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●本番舞台 夜の山道
忠治の家へ道案内する村人と座頭市。
村人 按摩さん、親分さんの家はもう少しだからな。
市 本当にすんませんなあ。
村人 なんのなんの。あんた、メクラの身でようまあこんな暗い山道来なさっただなあ。人の通る道じゃねえだよ。
市 ヘヘヘ……メクラ、ヘビにおじず、と言うのかねえ。
村人 へ、蛇!?
効果音声
「ピーポーピーポー」(救急車の音)
村人 おや? なんの騒ぎだろう?
市 なんか聞こえますねー。
村人 また村の子か誰かが早馬に蹴られて死んだか……
の一連のセリフが小さくなる上にかぶさって、
熊倉さんの語り かつて忠治全盛期の頃、危ない命を救われた恩義のある座頭市。昏れなずむ村外れでの再会です。
忠治 おう、おう、おう……
その忠治に気づき、
市 あー、親分。気がつきなすった!
布団ごと大八車に乗せられ、子分2人に守られた忠治に近づく。
忠治 よお、よお、よお(言語障害がひどくて聞き取れない)……
市 へ? 親分、なんでやすか?
安造 ちょっと待った。おいらが通訳したるぜ。兄貴、ちょっと代わっておくんな。
清五郎 面倒くさそうに大八を持つ手を代わる。
安造、忠治のもとに駆け寄り、
安造 へいへい、親分、なんでやすか?
忠治 い、い、い……
安造 市、こっちへ来い、と言ってやす。
市、忠治のもとへ。
忠治 おう、おう……(喜ぶ)
市、忠治の体に手をかけ、
市 あ、あーあ、親分。あーあ親分だ、まちがいねえや、こりゃ。
だけどこんなにやつれて痩せちまって。あーあ、胸もこんなになっちまって……。
清五郎 按摩さんよ。お町さんがよ、洗い物をするたびに洗濯板に使ってるんだぜ(客席爆笑)。
憮然とする忠治。
●戯作者、問題提起する
本間のアップ。
本間 この芝居をみんなに見てもらうんだけれども、注意してもらいたいのは言葉の問題ですよね、いわゆる差別語って言われているメクラ、カクワ、腰抜けとか、そういったのがぼんぼん出てくる。
で、まあ、戸惑われる方もいるんじゃないかと思うんだけれども、もちろん障害者にしてみれば非常に切実な言葉ということで、気にする向きもあるかと思いますけれども。
しかし実情を、そういった言葉だけでね、規制して、それを無くしてしまえばそれでいいのかと、いうような問題が一つありますね。
●本番舞台 再び村外れの山道
大八車の忠治と市、通訳の安造、大八車を支える清五郎、見守る村人。
忠治 い、い……
安造 市。
市 へい。
安造 お、こっちだこっちだ(手を取って親分のそばへ)。
忠治 おめ、おめ……
安造 (身ぶり、手ぶりも大げさに)おめえのあったけえ気持ちは忘れねえぞ、と。
市 へえへえ、どういたしやして。
清五郎 い、い、いい加減! チェッ、俺までドモリになっちゃったぜ。
いい加減、こんな面白くもねえ遊びやめて、早くお徳さんのウチに帰ろうぜ。あの人の剣幕に遭ってみろ、大変だぞー……
などのセリフのやりとりが途中から小さくなる中――
熊倉さんの語り 久し振りに忠治との再会を果たした座頭市。しかし忠治は落ち目。弱きを助けずにはおられぬ市のこと、やがて二足ワラジの大前田英五郎との暴力団抗争に巻きこまれていきます。
カラスが鳴いている。
清五郎 まったく、あの人の剣幕にはよぉ……
市 ちょ、ちょ、ちょっと待ってくんなあ。
清五郎 へっ。
市 ほーら、カラスが鳴いてらあよ。えんぎでもねえよ。
清五郎 けっ。国定一家の行く末なんざ、カラスの方がよっぽどお見通しなんだぜ。
市 いけねえいけねえ、縁起でもねえこと言っちゃいけねえ。
縁起でもねえ〈もん〉は始末するに限らあね。
夜空をうかがう市――。
テーマ曲が流れて、市の必殺居合い斬り!
上から斬られたカラス……
ではない、紐に吊られた「浅草・鮒忠」のローストチキンが落ちてくる。
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