省)
D産学連携 産学共同研究(文科省、経産省)
E道路整備 街路・地方道(国交省)、農道・林道(農水省)
F福祉施設 要介護・虚弱高齢者対象別施設を混在型効率整備
G森林 保水・共生・資源循環3機能分類を統合
3)地域起こしNPOへの人件費補助による担い手の多様化
4)民間ノウハウを活用する事務経費削減に、地方交付税交付金の配分が減らないようにする
補助金統合は自治体の事業裁量権を拡大するが、配分権が中央政府にあり財源移譲・権限移譲を回避する結果になるという不安がいわゆる改革派自治体にはある。参院選に向けたトレーダー政策の色彩もある。「これは地方の自立にはつながらない。断固反対だ。ただ制度ができればもらいにいってしまう。そこが悲しい。罪深い制度だ」(浅野宮城県知事)。地方三位一体改革の具体化であるが、その結果地方はどうなるだろうか。
@地方交付税は、格差がある全国どこでも福祉・教育の一定水準のサービスを保障するために、政府が地方財源を保障する制度であるが、04年度予算では交付税とその振り替えである臨時財政対策債と合わせて2,9兆円(前年度比-12%)が削減され、実質的に制度の趣旨は崩壊しつつある。
A国庫補助負担金は、生活保護・社会保障・義務教育などほんらい政府責任事業を地方へ委託している事業への負担制度であるが、04年度予算で1兆円削減され06年度までにさらに3兆円削減の方針だ。
B3兆円財源移譲は、06年度までに所得税から個人住民税へ税源移譲を実施することによっておこなうが、その条件として国庫補助金負担の改革を前提としている。つまり地方財政崩壊のうえに地方分権をおこなうということを云っているに過ぎない。
(2004/5/27
12:44)
厚生労働省の地域雇用創出政策として、地盤産業振興による雇用拡大を図る市町村支援事業第2弾として、26市町村8事業・総額2億5千万円が援助される。第1弾4月70市町村18事業7億2千万円、第3弾は7月23日まで募集。第2弾の中の幾つかの例。
○島根県海土町 サザエ・カキなどの海産物で新たな地場産品を開発・販売する
佐賀県伊万里市他7市町村 伊万里焼や有田焼の陶磁器による地域振興
熊本市他13市町村 半導体関連産業のすそや拡大と技術高度化
◆聖域なき構造改革(「痛みを恐れず既得権益の壁にひるまず過去の経験に捕らわれず」)の現状
○日米地位協定第24条「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴う全ての経費は、日本国に負担をかけず合衆国が負担する」
○在日米軍駐留経費負担 2441億円(米軍家族住宅建設費・基地拡張費など一般歳出比0.51%)
*中小企業対策費 1738億円(0.36%)
○法人税基本税率 40%→30%引き下げ(131兆円税収減 90年から14年間で)
○企業減税 1兆3000億円(3年間 研究開発費・設備投資・登録免許税など)
○消費税 3%→5%引き上げ(136兆円税収増 89年から15年間で)
○地方税財政の三位一体改革
@国庫補助負担金の廃止・縮小 義務教育費国庫負担金の退職・児童手当分2309億円、公立保育所運営費1661億円削減
A地方交付税の縮小 04年度3兆円削減
B地方への財源移譲
*政府基礎的財政収支 [(国債費=返済額)ー(公債金収入=借金額)]=-19.0
こうした「小さな政府」による市場原理型国家社会システムは新自由主義イデオロギーを基盤としている。シカゴ大学フリードマン学派が源流であり、その最初の実践がレーガノミックス(その後サッチャーイズム→中曽根イズム)であった。その政策と結果の概要は以下の通りである。
[政策]@小さな政府 社会保障削減→財政均衡
Aサプライサイド経済学 企業・高所得者減税→勤労意欲増大→総税収増大→貯蓄・投資増大→生産性向上
B規制緩和推進 自由で意欲的経済活動活性化 金融引き締め
[結果]@減税→総税収減少
A歳出→国防費増額
B景気拡大→財政赤字→高金利→貿易赤字→債務国転落<双子の赤字>
ブッシュ・ブレア・小泉政府も基本的にこの路線を継承し徹底し、大型減税+軍事費増大→景気刺激→双子の赤字激化のラットレースを展開しているが、遠からずドル暴落による世界経済の破局に直面するだろう。 (2004/5/20 9:07)
◆日本経済は内需中心に比較的順調に推移している(竹中平蔵)か?
内閣府発表の04年1−3月期国内総生産(GDP)統計速報値が名目で前期比+0.8%(年率換算+3.2%)となり、実質では+1.4%(+5.6%)となった。家計支出を含む民間需要(名目ベース 価格変動を反映した指数で物価下落時には実質より実態に近い)はプラス1.0%になっが、雇用者報酬前期比-1.4%である。つまり収入は減っているのに支出が増えたのだ。3月失業率が5%を切ったことや、株価上昇の心理的影響、低金利下の買い換え需要、デジタル家電などの要素があるだろうが、実は家計貯蓄率は91年15.0%→02年6.2%に下降している。つまりGDPの内需回復の基調は貯蓄を吐きだして支出に回すという家計の実態が浮かび上がる。小売業販売額前年同月比-2.3%であり個人消費は安定した回復ではないのだ。
総務省03年度単身世帯家計調査によれば、月平均消費支出16万9830円(前年度比-2.4%)と下降し、項目別では教養娯楽費-7.0%・食料費-3.7%・家具家事用品+4.3%の他保健医療費と交通通信費が増大している。国内個人消費を主導した若者は、いまやパソコンとTV購入は一巡し、外食を避け、被服・履き物は新調せず、部屋の家具を少し買い、せっせと医者に通うかサプリメントを買い、携帯電話で必死に話をしているという生活が浮かび上がる。
GDP回復の中でなぜ生活実感が伴わないのか。厚生労働省03年度毎月勤労統計調査(確報値 従業員5人以上)では、労働者一人当たり月平均現金給与総額は33万9471円(前年度比-0.9%)で3年連続減少した。実質賃金は-0.7%であり、一方で一人当たり月へ金労働時間は152.7時間(前年度比+0.3時間)で8年ぶりに増加し、パート労働者が+6.6%となり常用雇用は-0.4%となった。失業率下降は非正規雇用就労によって支えられ、給与者医療窓口負担30%・社会保険料負担増など深刻な実態がある。生活関連公共事業の衰退、中小企業の下請単価切り下げ、地方交付金切り下げなど生活関連事業の誘発効果は減退している。つまりGDP回復の主要な要因は、デジタル家電と輸出大企業の設備投資(北米・中国向け輸出)が主導しているのだ。しかしこの輸出主導型経済構造は安定成長の局面を切り開くだろうか。@北米の双子の赤字の激化A中東原油価格の急騰B米国金利の上昇など外需依存の不安定要因は大きい。内需主導型経済への本格的な転換は、勤労者所得の上昇と地域中小企業支援による地域経済活性化にしかない。
東京商工リサーチの4月全国企業倒産状況調査(19日発表)から。
全国企業倒産数(負債金1千万以上) 1236件(前年同月比-17.3%) *帝国データバンク統計では1189件(前年同月比-21.5%)
負債総額 8263億円(-11.6%) *帝国データバンク統計では6119億円(前年同月比-32.2%)
不況型倒産(販売不振による) 939件件(全体比75.9%)
従業員5人未満企業倒産 739件(全体比59.7% 対前年同月比+4.4%)
上場企業倒産 2件
倒産形態 破産518件・特別生産を合わせた企業消滅型倒産547件
東京商工リサーチ03年度倒産状況調査(19日発表)
業暦30年以上の老舗倒産 4164件・26.9%(対前年比+0.3%)
業暦50年以上の老舗倒産 847件・5.4%(対前年比+0.5%)
倒産企業平均業暦年数 25.7年(99年度は19.5年)
*老舗企業の倒産は取引先企業の海外移転と価格破壊による経営環境の急激な変化による淘汰 (2004/5/20
8:53)
参院選比例区に自民党から立候補した竹中平蔵氏は、「不良債権は確実に減った。景気は回復している。横から批判だけしてメシを食っている人が一杯いる。人間の生き方として問題だ。無責任で言いっぱなしの人生だ」と出馬演説をした(24日渋谷駅頭)。おそらく同僚の金子勝氏を意識しているのであろう。しかし「竹中プラン」は、中小企業向け融資を不良債権扱いにして金融機関再編を強行し、信金・信組破綻から足利銀行一時国有化まで徹底した犠牲を強いて恥じるところがない。彼は栃木県で同じ演説をして生きて帰れると思っているのだろうか。基本的な人間的資質に欠陥があるということを自己暴露している。(2004/6/25
9:34追加)
◆欧州労働法制と日本の異常な現状
○サービス残業を含む実労働時間(総務省「02年度労働力調査」)は以下の通り。
週平均労働時間 42,3時間(年換算2、200時間) *独1525時間 仏1554時間 英1888時間 米1948時間
過労死基準 週60時間(年換算300時間) 12,1%
残業規制 労基法36条上限規定なし *独1日2時間(年60時間) 仏年130時間
年休付与日数 20日(01年度取得率48,4%) *独・仏5〜6週間(夏と冬に4週間、2週間バカンス休暇で取得率100%)
*日本の年休完全消化による雇用創出効果は150万人・経済波及効果は12兆円
ドイツの労働時間は日8時間労働で、さらに産業別労働協約で規定される。協約の全産業平均は旧西独部37,4時間、旧東独部39,1時間(02年現在)。西独部金属産業では週35時間であるが、高度技術・高職位労働者は事業所労働者数の50%まで週40時間労働を可能とし、職場の存亡にかかわる状況では労使合意を前提に時間延長を可能とするる協約に移行した(04年)。これを受けて電気機械大手シーメンス「(従業員42万人、うち独国内17万人)とドイツ金属産業労組(IGメタル)は、ハンガリー工場新設中止・2携帯電話工場閉鎖を回避するために2000人の雇用回避と引き替えに週40時間(年1760時間)労働を締結した。経営者は国際競争力強化を云い、労働者側は雇用と生活の維持を云う。一方自動車大手オペルは週30時間労働制、電気通信大手ドイツテレコムは週38時間から週34時間労働制への移行を導入する。
○パート・派遣
非正規労働者数 370万人
フリーター青年年収200万円未満 85%
パートに占める女性比率 70%(時間当たり賃金男性の34,4%)
パートの対フルタイム賃金率 スウエーデン87,2% 独82,5% オランダ73,2% フランス73,0% 英58,0% 米54,3% 日本49,7%(02年)
*欧州では雇用は正社員が基本で、派遣は長期欠勤者や仕事の急増などのやむを得ない一時的措置という原則。正規を減らして派遣に換えることができないように、1つの職に派遣が当てられる期間を限定している(独9ヶ月、仏18ヶ月でそれを超える場合は正規雇用と見なす)。日本政府はILOパート均等待遇条約に反対、EUは97年指令で均等待遇権を明記し、英国では00年から均等待遇規則が実施され、イタリアでも00年にパートタイム労働法で、時間当たり報酬額・試用期間・年次休暇・母性保護・疾病労働災害職業病の現状保持期間の差別を禁止し、EUは均等待遇の強制力ある「01年EU指令」を発布した(解雇の際の職場の労働者代表との事前協議制多国籍企業には94年に指令)。
○失業
完全失業者数335万人 製造業-345万人(22% 10年で) 上場企業1638社04年度3月期連結決算・経常利益20兆2870億円(+27%)
○解雇規制
日本には解雇規制なし(03年労基法改正「合理的な理由のない解雇は無効」とあるが具体的基準なし) 早急に次の対策必要
@正当な理由なき解雇禁止、人員整理計画の事前協議制A退職強要(希望退職・転籍)禁止などを盛り込む雇用人権法の制定。
仏は「経済的理由による解雇の防止と職業転換の権利に関する法律」で解雇規制と被解雇者の職業転換支援をおこない、転職促進計画のない解雇は無効、従業員50人以上の企業が10人以上を解雇する場合は労働監督局の許可が必要。02年のミシュラン地方工場閉鎖で労働裁判所は解雇規制法を適用し、閉鎖の違法と損害賠償命令を出した。EU大量解雇指令(75年制定 92年一部改正)は、労使の事前協議制を義務づけ、01年には「欧州労使協議指令」で、多国籍企業が工場閉鎖・大量解雇をする場合には欧州規模の企業内協議機関の設置を義務づけ、77年指令では企業譲渡の際の労働権保護。04年欧州憲法・欧州基本権憲章では、企業での労働者の情報・協議権、不当解雇からの保護、団交権・行動権、公平・公正な労働条件保障を規定した。
特にドイツに於ける労働権の水準がEUを媒介に国際標準になったときに、日本の労働法制は劇的な変化を遂げるだろう。
@労働者共同参加権:事業所閉鎖、労働時間延長、フレックスタイム制、監視カメラ設置、労働のコンピュータ管理など企業経営の変更に関する労働者側の同意権。労組とは別の労働者代表組織である事業所評議会の同意を条件とする。労組が締結する労働協約に含まれていない労働条件に即座に対応できる。
A監査役会(企業の最高意志決定機関)への労働者代表参加権:監査役会の労働者代表は少数で経営側提案を覆すことはできないが、労働者に情報を開示することができる。
B労働裁判所:解雇の理由と条件の説明を受ける権利が事業所評議会にある。その情報分析に少なくとも1週間の猶予期間がある。不当解雇は、事業所評議会の意見書により被解雇者が労働裁判所に提訴できる。年間訴訟件数は不況で60万件に上る(日本の訴訟件数はわずかに2500件)。訴訟権の簡便性が保障され、労組付きの弁護士事務所が弁護し労働者の費用負担はない。労働裁判所の判事は、労働者の生活と労働条件を熟知した人が多く裁判の公正を確保している。半年くらいで判決が出る。
