うしおととら

そう、「うしおととら」を読むまでは、妖怪はほぼ悪役だった。鬼太郎と その仲間たちのように善良な妖怪もいたが、そんな連中は子供向けのお話 だった。リアルな悍ましい化け物たちはみな悪者だった。それが普通だっ た。「うしおととら」には、人間たちのために悪い妖怪を退治するなんて 反妖怪社会的なもののけは出てこない。大抵、妖怪にとって人間は侵略者 であり、裏切り者であり、食い物であり、取りついて殺す対象であり、相 いれない者たちなのだ。本質的に陰と陽、交わるはずのない間柄、しかし そんな関係も一人の少年と強大な大妖によって変化する。人も妖怪も全て を滅ぼそうとする共通の敵「白面のもの」に対抗するため奴等は戦った。 最後まで、人は人として、妖怪は妖怪として、でも潮ととらを中心に皆が 力を合わせて戦った。不思議な話だった。千年以上生きてきた妖怪と中学 生の少年の運命と絆、そして戦い。何度漫画を読みながら、涙を流したか 判らない。今読み返しても目頭が熱くなる。涙で目が曇り先が読めない。 これ以上語れない。最大級の賛美を作者に贈りたい。そんな漫画だった。


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