C解雇規制法:社会的に正当な理由のない解雇は無効と定め、従業員10人を超える企業に適用される(シュレーダー政権以前は5人)。解雇には従業員代表組織である事業所評議会の同意を条件とする。集団的解雇は州職業安定局に届け出て同意なくば無効となる。
D派遣労働法:派遣労働者の報酬・待遇は派遣先企業の労働者の条件を下回ってはならない。福利厚生施設の平等利用権、職場安全教育の平等権、高所・有害業務は派遣先企業が教育する義務を規定(これらは独・伊・仏共通)。
日本の企業労組の独立性確保、支払い能力論による賃金決定、日常的労働条件の無秩序、解雇規制の法整備、解雇訴訟の簡便性などなど日本の労働法制の課題は多い。(2004/5/18
8:37)
◆日本の食料自給率目標値の見直し論議
農水省の食料・農業・農村政策審議会企画部会で、「食料・農業・農村基本計画」が定めた食料自給率目標値の再検討が始まった。現行カロリー自給率40%→2010年までに45%にする目標値(00年3月閣議決定)の重要な指標は穀物生産にある。農水省「議論の素材」の検討方向は「水田転作により麦、大豆への生産の偏り等によって需要と生産のミスマッチが生じている」として麦と大豆の生産抑制を提起している。水田に麦・大豆を転作した場合に支払われる助成金の条件の品質基準をより厳しくしたために作付け減少が起こっている。北海道では小麦「ホクシン」を契約数量以上に収穫した分を安く買い上げるペナルテイーを実施している。
外国産麦のポスト・ハーベスト問題や学校給食への国産麦導入により国産麦の需要は確実に上昇している。製粉メーカーも国産麦(特に北海道産)に対する購入意欲は強いが、大手製粉企業70%・中小製粉企業30%という割り当て制によって購入できない。国産大豆も昨年の不作によって思惑買いが入り、価格が高騰している。国産大豆の品質劣化が需給ミスマッチを生むーという農水省の説明は間違いで、地産地消システムの普及の中で国産大豆の需要は根強くなっている。ここでも大豆の流通を支配する大手メーカーに政策が傾斜している。醤油は国産麦の等級は無関係に利用している。
政府の農業政策の基本は、農産物自由化を前提にした国際競争に耐えられる40万農家・経営体を「担い手」として位置づけ、大規模農家と株式会社などの法人経営体に集中する効率・安定経営をめざす農業構造改革である。この結果現在の国内農家の90%は駆逐される。その第1弾である「米政策改革」で稲作農家は、「地域水田農業ビジョン」(04年3月発足)によって、当面3年間は面積基準はないものの、2010年に都道府県は4ha・北海道10ha・法人経営体20haを基準とすることになる。
農水省は米政策を改革し、3年間で担い手を育成する方針を採用し、水田保存と有効利用の水田農業確立対策助成金制度と産地づくり交付金制度などの水田転作関連助成金制度を打ち出している(06年までの時限措置)。ところが転作作物種類や担い手数の基準によって地域間の格差が増大し、助成金額も414億8100万円(22.3%)減少している。政府段階の減少は地方段階の減少を誘発し、農村経済の深刻な打撃と担い手自体が崩壊する可能性がある。
農水省戦略は成功するであろうか。おそらく安価な輸入米の流入は、最初に中堅農家の離農を誘発し、次いで大規模農家の離農を招くだろう。10haもの水田を耕作する農家でさえ後継者不足は著しい。すると離農農地の委託耕作を数人の雇用者と耕作して、農閑期に集荷調整業務と育苗用培養土などをつくったとしても、稲作収入は非常に苦しい。「米政策改革」は生産者米価が下落し、収入が減少したときに、一定の補填金を担い手に限定して支払う方法をとるが、生産者米価自体の保障なしには有効ではない。従来の米価安定策としての「稲作経営安定対策(稲経)」(04年終了)は、減反を達成した上で拠出金を支払わなければならず、逆に返還金を請求される事態が生まれている。今回の「米政策改革」の米価下落対策加入条件は、水田減反(転作)を担い、過剰米分をエサ米(60kg3000円)として出荷し、拠出金を負担しなければならない。転作補助金は09年度に打ち切られる。少なくとも野菜・果樹のように豊作であったら生産者団体が廃棄処分にする制度を米にも適用すべきではないか。
03年度食料消費者モニター調査(農水省 03年8月実施全国主要都市消費者1021人対象 回収率98.2%)では、食品に対する不安について、輸入農産物・原材料91.4%、生産過程での安全77.6%、製造加工過程での安全74.3%であり、不安を感じる食品では外国産生鮮野菜72.2%、外国産原材料の加工品47.0%、外国産精肉44.4%である。トレーサビリテイについては、事業者と消費者による負担35.5%、事業者負担27.3%、行政負担24.4%、消費者負担3.1%となっている。輸入食料が過剰で、国産食料が不足している日本農業は安全性において深い危機にある。
欧米の食糧自給率急上昇の背景には、農産物価格保障と所得保障が農業予算の中心となっているところにある。農業予算に占める価格・所得保障割合はドイツ74%・フランス72%・イギリス67%に対し、日本は32%に過ぎない。日本の農林水産予算の主要な部分は土木・施設建設事業(諫早湾干拓事業に象徴)が占めている。農村経済を再生し食料自給率を高める中心政策は、価格保障政策を主軸とする所得補償にある。(2004/5/17
9:22)
03年度食料・農業農村の動向に関する年次報告(農業白書 18日)によれば、大規模農家(5ha以上)の増加速度が鈍化し水田面積の20%を下回っている。農産物価格が低落を続ける中で、生産者収入に占める財政支援比率が上昇し、零細な農家も助成金によって一定の所得を得るために農地の賃貸と売却を回避する傾向がある。大規模農家でさえ収益性と安定性が低下し価格政策が所得を支えている(特に北海道畑作経営)。従来の米生産調整の意義が理解されない状況で、農業者団体に調整を任せた「米政策改革大綱」の問題を指摘し、需給のミスマッチ(特に麦と大豆)を解消し、財政コスト削減を図るために、作物別に全農家一律の財政支援をする現行助成制度を見直し、良質な農産物を生産する担い手農家に支援を集中する制度への転換を主張している。農業白書は、食糧自給率低下の歯止めがかからない要因を「米の消費量の減少が続き、栄養バランスの改善がみられないことや、ほとんどの品目で生産努力目標水準を下回っていることにある」として消費動向と生産者努力に求めているが、肝心の輸入農産物について指摘していない。
販売農家(農産物販売額年50万円以上):農業所得(粗収入前年比-0.1%+経費同+0.3%)=1021000円(前年比-1.2%)+農外所得(前年比-4.7%)で農家総所得は-2.2%と農家経営は悪化している。総農家数は298万2千戸(-1.5%)うち販売農家数220万5千戸(-1.9%)、農業就業者の前年比増減率も-6%を超え、特にこれまで増加していた65歳以上層が遂に減少に転じた。(2004/5/20追加)
日本農業の展望について一つの材料が提供された。野菜・果物の直販や漬け物・ジャムの加工事業農家、法人の60%が農業所得を増やしている。農業事業体の内訳は農産物直販90.8%・農産加工25.3%・観光農園12.0%・農家レストラン1.6%・市民農園1%未満・農家民宿1%未満であるが、3年前に較べて農業所得が増えた事業体が57.1%に達し、うち所得が30%以上増えたもが44.4%、変わらない31.7%、減少した11.2%となっており、経営多角化戦略が一定の効果を上げていることを示している。産直や直販、グリーンツーリズムの前進があると思われる。以上農水省・農業経営多角化調査(03年8月 3926事業体対象 回収率75.4%)。(2004/5/20追加)
◆フード・マイレージと学校給食システムの変容
フード・マイレージとは食料総輸送距離をいい、食料輸入を環境面から測る指標として注目を集めている。青森県十和田市立東中学の生徒が、総合学習の発展としてある日の給食の食材のフードマイレージを調査した。食材産地を地図に落とし(外国は首都、国内は県庁所在地)十和田市との直線距離から計測した。献立はシーフードカレー・わかめサラダ・麦ご飯・牛乳というものだ。
カレールー 小麦粉(カナダ)、バナナ(エクアドル)、カレーパウダー(インドネシア)合計87.040km
イカ(ペルー)25.000km
エビ(ベトナム)6.400km
ワカメ(中国)3.400km
タマネギ(北海道)272km
ホタテ(青森県)40km
キュウリ(千葉県)560km
ニンジン(愛知県)720km
麦(福井県)664km
米(青森県)0km
以上総計124.352km
なぜ学校給食で輸入品が多用され国産が敬遠されているのか。@学校給食センターによる一元的管理システム(小学校給食単独方式実施校1968年・79%→2002年・49.6%、給食センター方式実施校1968年21%→2002年50.4%)A民間委託のアウトソーシングの推進による安価・大量・規格化戦略の推進がある。この結果、調理労働力コスト削減と配送時間短縮のために、調理時間短縮と規格化商品供給実現に安価・大量・規格輸入加工品依存のシステムが進んだのである。食材仕入れと調理・配給までが民間業者に委託され(調理部門13.4%と5年前の1.7倍化)、学校調理員は食膳労働に特化していった。輸入食材の問題は、@野菜のビタミン含有率低下Aポストハーベスト(収穫後の農薬散布)汚染B食品添加物多用による食品安全性の水準に問題があり、トレーサビリテイも充分ではない。遠距離搬送による燃料使用による二酸化炭素の発生を含め、農薬使用は書類検査を信頼するしかない。学校給食栄養士と調理士は地元食材を使いたくてもコスト削減優先によって使用できない構造となっている。こうした食材の安易な輸入品依存の推進は、外食産業依存とレトルト依存という日本の食文化変容の中でこどもたちの身体異常を誘発させアレルギー症発生率は25%に達した。
このなかで逆に地産地消システムを学校給食に導入する試みが進んでいる。そのモデルが群馬県高崎市53校の自校式の導入である。市が全校に学校栄養士を配置し、個人農家と市農協組合が毎朝食材を学校へ配達する。こうした自校システムの誘発効果はどこにあるのだろうか。
@生徒の身体状況に即応した食料供給が実現できる(健診で貧血傾向が多くなれば鉄分を増やすなど)
A徹底した減農薬・化学肥料の食材を調達し、食の安全基準水準を高度化できる
B栄養士の食材共同研究が推進される(独自の醤油とソース開発し、市販化も実現)
C子どもの地域と文化に対する理解と関心、アロマセラピー的教育効果(給食室からただようにおいと雰囲気は子どもを落ち着かせる)
D地域農業と地域経済の循環を高める
E地場産品の食器使用による食文化の向上
F地域と学校教育の結合が強まりコミュニテーがより強化される
東京・大田区の食の安全と地域経済を結ぶ取り組みは注目される。大田区労連・大田区労協・コメ卸城南食糧労組がネットワークをつくり地産地消システムを推進している。輸入品利用の安価な加工食品の高濃度残留農薬と添加物、低い栄養素が心配され、国産農畜産物を地域共同で拡大することが重要として活動している。生鮮食材の地元商店を通じた学校給食への供給や商店街を地域コミュニテイなどによって子どもの食生活を健康で安全なものにするなど取り組んでいる。山形県庄内産直センターと提携した学校給食米の供給、水道水の安全化などの取り組みを通じて、食の安全と商店街振興を結び行政への働きかけを進める地域の共同が注目される。
(2004/5/16 9:25)
◆現代アメリカの経済的な基盤はどこにあるのか(イラク戦争支持国の経済的条件)
第2次大戦後の米英覇権闘争における米国の圧倒的勝利。
1942年 英米相互援助協定 米国武器援助によるスターリング体制打破(ポンド基軸からドル基軸へ)
1944年 INF設立・固定為替相場制 金1オンス=35ドル(戦前型金本位制打破)
1945年 英米金融協定 米国借款と引き替えにポンド交換性回復・スターリング残高解除・多角的自由貿易承認
1947年 トルーマン・ドクトリン 贈与・借款比率10:1 見返り資金の米政府許可制
戦後米国の経済的基礎は
(1)巨大企業の海外市場支配
(2)巨大金融機関の国際金融市場支配
(3)巨大投資階級の国際証券市場支配
ドル支配世界経済の終焉
(1)対抗基軸通貨ユーロ(99年EU通貨統合)
(2)国際基軸通貨覇権闘争 ユーロは対米自立型経済圏構築(日本は対米従属型経済構造形成)
米国覇権ネオコンに対する戦略配置
(1)独は反戦・平和のためにイラク不戦を主張したのではない。イラク反戦世論を選挙戦術としたのである。フランスのイラク不戦も極 右・国民戦線への対抗戦略であった。
(2)米はネット・バブル崩壊とテロ・リスクの資金流出によるドル暴落を阻止する強力な軍事力の顕示としてのイラク攻撃
(3)国際基軸通貨覇権闘争の激化 米英ドル&仏独ユーロ
(4)米国型コーポレイト・ガバナンスのフェニックス型国際化(*500年ごとに神檀上で自ら焼け死にその灰の中から幼鳥となって蘇る)
@企業改革法(サーベンス=オクスリー法 2002年)
AボーダレスM&Aの巨大資本調達先としてのニューヨーク資本市場のNYSE(NY証券取引所)とNASDAQ(ナスダック)登録
B米国財務会計基準=国際会計基準による財務報告書提出義務とSEC(米国証券取引委員会)の海外企業本社検査
C米国型ユニバーサル・バンキング(銀行と証券会社の一体化) 以上萩原伸次郎・一ノ瀬秀文両氏の論考(『経済』105号参照)
(2004/5/16 8:25)
◆地域商店街は再生できるか
身近な街が「シャッター通り」や「空き店舗」となって商店街の空洞化が進み(90年代商店街数18000→現在12000)、大型チェーン店の出店ラッシュと深夜競争によって地域から商店街を含む街そのものが姿を消そうとしています。差別化と特化戦略によって活性化している商店街もありますが(名古屋市・大須、覺王山など)、ほんとうに大丈夫でしょうか。このような大型店が制覇するようになった歴史的経過を整理してみますと次のようになります。
1990年6月 日米構造協議で大規模小売店舗法(大店法)の大幅規制緩和合意
1992年1月 大店法による出店調整期間を1年以内に短縮、地元商業者との協議機関廃止
1994年5月 1000平方b以下の出店の原則自由化
1996年3月 規制緩和推進計画の改定により大店法制度見直し決定
1997年5月 大店法審議会開始
1998年5月 大店法廃止し、大店立地法制定
2000年6月 大店立地法移行開始
*この表は日本流通業の規制緩和政策を如実に示しています。米国大手流通業が、米国製品の売り込みと日本進出を狙って、大型店と周辺小売業の調整機能を持つ大店法(1973年)の緩和と廃止を要求し、1990年代以降次々と大店法緩和し遂に98年に廃止し、出店地周辺の生活環境の保持だけをめざす大店立地法を制定し、13条では地方自治体の施策を禁止する一項を設けました。
*大店法は地域商店街への影響が大きい大型店の出店について、店舗面積・開店日の削減などの商業的調整を可能としたが、大店立地法はこの調整を禁止し、出店地周辺の交通・騒音・廃棄物問題など生活環境維持のみを対象に基準の遵守を自治体の勧告権に限定され、出店規制は大幅に緩和された。同時に中心市街地活性化法(中心市街地の整備・商業活性化を一体化したまちずくり機関への国の支援)と改正都市計画法(開発の自治体権限の拡大)を含めてまちづくり3法という。旧大店法を廃止してまちづくり3法に切り替えた時の政府説明は、@大型店の出店規制は欧州型都市計画の手法でおこなうA中心市街地の衰退を阻止する活性化対策を施すというものであった。大店立地法への移行後(2000年6月)の出店届出件数は00年131件→01年372件→02年576件→03年746件と急増し、店舗面積は無制限に拡大し、地方自治体が中心市街地に財政投入しても郊外巨大店舗で水の泡となり、まちづくり3法は機能しなくなった。そこに追い打ちをかけるように構造改革特区は大型店の環境規制そのものを撤廃した。
荒廃する地域商店街を再生する戦略として早急に実施しなければならないのは、次のことです。
(1)自治体のまちづくり条例制定権による住民主権(大型店立地・事業内容など環境影響評価義務、情報の事前提供義務、出店・撤退における住民説明と協議制、深夜営業規制)
(2)地域商店街の多面的機能(高齢者、祭事維持、防犯防災、雇用、地域社会維持)を基軸とする地産地消システムの再構築(生鮮食料品営業継続支援、青空市支援、空き店舗対策など)
(3)大型店と中小店舗の共存をめざす大型店の地域貢献義務(街路灯などの共益費負担義務、地域行事への参加、社会貢献活動、フィランソロフィー)
(4)商店街振興計画の策定(住民、市民、事業者、NPO、行政の一体型総合的コミュニテイ再生事業、ライフエリア構想)
(5)取引適正化と不公正取引の排除 中小テナントの権利保護(営業権継承と保証金返還の対等関係、大型量販店の優越的地位利用規制、不当返品と協賛金強要規制、消費税総額表示の負担転嫁規制)
(6)大店立地法の再検討(第13条削除)と商店街支援予算拡充(中心市街地と商店街活性化に使用を与える出店の原則禁止、出店地域の誘導)
(7)地域住民によるまちづくり計画、NPO活動、地域通貨など多様な活動の推進 (2004/5/15
8:31)
◆地域別最低賃金制分析-健康で文化的な最低生活は誰が保証するのか
憲法第25条・生存権を支える規程として生活保護と最低賃金制がある。日本の最低賃金制は、生活地域圏別に算出され、その地域の@労働者生計費A類似労働者賃金B事業所支払い能力の3つのデータを根拠に算定される。この基準の最大の問題は、B事業所支払い能力であり、ILO(国際労働機関)の条約と勧告では生計費基準であり、企業の支払い能力を基準に含めている国はないことである。しかも日本の場合は実質的に生計費基準は重視されず、企業も地域の30人未満の地場産業の賃金動向と支払い能力を考慮して決めている。最低賃金額は都道府県の地方最低賃金審議会の意見を受けて労働局長が決定するが、実際には中央最低賃金審議会が設定している47都道府県のA−Dの4区分ランクを目安にその枠内で決定される。
地域別最低賃金水準は、中卒女子初任給125700円(02年厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)とほぼ同額であり、フルタイム労働者賃金が生活保護基準を下回る逆転現象が1980年以降生まれている。75年基準でみると生活保護基準は3.2倍に上昇しているが、最賃額は2.7倍に抑制されているからだ。東京都生活保護基準(18歳単身)139000円(住宅扶助53700円を含む)に対し、東京都最低賃金124600円である。 この結果年収300万円以下の低賃金層が34.9%、200万円以下が19.1%と急増しており(国税庁調べ)、その主要部分は非正規雇用労働者が占めている。
ナショナルミニマム(国民生活の最低限度の所得保障)の基準を憲法25条「人たるに値する」水準に引き上げた最低賃金制をベースに定める必要がますます強まっている。生計費原則最低賃金制を、年金・雇用保険・生活保護・自家労賃・家内労働などに連動させたナショナル・ミニマッムが求められる。
世界の平均賃金(所定外と特別給与を含む)に対する最賃額比率は、フランス46.3%、オランダ45.2%、ベルギー43.4%、カナダ35.6%、アメリカ30.6%に対して日本は27.1%と先進国中最低水準にある(OECD:Emplyment Outolook 1998年)。しかも最賃以下で雇用している事業所が10%あり、最低賃金制そのものが機能していない。最大の問題は、最低賃金額が非正規労働(パート。アルバイト)の賃金に連動し全般的低賃金構造を制度的にさせる効果を誘発していることだ。生計費基準による全国一律の最低賃金制への転換が求められる。全国一律最低賃金額の内容は、従業員30以下の零細経営の賃金問題であり、この零細経営層は重層的な下請構造の下層に組み入れられている。この層の経営は受注率と下請単価と加工賃の契約安定にある。個人企業の一人当たり平均営業利益は100万円台であり、家族労働でも200〜300万円に過ぎないから最低賃金の人件費自体を捻出できないレベルにある。つまり低額の最低賃規定を根拠に単価切り下げが行われる悪循環にある。しかし3次下請ではもはや最低賃金とも無関係に下請単価の切り下げが行われることとなる。下請単価と加工賃の現行規定では、発注者の優越的地位利用取引を禁止し、「適正な利益の確保」と「労働条件の改善が可能」となっているが、具体的的な規定がないために実質的な拘束力を持たない。発注元の下請単価規制と下請の価格決定権を保証する制度がもとめられる。(2004/5/144
11:08)
現行最賃制の在処をめぐって対抗する2つの潮流がある。第1は関西の自治体中心に起こっている公契約法(条例)制定運動だ。公共事業発注の公契約入札制度の国際標準であるILO94号条約(公契約に於ける労働条項 49年採択 01年現在59ヶ国批准)を日本政府は批准していないため、公契約の内容に適正水準の賃金規制がない。ここから公共事業のダンピングやピンハネ・丸投げ等が誘発し賃金が切り下げられる。現在国と自治体の公共・委託事業で働く労働者は1000万人を超えている。第2は、政府総合規制改革検討会議が日本経団連の要望を受けて、産別最賃制を廃止し10%水準が低い地域別最賃制への統合を検討している。産別最賃制は基幹労働者約409万人に適用されているが、財界は産業活動に支障を来すとしている。(2000/5/20
8:22追加)
中央最低賃金審議会は、地域別最賃の目安を3年連続据え置く答申を出した。労働者側委員の主張は、現在の最賃時間額の全国平均664円は、若年単身労働者の必要最低生活費を下回り、パート・アルバイト賃金や初任賃金と比較しても低水準にあるーというものだ。使用者側委員は、為替・金利変動・原油価格などの不透明要素で経営は悪化し、中小企業と雇用維持から引き下げるべきだと主張した。(2000/7/27
7:26追加)
◆トヨタ生産システム分析
トヨタ自工の04年度3月期当期純利益(最終利益)が1兆1620億円(前年比54,8%増)に達し、営業利益も1兆6669億円(前年比31,1%増)、全売上高は17兆2948億円となった。純利益を365日で割ると、1日で32億円を稼いでいる。売上高の地域別構成をみると、海外66,5%(北米35,3%、欧州11,8%、その他19,4%)・国内33,5%で、主役は北米海外市場となっている。
この膨大な収益構造の基本は、JIT(ジャスト・イン・タイム)によるカイゼン・カンバン方式といわれる在庫ゼロのトヨタ生産システムと労働力構造にある。「非常識への挑戦」というスローガンで驚異的なコスト削減を実現している。00年開始の「CCC21」戦略は、3年間で平均30%のコスト削減目標を打ち出し、現実に7500億円の削減を達成した。工場の稼働生産性・下請関連部品コストなど全分野を対象とした。次いで03年に開始された「BT2」戦略は、国内全工場対象に2〜3年間で同じく平均30%コスト削減を目標とし、人員削減20%で生産台数20%を増やす(160%の仕事率強化)をめざしている。
労働力構造をみると、00年以降で6000人の正規雇用を削減し、期間従業員(有期雇用)と覇権・請負雇用に代替し、03年度6000人強であった期間雇用が現在で10000人に達している。この結果過密労働が進み、豊田労働基準監督署の事業所調査(トヨタ及び関連企業対象01年度)では、過労死認定基準である月45時間以上の時間外労働をしている事業所が80,5%に達し、年間実労働時間が最も多い労働者は3650時間であり、政府の国際公約1800時間の2倍に達している。
トヨタ本社の従業員総数は66000人(昨年9月)、連結子会社554社を入れると26万人(GMは35万人)であるが、実はその下に無数の中小下請が存在し、トヨタ企業会計に参入されない下請に対するコスト削減圧力による巨大な利益が実現する構造となっている。トヨタ本社のある愛知県西三河地域は、製造業に占める輸送機器の割合が出荷額74%、従業員数55%に達しているが、地元の受注状況は好転しているが実質利益はむしろ下降している(岡座信用金庫調査月報)。受注単価が安すぎるので外注に出そうと思っても見つからないという状況が生まれ(愛知中小企業同友会景況調査)、豊田市の4600社に上る中小企業の72%は赤字企業となっている。トヨタ生産システムの真髄である垂直統合型下請制の本質は、コスト削減圧力を垂直下方への集中にある。水平ネットワーク型最適調達戦略への転換と同時に国内生産体系は下請制による利潤極大化を実現している。(2004/5/14
8:31)
◆中国市場社会主義理論の現在ー程恩富(上海財経大学)「マルクスと西側経済学を超える中国経済学の建設」(『季刊 経済理論41−1』桜井書店 所収)
市場社会主義という未踏の実験を試行している中国の経済学理論の一端を知ることができるので概要を紹介する。
(1)中国社会主義経済学の歴史
@初期段階(中国成立〜文革期)
中国の理論的蓄積はなく、ソ連型モデルを模倣し(スターリン「社会主義経済の諸問題」ソ連科学アカデミー「経済学教科書」)、近代経済学を完全に追放した。ここで生まれた限界は、生産力研究の軽視、価値法則の生産に対する調整機能の否定、定量分析軽視であったが、理論構築は前進した。
A革命段階(文革期10年)
経済理論は政治運動に従属し、生産力発展を資本主義とみなし、労働に応じた分配を資本家階級の土壌とし、階級闘争研究が経済学の中心となった。例外的に許条新等は監禁中に社会主義の生産・流通・分配理論を独自に構築した。
B改革段階(1979年〜現在)
中国社会主義経済理論の再構築。主要矛盾を物質要求と停滞生産力とし、近代化の重点を経済建設に置いた。計画経済=主、市場経済=補とする原則で、計画ある商品経済をめざす。社会主義市場経済をめざす理論は、生産力と所有構造理論、現代企業制度と市場体系、市場型労働による分配、公平と効率の関係理論、マクロ調整と対外開放理論などが進展した。この時期の問題は、政治指導の注釈化や流行思想のアレンジ、計画と市場の機械的対立化、原理論の現状への機械的適用、アメリカモデルへの崇拝などがある。特に米国近経モデルへの崇拝は、(a)数理分析の横行(b)財産権私有化神話と経済人理論の流行に現れた。
(2)社会主義経済学理論モデルの欠点
@規範分析のレベルで実証がない
A実証分析のレベルで定量分析がない
B政策研究のレベルで政治追随
C学問研究のレベルで社会主義市場経済学の計画経済否定傾向
D方法論レベルで近代経済学の方法の単純な導入(即席改革)
(3)中国社会主義経済学モデルの再建
@公有制と市場経済を結合する歴史上初めての実験に対して、現段階でポパー的な反証はできない。
A理論の基準をマルクス主義経済学の主要仮説に置く(労働の二重性・公有制の高生産力・利益人*)。原理・公理はすべて理論仮説とみなす。生産手段の共同所有は社会的効用を最大化できるか、その条件は依頼人と代理人の相互責任、政策合理性、経営の質に依存する。近経のコース定理・パレート最適・市場効率仮説を借用し理論の予見力を高める。*利益人とは利己と利他の結びついたもの。
B経済学説の合理的配分 海外経済学の吸収(米国急進的政治経済学、ガルブレイス制度主義、ケインズ左派、日本の非正統派マルクス主義、グローバル理論)、中国の伝統経済思想の刷新(康有為の大同思想、孫文の三民主義)、台湾系学者(新儒学経済)、華僑系(中庸経済)などなど。
C方法論の広域化(筆者注:ココが最も面白い!)
(a)現代哲学(人本主義、解釈学、総体異化論、範式論)、(b)現代政治学(市場と国家、景気循環と行政、グローバルと覇権)、(c)現代法学(企業制度、国家経済政策)、(d)現代社会学(階層論、階層分化論、コミュニケーション論、所得分配論、貧富分化論)、(e)現代倫理学(公平と効率、義務と利益、経済倫理)、(f)現代心理学(予期心理、心理的選好、主観的効用、消費心理、経営心理、マーケット心理)、(g)現代数学(ゲーム理論、(h)現代生物学(社会生物学)、(i)システム理論、情報論、場の理論(系統理論、レベル理論、開放系理論、不確定性理論、リスク理論、情報の対称性理論、場の理論)
中国社会主義経済学理論の鋭い挑戦性と過渡期性を実感させる。世界の科学の最先端領域に目配りしながらも(日本は宇野経済学を評価しているようだが)、すごいのは中国社会主義経済学はマルクス経済学と近代経済のどちらをも乗り越えた独自の経済学をめざすと宣言していることだ。これは中華思想の自信なのだろうか。これが中国の最適選択であるかどうかは別問題である。稀有広大というのか、こころざしの問題なのだろう。どこの国にも数理分析の流行思想に飛びついて悦に入る単純脳細胞の連中がいるもんだ。もちろん程氏のことではない。(2004/5/12
9:15)
◆貧富の垂直的ヒエラルヒー構造
地球人口を100人とすると、最も豊かな20人が全体の90%の富を消費し、最も貧しい20人は1%しか消費できていない。最も豊かな20人は最も貧しい20人の74倍の収入を得ている。多くの国にとって90年代は絶望の10年だった。現在凡そ54ヶ国が90年に較べて貧しくなっている。21ヶ国では飢えている人の割合が増え、14ヶ国では5歳になるまでに死亡している。こうした生存状況の交代は、以前ではほとんど見られなかったことだ。以上03年度国連人間開発報告より。
世界で一番の富裕層と貧困層の所得格差は、60年は30倍であったが、99年には74倍となった。日本の貧富の格差は、72年に5倍であったが、99年には9倍になった。以上ILO(国際労働機関)事務局長03年報告より。
資本主義的市場経済が多国籍企業と国際金融資本の新自由主義的経営に蹂躙され、社会的規制が崩壊していき、生産力自体を成業できない状態がグローバリゼーションの影の姿だ。イラク戦争と京都議定書からの離脱に象徴される帝国の振る舞いが、新古典派市場原理の跋扈を援護している。(2004/5/12
8:04)
◆資本主義は存続できるかー久留間健「資本主義は存続できるか」(『経済理論』41-1所収)
現代の問題の所在と将来展望を地に着いたオーソドックスなスタイルで語っている。聞くべき議論が久しぶりに登場した。久留間氏の議論を紹介する。
問題の所在は次の3つである。
@市場経済に解消できない人間社会の問題。ミクロ経済学は、人間を市場における最大限利潤を実現する合理的選択をする主体、市場における選択が全てとするが。
A国家、植民地、戦争は非市場的要因なのか、それとも市場そのものの現象形態なのか、ミクロ経済学はその全てを非市場的要因として排除するが。
B経済関係のみによって経済は動くか、上部構造を含む総体が経済的動員か。ミクロ経済学は純経済現象のみに限定するが。
この問題から現代資本主義は本質的な限界を持つ。
@収益追求と効率至上主義の企業論理と共生と相互主義の人間論理の原理的な二律背反構造が露わとなる。資本主義は体制的危機(生産力と生産関係の矛盾)によって自動崩壊するのでhなく、人間主体の危機に対する主体の反作用に懸かっている。lここに現在の危機の独自性がある。
Aしかしそのオルタナテイブ能力が衰弱している。その理由は、第1に定式化された理論枠組みから出発し、現実から出発しない傾向が見られ、第2にアカデミズムの講壇理論になっってドラステックな変革の議論を避けるようになった。第3に個別の現象を個別に扱い、全体との関連を捨象していく傾向がある。
ではオルタナテイブは何か。
@1970年代までは「福祉国家」と「完全雇用」がめざす目標であったが、なぜ80年代になると政府介入を嫌悪する「自己責任・自助努力」が主流となったか。市場成熟と飽和によって市場のフロンテイアが消滅して投資機会が狭隘となり「生き残り競争」と「高収益機会」のカジノ化が進んだからだ。
A福祉国家による国民統合が終焉すると、社会統合の経済的契機は喪われ、国民統合はナショナリズムのみとなった。ここに市場原理主義と国家主義の奇妙な相姦関係が生まれる。
B将来構想として提出されているのは、a)新古典派市場原理社会 b)市場限定的セイフテイネット c)資本主義を超えるシステムの3つである。a)b)ともに行き詰まりを見せているなかでc)の可能性は何か。「経済成長なしの安定した生活」は可能かという問題に収斂される。革命による体制の瞬時の転換はない。資本主義の存続を前提にしてその否定的な改革を構想するしかない。大恐慌型の体制崩壊を回避する資本主義の柔構造が完備している。資本主義の廃絶を直接めざすのは有効性はない。社会公共的視点による資本主義のコントロール(時短、社会的責任投資、京都議定書など)のなかに次世代社会の萌芽がある。資本主義に対するあるべき理念的な未来社会を対置するのではなく、現実に生起している課題の解決は市場原理を限定する中でしかないという政策と計画を順序的に提起していく。問題が明確に差し迫ってくれば人間は解決する方向に行く。しばらくは多様な模索が続くだろうが、少なくとも与えられた時間は20年間ぐらいしかない。
◆中山間地農地直接支払制度の存続は可能か
中山間地は都市部や平野部以外の農業地帯を指し、国土面積の7割・耕地面積の4割を占めるが、小規模農地(棚田・段々畑)の低生産条件による離農や耕作放棄が進み、農業の多面的機能(地下水涵養・国土保全・景観文化)の衰退が懸念されている。この制度は集落又は農業法人や個人が市町村と協定を結び、一定基準の傾斜農地と草地率の高い農地1ha以上を5年間にわたって維持管理した場合に国と自治体が交付金を支払うというものである。同制度は、00−04年度までの5年間の時限事業であり03年度までに33793地域で協定が結ばれ、対象農用地の85%にあたる66万haの草刈りや水路、荒廃農地の整備が推進されてきた。国と都道府県・市町村分を合わせて総額546億円(03年度)、うち国が264億円を負担している。
この制度は特に傾斜地を利用する果樹地帯の荒廃を食い止める効果を生んだ。共同事業で半分ほど配分する協定が多く、交付金の個人配分は年間3-4万円平均で、北海道が15万円平均である。耕作放棄地に景観作物やブルーベリーを植えたり、棚田の体験ツアーなどのグリーンツーリズムによる都市住民との交流が進んでいる。逆に活動を中止したり交付金を返還した例が48件あり、交付農家と非交付農家の調整失敗が原因となっている。
ところが04年度から構造改革による地方交付金の削減対象となり、国の交付金が51億円削減されることとなった。農水省調査では、市町村の98%・集落協定代表者の97%が耕作放棄地の防止に効果があると回答しているこの制度の維持と存続が問題となってきた。
この制度はスイスから始まってEU共通政策となり日本でも導入されてきた農業の多面的機能を支援する基幹政策である。むしろ支援条件を緩和して拡充することが当事者要求である。その拡充内容は、@就農者高齢地域での「協定内容が遂行できない場合の返還」を恐れて協定締結のインセンテイブを低めている要件の緩和、A返還免除条件(死亡、病気)に身体機能の低下などを追加する、B平場地域での営農活動に対象を拡げる等々である。
日本の食糧自給率は危機的な状況にあり、国土の荒廃が歴史上かってなく進んでいるいるなかで、この制度の存続と拡充は農業再生の重要な公的支援となる。実は農村出身の私の故郷も著しく過疎と荒廃が進み、少年期の風景が一変してしまった。帰るたびに胸に痛みが走る。(2004/5/11
9:18)
農水省「中山間地域等総合対策検討会」は、05年で期限切れとなる中山間地直接支払制度の継続を求める報告書を提出した。地方向け助成金削減対象となり、財務省・財政制度審議会が削減の方向を打ち出していた。耕作放棄防止効果は、1860億円から806億円、水路・農道管理、鳥獣対策など多様な協定が行われ、里山の整備や土壌流亡に配慮する営農活動が活性化するとしている。(20041/8/14
追加)
◆アウトソーシングとしての地域NPO問題
いま自治体の公共業務をNPOに委託して経費削減の行政効果を追求する自治体が急増している。その先端的モデルが群馬県太田市だ。新規採用を抑制し、10年間で172人を削減し、市職員に代わるNPO法人を設立して有償ボランテイアに業務委託を行う。03年9月現在171名が登録している。委託業務は、市庁舎総合案内、図書館業務、年金保険課レセプト点検業務、市施設の舞台照明音響、勤労会館管理、老人福祉センター業務など広範囲だ。企業経営の手法を自治体に導入して、172人の減員で450億円を削減する。
有償ボランテイアの報酬は、舞台照明音響750円、図書館業務600円、その他650円であり、群馬県の地域別最低賃金は640円であるからそれを下回っている業務もある。発足時時給680円で50人を公募したところ200人を超える応募があり、時給500円に切り下げた。有償ボランテイアは最低鎮技法の対象ではからだ。太田市に続いた埼玉県志木市は、今後20年間で職員530人の9割を時給700円の有償ボランテイアに置き換える計画を立てた(埼玉県の地域最低賃金は678円)。
さてここには地方自治体の公共業務をめぐる本質的な問題がある。本来的に公共性とは、利潤や市場原理になじまないが絶対に必要な社会的業務であり、市民が出し合う税金で営まれる性格のものである(警察や軍隊、保健衛生は民営化でjきない)。その業務は、専門知識や資格を取得した人を、一般公開試験で選抜して一定の生活の身分保障をしながら、市民に対するサービスを提供するというものだ。この2つの自治体は、専門的知識と資格ではない一般市民が、最低賃金水準で正規職員と同じサービスを提供するというものだ。地方財政危機の打開を公共業務サービスの縮小低下という方向ではなく、本来の公務を維持する方向で再構築しなければならない。あなたのお子さんが安心して過ごせる街は、役人が利潤追求の経営をめざしている街でしょうか。(2004/5/10
9:52)
◆農村歌舞伎の現状と課題
農村歌舞伎は地域に埋め込まれた伝統芸能として連綿と継承され、地域文化による経済誘発効果をもたらしてきたが、縁者と技術伝承に困難のなかで努力が続けられている。以下幾つかの例をみよう。
(群馬 赤城村)上三原田(かみみはらだ)の農村歌舞伎の舞台は、1819年大工・永井長治郎が建造し、国重要有形民俗文化財指定を受けている。窓口9m、奥行き7.2mの茅葺寄棟造で、二重と呼ぶ4.5m×1.5mの小舞台を天上と奈落の両方からせり上げ、下ろす「セリヒキ機構」は日本で唯一の最古のものだ。左右奥3方の板壁を外側に倒すと舞台面が2倍に広がる「ガンドウ機構」、奥行きを深く見せる「遠見機構」、「柱立廻式転機構」は平舞台いっぱいに回転部を支える6本の柱を押して回転させる。構造と演目内容を熟知した180人が2交代で操作する。
農村歌舞伎は5〜10年おきに上演されてきたが、舞台づくりの人手と日数、若年層流出で技術伝承が困難となり、多額な上演費用とともに1976年以降中断された。国と県の支援で1994年におこなわれた舞台の大修理を契機に、歴史的建築文化遺産を後世に伝承する舞台操作伝承委員会が95年に発足し、96年試験操作のあと毎年上演されてきている。村立中学校生徒も参加する歴史的な村おこし事業でもある。
(香川 土庄町)
小豆島の田園風景のなかに茅葺き屋根の肥土山農村歌舞伎の舞台がある。毎年神社の祭りに奉納として5月3日におこなわれる。300年前の江戸期に水不足に悩む村人を助けるために庄屋が私財をなげうってつくったため池の完成を祝って始まった。肥土山地域の250戸を6組に分けてローテーションする。子ども歌舞伎は当番の組だけでは不足で全組から演者を探す。96年に結成された農村歌舞伎後継者育成会は、三味線、床山、舞台づくり、着付けなど歌舞伎全体の技能を継承する。小学校は総合学習の時間で取り組まれている。
◆2003年度研究開発補助金(経済産業省所管)交付状況
2003年度に企業が受けた研究開発プロジェクトは326件であり、上位10社で413億8千万円に達している。日立製作所87億円、三菱重工75億円、東芝55.2億円、富士通35.9億円、川崎重工32.2億円、三菱電機29.1億円、神戸製鋼25.5億円、シャープ25.1億円、NEC24.7億円、石川島播磨24.2億円など1社のみで巨額の補助金を受けている。一方約500万社に上る全中小企業向け補助金総額は73億円であり、日立1社に及ばない。上位10社の合計は全中小企業の5.7倍に達している。大企業の研究開発費はほとんど政府出資で賄われている。政府の補助金交付基準の基本は、市場開拓力つまり利潤極大化効果にあるとするが、日本の技術開発の先端は中小企業群によって開拓されてきた分野が多い。国内需要回復の最大の条件は、長期不況の打撃を最も受けている中小企業の研究開発水準の上昇にある。21世紀が中小企業の時代であるならば、こうした「政府の失敗」は早急に是正し、企業規模による非対称性を解消し、プロジェクトの評価基準を再検討する必要がある。(2004/5/10
8:44)
◆ドイツの青年失業対策
EUの失業率は(%を超え、特に25歳未満の失業率は15,8%(03年4月)と高率だ。97年EU首脳会議(ルクセンブルグ)は欧州雇用戦略を提起し、「青年は失業後6ヶ月以内にチャンスを与える積極的な措置を執る行動計画」を策定し欧州委員会が評価する仕組みをつくった。
98年に政府は「青少年緊急雇用プログラム(JUMP)」を決定し翌年から実施。毎年10億ユーロ(1350億円)をEUと独政府が共同出資し、15歳から25歳までの青年に毎年10万人の雇用を創出する。
○職業訓練雇用への給与補助金保証と地域プロジェクト推進
○女性・障害者・外国人の職業訓練職支援
○パート労働支援
○職業訓練未受者の企業外訓練
○義務教育(ハウプトシューレ)未終了者への修了証書取得支援
JUMPに参加した青年はのべ51万人(03年5月)、うち60%が就職しこの計画は終了し、04年末までのJUMP−PIUSで3億ユーロを投入する。独連邦議会は青年失業対策企業負担法を可決し(○300:×284)参議院に送付した(04年5月7日)。11名以上の従業員がいる企業は職業訓練生を受け入れ、一定数を切る企業は割当金を義務づけ、その割当金で他企業の受け入れを援助するというものだ。不況下で受け入れが減っている。失業率10%を超える青年失業者対策を労組が求め、経営者団体は反対してきた。シュレーダー政権は政府支援による10万人青年雇用増をめざす「ジャンプ」という時限政策を実施してきたが、それを更に強化するものだ。この法案は職業訓練職協定によって一時凍結された。ドイツの一般的な就業システムであるデユアル・システムは、企業が青年と職業訓練契約を結び、一定の報酬を払って職業訓練職を受け入れ、約3年の期間で技術を身につけ期間終了後に正規就職するというものであり、職人的マイスター制度の伝統が生きている。ドイツ政府とドイツ商工会議所(DIHK)は毎年3万人分の職業訓練職を創出する協定を結んだ(6月16日調印)。05年から07年の3年間で希望するすべての青年に最低1回職業訓練職を斡旋し、政府が企業に補助金を出し新たに2万5千人分を増やし官庁・公共企業で20%増員する。当初は受け入れに消極的な企業への負担金を科す法案を準備したが否決されていた。ベルリン商工会議所は、来年度から11800人分の職業訓練職を550人分増大する。今年すでに50人分前倒しで実施する。JUMP・PLUSはベルリンのミッテ地区連峰職業案内所管内のみで650人が対象となっている。対象は15ー25歳までの失業青年である。ベルリンの失業青年の3分の1が外国人で、ドイツ語教育などの支援も盛り込んでいる。DIHKは今年上半期の青年職業訓練職契約が昨年同月比+3,5%増加し(全国81商工会議所のうち62会議所で増加し、16会議所で減少した)、旧西独部で+3,9%、旧東独部+1,6%と地域差がある。
青年完全失業率が10%を超えている日本は、青年の自己責任原則に委ねられている。(2004/5/9
8:07)
◆海外版輸入CD禁止問題と再販制
現在開催中の第159回国会で内閣提出の「著作権法の一部改正案」(閣第91号)が提案され、「商業用レコードの環流防止措置」のための輸入権設定が導入される。日本の音楽系企業が安価な海外産CDの流入によって、音楽系CDの価格低落が進んだことに対抗して、レコード輸入権を創設してレコード会社が輸入を独占することによって安価な海外版を阻止しようというものだ。現行の再販売価格維持制度によって、CDの海外生産と現地販売は現地での文化普及という目的で許されているが、現実にはブートレッグ(ライブ録音流出盤)や海賊盤(市販正規盤からのコピー)が国内に流入して国内CD市場を混乱に追い込んでいる。この法案に対し音楽愛好者から日本盤の洋楽輸入盤が買えなくなるのでは? 日本盤がCCCD(*)で輸入盤が普通のCDの場合でも日本盤しか買えなくなるのでは? 国内盤が出ないCDは小売店に並ばなくなるのでは? 個人的に楽しむための輸入も税関でストップされるのでは?等の不安が高まって反対運動が起こっている。(*CCCDとはイスラエルの軍事用暗号コードを民生用に転用したコピー防止コードを添付したCDを云う)
再販売価格維持制度とは、文化・芸術産業(出版・新聞・レコード)は市場原理にはなじまないとして競争制限を行い、指定された最終小売価格を厳守しないと商品を卸さないという仕組みで業界を保護している。再販制を廃止して市場競争に委ねる提案は、猛烈な業界の反発を買って現状の制度が維持されてきた。アングロサクソン系では再販廃止の傾向にあるが、独仏などの大陸系は文化保護政策として再販制を維持している。今回の輸入CD規制は、業界からの再販制強化をめざす動きで、消費者側からの猛烈な反発が起こった。WTO・知的財産権協定という問題も絡んで複雑に展開している。
グローバリゼーションの進展の中で、従来の国民国家の国内市場の枠内での公的規制が、海外生産物の流入によってゆらいでいる現象は、農産物(産地衰退による自給低下)や伝統工芸品(文化的製品の衰退)その他あらゆる製造業で起こっている。対立の焦点は、公共財の生産と流通における公共性原理と市場原理の対立と調整の問題にあり、国際経済学や公共経済学の産業調整政策の中心的な問題となっている。文化庁審議会のCD輸入に対する意見聴取で述べられた白石忠志氏(東大)の規制反対論を紹介する。
@輸入権設定は、国際的な市場分割になり競争がなくなって消費者利益は阻害される
A洋楽CDのみを除外するというのは、内外無差別の国際原則に反する
B音楽創作者の創作インセンテイブを確保するという理由は、現実に海外進出している音楽家をみると事実と異なる
C海賊盤に対抗するために外国では安く売るという問題は、当該国の知的財産法制の問題であり、日本の消費者に転嫁してはいけない
D消費者への利益還元の最も良い手段は競争にある
いずれにしろ愛好者にとっての最大の問題は、@現在享受しているCD選択権が、レコード会社の輸入権によって制約を受ける(レコード会社が売りたいものだけがフィルターを通して市場に提供される)A税関の摘発や訴訟のリスクを回避する輸入盤敬遠の萎縮効果が業者に誘発されるということだ。この問題を甘受してでも国内生産を維持するかどうかにある。
以上の反対論に対する業界の規制強化論の概要を紹介する。
@著作権者の同意なしに日本市場に輸入されるCDは、日本のエンタテイメント産業に打撃を与える
A信頼性の高い安定した効率性ある配給形態なくして、音楽産業の市場維持はできない。並行輸入は外部の経済要素に左右され国内価格体系とのミスマッチを起こし、音楽ビジネスの不確実性を高める
B並行輸入業者は売れ筋タイトルだけを選び、国内産業のマーケッテイング・コスト投資・プロモーションを外部経済として享受するトレーダーであり、不公正競争をもたらす
C並行輸入業は国際展開している大手小売業の傘下にあり、物価の安い国々で大量仕入れを行い、通貨変動を利用して大量販売するシステムであり、独立中小小売業の基盤を崩壊させる
DCDは品質標準に即した創作物という価値に消費者の信頼があり、低質な並行輸入品は製品自体への信頼を低下させる
E並行輸入品は、裏で非合法の海賊盤を増加させ、CD生産者の合法販売に損害を与える
F創作から販売に到る全過程が国内で保証されていることが、文化創造共同体の維持を可能とする
文化や芸術等の市場原理になじみにくい公共財の供給は、生産者と消費相互の自己利益が対立しやすい性格をはらんでいる。その時に個別具体的な商品ではなく、文化と芸術の総体的な本質的価値をどう位置づけるかが問われる。その場合にリアルな紙とか盤とかの倍体を前提に規定していた現行再販制は、実質的に電子媒体流通で浸食されている事実を踏まえて、電子流通時代の新たな再販制を再構築することが求められるのではないか。(2004/5/8
13:42)
◆日本農業の危機
米国と国内の不作による国内外の大豆価格の高騰が豆腐メーカーを直撃している。輸入価格前年比30%アップによる原料コスト上昇を最終小売価格を上げたくないスーパーが加工業者に転嫁している。国内消費の豆腐の60%が米国産大豆を原料としている。シカゴ大豆先物相場は、16年ぶりに1プッシェル(27kg)10ドルを突破し(昨年8月5ドル台)、加えてアジアへの海上運賃が中国の鉄鉱石輸入増加で上昇し、メキソコ湾岸積み日本向けがトン当たり72.5ドルと昨年同期の倍となった。国産大豆も昨年の冷夏で九州と北海道が不作となり、原料価格は1丁当たり国内産で10円、輸入物で5-6円上昇した。
穀物自給利率28%・熱量総合自給率40%に落ち込んだ日本農業の危機は、過疎と高齢化による耕作放棄地の発生面積が21万haに達し、農水省の自給率目標値45%は不可能な状況になり、農地減少阻止が農政中期指針「食料・農業・農村基本計画」再検討の主要な議題となった。主要な政策は、構造改革特区で認められた企業による農地借り上げを全国拡大し、企業の農地所有条件を緩和するというものだ。農業団体は、破綻企業による耕作放棄地の更なる拡大や産廃処理場化の危険を主張して拒否し、集落単位で担い手農家を決め賃貸で農地を集中する規模拡大戦略を提案している。この主張は、従来の農家間格差解消戦略から集落の選別戦略への転換によって、企業主導型農業をあくまで阻止しようとする意図がある。
現在では企業の農地所有と農業は原則禁止であり、農業生産法人として農地取得が可能であるが(1社当たり1/10以下の出資、複数企業の合計が1/4以下)、すでに構造改革特区では外食産業が農地を借りて農業に参入している。WTO農業自由化路線に無条件に服従してきた日本農政の基本を問いただし、国内完結型農産システムへの転換という問題が問いかけられている。(2004/5/7
10:37)
○環境支払制度の現在
琵琶湖東岸・国営干拓地・専業農家比率84%の大中湖で、仲間13戸と減農薬・減化学肥料による米作り農家・藤田欽司(51)。県農業改良普及センターとグリーン近江農協((八日市)が共同開発した、カメムシを防ぐ技術で「環境こだわり農法」によるヒノヒカリブランドの比較優位だ。滋賀県独自の「環境こだわり農業推進条例」(〇3年制定)は今年から環境直接支払制度が追加された。農薬と化学肥料を従来の50%以下に削減した場合、10アールあたり米5000円、ハウス野菜3万円、お茶1万円の助成金が支払われる。助成金の基準は、こだわり農法の採用で生産費は水田10アール当たり5千円のコスト高になり(有機肥料+草取り)、収量は5%減少するが5%高く売れるから収支は変わらないから、コストの分だけ県が負担する仕組みだ。環境支払制度は87年から欧州で実施されたが、農水省は検討段階で滋賀県が独自に試行している。滋賀県の環境支払対象は、水田中心に2400haで、5年後には水田だけで全県20%(7200ha)に拡大する。支給される助成金の使途は、水田へのワラのすきこみと牛糞や土づくりにある。有機農法→消費者信頼→有機農法の拡大という好循環が滋賀県で生まれている。(2004/7/16
20:20)
◆「国土審議会調査改革部会中間とりまとめ」は21世紀の日本列島をどこへ導くか
概要を紹介して内容を分析する。
1)情勢認識
(1)本格的人口減少社会の到来
(2)国主導から地方主導へ
(3)グローバライゼーション
(4)環境制約の顕在化
2)基本方向
(1) 2層型広域圏形成=東アジア日帰り圏の上層拠点都市と生活圏域都市(人口30万、1時間通勤圏)その下層に「ほどよい」美しいコンパクトな自力更生農村の「選択と集中」。地方はスマートグロース、スローライフで。
(2)グローバル国家の創出
(3)全国総合開発計画と国土利用計画の二重構造を解消し統合する
*コメント
@戦時国土計画の新たな再編:第2次近衛内閣「基本国策要項」(1940)→「国土計画設定要項」→「黄海渤海圏地域国土計画素案」→「中央計画素案・同要綱案」にみられる大東亜共栄圏構想による大東亜国土計画大綱(日満支ブロック)が、21世紀になって東アジア経済圏を前提とする国際的産業配置構想として提起されている。上層広域圏に国際空港の拠点を配置し、東アジア国際分業システムを構築するための国土再編成である。下層生活圏域を取り巻く農村部は、美しい国土創造による日本型精神統合方式として戦前と酷似している。
A国土計画(全国総合開発計画)と土地政策(国土利用計画)の二重構造を統合するのは、戦前期の近衛「昭和研究会」が提起したものであり、その基本は国家高権による土地所有権流動化にあった。
B中央統制型「地方分権」論 小規模分散自治体では国土計画は機能しないから、広域道州制を採用して実質的に地方は消滅させる。団体自治権は拡大するが、住民自治権は衰弱して実質的には地方自治が消滅する。地方制度改革は、2層型広域圏構想を展望している。
C選択と集中から排除される地方は「自助・互助」によってコンパクトな美しい地域になるか。拠点大都市に財政を集中する擬制的内発型発展論は内発の条件失う。
結論的に云うと、地方分権は虚妄で実質的に国家中央統制による垂直統合型構想である。住民主権による水平ネットワーク型構想への転換が求められる。以上 岡田知弘氏の論考(『ポリテイーク』7号所収)参照。(2004/5/5
20:50)
◆契約社員・個人請負の現状
1997年ー2002年の5年間で正社員398.5万人減少し、非正社員が370万人増大している。この数値に表象される実態を見てみよう。華やかに見えるTV業界の現場は、派遣や契約社員の底辺労働によって支えられている。ある在京TV局子会社で働く男性契約社員(29)をモデルにその労働実態を見る。このTV局の4/5は契約社員である。
専門学校で音響を学び8年前に契約社員で入社し、現在では正社員と同じ仕事を任され、バラエテイや情報番組の音響を担当し、深夜不規則長時間勤務(残業月平均80時間)、入社時に約束されていた正社員への道は閉ざされ定年まで契約身分が続く。結婚し4歳と2歳の子どもがおり、自宅は両親から譲り受けている。
毎月手取り給与173000円 内訳:基本給128000円・時間外保障額84000円・食事手当4000円
(*時間外保障額は、80時間未満の残業手当として一律支給であり、80時間以上は100時間が上限となる)
さらに最近の傾向として労働者でありながら雇用契約ではない「個人請負」契約が増え、労基法適用から排除されている。企業と専属契約を締結し就業する「個人事業主」であり、自前のダンプカーを所有する運転手や軽急便運転手などに多い。あるトラック運転手Yさんの場合は、A社との個人事業主・請負契約であるが、出勤先はC運送会社であり同社の指示を受けてトラックを運転している。しかしA社とC社の間に更にB社が介在し、YさんはA社→B社→C社と二重に丸投げされピンハネされている。3社とも雇用関係がないとして雇用責任は免れ、請負を偽装した職業安定法44条の労働者供給事業禁止規定に違反している。勤務時間は深夜零時から昼過ぎまでの12時間労働が常態化し、休憩もない。残業代もなく時給換算すると最低賃金を下回る600円である。過積載とタイヤ劣化でブレーキが利かず追突事故を起こしたとたんに免停と契約取り消しとなった。
さらに個人事業主は一般業務に拡大している。ある製販点検業務の個人請負は、時間給1600円のみで、残業手当・一時金・有給休暇・退職金・労災保険・社会保険・厚生年金・雇用保険など雇用契約に伴う権利は一切ない。年間2600時間労働で年収420万円、通勤定期代月9000円は自己負担で年間10万円以上となる。妻と3歳の息子の3人家族である。
業界トップの業務請負会社クリスタル(本社京都)の実態を見よう。売上420億円(93年)→3500億円(03年)へと急成長し、製造請負・派遣と技術請負・派遣など約200社グループと9万人の社員を抱えている。しかし実態は日替わりメニューで現場に行く「スタッフ」と呼ばれる青年社員が占め、営業・事務の正社員は少数だ。正社員の退職率は1年で30%という異常な高率だ。営業を補佐する女性社員はゼロですべて派遣であり、2ヶ月間優秀者の更新のみがあり最長雇用期間は6ヶ月という超短期雇用となっている。02年に約1000人いた女性正社員はすべてクリスタル傘下の派遣会社・クリスタルスタッフに転籍され、13年に全員が朝礼で契約期間満了を一方的に告知され解雇された。退職金もなく月給制が時給制となり、残業代も支払われず連日の平均勤務は深夜11時を過ぎる。グループ各社が秘かに採用した元女性社員に対して、「営業サポート自社雇用禁止再徹底」通達が出され、「発覚した場合には超厳罰に処し、連帯責任をとらせる」としている。グループ社長も業績が上がらない者はヒラに降格し、弁護したら解任される。クリスタル最高意志決定機関・経営会議では、幹部社員の成果主義賃金適用を決め、会社の売上規模で基本給を決め、儲かれば報奨金が加算され、赤字になれば2〜7万円の罰金が科せられ、固定給はなくなった。社内通達では「全社員一丸となって365日営業を実施する」という労基法違反の社内通達が出され、社長は「クリスタルグループ発展のために365日出勤する」という誓約書の提出が義務づけられた。日曜日に出勤したかどうかは電話で確認される。不当労働行為のデパートではないか。
ところが雇用形態は正社員でも、請負会社の社員として働くコンピュータ技術者が増えている。政府統計では正社員に算入され労働局の請負・派遣求人数には算入されない。例えばA社に正規雇用されても、実際の勤務先は業務委託した「お客さま」企業B社であり、職場には少数のB社社員と多数の請負・派遣社員がいる。。請負も1社ではなく5−6社が請負同士で競争させられるというシステムだ。注文企業が苦情を出せば労働者はすぐに差し替えられ、請負会社の社員は緊張し必死で要求に応える働き方を強いられ、毎日深夜までの残業が続き精神に異常を来す者もでる。注文企業が事業方針を変更すると職場を失い煩瑣な配置転換が繰り返される。コンピュータ技術は分野が広く多種多様で、自分が積み上げてきた技術が異動先で活きることは稀だ。事実上の転職と同じなのだ。情報処理企業のほとんどはこの形態であり、社員10人程度に外部社員(派遣・請負)100人というのが大手では普通となっている。
こうした「派遣」・「個人請負」契約のメリットはいうまでもなく経営者側にある。使用者は雇用契約すれば労災保険料、週20時間以上働く労働者には雇用保険の加入義務、正社員の3/4以上の労働時間がある労働者には健康保険と厚生年金保険料を負担しなければならないから、個人契約では月に最低2万円、多くは5万円の各種保険料負担から逃れることができる。米国から出てきた個人請負は、プロフェッショナルなフリーランサー(スポーツ・芸術など)を対象としたものであり、一般業務は明らかに違法である。
厚労省毎月勤労統計(4月速報 常用労働者5人以上の事業所対象)によると、常用労働者数4286万人(前年同月比+0.4%)となったが、パートを除く一般労働者数の減少幅は-1.1%であり、パート労働者数の増加に押し上げられたに過ぎない。パート労働者数は106ヶ月連続の増加で「一般労働者のパート労働者への置き換え」が進んでいる。所定内給与(基本給・諸手当)は255.186円(前年同月日+0.3%)、残業代+4.7%・一時金+12.6%で、現金給与総額は280.746円(+0.3%)で実質賃金は+0.9%である。総実労働時間は158.7時間(+2.2%)で、内訳は所定内+2.1%、所定外+4.0%となっている。
政府税制調査会は「日本社会の構造変化の実像を的確に把握した」徴税政策を提起した。@共働き世帯の増大に対応する控除見直しAフリーター増大に対応する正規雇用を基本とする所得税体系の見直し(非正規雇用への課税)B消費税増税の検討を打ち出した(6月22日)。
*コメント:東京都地域最低賃金は時間額708円であり、1日8時間・月22日労働で124608円となるが、このTV契約社員の基本給128000円はほとんど最低賃金に近いほどの低額である。さらに家族扶養手当が支給されていない。時間外保障額は、本来的には基本給の性格が強く、残業手当は正確に支給すべきである。このTV局の契約社員の平均年齢は26-27歳で早期退職率が異常に高い。にもかかわらず新規応募者が殺到し完全な買い手市場である。TV業界は年収200-300万円の底辺労働が支え、膨大な高収益をもたらしていることが分かる。いま労働市場の30%強は非正規労働が占める。450万人に達したフリーター世代を弾劾の世代と呼び、団塊の世代の500万人に較べると、賃金・年金給付含めて正社員との生涯所得の差は1億6300万円になると推計される(週刊エコノミスト5/4・11号)。正社員の減少は正社員の労働をも過酷なものとしている。市場原理による「自己責任」が貫徹されつつある日本の労働市場は異常且つ異様な状態になっている。(2004/5/4)
◆川口市中小企業実態調査から
全労連・全商連共同による川口市の中小企業55社対象(4月9日実施 40社回答)の調査結果の概要。
・昨年同期との売り上げ比較 同じくらい53%・減少32%・増大16% (減少幅は20-30%)
・資金繰り苦しくなった46%
・取引先からの単価切り下げ要請あった63%
・不公正取引あった58% 内訳支払い遅延16%・不当変更16%・下請代金減額12%
・営業上の不安 税負担50%・消費税引きあげ50%
・年金保険料 引き下げて欲しい69%・現行(13.58%)で精一杯31%
・消費税 なくしてほしい65%・引き下げてほしい65%
・今後の経営見通し 横ばい50%・わからない24%・悪くなる21%
・政府、自治体への要望 無担保無保証融資62%・中小企業税制改善62%・消費税減税廃止53%
運輸通信系の大企業が空前の利益をあげる一方で、中小地場産業の回復は厳しい。4/1施行の下請2法改正による民間取引改善は進んでいない。
◆三菱自工は存続できるか
三菱自工は減損処理会計(固定資産価値が帳簿価格を下回った場合に差額の損失を計上)を05年3月期に前倒し適用する検討に入り、策定中の経営再建計画のリストラ費用を含めると、最終赤字が1000億円を上回ることとなった。減損処理会計は財務健全化を目的に06年3月から義務づけられたが、同社は前倒し処理によって財務負担を早期処理して新車開発などの投資環境を整備する。 同社の固定資産状況は、岡崎工場稼働率50%(小型車コルト)など過剰設備で、投資回収見込みがなく、減損処理特別損失は総額1000億〜1500億円に上る。さらに04年3月決算は、北米事業の失敗で720億円の最終赤字の見通しだ。
ダイムラーは4500億円の追加出資による再建支援計画を拒否し、手を引いてしまった。積年にわたる隠蔽体質が株主の不信を招き株主責任を重視する欧米型経営のガヴァナンスからみると不適とみなされたわけだ。三菱自工は、00年7月にクレーム情報隠匿が判明した後も体質は改善されず02年の横浜死傷事件にいたり、そこでも整備不良と責任転嫁を行うという最悪のモラルハザードに陥った。しかしダイムラーが拒否した真の理由は、すでにトラック・バス部門を切り離した三菱ふそうを子会社化して、そのブランド力でアジア市場を席巻できるからであり、自家用車部門は要らないのだ。
さて三菱重工の経営危機の根元的な要因は深刻だ。同社は1907年に当時の軍需企業のトップである三菱重工業から分離・独立して発足し、歴史的に秘密保持の軍需企業的な体質が隠然と続き、政府・官僚を無視する傾向が強かった。歴代社長には、久保富夫氏(戦時期の戦闘機開発)や東条輝雄氏(東条英機の次男)など軍部密着型のトップが君臨してきた。三菱自工の企業体質は、@自己の社内地位堅持Aコスト削減B顧客志向であり、マーケッテイングは欠落していた。三菱自工に対する2回の産業再生法適用によって6億円の減税特典を受けた同社は、政府をも舐めきっていたわけだ。社会責任型経営に大転換できなければ、同社の運命は終局を迎えるだろう。(2004/5/4
9:48)
建交労(全日本建設交運一般労働組合)埼玉トラック部会のトラック労働者緊急アンケート調査から(95人対象 7月22日〜8月10日実施)。
リコール隠しはメーカー責任が重大 78%
他のメーカーにもリコール隠しがある 86%
(実際に危険な目にあったことは)
事故にあった 3%
ヒヤッとしたことがあった 31%
(危険にさらされた部分は)
ブレーキ 56%
エンジン 11%
タイヤ・ハブ7%
クラッチ 7%
(事故発生後の対応は)
メーカーへの調査依頼 27%
メーカーを追求 23%
リコールされた 28%
◆『中小企業社長さん白書』(アクサ生命保険)
中小企業経営者対象にまとめられた意識調査。
・「経営に自信がある」65%(特に情報ビジネスでチャンスが広がっている運輸・通信関連)、「会社をここまでにしたのは自分だ」63.8%と経営に対する自負と誇りがうかがわれる。しかし「自分に万一のことがあると会社のことが心配だ」76.4%と引退後の会社の心配をしている人が34.5%に対し、「生涯現役で働きたい」63.3%と経営責任感が強い。(2004/5/4
9:19)
◆BSE(bovine spongiform encephalopathy牛海綿状脳症 狂牛病mad
cow disease)米国産牛肉の輸入解禁問題
プリオンという特殊な感染性タンパク質が原因となり、脳がスポンジ化して死に至る病がBSEである。プリオンに感染した羊の肉骨粉飼料が感染経路として疑われ、人のプリオン病であるクロイツフェルト・ヤコブ病(人格障害・痴呆・痙攣・マヒ症状)は狂牛病の牛から感染したとされている。
米国で1頭のBSE牛が発見されてから米国産牛肉の輸入は全面禁止された。輸入解禁条件としての全頭検査と特定危険部位の除去について米国政府は拒否し、0.1%(4万頭)抽出検査と30ヶ月齢以上の除去を米国基準として主張している。ところが日米直接協議の圧力で8月解禁という合意が行われた。その根拠は2つである。
@国際獣疫事務局(OIE)基準の改定
WTO協定のもとでの牛肉貿易の安全基準が改定され、検査はフラフラ歩くようになった牛を対象にし、特定危険部位の定義が腸の先端(回腸遠位部)から腸全体へと変更された。OIE基準が安全貿易物品となれば、米国基準である30ヶ月未満の牛は特定危険部位でも輸出可能となり、30ヶ月を超えた牛でも特定危険部位(脳、目、脊髄、脊柱)を除去すれば基準を満たすことになる。
A米国における激しいロビー活動
秋に大統領選挙をひかえる米国で、食肉業界の激しい禁止解除のロビー活動が展開し、日本の参議院選挙の後と米国大統領選挙前という政治日程のなかで8月解禁の合意が行われるに到った。
しかし他方で別の注目すべき動向がある。米ミズーリ州農業者連盟傘下のゲイトウエイ牛肉協同組合(58人)が自主的な全頭検査実施の認可申請を農務長官におこなった。「日本の顧客が検査費用の肩代わりの意向を示しており、厳格な検査によって日本市場の信頼を回復できる」としている。農務省はカンザス州の食肉処理会社クリークストン・ファームズの全頭検査申請を拒否した実績がある。ここに示されていることは、米国食肉処理業界の階層分化が進んでおり、大手企業は全頭検査を忌避し、中小規模業者は顧客優先の全頭検査の受け入れようとしていることだ。さらに日本側の牛肉業界がどう絡んでいるのか興味がある。
*コメント:OIE基準は、外見では問題ない牛も全頭検査で摘発されている実態と乖離しており、特定部位の定義の変更によって日本のホルモン焼き等はとても危険で利用できないことになる。米国基準の30ヶ月は、日英での肉骨粉のエサを禁止した後に20数ヶ月でBSEが発生している事実にも対応できない。WTOを主導する米国の自由貿易原理が、安全性原理を優先するEU・日本の予防原則を否定し、リスク評価とリスク管理を形式化してしまった。日本の国産牛は、全頭検査とICチップによるトレーサビリテイ(履歴開示)によって高度の信頼性を構築してきたが、この努力は水泡に帰する。国産牛の価格が高く国際競争に敗北するというのであれば、国内価格保障政策を導入してでも安全性を堅持すべきではないか。食料における安全原理と利潤原理が衝突した場合の調整政策は、当然にして生命優先の安全原理にある。米国主導のWTO貿易システムの限界は、貿易主導型農業政策から公共性原理による国産安定供給システムへの転換という問題を提起している。選挙という卑小なポリテークな次元の問題に矮小化してはならない。(2004/5/3
8:02)
◆新古典派市場原理のフレクシブル労働理論の陥穽ー岩佐卓也「働き方の多様化の論理」(『ポリテーク07』)参照
新古典派の真の脅威は、招来される困難を更なる新古典でしか突破できない共同幻想を抱かせる点にある。02年度時点での日本の雇用者数5337万人のうち非正規雇用は1451万人(28.7% 女性比48.2%・若年比43.8%)に達している。この結果女性における賃金水準格差は54.3%に拡大し、労働の多様性の内実は垂直差別階層構造になっている。女性や若年層は自ら非正規雇用を選択しているのであろうか。そうではなく、非正規労働を価値観の多様化や自己選択に求める理論の虚妄性が露わとなってきた。以下、多様化理論の代表的論者である八代尚宏氏の主張を検討する。
@正規雇用の解雇規制は、非正規に解雇をしわ寄せする格差助長論である
A有期雇用の期間制限は、新規雇用機会を奪い多様な選択機会を縮小する
B派遣労働の期間と業務制限は、正規雇用保護による派遣差別である
C正規雇用の安定賃金は、硬直的であるから業績主義に転換すべきである
D日本的企業組合は正規労働者の利益代表であり、解体すべきだ
この八代理論は、着実に制度的に実現されてきた(98年有期雇用の上限規制緩和 99年派遣業務と期間の制限緩和)。労使対等原則による対抗の核心であった年齢別生活保障賃金と解雇制限規定の緩和は、正規雇用の労働権を剥奪するのみならず、非正規雇用をより不安定化して経営権を一方的に強大化してきた。八代理論の公平原理は、実質的な労使対等の理想的労働市場を前提とすれば成立するが、現実は労使非対称性の市場であるから、不公平性を更に増大させただけである。
さて最大の問題は、こうした八代理論を支持する潮流の一部に、強力な左翼系理論家が加担していることである(大西広・木下武男・碓井敏正・石田好江など)。この背景には、正規労働者を基軸とする労働者上層と下層の労労問題がある。戦略的課題は、正規・非正規の分断競争に対抗するセ・パ共闘の構築にある。正規労働を特権から解放し、全ての非正規労働へ対等に拡充するという戦略である。この点で大西広理論は、形式的な自由論理によって、実は労働総体を経営の恣意にさらす最悪の効果しかううまない。強力な労働権を基盤として、正規・非正規の差別が問題とならないオランダ型モデルを機械的に日本へ輸入することはできないのだ。
(2004/5/2 22:00)
◆吉田敬一「経済構造転換と中小企業の岐路」(『ポリテーク07』旬報社)を読む
日本の代表的な社会経済学系中小企業研究者による総論的分析。概要を照会しコメントを付す。
中小企業の存立危機の背景と活性化の展望と課題を考える。
○プラザ合意(1985年)→従来型生産システムの崩壊→企業内国際分業体制の構築(製品戦略・部品調達)→生産の海外移転(海外生産比率02年度18%、逆輸入比率15%)→地域経済と中小企業の危機
○有力取引先企業の海外移転→国内空洞化に連動しない外延的国際化(35%)or国内生産縮小を伴う海外展開(50%)and企画開発部門の海外展開(15.7%)
○対応戦略:日本経団連「活力と魅力溢れる日本をめざして」(2003年)=MADE
IN JAPANNからMADE BYJAPANへ→国内生産放棄
理由:日本の海外生産比率(18%)は、米国(30%)・ドイツ(47%)に較べて低位であり、日本のグローバル化はむしろ遅れている
批判:欧米では企業相互乗り入れ(外国資本投資)が活発だが日本は極端に低い。世界平均22%に対し、日本は0.7%。
○中小企業危機の特徴 @企業間信用の手形取引縮小による任意整理倒産の急増(66.3%)A業暦の長い老舗企業倒産の急増(91年度6.8%→02年度26.8%)B放漫経営比率の急減(32%→7.7%)C地場産業倒産の急増(01年度2696件)
○不公正取引:知的財産・工業所有権ノウハウの海外流出(金型図面、冶工具)、下請代金減額・遅延・割引困難手形交付
○商工自営業の衰退(03年度-45万人) 自営業の衰退は日本のみ、女性自営業の衰退も日本のみ
○対抗戦略
@ブランド戦略(メイド・イン・ジャパン)の再構築
A文化型産業の非価格競争戦略
B規模の利益から専門性の利益へ
C個性的な地域産業集積による内発型発展
*コメント:グローバリゼーションを不可避の必然とみなし、対抗戦略はそのこと自身はその限りで正しいが、いずれも非常に内向きの性格が強く、グロバリゼーションのもう一つの選択肢について提起されていない。米国型多国籍企業戦略に対抗する戦略を構想しなければならない。それはEUに代表されるドルから自立しようとする地域経済圏の構築ではないか。東アジア経済共同体の形成というマクロ的戦略のなかで、東アジア国際分業の在り方を探らなければならない。メイド・イン・ジャパンの日本一人勝ち戦略では限界がある。(2004/5/2
20:12)
◆03年度勤労統計から
○総務省・失業率統計(30日発表)
完全失業率 5.1%(前年比-0.3%)
完全失業者数 342万人(前年比-18万人)
若年層(15-24)完全失業率 10.0%(前年比+-0%)
男性若年層完全失業率 11.5%(前年比+0.3%)
就業者数 6279万人(前年比+13万人)
自営業種・家族従業者 -7万人
雇用者 +15万人
製造業 -36万人(前年同月比)
サービス業(業務請負)+37万人(前年同月比)
非農林業雇用者常雇 -23万人(前年同月比)
同 臨時雇 +40万人(前年同月比)
○厚生労働省04年度3月一般職業紹介状況(30日発表)
有効求人倍率(季節調整値) 0.77倍(+-0)
有効求人 +1.7%(前月比)
有効求職者 +2.1%(前月比)
新規求人 +20.5%(前年度比)
03年度平均有効求人倍率 0.69倍(前年度比+0.13)
都道府県別有効求人倍率 下位:青森0.32・沖縄0.36 上位:愛知1.28・群馬1.23
○厚生労働省毎月勤労統計調査(30日発表 速報値 従業員5人以上)
現金給与総額 285308円(前年同月比-2.7%)
所定内給与(基本給・扶養手当) 254789円(前年同月比-0.1%)
所定外給与(残業代)
19291円(前年同月比+3.3%)
実質賃金(名目-物価変動分) -2.5%
就業形態別給与総額
正社員一般労働者 348962円(同-2.4%)
パートタイマー 92480円(同+3.7%)
労働者一人当たり月間総労働時間 156.2時間(同+4.4%)
うち所定内労働時間 145.4時間(同+4.5%)
所定外労働時間 10.8時間(同+3.8%) 上位:運輸通信22時間・製造業16.4時間
○総務省家系調査報告(30日発表)
勤労者1世帯当たり月平均支出 328156円(前年度比+-0)
同 実収入 -0.6%(臨時収入・賞与減による)
同 3月支出 348152円(前年同月比-0.5%)
○総務省全国消費者物価指数(CPI、00年度=100)
総合指数03年度平均(除く生鮮食料品) 98.0(前年度比-0.2%)
同内訳 教養娯楽耐久財 -13.8%
保健医療サービス + 9.4%
同 04年度3月 97.7(前年同月比-0.1%)
*コメント 以上の統計からうかがわれることは、@完全失業は依然5%台を推移し、若年層は深刻な失業状態にあり、就業者は正規雇用の減少と臨時雇用の増大がパラレルに進んでいる、産業別では建設業が沈滞し、地域別労働市場の格差が進んでいる、A現金給与と実収入は連続して減少し、逆に総実労働時間は増大している B従って生活は消費支出が横ばいとなり、耐久財のデフレと保健医療のインフレがパラレルに進んでいる(健康を犠牲にして娯楽耐久財を買っていると云うことか)。政府は「明るい兆し」と失業率低下を評価しているがその名実は何か。失業率は仕事を探している人の率だから、低下の要因は@就業者が増えたかA仕事探しを諦めた人が増えたかの何れかだ。就業者と完全失業者の合計である労働力人口は、99年から減り続け、昨年末から上昇傾向にあるが、133万の絶対減少からみると部分的だ。求職活動をしない非労働力人口は増大傾向にあり(前年比74万人)、高齢化と同時に若年層が就業を諦めている。完全失業率の低下は、明らかに就業を諦めた人の増大が要因となっている。(2004/5/1
8:39)
◆中小企業庁『2003年度産地概況調査』
産地とは、同一地域で同一業種の製品を全国販売している中小企業集団又は地域、年間生産額5億円以上の538産地(繊維118,食料品88,木工家具79)を対象に03年9月調査
○激減する産地企業数:03年度9月末産地企業数48558で02年比-4218(8.0%)、99年比-13642(21.9%)
○総生産額:02年実績87155億円(前年比-5.6%)、03年見込み81794億円(-6.2%)
○従業者総数:03年489747人(98年比-177000人)
○産地の問題:「内需不振」83.2%「受注単価低下」52.9%「競合輸入品増加」46.7%
○集積のメリット:「適切な分業体制が築かれている」39.6%
○失われつつあるメリット:「分業体制」22.4%「熟練技能の確保」41.3%(繊維では51.0%)
○今後の対策:「製品の高付加価値化」79.6%(前年比+4%)「新製品・新分野進出」75.6%(前年比+5%)
*コメント:産地衰弱の原因は国内長期不況とアジア逆輸入にあり、産地内有力企業がアジア海外生産で国内向け逆輸入をおこない、産地集積のゆらぎが生じている。分業システムの数工程を専業化した熟練下請企業が担って高品質の製品を創出してきた産地生産構造が危機に瀕している。産地再構築の条件は、海外生産規制(場合によってはSG措置)と産地支援政策というマクロ的な課題と、産地業者のネットワーク型協働による新製品創出と新分野進出にある。新たな取り組み例の幾つかを挙げる。
[静岡家具産地]バリアフリー対応家具開発、地場産ヒノキ材を使った学校児童用机・椅子開発、公募制の国際デザインコンペによる国際的に通用するデザイン開発(集積活性化法認定事業申請)
[今治タオル]東京都内のアンテナショップの展示会による新分野・販路開拓、インテリア・雑貨・ベビー用品など新分野進出、マフラー、ショール、帽子、バック、オーガニックコットン(無農薬綿花を使った)などの新製品開発
[燕・三条]県独自の予算と技術支援と地場産業振興センター中心にマグネシウム合金を従来の鋳物方式ではなく板材・丸棒から加工、軽量ペンチ・レンチ、軽量介護車椅子開発、銅材の殺菌力利用の風呂水抗菌用器具開発
*来春大卒求人倍率予測(リクルート28日 全国4300社・学生20400人対象04年2〜3月実施)によると、民間企業の求人総数は597000人(前年比+2.3%)であるが、従業員100人以上の大企業と中堅企業が採用を2ケタ増やすのに較べ、従業員50-98人の企業は-10.1%、5-49人の企業は-23.5%であり企業規模の格差が拡大している。景気回復が大企業のリストラと下請再編成にあり、中小零細企業が負の側面を担わされていることが分かる。主要企業の3月期決算が示したのは、東証一部上場が過去最高益を更新し、そのカギはデジタルと海外にある。シャープは液晶TV、松下はプラズマTVとDVDレコーダー、日立建機は北京五輪・上海万博の油圧ショベル、日産とホンダは欧州・アジアの海外自動車市場、三菱重工は欧州・アジアの発電設備(主力の原動機は不振)である。ここには最大限利潤は海外で、国内はコスト削減とリストラという戦略がある。中国の経済成長を誘引とする@為替変動A素材インフレ(鉄鉱石、石油)B金利上昇というリスク要因を末端価格に転嫁しないで競争力を維持するために、合理化によるコスト削減と海外市場戦略という図式である。多国籍化した大企業の連結営業利益は史上最高でありながら国内大不況は続くという構図は解消されていない。(2004/4/30
8:47)
◆原産地表示義務化
農林水産省は「加工食品品質表示基準」の改定案を厚生省共同専門家会議に示した(28日)。@かんぴょうなどの乾燥野菜・果実Aカット野菜・果実B味付け肉など調味食肉Cしらす干しなど干した魚介類D塩蔵魚介類の加工食品20品目について、使用割合が50%を超える原材料の原産国・地域の表示を義務づけるというもの。(2004/4/30
8:40)
◆WTOと米国ユニラテラリズム
世界貿易機関(WTO)は自由主義世界貿易をめざす国際機関として、米多国籍企業の展開を推進してきたが、実は米国自身のダブルスタンダードが自己矛盾として浮上してきた。米国企業は多国の関税やSGについて厳しい批判を投げかけながら、自国の農業産品については熱い保護を加えている。内外価格差が激しい農産品(綿花、大豆、小麦、食肉、乳製品など)について巨額の補助金を交付している。WTO紛争処理小委員会(パネル)中間報告は、米国の綿花補助金をWTO規約違反と認め、最終報告でも敗訴の方向だ。米国政府はWTO上級委員会に上訴する方針を表明した。綿花補助金が違反と認定されるならば、他の農産物に波及する恐れがあるからだ。大統領選挙を控えた議会とプレッシャーグループの意を受けて、米政府は補助金死守に動いている。ネオリベラリズムの市場原理のポリテイカルな限界が象徴的に現れている。(2004/4/29
9;:16)
米政府は@通商法301条(不公正貿易国に対する交渉・制裁)に基づいて米労組が提訴した中国人労働者に対する人権侵害A米国産業界が準備している中国の為替操作に関する301条調査の何れも拒否し、対中圧力を継続しながら中国政府との話し合いによる解決の方針を決めた(28日)
◆『2003年度中小企業白書』(経済産業省・中小企業庁)概要と業界動向
日本の産業構造縮小の中でサービス業の事務所が増加している。その要因は
@ニューサービス産業(介護サービス、アロマテラピー、インターネットカフェなど)の増大:背景には高齢化、生活様式の変化、企業のアウトソーシング等の多様なニーズの展開に中小企業が対応
Aコミュニテイ・ビジネス(地域貢献型事業)の増大:背景には女性や定年退職者が参加、地域の雇用と生き甲斐など地域活性化に貢献
B後継者問題深刻化ー経営者の平均年齢58歳を超えるて急速に高齢化が進展、小規模企業の廃業は技術と技能の経営資源喪失の危機、後継者育成システムの開発急務
Cマイナス水準で低迷する景況感:日銀短観(企業短期経済観測調査)は大企業の業況判断を回復からプラスに転じたが、中小企業の景況感は低迷している。20%を占める小売業は民間消費の低迷で回復せず、繊維・家具など内需中心産業で厳しさが続いている。輸出関連の電気機械・情報通信機械での急速な改善が見られるだけだ。
白書が注目するコミュニテイ・ビジネスは、中小企業の「地域密着性という特徴を高度に活用した」企業形態であり、行政や企業が対応できない地域要求に住民自身が取り組み事業化する。地域貢献という強い信念を持った指導者が核となり、福祉・交流・介護・イベント企画・情報発信を展開している。
白書はグローバライゼーションの進行を、市場構造と社会制度の異なる海外進出という新しい選択肢を中小企業に提供すると評価している。海外に進出した中小企業は01年までの5年間で257社(国内全中小企業数480万社)であり有意味な数値ではない。海外生産を増加させた中小企業の60〜70%は国内生産を縮小させ、中小企業海外現地法人の生産品の70%は日本への逆輸入品か現地日本法人への納品だ。中小企業自身の主体的な海外展開ではない。
白書の空洞化対応戦略は「新しい事業活動」である。その際の資金調達と人材確保であるが、金融機関の融資規模は企業規模に正比例している。従業員101-300人規模の企業の90%は借り入れを確保しているが、20人までの小企業は70%にすぎない。
コメント:99年の中小企業基本法改正による創造的革新をめざす個別企業の経営支援に基本を移した結果、中小企業の全体環境の分析が弱い。大手の海外展開にともなう下請再編と下請単価切り下げ、商業・サービス業界における不公正取引など優越的地位の乱用、中小企業向け金融の支援の後退(01年230兆円→03年180兆円 約-50兆円)などの分析はない。
01年「骨太方針」が打ち出した技術革新と創造的破壊による低効率部門から高効率・社会的ニーズへとヒトと資本の移動という構造改革による経済成長戦略の基本に、不良債権最終処理が置かれ、大手都市銀行対象に2〜3年で法的整理(倒産)と債権放棄が推進されたが、現実には地方銀行・信用金庫・信用組合に波及し中小企業金融を直撃した(貸し渋り・貸し剥がし)。構造改革の大前提であったIT産業中心の成長産業は、バブル崩壊で成長力を失い、創造的破壊の創造がなくなって破壊だけが進んだ。リストラ効果と海外生産に成功した大手企業と、一部デジタル家電のみの業績が伸びているが全体には波及していない。これら負の部分の影響を集中的に受けているのが中小企業である。逆に不良債権は増え(全国銀行+9兆6千億円=総計42兆円、うち大手銀行が+8兆円)、金融危機が勃発する潜在的な可能性がある。
国民生活金融公庫の03年度設備投資動向指数調査では、03年度に設備投資をおこなった企業は21,5%(対前年度比+1.9%)で、99年以来始めて前年度水準を上回った。業種別では運輸(57.9%)・製造業(22.5%)中心に、サービス業を除く全業種である。目的別では、補修・更新(41.3%)・売り上げ増加(22.6%)・省力合理化(15.6%)などである。小規模企業(30人未満の製造業)1万社対象、有効回答率59.1%。
政府総合規制改革会議は、中小企業優先発注制度(国の工事と調達の一定割合を中小企業に受注する)を事実上の割り当てだとして廃止を含む検討を表明していたが、中小企業庁は中小企業の経営強化と受注確保のために必要とし、詳細な発注情報を開示することを条件に競争を阻害しないことを条件に存続の方向を打ち出した(26日中小企業政策審議会小委員会)。
03年度外食産業市場動向調査(日本フードサービス協会 26日)によると、店舗数+3.8%、既存店全体売上高-4.8%、全店ベース売上高+-0%であり、冷夏とBSE、鳥インフルエンザの影響がうかがわれる。客単価改善は一部高級レストイランにとどまって、外食市場の本格的消費回復はない。(2004/4/28 9:44)
◆東海ものづくり研究会第1回研究会 2003年2月9日(日)
中小商工業研究所・第1回東海部会
テーマ:中小業者をめぐる状況と東海部会の活動計画
部会編成:@仕事おこし部会 A商業・流通・サービス部会
内 容:@地域で仕事が減少し、中小業者は高齢化している。しかし少子高齢化の中で、地域に若い労働力は少ない一方、中小業者は高齢となって60歳ぐらいで仕事を辞めても生活の保障はなく、また高齢になっているとはいえ元気である。このようなことがますます進行すると考える中で、地域の仕事起こしをどう考えていくのか、討論し、研究する。A地域社会での生活が困難となり、商店街がなくなっただけでなく、スーパーも撤退し、中小商店・大型店を問わず買い物をできる所がなくなっている地域もある。このようななかで地域社会の生活を支える中小業者の在り方を考える。
最初に森靖雄教授(東邦学園大)より中小企業の現状と展望についての報告があり、次いで部会に分かれて今後の研究計画について検討を加えた。全員が現在直面している状況と取り組みについて交換し、次回の日程を決めて散会した。仕事おこし部会メンバーは、部品加工業(1)・エクステリア業(1)・刃物販売(1)・看板業(1)と東邦学園大・岐阜経済大・名古屋市立大の3名の研究者の計7名、商業・流通・サービス部会は繊維卸(1)・フッ素樹脂塗装業(1)・事務局(2)と東邦学園大・名古屋経済大・岐阜経済大の3名の研究者の計8名。
仕事おこし部会は第2回研究会を6月1日(日)に、刃物販売業者による「高齢者と障害者を中心とする仕事おこし」及びエクステリア業者による「名古屋南部地域のものづくりグループ」の2本の報告をもとに討議を深める。商業・流通部会は3月30日に豊橋駅前商店街を調査し「豊橋駅前の商店街のとりくみについて」報告をもとに検討をおこなうことに決定。
◆東海ものづくり研究会第2回研究会 2003年6月1日(日)
中小商工業研究所・第2回東海部会
テーマ:名古屋南部地域ものづくりネットワーク構築
内 容:02年6月23日に70名参加で立ち上げ交流会をおこない、レッツN(金属加工)・MOC(非金属製造)・創(小売りサービス)の3グループが発足した。レッツNは新製品開発に向けて、タワー型駐輪場と廃油処理器の開発を試行し、MOCは廃材を使って環境型開発をめざし、創は南部地域開発センターと協同した物販をめざしているが、建設グループは未だ方向性がみえない。自分の仕事探しとグループ全体のとりくみの乖離、地域内受注システムが構築できるか−等グループ内の内部矛盾をどう克服するかという問題が出ている。受注を中心にしたグループではなく学習による意識変革が問われている。浜松では、ヤマハの80%が海外展開し、産業それ自体が絶えてしまう危機があり、外国人不法就労をせざるを得ない単価問題がある。外国人労働者は日本で技術を身につけ、日本の産業そのものも持っていってしまうのではないか。従来の下請け構造で、自分の頭を使って製品開発する主体的な意識が育っていない。見積もりや請求書も自分で書けない状況を打破する必要がある。−等々多彩で深刻な問題状況が交流された。新製品開発のためのネックは、同業者間の意思統一と資金調達の2点にあることが明らかとなった。前者は主体的な問題で、後者は地域経済振興行条例を含むローカル・コンテンツも実現にあるといえよう。次回は、8月10日に浜松地域産業の現状報告と岐阜の高齢者向け新製品開発の2本の報告を下に論議を深めることを確認して散会。14名参加。
◆東海ものづくり研究会第3回研究会 2003年8月10日(日)13:00−16:30
中小商工業研究所・第3回東海部会
テーマ:@障害者・高齢者のものづくり(岐阜) A浜松の機械金属産業(静岡)
内容@:テトラパック工場の乳製品の紙パックの不良品を無料で美濃酪協同組合に運送費ゼロで貰い受け、そこから岐阜県内共同作業所で表紙と中紙と裏表紙にをめくり分ける。表紙1kg200円、中紙1kg20円、裏紙1枚5円で引き取る。中紙は静岡製紙工場へ搬入してトレットペーパーに再生し、表紙はシュレッダーに掛けて他の材質と混ぜて油紙にする。裏紙は油紙セットの衝立用に組み立てる。学校給食用牛乳パックのリサイクル運動と美濃和紙の風味を生かした画期的なヒット商品となる。同時に障害者支援運動の意味を持つ。最初は美濃和紙風味の便せんをつくったが、需要は老人向けにしかならなかった。娘が油紙が欲しいというので、それをきっかけに油紙の生産にも踏み出した。薄い和紙にも印刷可能な技術が開発されて多様な色あわせが可能となった。ロットは5000枚が採算点だが、パンフや月刊誌は1000−2000部でありそれは最低の採算点だ。1ロットは16種×5000=8万個だ。紙パックの引きはがしが労働集約的でコスト高であった企業は、その工程を共同作業所へ委託することにより再生可能となり、また障害者支援となった。第2は、多品種少量生産を新しい技術でおこなうことにあり特許も取得した。第3は問屋などの中間マージンをカットし生産者と消費者が直結している。冠婚葬祭の引き出物、企業の贈答品、団体の紹介品として市場を切り開いている。
この新製品開発をおこなったのは、岐阜の平田さんであるが本来は関の刃物業である。地場産業の和紙を技術革新によって現代市場にマッチできる新製品を創出し、障害者の共同作業所以外にはめくり分けを発注しないと云うフィランソロフィーの意味をも持っている。地域中小企業の先端的な経営戦略である。
内容A:浜松の産業は、オートバイ・楽器・自動車を主力産業としてそれに部品を挙窮する機械関連産業のサプライヤー群が形成されている。大量生産体制に対応するサプライヤー下請企業は、細分化された分業システムであり、NC・ロボット等の専用機を導入して親企業の受注を受けた。ところがヤマハで云うと、50ccのソフトバイクの90%が海外生産となり国内ではエンジン・ミッション系の10%が残存しているに過ぎない。400ccの大型バイクの月産台数は不況の煽りを受けて25−30車種を各800台しか生産していない。かっては月産35000台程度であった。サプライヤー企業は、小ロット対応の特殊技術を持つ企業は受注を維持し猛烈に忙しいが、汎用型の誰でもできる技術しかない企業は仕事が全くなくなった。汎用工程はすべて海外生産に転移した。またデイスクブレーキのデイスク盤の研磨作業工程はすべて機械化し研磨企業は仕事がなくなった。そこで個々バラバラに散在している特化技術の企業をネットワークで結び、自分たちは何ができるか・どこまで他業者と結びつけるか−徹底して話し合いネットワーク工場をつくろうではないかということになった。すると大手電機メーカーから発注がありネットワーク生産が始まった。すると従来の垂直的な下請けシステムがゆらぎ、2次下請けがコーデイネイトし親企業とも対等に生産する関係が起こった。従来の1次下請けは、あまりに部品管理コストがかかるため下請けに丸投げしてきた。材料発注から納品までわずか8日間という大企業の発注に答えられたのは2次下請以下のネットワークとなった。この経営戦略の転換は幾つかの意味がある。第1に職人的技術の独自の特殊技術を持つこと、第2に下請意識を脱却する人格的な自立が求められること、第2にネットワークの有効性を理念ではなく現実の利益につなげなければならないこと、第3に小ロット対応力を持つこと、第4に自分の技術を盗まれるのではないかという狭い職人意識を脱却すること、オープンな技術と技能の交流が求められること−などである。
2つの報告を受けて議論沸騰し、現場の熱いものづくりの情熱に圧倒された。理論化の作業を急がなければならないと痛感した。
◆東海ものづくり研究会第4回研究会 2003年9月28日(日)13:00〜17:00
テーマ@大阪のものづくりネットワーク A日本のものづくりの現状と課題
内容@ものづくりグループ・ネットワーク全国交流会(7月5日)の報告。海外生産の急増と下請発注形態の変化に対応するグループ化の必然性、仕事を得たいという要求を基礎とした運動組織は、、ただ仕事では組織の発展はなく、仕事がないという背景と打開の方向の学習と発信能力、公的助成への挑戦、新製品開発への努力が必要。HITの柱は新製品開発・共同受注・研修にあり、利潤追求型ではない。仕事と人と運動をつくる共同の力がポイント。グループからネットワークへの発展の段階論の構築が必要と痛感した。
内容A日本のものづくりは、地域おこし・町おこし・人間おこしの連関の中で把握しなければならない。ものづくりは帰着するところ文化の再建の問題だということが結論となった。
次回は商業部会との合同開催によって今後の方向を決定する内容とすることに決定して解散。
◆第3回中部流通学会 2003年12月6日(土)13:00〜東海市・太田川どんでん広場
テーマ@どんでん広場の構想と展開(森靖雄) A農産物3品目のセーフテイガード(荒木國臣)
内容@中部国際空港開設にともなう名鉄太田川駅の高架化によってユニーが移転し、空き地に地元の業者や地主が一体となった商業施設が開設された経過と現状、実にリアルで面白い。地域活性化にかけた地元住民の熱意がどのように結晶していったかを、土着性と地域権力構造を最大限利用しながら、内発型地域循環と地産地消、地域インキュベータなど地域経済活性化の1モデルケースとなるのではないか。森教授というコーデイネイター、2人のキーパーソンが結びついた希有の地域活性化の結晶体だ。リアルで実践的な報告に感動した。A日中農産物貿易におけるSGの政策効果をどう見るか。わたし自身の報告が確信がないために逆に議論が沸騰した。自由化論にたいする説得、公共財、農業の多面的機能、市場の失敗、合成の誤謬などなどわたしの思索の不徹底が露呈された。